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高山植物の女王コマクサとタカネスミレ(高山荒原植生)



高山植物の女王コマクサとタカネスミレ(高山荒原植生)
                  
 

山頂に続く稜線部を歩いていると、砂礫地にコマクサ、タカネスミレ、イワブクロ、ヒメイワタデなどの単一な群落が広がっていることがあります。これらの場所は風あたり(風衝)が強く砂礫の移動の激しい不安定な立地で、しかも強い日射により乾燥の激しい環境となっています。したがってこれらの植物はいずれも砂礫地移動に強く、しかも耐乾性にすぐれているのです。
 タカネスミレの葉は厚く硬質で光沢があって、強い陽ざしと乾燥に強いのです。形もまた葡匐形をしていて強風を避け易く、根を深くして体を支えています。
 コマクサも砂礫地に主に単一の群落を作ることが多いのですが、密生することはありません。葉は粉白色で細裂していますが、裂片は線状長橋円形でやや厚質で、やはり日射や乾燥に強いのです。また根もきわめて深く入り込んで固体を支えています。コマクサ平、高根ヶ原、黒岳などで大きな群落が見られますが、その他にも、ハイマツが風害を受けて枯死した跡地などにいち早く侵入したコマクサの小群落が散在しています。 コマクサはまた、氷河期の残留昆虫で天然記念物の指定を受けているウスバキチョウの幼虫の食草となっています。本州の高山にもコマクサは分布していますが、ウスバキチョウは生息していません。このことは、幾千年もの永い問、ウスバキチョウの生存に十分な量のコマクサが、大雪山に存在し続けていたことを物語っています。  (中條 良作)

移り行く高山荒原植生
 大雪山山頂付近では各種の高山植物が単一群落や混生群落を作っていますが、その群落
は不変ではなく、長い間に循環的に変わって行きます。その原因は、植物が密生している
群落ほど地中の温度が上がらず、永久凍土の層が上昇して生活環境が劣悪化し、群落が破
壊されて行くからと考えられています。枯れた植物遺体は強風に吹き飛ばされ、跡地は裸
地となります。そこでは地下水の対流などで地表に押上げられた土壌がさらにフルイにか
けられたように水に流され、風で飛ばされ、構造土の礫原になって行きます。
 しかし、ここにはパイオニア的なコマクサを始めとする礫原植物が侵入し、やがて徐々
に周囲の高山植物が侵入してきて、新たな高山ヒース状の植物群落を形造るのです。
崩土・風衝・氷害
などによる裸地の
出現
コマクサ・タカネ
スミレなど荒原植
生の侵入
コマクサ・タカネ
スミレなどの単一
群落の成立
高山ヒース
植物の皮入
崩土・風水害等による環境の変化と
人為的破壊による裸地化
高山ヒース群落の成立
(コマクサ等の消失)
 

 
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