1995/06/12 初 版
1996/05/01 改訂版
巣立ちビナ対応マニュアル Copyright Tsutomu Sasaki 1995
巣立ちビナを保護したらどうすればよいか。そのための救急マニュアルは、いくつか自然保護団体から出版されている。しかし、どれもが、どうやって育てるかに重点を置いているため、かえって読者を巣立ちビナ探しに野山へ駆り立てる内容になっている。このマニュアルは初めて、巣立ちビナを救うことを目的として作成された。特に、「巣に戻してはいけない」「親鳥を探す必要はない」などは、まったく新しい視点からの対応法だ。 |
| Q.巣立ちビナを保護したが…… |
| A.巣立ちビナを親鳥から切り離すのは、保護ではなく「誘拐」。すぐ元の発見場所に戻すこと。もし誰かが連れてきてしまったら、発見者に頼むか発見者から聞いて、巣立ちビナがなるべく早く元の場所に戻るようにすること。これ以外に助ける方法はない。親鳥は必死にわが子を探している。 |
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Q..飛べない鳥を拾ったが、これは巣立ちビナか…… Q..飛べない鳥を拾ったが、これは病気・怪我か…… | ||||||||||||
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A..一般の人は「飛べないから、巣から落ちた」と早合点しがちだが、多くの巣立ちビナは飛べないのが普通だ。その鳥が、羽が生え揃っていて、「翔く」か「歩く」なら、巣立ち後のヒナ(巣立ちビナのこと)かそれ以上に成長していると思われる。 また、「飛べないから、病気・怪我」と勘違いする人も多い。巣立ちビナは羽が生え揃っているのに飛べないため、病気や怪我をした鳥(成鳥)だと誤解されるわけだ。未成熟な巣立ちビナには、「産毛が残っている」「嘴の両端が黄色い」「尾羽が短い」など、ヒナの面影が残っている。飛べないからといって、怪我や病気だと早合点しないように。 巣立ちビナなら、すぐ元の場所に戻すこと。親鳥が必死にわが子を探している。
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| Q..万一、巣立ち前のヒナだったら…… |
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A..巣立ち前のヒナが誤って(台風などのためでなく)巣から落ちることは、非常に希。 私はそのようなケースをほとんど知らないので、聞き取りによる推測だが、何百分の1以下の確率と思われる。しかし、この場合でも、羽が生え揃っていれば巣に戻す必要はない(結果的に巣立ちになってしまう)と思われるし、自然に起きたことに人間が手を出すべきではないと思う。 ただし、人為によって巣立ち前のヒナが巣から落とされた場合は、巣に戻す必要がある。この場合は暗くなるのを待って、静かに巣に戻す。昼間明るいうちに巣に戻そうとすると、他の兄弟ビナたちが驚いて巣から飛び出して落下し、殺してしまうことがあるからだ。なお、赤子や羽毛が生え揃っていないヒナは、「そのヒナの命を見限って、親が捨てた」という説もある。 |
| Q..どんな食べ物を与えたらよいか…… |
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A..いきなりこう聞いてくる人が多いが、その鳥に何を食べさせたらよいか知っているのは、その鳥の親だけ。一般の人が不適切なものを無理矢理食べさせると、それだけで殺してしまうことが多い。とにかく、すぐ元の発見場所に戻す以外に助ける方法はない。親鳥は必死にわが子を探している。 |
| Q..猫がいる…… |
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A..鳥はそのままに、その猫をとことん追いかけ回す。そうしているうちにきっと、親鳥がわが子を安全なところに連れて行くはず。 |
| Q..車にひかれそう、U字溝に落ちている…… |
| A..車道にいる場合は、道から離れたなるべく人目につかない場所に移動させる。その際、人間が触って臭いがついても問題ない。U字溝などから出られないでいる場合も、同様に対応する。 |
| Q..目立つ場所にいたら…… |
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A..再び人間に見つからないよう、人目につかない場所に移動させる。 |
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Q..巣立ちビナを移動させたら、親鳥とはぐれてしまわないか…… Q..正確な元の場所がわからないので、その辺りにしか戻せない…… |
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A..親鳥と巣立ちビナは互いに鳴き声で連絡がとれるので、鳴き声が届く範囲ならあまり問題ない。実際には、親鳥は鳴き声を発しながら飛び回ってわが子を探すので、かなり広い範囲(数十〜数百メートル位)でも大丈夫だろう。 |
| Q..親鳥の姿が見えないが…… |
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A..小鳥類や猛禽類など大部分の野鳥の親鳥は、巣立ちビナの食べ物を探しに行っているため、巣立ちビナのそばにはいないことが多い。巣立ちビナは、食料を探して忙しく動きまわる親鳥から離れて、安全な場所でじっと待っているわけだ。特にキジバトなどでは、巣立ち直後のヒナには朝夕1回ずつ位しか食べ物を与えないので、その時期には親鳥が巣立ちビナと一緒にいることはほとんどなく、巣立ちビナは終日枝に止まっていることが多い。 これは外敵から身を守る、彼らの知恵とも言える。したがって、「一羽でいても迷子ではない」。親鳥を探す必要はない。 |
| Q..本当に親鳥を探す必要はないのか…… |
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A..巣立ちビナの親を探す必要はない。かえって人間がいると、戻ってきた親鳥が(人間を)怖がってわが子に近づけないので、すぐにその場を立ち去るべき。その場にとどまって、親鳥を探していたり待っていてはいけない。 また、親鳥の姿が近くに見えなくても、必ず親鳥はどこかから巣立ちビナを見守っているという説があるが、これは、巣立ちビナを人間に誘拐させないための方便と考えたい。 |
| Q..巣の中にヒナがいるのに、親鳥の姿が見えないが…… |
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A..親鳥はヒナの食べ物を探しに巣の外に出るので、巣にはヒナだけでいることがある。 特に、ヒナの羽毛がある程度生え揃って自分で体温調整ができるようになると(小鳥類で卵からかえってだいたい1週間後位)、親鳥がヒナの保温のために巣にとどまる必要がなくなる上、ヒナの食欲が増大するので、親鳥はヒナの食べ物集めに忙しく、ヒナに食事を与えるとき以外は姿を見せないことが多い。特にキジバトなどでは巣立ちビナに対してだけでなく、まだ巣の中にいるヒナに対しても朝夕1回ずつ位しか食事を与えないので、親鳥の姿を巣で見かけることはあまりない。 いずれにしろ人間がいると、戻ってきた親鳥が(人間を)怖がって巣に近づけないので、すぐにその場を立ち去るべき。巣のそばにとどまって、親鳥を待っていてはいけない。 また、すべての野鳥が雌親と雄親とで協力して子育てにあたるわけではないことも、付け加えておく。 |
| Q..巣が見つからないが…… |
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A..巣が見つからないことを理由に、巣立ちビナを保護(実は誘拐)する人が多い。しかし、小鳥類など一般の人が出会う範囲の巣立ちビナは、一度巣立ったら二度と巣に戻らないので、巣を見つける必要はない。 巣立ちは、成長する途中段階でヒナが巣の外に出ること。親からの自立ではない。 多くの野鳥にとって巣とは、卵を産んでヒナをかえし、ある時期(巣立ち)まで育てるためのもの。 一度巣立ったヒナが巣に戻ることはなく、そのヒナにとって巣はもはや何の役にも立たない。巣立ちビナを巣に戻す必要はないし、そのために巣を探す必要もない。 |
| Q..巣立ちビナを巣に戻してはいけない理由があるのか…… |
| A..巣に戻すと、再び飛べない状態で巣から跳び降りなければならず、極めて危険。多くのヒナにとって巣立ちは、精神的プレッシャーと肉体的危険が伴う命がけの行為なので、もう一度させるのは絶対に避けるべき。同様に、あまり高い枝に止まらせるのもよくない。また、その巣立ちビナを巣に戻すときに他の巣立ち前のヒナがびっくりして落ちてしまい、死んでしまうことがある。 |
| Q..ツバメの巣が落ちた…… |
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A..壁に巣をかけるツバメの場合、まだ巣立ち前のヒナがいるのに巣が落ちてしまうことがある。適当な棚を作り、その上に巣を戻せればよいが、棚を作るのが大変だったり、落ちた巣自体が壊れてしまっていることもある。そこで、代用品で対応する。 巣の代用品として適当なのは、ザル、お弁当用のバスケット、プラスチック製の容器、クッキーの平たい缶など。ただし、あまり深いものは避ける。これを、針金などを使って吊るす。この際、必ずしも壁に密着させる必要はないし、元の巣の場所から多少離しても心配ない。要は、安全な場所に吊るすこと。この方法は、ツバメの調査をしている友人の一級建築士T氏より聞いたもので、最も簡単で確実だと思われる。 |
| Q..巣の真下にヒナが落ちていた。羽は生え揃っているが、これも巣立ちビナか…… |
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A..多くの巣立ちビナの場合、よく飛べない状態で巣から降りる。これは、落ちるという表現の方が当たっているようなものも多い。うまく枝づたいに巣の近くから離れられればいいが、そういかないときもあるし、もともとボタッと落ちるように巣立つ鳥(例えばモズやフクロウやオシドリなど)もいる。いずれにしろ、巣立ちは本人(本鳥?)の意志だから、「落ちた」ではなく「降りた(=巣立った)」になる。 巣の真下に巣立ちビナがいるケースは、少なくない。 |
| Q..本当に巣立ちビナは飛べないのか。テレビで巣立ちの瞬間を見たら、ちゃんと飛んでいたが…… |
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A..巣立ち時にある程度飛べるものがいることは確か。また、テレビではよく飛べたものだけ選んで、あるいは飛んでいるように見える場面だけ編集して、放送しているフシがある。しかし、ある程度飛べる巣立ちビナは、人間に捕まらないのでなんら問題ない。一般の人の目に触れ、そして捕まってしまうのは飛べない巣立ちビナばかりなので、私は「巣立ちビナはうまく飛べない」と言っている。一般の人が、飛べないから怪我・病気と早合点して保護(実は誘拐)しようとするのを、多くの巣立ちビナは飛べないのが普通だよ、飛べなくても心配ないよと言って、人間から巣立ちビナを守ろうという意図だ。 また、巣立ちビナは持久力があまりないので、たとえある程度飛べるものであっても疲れて休んでいることがある。このようなケースは比較的多い。また警戒心が薄いために、せっかくの飛翔力を持ちながら、それを使って逃げようとしないこともある。 |
| Q..ヒナが巣から落ちることは希なのか…… |
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A..一般の人は、「飛べないから巣から落ちた」と早合点しがちだが、実際にヒナが巣から落ちることは希だ。私は野外で、数千羽以上の巣立ちビナと出会ってきたが、巣から落ちたと思われるヒナは、台風通過後のスズメの丸裸のヒナ以外見たことがない。友人の野鳥カメラマンN氏も、スズメとツバメのヒナ以外で、巣から落ちたヒナは見たことがないと言っている。つまり、一般の人が巣から落ちたと思ったヒナのほとんどは、「自らの意志で巣から降りた巣立ちビナ」ということになるのでは。 また、フクロウ類の巣立ち直後のヒナはまったく飛べない上、翼がかなり小さいこととまだ白っぽい羽毛に覆われているためか、巣から落ちたと勘違いされることがとても多い。しかし、多くの場合樹洞で育つ彼らが誤って樹洞をよじ登り、誤って自分より上にある出入口から外に落ちることは、まず起こりえないだろう。また、地面上で営巣する鳥の場合、そもそも巣から落ちること自体ありえない。 |
| Q..雨の中にうずくまっているのを保護したが、どうすればよいか…… |
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A..雨の中でうずくまっていたとしても、それですぐに致命的かどうかの判断は難しい。というのは、多くの鳥は、雨にうたれたまま雨をやり過ごしているからだ。だから、その巣立ちビナにとっても、雨は日常的なことに過ぎないのかもしれない。いずれにせよ、巣立ちビナを親から引き離すことこそ致命的なので、すぐに元の場所に戻し(たとえ雨の中でも)、親鳥に任せる以外に助ける方法はない。 ところで、鳥の羽の表面は油分でコートされており、雨をはじくようにできている。それを人間が手で触ってしまうと、羽毛の中まで濡らされて体が冷え、特に巣立ちビナの場合致命的になることが多い。雨に濡れている鳥に触ってはいけない。したがってこの場合、その鳥が濡れている状態のまま手で触ってしまい、まだ乾いていないようなら、まず部屋を暖めて鳥の体の濡れを乾かした方がよい。その上で、雨がまだ降っているなら、手で触らないように箱などにいれて運び、元の場所に戻す(もちろん箱を開けて、手で触らないように雨の中に放す)。元の場所に、木の下など雨宿りできそうなところがあれば、そこに放した方がよいかもしれない。 |
| Q..失神しているが…… |
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A..絶対安静にし、回復を待つ。そのうえで、 1)巣立ちビナなら、元の発見場所に戻す。 2)若鳥や成鳥なら、できるだけ元の発見場所かその近くで放す。 また、安静中は、水や食べ物を絶対与えないこと(死んでしまうことがある)。他の人にいじられないよう、段ボール箱などに入れておく。 なお、小さな鳥は死ぬと急激に体温が失われ、冷たくなる。まだ温かい場合は生きている可能性が高いので、土に埋めたりしないように。 |
| Q..巣立ちビナを保護したので、それなりの施設に預けるか、緑が豊富にあるところに放したいが…… |
| A..親鳥がいなければ巣立ちビナは生きていけないので、施設に預けても緑が豊富なところに放しても、助からない。元の発見場所に戻す以外に助ける方法はない。 |
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Q..既に2〜3日以上巣立ちビナの面倒を見ている。元の場所に戻して大丈夫か…… Q..何日くらいなら、親鳥から離しても大丈夫なのか…… |
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A..巣立ちビナを親鳥から引き離した場合、大丈夫ということはないが、何日くらいなら致命的にならないかは鳥の種類や成長の度合いによって異なる。したがって一概には言えないが、小鳥類の場合の経験則として、2〜3日ならまず親鳥がなんとかできるだろう。また、1週間以内なら助かる可能性が何割かある。問題は、それ以上親鳥から引き離してしまった場合だが、最悪の結果(=死)か、万一生き長らえても繁殖できない可能性がある。それは、親鳥から引き離してしまったことが原因であり、もはや取り返しはつかない。なお、野鳥を飼うことは「鳥獣保護及ビ狩猟ニ関スル法律」で禁止されていることも付け加えておく。 |
| Q..しばらく(1ヵ月以上)巣立ちビナの面倒を見てきたが、これ以上面倒を見続けるのは大変。なんとかならないか…… |
| A..なんともならない。元の場所に戻しても、親鳥が面倒を見てくれる可能性は奇跡が起きない限りないだろう。動物園に持って行けば引き取ってくれて、他の動物の餌になるか、一生金網のなかで生き長らえるかもしれない。都道府県の鳥獣保護員に引き取ってもらう方法もあるが、動物園に持って行った場合と同じ結果になるか、どこかの自然の中に放されてしまうかだろう。もちろん、自分で自然の中に放すという方法もある。自然の中に放すと言えば聞こえはいいが、待っているのは死、という確率がきわめて高い。 |
| Q..巣立ちビナを人間が育てることはできないのか。テレビでは、巣立ちビナを拾ってきて育てている人の話題を、ときどき放送しているが…… |
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A..あまり言いたくはないが、人間でも育てられそうな鳥の種類がいることは確か。特に、地上に巣を造る種類の中には早成性といって、ヒナが卵からかえってすぐ歩けたり、自分で食料を採ることができるものもいる。しかし、このような鳥はふつう人間に捕まらないので、問題は起こらない。一般の人が手を出すのは晩成性の種類のもので、これは巣立ちしても充分飛べないし、食料を自分で採ることもできない。 これを野生で生きていけるよう人間が育てるのは、そうとう難しい。仮にどんなにうまくても、その鳥の親にはかなわないだろう。また、親鳥がいるのに人間が育てる必要はないし、その権利もない。 だから私は「巣立ちビナを人間が育てることはできない」と言っている。一般の人が保護(実は誘拐)して育てようとするのを、人間には巣立ちビナは育てられないよと言って、変な気を起こすのを防止しようというわけだ。もしあなたが巣立ちビナだったら、親から引き離されたときどう思うか。あるいは、あなたの幼い息子や娘が誰かに連れ去られてしまったら……。よく考えて欲しい。 |
| Q..巣立ちは、自立ではないのか…… |
A..巣立ちは、親からの自立ではない。巣立ちビナは、巣立ち後数週間〜数カ月以上親に養われる。その期間に親から、1)飛び方 ……ということは、今はまだうまく飛べない 2)食料の採り方 ……ということは、今はまだひとりで食べ物をとれない。だから、親が巣立ちビナ の分も食料を探しに行く 3)敵からの逃げ方 ……ということは、敵(や人間)に簡単に捕まってしまう 4)仲間とのコミュニケーション方法 ……ということは、これを身につけないまま成長しても繁殖できない可能性が高い などの実地訓練を受けて、やがて自立する。巣立ちは自立の前段階に過ぎない。 |
| Q..巣から落ちたと思われる、まだ黄色い産毛の残る小さなキジバトのヒナを保護して篭に入れ2週間。親鳥が毎日餌を与え続けて大きくなり、ようやくヒナが自分で食べ物(穀類など)をついばむようになった。親鳥は、もう餌は与えなくなったが、ときおり姿を見せる。そろそろ放鳥してもよいか…… |
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A..巣立ちビナは、巣立ち後数週間〜数カ月以上親の養護下にある。そのうち、親鳥から食べ物の大部分をもらう期間は、小鳥類で1週間〜1カ月前後で、キジバトでは2週間ほどだ。これは、自然界でヒナが巣立ってから自分で食料を採れるようになるまでの期間、に相当するようだ。もちろん、自分で食料を採れると言っても、親の養護下での話だが。したがって、この時期を過ぎると親鳥はわが子に食べ物をやらなくなる。 このようなことから推察すると、そのキジバトのヒナは既に巣立ったものだったと思われる。大きさが親鳥よりも小さいことや黄色い産毛が残っていることを理由に、巣から落ちたと早合点する人が多いが、キジバトに限らず、ほとんどの巣立ちビナは親鳥よりかなり小さいし、産毛がはっきり残っているものも多い。 親鳥がわが子に食べ物を与えに来ているのに、その子を篭に閉じこめておく人は、それが誤って巣から落ちたヒナだと勘違いしているわけだ。また、わが子に食べ物を与えなくなっても親鳥がやってくるのは、様子をただ見に(確認に)来ているのではない。親鳥は、わが子が厳しい自然のなかで生きてゆけるようどうしても実地訓練しなければならないから、怖い人間がそばにいるにもかかわらず姿を見せたのだ。 このようなケースは、巣立ちビナを親鳥から引き離したものではないが、篭に閉じ込めて実地訓練の機会を奪っており、放鳥しても外敵の多い自然のなかで生きていけるかどうかはわからない。しかし、まだ親鳥がときおり姿を見せていることだし、このままではさらに事態を悪化させるので、直ちに篭から放した方がよい。 篭に閉じこめて、実地訓練の機会を奪ってはいけない。 |
| Q..巣立ちビナではないが、傷ついた野鳥を保護した。どうすればよいか…… | ||||||||||
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A..傷ついた野鳥を治療できるのは獣医さんなので、それを探す以外に対応策はないと思われるが、その前に、考えなければいけないことが3つある。 1つは、何が原因で傷ついたのかということ。人為によるものなら、何とかした方がよい。しかし人為でないなら、「人間は手を出すべきではない」と考える人も多い。人間が手を出せば生態系を乱すからだ。自然の中では、傷ついた野鳥は捕食者の貴重な食料となる確率が高い。 2つめは、傷ついた野鳥を捕まえようとして、余計に傷つけて致命傷としていないかということ。例えば、保護しようとしてさんざん追いかけ回し症状を悪化させる、手でつかもうとして翼の骨を折る、捕まえた後無理矢理食料を与えて死に至らしめる、などだ。 最後に、傷ついた野鳥を保護してどうしたいのかということ。はじめに述べたように、獣医さんに治療してもらって自然に戻したいのか、それとも行政(鳥獣保護員や鳥獣保護センターなど)かどこかの施設(動物園や自然観察施設など)に引き取ってもらいたいのか、自分で手当をしたいのか、またできるのか、これによって答は違ってくる。なお、野鳥を飼うことは「鳥獣保護及ビ狩猟ニ関スル法律」で禁止されている。 したがって、対応策は次のようになる 1)獣医さんを探す(電話帳で調べられる) 2)行政に連絡する 全国の都道府県には、非常勤職員として鳥獣保護員が置かれている。昭和38年に制度として創設されたもので、所轄は、鳥獣保護係またはそれに相当する部署。別に、鳥獣保護センターが設置されている場合もある。都道府県庁に電話すればつないでくれる。 参考までに、首都圏の担当部署は次のとおり
3)どこかの施設(動物園など)で引き取ってもらう なお、自然観察関連の施設では、人間が手を出して生態系を乱すべきでないと考える職員が多いので、人為でなく傷ついたものを持ち込むととても嫌がられることが多い。 4)自分で手当をする(それなりの知識と技術と手間が必要) 5)元の場所に戻す |
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●おわりに…… 全国の野鳥保護関係の団体や施設には春から秋口まで、「(誰かによって)保護された鳥」の持ち込みや電話での問い合わせが相次ぐ。これらの鳥は、人間に保護されたというより、誘拐されて親鳥から引き離された「巣立ちビナ」であるケースがきわめて多い。 つまり、飛べない巣立ちビナを助けようとする善意がその場から連れ去る行為となり、結果的に命を奪う。あるいは野生に戻れなくする。日本中の最前線で野鳥保護に携わる者を毎年悩ませる、「巣立ちビナ問題」なのだ。 このような悲劇を生み出す直接の原因は、(親鳥のもとから)巣立ちビナを連れ去ることにある。しかしその背景として、巣立ちと巣立ちビナに関する正しい知識がほとんど普及していないことがあげられる。むしろ、「食べ物は何がいい」「親鳥がそばにいる」「巣に戻せ」など、不適切な対処法が紹介されている。そのことを何とかしたくて、このマニュアルを書いた。 ところで、巣立ちビナを連れ去る側の人は、純粋に助けたいという気持ちの持ち主だけではないようだ。「幼くて可愛いから、触りたい世話したい自分のものにしたい(でももう面倒になった)」とか、「せっかく自分が保護したのに、元の場所に戻したら自分の行為が余計なことになってしまう。なんとしてもどこかの施設に預けたい」という、鳥の命よりも自分の感情や面子を優先させる人も、ごく小数ながらいるように思われる。 このような人への対応は、どうすればよいのだろう。いくら説明しても納得してもらえず、ついには相手が感情的になったとき、トラブルにならないように鳥を見殺しにして引き取るのか、それとも、鳥を救うために「元の場所に戻してくれ」ともう一度言うのか。あなたなら、どちらを選ぶだろうか。 「人間に捕まるような個体には、厳しい自然界で生きる力はない」という考えもある。しかし、たとえ自然のなかでは生きていけないにしろ、それを決めるのは自然であって、人間ではないと思うのだが……。 |