長かった冬山の大雪にも6月の太陽が降り注ぐようになると雪解けが始まります。一面
が雪で被われているところどころに黒い字肌が現れると、雪を割るようにして、ピンク色
の花を付けたショウジョウバカマが山に春の訪れを告げます。すでに平地の植物たちは夏
への衣替えのための成長を続けている頃なのです。1800m〜2000mの高地ではこの春の訪
れを待っていたかのようにしていまず、ガンコウランが細い葉の問に赤い小粒の花を付け
始め、ウラシマツツジも太陽を満面に受けて黄色い小粒のスズランのような花を付けてい
ます。
雪田や湿地のショウジョウバカマ、風衝地や湿原のガンコウラン、ウラシマツツジなど
の開花を期して大雪の高山植物は一斉に芽吹き始めます。低木のウコンウツギ、チシマヒョ
ウタンボク、ナナカマド類やマルバシモツケ、キバナシヤクナゲ、エゾツツジ等が次々と
咲き始めます。チシマツガザクラやエゾノツガザクラ、クロユリ、ダイセットリカプト、
イワブクロ、コマクサなどが出揃う7月の中旬から下旬には、大雪の山全体が一大花園と
と化し、多くの登山者の目を楽しませてくれるのです。 (成田 新太郎)
◆ショウジョウバカマ Heloniopsis orientalis
Tanaka ユリ科
常緑の多年草で山地の草原や湿地にはえ、根は太い短い。葉は狭長楕円状で表面は艶が
ある。花は3〜10個総状につき、色は紅紫色〜濃紅色。
◆ガンコウラン Empetrumnigrum L.var.japonicum
K.koch ガンコウラン科
常緑の直立性の矮小灌木で枝が多く10cm内外で高山の湿地や風衝地に生える。葉は厚
く光沢があり広線形で皮質、ふちは内側に巻く。花は赤紫色で実は紫黒色になる。
◆ウラシマツツジ Arctous aIpinus Niedz.japonicus
Takede ツツジ科
矮小灌木で高さ5cm前後、高山の風衝地や岩礫地に生える。葉は倒卵形で厚く膜質、
花は枝の上に着き垂れ下がる。花冠は壷状で5mm程度、実は始め赤く、熟すると黒くな
る。
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