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やせがまんの社会・崖地の植物

やせがまんの社会・崖地の植物

  

層雲峡は、石狩川が溶結凝灰岩の台地を削りとった崖が連続しているところですが、この崖の植生について少し考えてみましょう。崖は日が当れば想像以上に温度が上昇しますし、土壌も少なく保水力のない乾燥した環境となっています。また、冬にも雪に被われることの少ない酷寒の地となりますし、斜面の方向によっては終日陽の当らない所もあるなど、生物にとっては実に厳しい環境と言えるでしょう。
 しかし、水分が上部から常時供給される所、風化土壌の堆積した岩棚、岩のわれ目などがあり、この様な好条件の所を中心に崖地独特の植物群落が広がっています。 層雲峡地域の乾燥した崖地には、キリンソウ、イワキンパイ、エゾムラサキツツジ、ハクサンシヤクナゲ、キバナカワラマツバ、イヌヨモギ、エゾムカショモギ、ヒメノガリヤス、などが生育しています。またこの地域で発見されたコバコシヤジンとソウウンナヅナも見られます。半日陰となるような所には、トラノオシダ、ヘビノネゴザ、ニオイシダ、ミヤマウラボシ、チシマゼキショウ、ダイモンジソウ、イワヒゲなどが見られます。この様な低山地にイワヒゲが生育しているのは珍しいことです。さらに岩棚には、ミヤマビャクシン、エゾノヒモカヅラ、エゾスカシェリなどの小群落が見られ、崩壊岩石の下には、ヒカリゴケを見ることもできます。
                       (中條 良作)

タイムカプセルとなった森林
 層雲峡の断崖はおおよそ3万年ほど前に噴出した火山灰や軽石の破片が再融解して固まった溶結凝灰岩でできていますが、大函や小函地区などでは、この下部にさらに古い時代の火山灰の層を見ることが出来ます。そして発電所の水路や道路のトンネル工事の際に、この古い火山灰に埋没していた樹木が出土しています。
 この層の花粉分析はまだ行われていないため詳しいことは分かっていませんが、出土した樹木は、ハンノキ、エゾマツ、トドマツなどで、おおよそ現在と同様の森林が広がっていたことが想像されます。おそらくこの森林は、前後4回にわたって出現した氷河期の中の温暖期である間氷期に成立していたもののようです。
 強い圧力を受けて固まった木片や高熱で消し炭のようになってしまったこれらの樹木は、私たちに過去の時代の厳しい火山の活動を伝えてくれるタイムカプセルのようですね。

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