越後三山


日程
2002年7月29日(月)〜7月30日(火)

メンバー
単独

コースタイム
7/29(月)
枝折峠登山口7:40〜明神峠8:10〜小倉山9:40〜駒の小屋11:50〜越後駒ヶ岳12:30〜檜廊下14:30〜中ノ岳避難小屋 16:30
7/30(火)
避難小屋 5:30〜中ノ岳(往復) 〜御月山6:30〜オカメノゾキ8:50〜荒山9:30〜五竜岳11:45〜入道岳12:40〜千本檜小屋14:10〜女人堂15:10〜ゴンドラ乗り場16:00

概要
先日ツーリングで新潟に行ったときに目に入ったのが、越後三山(ちなみに新潟の道路は良いので、ツーリングにはオススメ)。久しぶりに山に登ってみようかということで、夏休みに行って来た。しかし、暑い暑い。大変しんどい上に、水場も少なく、水切れとの戦いでもあった。
今回のもう一つのトピックは、携帯GPSを初めて持っていったこと。やはり有用。

GPSについて
今回購入したのは、GARMIN社のETREX-VENTURE。携帯電話くらいのサイズで、重さは150gと軽量。
歩くルートを事前に登録。パソコンとの連携は、定番ソフト「カシミール」を使用。



7/29(月)
 前夜発の夜行「ムーンライトえちご」で長岡駅へ。その後、乗り継いで小出駅へ6時半前に到着。そこからバスで、登山口の枝折(しおり)峠に向かう予定である。駅に降り立ったのは、僕一人で、バス停の周りに登山者らしい人は他に一人もいない。天気は一応は晴れてはいるが、山の方は雲が多い。程なくバスがやってくる。乗るのはやはり僕だけ。
 峠までは、およそ1時間の乗車時間である。運転手のおじさんと、雑談しながら行く。運転手さんによると、以前はバスを利用する登山者も多かったのだが、最近はすっかり減ってしまったとのこと。乗車0の状態で、走らせていることも結構あるらしい。マイカーの影響もあるのだろうが、登山者自体も減っているんじゃないかと言っていた。バスは、曲がりくねった山道を登って行く。途中、途中で、晴れていれば、あのへんに駒ヶ岳が見えるとか教えてくれる。

枝折峠登山口

 登山口に着くと、自家用車が十数台駐車している。他県ナンバーの車が多い。休日はバスが通れなくなりそうなぐらいに車が停まっているのだそうだ。去っていくバスに手を振って、登りの準備を始める。今回の新たな装備として、携帯GPSが加わっている。にわかづくりの板金で、ザックにくくりつける。それから、暑いことが想定される上に、頂上まで水場がないので、水を3リットルと多めに持つ。推定重量18Kg。
 曇り空の中をゆっくりと登って行くが、やはり若干気温が高めなようで(23℃前後)、顔が火照ってくる。とはいうものの、久しぶりの山行の割には調子は悪くない感じ。早めにペースをつかんで、それなりに快調に登っていく。GPSのナビゲーションは、途中の分かれ道でちゃんと正しい方向を指している。もっとも、標識もしっかりあるので、迷う心配はない。逆に、ナビに注意しすぎて、周囲の状況から判断しなくなることの方が心配。GPSはあくまでも補助にすぎない。
 途中、途中で、下山してくる人に出会う。頂上まで、このようなガスがかかったような天気らしい。雨は降っていないと聞いて、とりあえず安心。八海山まで縦走するのだというと、えらく感心された。雪渓のあるあたりに来ると、冷やされた風が吹いてきて、多少は涼しい。

駒の小屋

 駒の小屋に到着すると、10人程度の中高年登山者が休んでいる。水は、近くの雪渓から引いてきている。水はかなり余っているので、ほとんど補給する必要がない。しばらく休んで、駒ヶ岳の頂上へ向かう。
 標高2003m。GPSは誤差2〜3mで標高を表示しており、かなり正確。ここでも、10人程度登山者が休んでいる。全てが駒ヶ岳往復の登山者で、三山縦走しようという人(してきた人)はいないようだ。

中ノ岳方面の縦走路

 ここからが長い。駒ヶ岳〜中ノ岳の稜線は、細かいアップダウンがかなりきつい。それに、歩く人が少ないためか、途中、熊笹の藪が深いところが多くなっている(実際、避難小屋まで人に会わない)。天気は明らかに回復方向で、ときおり日が射したりする。暑いのも確かだが、それ以上に、駒ヶ岳の登りで結構ばてたようだ。目に見えてペースが落ちる。明るいうちに、避難小屋までいけるのだろうかという不安も頭をもたげる。
 つらいので、歌を歌ったり。
「君の行く道は〜、果てし〜なく遠い〜、なのに〜、なぜ〜、歯をくいしばり〜、君は行くのか〜、そんな〜にしてまで〜」
まさに、そんな感じ。
 それに、GPSで表示される、数字(どこそこまで、あと400mとか)がなかなか減らないのだ。早くこの数字が減らないかと、GPSを頻繁に見ながら行くのだが、全然減ってくれない。400mとかいっても、地図上の2点間の距離であって、そのあいだの起伏は関係ない。400mなんて、ふつうに歩いても5分かそこらじゃんと思ってしまうのだけど。数字が見えてしまうのは、この場合逆効果のような気がする。少なくとも、 「あれが頂上だ」
と、踏ん張れるはずのものが、
「あれが頂上のようにみえるのだが、GPSの表示からすると、頂上ではない。まだ先だ。」
となってしまうと、もはや踏ん張りが効かない。まあ、勝手にゴールと思いこんでは、違ってがっかりして、というのを繰り返すということはなくなるということなのだが。ということで精神的にもかなり参ってくる。

 そんなこんなで、へろへろになって、小屋に到着する。小屋に到着する手前で、
「あっ、ブロッケンだ!」
と声をあげる。歩いている稜線の右側から西日が射しており、それによって、左遠方のガスのかかったあたりに、ブロッケンの影を投影していたのである。思わず手を振ってみたりした。影に後光が差しているようで面白いものだった。今日のご褒美であろうか。
 避難小屋は、すでに、中年夫婦が来ていた(あとから単独の男性2人が増え、全部で5人)。30人くらいは楽に収容できる大きさの小屋であるが、がらがらなので、小屋に潜り込むことにした。結果的に2階を独占させてもらった。水は天水を溜めておくタンクがあり不自由しない。2階で飯を食べながら、下の雑談に耳をはさむが、やはり、暑いというのが、一番の話題。縦走するつもりであったが、明日は、十字峡に下山するというのが、一致した意見のようである。とりあえずは、明日の状態で考えようと、横になって、梅酒を飲んでいたら、そのまま眠ってしまった。
 夜中に、風がごうごう吹いている音で目を覚ます。少し寒い。窓の外を見ると、よく晴れている。毛布を掛けて、再び眠る。

7/30(火)
 朝4時すぎになると、下で準備している音で目を覚ます。下山するわりには、随分早いなと思いつつ、しばらく横になっていたが、こちらも適当に朝飯の準備にとりかかる。風は、まだ強く吹いているが、天気は良いようだ。
 結果的に、出発は5時半。下に降りると、もうみな出発している。こちらは、予定通り八海山を目指すこととする。水は、4リットル近く積んだ。
 まず、空荷で中ノ岳を往復する。展望は昨日よりあるのだけど、不幸なことにカメラが故障してしまう。ということで今日の写真は無し。小屋に戻り、重い荷物を背負って、ガレ場の急坂の下りから始める。
 中ノ岳〜八海山の稜線は、昨日以上に激しいアップダウンがある。危険を感じる所は少ないのだが、とにかくアップダウンがきつい。しかも、2000mから1200m近くまで下って、また、1800m近くまで登り返すというのだから、それを聞いただけでも、しんどさが想像できる。このしんどいところを午前中の比較的涼しい時間帯に通過できるのだから、まず大丈夫だろうと思っていたのだが、ちょっと甘かったようである。昨日とはうってかわって、日光にさらされる時間が長く、過酷な登山となった。
 「曇れ!」とか「風よ、吹け!」
とか、口走りながら、何度も日陰で休み、水を飲み、登っていった。当然のことのように、途中で会う人もいない。

御月山から始まって、最低部のオカメノゾキ、荒山、五竜岳と来て、入道岳に到着するまで、およそ8時間が経過していた。そして、ここで、今日初めて人に会う。ここまで来る段階で、水はほとんど飲み干してしてまい、もはや余裕は無い。入道岳で休んでいた人に、
「景色が見えなくて残念ですね」
と言われ、こちらも、そうですねえ〜、なんて言っているけど、
「遠くだけじゃなく、この山も含めて、全部ガスって曇ってしまえばいいのに」
というのが本音。景色を見ている余裕などない。
 水場は、千本檜小屋までないので、八海山の八つ峰の上部を越えていく余裕はない。従って、迂回コースをとるつもりでいたのだが、ちょっと間違えて、八つ峰コースに入ってしまう(GPS持ってて、間違えるというのもマヌケな話であるが)。途中から、迂回路に再び合流できるので、とりあえずそのまま行く(戻るのもしんどい)。
 鎖場が連続していて非常に厳しいし、高度感があって恐い。こんな所を一般登山道にしていいんだろうか?確かに、
「落ちたら助かりません」
とでかでかと、注意書きがあったけど。
 摩利支岳を越えた後で、迂回ルートに合流。迂回路とはいえ、そんなに楽ではなく、この辺で水を全て飲みきる。千本檜小屋が見えた時は、へろへろ、ふらふら状態であった。
 水を補給し、大休止して、少しは元気を取り戻す。この時点で、普通に登山道を下ったら、バスには間に合わないので、ゴンドラで下ることにする。ここからは、単調な下りである。
 途中、女子高生が集団で登ってくる。ものすごく賑やか。引率の先生に、ご苦労様です、と声をかける。

 2時間近く下って、ゴンドラ乗り場へ。自販機に飛びつく。

追記
大活躍のGPSであったが、あろうことか、スキー場の休憩所で荷物の詰め直しをした際にその場に忘れてしまう。うちに帰ってから連絡したら無事に確保されていた。八海山スキー場のKさんに感謝。


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