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風は床屋 偏形樹



風は床屋 偏形樹
 

山の山頂部や稜線部等は特定方向からの風当りが強く、樹冠が刈りこまれたもの、枝が一定方向に曲げられたもの、さらには片側だけに枝をつけた樹木等が見られます。この様に通常の樹形の形成が強風等により阻害されたものを偏形樹と呼んでいます。 木が強い風を受けると風上側の技葉の蒸散が活発になり、結果として低温と乾操にさらされて活力が落ちたり枯死したりするのです。また、風圧や風に運ばれてきた土砂、雪氷等による枝葉や芽の損傷、枝折れ等が起こるのです。このため風上側の成長が長い期間にわたり阻害され続け、偏形樹が形成されるのです。 ダケカンバ、アカエゾマツ、トドマツ等が見られる亜高山帯では、冬の冷たい偏西風の影響が特に強く、主に風上側にあたる西方向の枝の成長が阻害された三角旗型の偏形樹が風衝地にみられます。通常、偏形樹の樹冠はその場所で最も頻度の多い強風(卓越風)の風下側に樹冠を伸ばしているのです。ですから偏形樹の偏形度合と方向を調べると、その場所のおおよその風の強さと卓越風の方向を瞬時に知ることができるのです。この様に、ある自然現象なり環境の目安を示してくれる生物を指標生物と呼んでいます。 高山の山頂や岩峰等の最も風の強い所では、もはや偏形樹も生育できずに風衝低木群落や風衝草原となってしまいます。                   (青木 満)




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