北アルプス 裏銀座


日程 97年7月29日(火)〜8月1日(金)
メンバー 単独
コースタイム
29日
高瀬ダム6:50〜烏帽子小屋10:10〜烏帽子岳(往復)10:50〜烏帽子小屋11:50
〜三ツ岳13:10〜野口五郎小屋15:00
30日
野口五郎小屋5:50〜野口五郎岳6:00〜東沢乗越7:30〜水晶小屋8:10
〜水晶岳(往復)8:30〜水晶小屋9:00〜鷲羽岳10:10〜三俣山荘11:10
〜三俣蓮華岳12:10〜双六岳13:40〜双六小屋14:40
31日
双六小屋5:10〜樅沢岳5:50〜槍岳山荘9:20〜槍ガ岳(往復)9:50〜槍岳山荘12:00
〜槍沢ロッジ14:10〜横尾15:40
1日
横尾7:00〜徳沢7:50〜明神8:50〜上高地10:00


29日
 急行アルプスは、それほどの混雑ではなかった。大町の改札を出ると、「登山届けを書いて下さい」と言って、登山届けの黄色い用紙を配っている指導員の人がいた。さすがに登山者の多いところは違う。その後、相乗りする人を探す苦労もなく、タクシーの運ちゃん達が、場を仕切り、相乗りの整理をしてくれる。この時、高瀬ダムから入ろうとした人は、全部で十数人程度。昨日はもっと多かったという話だ。3人の相乗りで2400円。
 天気は曇。ダムの上方を見上げるとガスにかすんで何も見えない。もしかしたら、上の方では雨が降っているかもしれない。雨降りの登りは嫌だなと思いつつ、北アルプスの三大登りの一つと言われている、ブナ立尾根を登りはじめる。
 久しぶりの20キロである。なんかなつかしい重さというかなんというか。この重荷のため、初めはなかなかペースがつかめない。ときどき、下山してくる人に会う。上に行くほど、霧雨っぽくなってくるが、雨具を着るまでには至らない。
 展望のきかない尾根で、登りに集中できたせいかどうかわからないが、思ったより大分早く烏帽子小屋に着いてしまう。小屋はひっそりとしていて周りに誰もいない。自分よりも先に登っていった、おじさん2人組のものと思われる荷物だけがあった。空荷で烏帽子岳に行ったのだろう。
コマクサ  こちらも大休止した後、カメラなどの入ったサブザックを背負って、烏帽子のピークハントに向かう。軽い軽い。思わず駆け上がる。途中にコマクサなどの高山植物がたくさん咲いている。雨露に濡れた姿もなかなか絵になる。こういうのって、なかなかうまく撮れないんだよなあ、などど思いながらも、写真を撮る。
 烏帽子にもう少しという所で、下山してくるおじさん達に会う。この人達とは結局、三俣蓮華までいっしょのコースだったので、この後の山頂でちょくちょく顔を合わせることになる。そこから一登りで、烏帽子のピーク。けれども、ガスで何も見えない。見えない時は見えないで、ふんぎりは早く、すぐに下山。再び小屋へ。ただし、なぜか、下りるところを間違えてしまい、時間をロス。
 小屋に戻ると、高校生の団体などもいたおかげで、結構にぎやかになっていた。先生も大変だな、などど思う。予定では、ここで1日目終了であったが、時間が早いし、まだ行けそうなので、野口五郎小屋まで行くことにする。後でラクをしようという性格だからしょうがないのだ。
 と、行ったはいいものの、ここから野口五郎までが結構長い。というか、長く感じた。初日にしてはハードだったのかもしれない。あと、左の膝が少し痛む。登りよりも下りで顕著に表れる。先週、足尾の山に行ったときも下山時痛くなったのだが、その痛みがまた出てきた。運動不足のせいかな、とも思いつつ、歩いていく。
 アップダウンを繰り返し、しんどい思いをしつつ、野口五郎小屋に到着する。北アルプスにしては、地味な感じの小屋。というか、小屋らしい小屋である。テント場は、情報では10張り程度となっていたが、軽く20以上はいける感じであった。ただし、大きいテントはあまり多くは張れない。とりあえず、ビールを飲み、テントを設営し、寝っころがる。他には、大学生のグループと単独の人がわずかにいる程度。小屋の方も、泊まり客はせいぜい10人程度ではないだろうか。静か、というか、天気が悪いせいもあって、閑散とした感じである。
 17時過ぎぐらいに、例の高校生の団体が来てやかましくなった。雨降りの中でテント設営をしている。ちょっと前から雨が降り出していたのだ。とにかく大わらわである。かなり遅い時間までうるさかった。

30日
 今日も時折、霧雨模様。幸いにも雨具を着る程のことはなかった。5時くらいには出ようと思っていたのだが、テントの撤収にちょっと手間取って、少し遅れる。もちろん、今日の最終目標は、当初予定の三俣山荘から1つ先の双六小屋である。
 ちょっと登ると野口五郎岳のだだっ広いピーク。もちろん何も見えない。悲しいことに今日はどのピークでもこのコメントばかりになる。
 野口五郎から水晶小屋はまでは、比較的楽な行程である。ただし、東沢乗越から水晶小屋までが少々アップダウンがきつい。昨日よりも膝の調子は良くなっている。膝を気にしていたのはこの頃までで、いつのまにか直ってしまった。
 水晶小屋もこじんまりした感じの小屋。到着すると、またもや、別の高校の団体で賑わっていた。夏休みだし、こうした学生の集団登山が多いのだなと改めて思う。
 例によって、軽荷で水晶岳へ駆け上がる(ほんとに駆けていた)。岩の狭いピーク。つくづく展望がないのが残念。再び駆け下って小屋に戻り、鷲羽岳を目指す。このころになると、大分、人の行き来も増える。
 鷲羽岳のピークでは、野口五郎小屋でいっしょだった人達と会う。みんな似たようなコースをとるのだからそうなるのだが、なじみの顔に会った感じで何かうれく、話もはずむ。その中では黒部五郎方面に抜ける人が多かったようだ。槍は1度行けばいいという感じのことを言っていた。混むから。
 さて、鷲羽から三俣山荘へ。この稜線の下降中、部分的にガスが晴れ、一時、山荘までのみちのりがはっきり見える。さらに、右側には黒部の源流の沢も見える。緑が鮮やか。今まで何も見えなかったので普通よりも強く鮮やかに感じた。晴れていたらなあとつくづく思う。
 山荘周辺は大にぎわい。これが北アルプスの夏のにぎわいなのだろう。昼飯を食べてくつろいでいる感じの人が多い。これらの人はどこから来てどこへ行くのだろうか。
 時間的にかなり余裕があったので、三俣蓮華岳から双六岳の稜線を通るコースを行くことにする。三俣蓮華岳は三県の県境になっている山。小一時間ほどで山頂に至る。黒部五郎の方にわずかに展望があり、黒部五郎小屋が見える。ここでも、例のおじさん2人組に会う。先程、一瞬だけ、槍が見えたそうだ。しかし、また大きなガスがかかってきて、いっこうに晴れそうな気配がない。しかたなく、黒部五郎小屋に向かうという彼らに別れを告げて、双六岳へ向かう。
 双六岳へ向かう道では、ところどころお花畑がきれいである。雪渓も多い。おばさんのグループが所々で、立ち止まって歓声をあげたりしている。割合と平坦な道を行き、最後にやや急な登りを登って山頂に至る。山頂からは、もはや何も見えない。ここでは、九州弁のグループ。長崎から来ているおばさん達のようだ。ここまで関西弁は飽きるほど聞いている。はるばる遠くからやって来ている人も多いのだなとつくづく思う。そそくさと双六小屋へ向かう。しばらく平坦な道を行き、下ると双六小屋が視界に入ってくる。
 ここも、にぎやかである。小屋というには立派な建物があり、キャンプ場も双六池を背景になかなか良いロケーションである。だんだん天気が良くなってくるようで、時折、日が射しぽかぽかと温かい。テントを設営しのんびりする。キャンプ場も学生のグループを中心に結構にぎわっている。
 真夜中頃、テントの外に出てみると満天の星空。天の川がはっきりと。しばらく星空に見とれる。星空って、見ていて飽きないなあ。そして、明日こそは晴れる、の思いが高まる。

31日
 予想通りの晴天である。期待に胸をふくらませてテントを撤収し、槍に向けて進行を開始する。まだ暗いうちから登りはじめている人もいるようだ。小屋の前あたりには、鷲羽岳などを見るために人が集まっている。
 ちょっとした急登を終えると、ついに、槍ガ岳が視界に飛び込んでくる。そして北鎌尾根の険しい全容も。ついに来たな、という感じに興奮する。左後方を振り返れば、鷲羽岳、および、昨日まで歩いてきた裏銀座の稜線。右後方には、笠ガ岳などの山々。結局、この西鎌尾根歩きが今回の山行のハイライトであった。じっくり踏みしめる感じで、槍に向かって進んでいく。険しい岩尾根が続くが注意して進めば、特に危険はない。

槍ガ岳

 新穂高へ降りる分岐道に近づく頃には、槍の方からやって来る人に多く会うようになる。早朝、晴天の槍に登ってきた人達だろう。が、しかし、だんだん天気があやしくなってきた。槍や、他の山の上方にガスがかかりはじめている。というわけで、最後のきつい登りを登りきり、槍岳山荘に着いたときには、また、昨日のような天気になってしまった。全く残念である。
 大休止の後、気を取りなおして、槍のてっぺんへ向かう。ここ数日天気が悪いせいなのか、たまたますいてる時間帯なのか、何の混雑もなくあっという間に頂上に立つ。登ってしまうと、ものすごくあっけない。周りを見れば、槍岳山荘が時折見えるだけで、他は何も見えない。ガスが少しでも晴れるのを期待して、しばらく頂上にいることにする。けれども、時折、表銀座の方が晴れて、一瞬、燕岳などが見えたりするが、その程度であった。結局、1時間近く山頂にいて(それほどすいていた)、あきらめて下りる。
 天気の回復する兆しもなく、もはや思い残すこともない。あとは、ひたすら下るだけ。ただ、この槍沢の下りが嫌になるほど長い。今回の山行で一番辛かったという気もする。下りがしんどいなどと言っている一方で、ぞくぞくと登ってくる人達がいる。槍に至るメインルートだからなのだろうけれど、すごい人である。
 下に下りるほど、晴れ間が広がってくる。でも、上は深いガスの中。この日は結局、横尾まで下りた。混雑はそれほどでもない。ほとんど山行が終わった気楽さから、ビールをたくさん飲む。相当酔いがまわった。夜、雨音に目を覚ます。明け方まで降っていた。

1日
 出発する頃には、晴れ間が見えるようになる。でも、上の方は相変わらずガスがかかっている。徳沢、明神と進んでいくにつれ、行き違う人があきれるほど増える。そして、上高地はやはりおおにぎわい。天気が良くて暑いのだが、穂高はやっぱりガスの中。
 バスには待ちなしで乗れる。一番、良いタイミングで下山したようである。中ノ湯付近が、工事中でちょっと待たされた他はさえぎるものはなかった。その一方で、バス、タクシーの渋滞。沢度の駐車場は車であふれていた。
 新島々駅前の妙鉱温泉につかる(400円)。そんなに大きな風呂ではなかったが、1人で独占するという贅沢を味わえた。


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