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登山蝶−コヒオドシ

高山族とはちがって、森林限界以下が主な生活の場所ですが、一時的に高山帯を訪れ、そこで生活する蝶がみられます。このような仲間を、真正高山種と区別して「登山蝶」と呼ぶことがあります。コヒオドシはその代表者です。本種は本州の山岳地では高山の蝶となっていますが、北海道では平地にも普通にみられます。幼虫はイラクサ類を食草としており、黒っぽい大きな塊となった幼虫集団がよく観察されます。 成虫は7月中旬に現われますが、この頃になると多くのコヒオドシが群れをなして高山帯に飛来してきます。時には高山植物のお花畑がこの蝶によって占領されてしまうほどで、高山帯において最も普通にみられる蝶です。 高山帯へと移動するコヒオドシの正確な調査はまだ行われていませんが、渡辺(1985)は1983年8月に赤岳山頂付近で目撃した観察例を報告しています。それによると1時間の累計で2,880頭がハイマツ群落の上を切れめなく通り過ぎて行ったそうです。夏の晴れた日、大雪山全体では実に膨大な数の蝶が高山帯へと登山していることになります。 こうした光景は赤岳〜小泉岳〜緑岳などの稜線でよく観察されます。(保田 信紀)


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