足尾 袈裟丸山〜庚申山


日程 97年7月20日(日)〜21日(月)
メンバー 単独
コースタイム
20日
わたらせ渓谷鉄道沢入駅 13:10〜寝釈迦 14:50〜小丸山 16:30〜小丸山避難小屋 16:50
21日
小屋 4:30〜前袈裟丸山 5:10〜後袈裟丸山 5:40〜中袈裟丸山 6:10〜奥袈裟丸山 7:10
〜法師岳 8:00〜六林班峠 9:00〜鋸山 10:20〜庚申山 12:00〜一の鳥居13:40〜銀山 14:20
〜(ヒッチ)〜原向駅

 袈裟丸山は、あまり有名ではない山だが、個人的にはとても気に入っている。山が深くて、比較的手つかずの自然が残されている。


7月20日
 朝、早起きして袈裟丸山日帰り往復のはずであったが、思いきり寝坊してしまい、急遽1泊2日の山行となった。この計画自体は前から検討していたものであり、この日に計画を新たにたてたわけではない。
 東武線からわたらせ渓谷鉄道の乗り換えは、相老という駅である。ここで汽車待ちをしているときに、とても良く似ている人だなあ、と思っていたら、立松和平氏であった。足尾銅山の鉱毒事件の取材のようであった。そういえば、彼は最近これに関連した本を出していたはずである。同行の人間が多く、総勢7、8人というところだろうか。テレビで見るのと変わらない。あの独特のしゃべりでしゃべっていた。口まねが活字で伝えられないのが残念。
 沢入駅で降りた登山者は、自分一人だけであった。この時間に降りる登山者は泊まりの人間に他ならない。国道を越え、林道をてくてく登っていく。寝釈迦を観るために?、登ってくる車が意外と多い。また林道終点に車を置いて、袈裟丸山を日帰り登山する人間も割合と多いようだ。
 沢沿いの登山道を登っていく。木陰の中を行くのでとても涼しい。なかなか快適なところであるのだが、ペースが上がらない。日頃の運動不足がこんなところに表れる。一登りで寝釈迦に到着。文字どおり、横たわっている大きな石に釈迦を掘ったものである。諸説あるが、誰が作ったものかは不明らしい。沢筋を俯瞰する位置にあって、休憩するには良い場所である。
 さらに、沢沿いに登っていき、最初の避難小屋に着く。これこそ、避難小屋という感じの粗末な小屋である。3人ぐらいしか泊まれないが、充分だ。先日行った日光男体山にある避難小屋はこれに比べればものすごい御殿だった。
 で、ここの小屋に泊まるかどうかは時間との相談と思っていたが、まだまだ時間が早いし、明日、より楽をしたいという思いから、もう一つ上の避難小屋を目指すことにする。
 とは、いうものの、やはりペースは上がらない。少し歩くと賽の河原。天気が良ければ見晴らしが相当良いのだろうが、ガスってきたのでほとんど展望がない。なんとなく雲行きがあやしい。
 小丸山のピークも同じ。ガスで何も見えない。少し下っていくと、鹿が4匹。こちらに気がつくや、脱兎(脱鹿?)のごとく、姿を消す。この後もずっとそうだが、ほんとに鹿が多い山である。鹿の甲高い鳴き声もしょっちゅう聞こえる。
 ほどなく、小丸山の避難小屋に到着。蒲鉾型の小さな小屋。5人が限度だろうか。とはいえ、小屋の利用者ノートを見てみると、ここ1カ月で1人しか泊まっていない。当然のごとく、今日泊まるのは自分一人だけであった。水場は小屋の裏を降りていってすぐの所。水量は少なかった。そう簡単に枯れることはないとは思うが注意は必要だろう。そういう点では、下の避難小屋は沢沿いなので安心だ。
 アルファ米にカレーという定番の食事を済ますと、後は寝るだけ。シュラフカバーだけではさすがに寒かった。小屋にあった、どてらとももひきをはいて寝た。でも、あんまり良く眠れなかった。満月に近い月が出ていて、月明かりがガラス窓を通して入ってきている。鹿の鳴き声や、付近をさがさ動く音がときおり聞こえる。

21日(月)
 まだ暗いうちから、鳥のさえずりが少しずつ聞こえはじめ、4時を過ぎると急に明るくなっていく。さすがに日の長い季節である。天気は良さそうである。ラーメンとおにぎりを食べて出発。すぐに鹿のお出迎え。
 ちょっとした急登を登っていくと、前袈裟丸山。一等三角点がある。袈裟丸山と単に言ったときはここを指すらしい。ただ、周囲に木が多いので展望が大きく開けているというわけではない。ここから、袈裟丸連峰の縦走が始まるが、大きな但し書きがある。
「八反張のコル付近、崩落のため通行禁止 東村」 単なる初心者へのおどしと思われたが、一応注意して進む。
 しばらくするとそのコルに行き着く。でも、何のことはない、ちゃんと鎖と柵が設けてあって、注意して歩けば特に危険というわけではない。なんか、拍子抜け。
 そこから一登りで、後袈裟丸山。やはりあまり展望は開けていない。もっとも、今日も昨日と同じく、遠くの方はかすんでいて良く見えない。やはり、暑い季節はあまり展望は期待できない。けれども山の深さは重々と感じる。
 ここから、左にそれる道が良く利用される登山道であるが、直進する縦走路はほとんど人が入らない道だ。尾根線を外さないように進行開始する。
 とはいうものの、踏み後がしっかり付いているところも多く、迷う危険はあまり感じない。ただ、尾根が広くなっている場所では、踏み跡がよくわからなくなることしばしば。ちょっとした薮こぎも多い。磁石と地図で確認しながら慎重に進んで行く。中袈裟、奥袈裟と越えたところで、今日初めて人に会う。縦走する人がいるんだ、と変に感心しながら、この先の状態について聞く。法師岳の先は背丈程の薮こぎがあると言う。
 さらに気を引き締めて進んでいく。そして確かにありました。ものすごい笹薮こぎ。薮の中を泳いでいくという感じ。こんなしんどい薮こぎは久々。東北のどこかの山以来かな。早く峠に着いてくれえ、とわめきながら進んでいく。そうして進んでいくと、前方で木が大きく揺れ、がさがさと大きな音が。鹿がしょっちゅう出てくる山だから、熊ぐらい出ても不思議ではない。と、思ったら猿だった。この後すぐにカモシカにも出会った。全く、自然豊かな山だ。
 壮絶な薮こぎをしていくと、ふっと、峠に出る。やったあ、っという感じ。大変うれしかった。この時点で、9時。皇海山までやるとすれば、下山は結構遅くなる。下山路がかなり長いのである。ということと、なによりもしんどかったので、皇海山はやめる。
 かなりへとへとになりながら、鋸山へ。ここはかなり展望が良い。目の前に百名山の皇海山。どっしりとした山だ。もっと澄み渡っていれば、日光の山々なども良く見えるのだろう。さすがにこのあたりまで来ると、人にも多く出会う。皇海山を目指す人は多いのだ。百名山だから。
 庚申山へ至る下山路が想像以上にしんどい。岩場が多く、鎖場やはしごが多い。普通なら楽しいコースなのだろうが、疲れている身には結構こたえる。
 歩いた時間が実際の時間以上に長く感じて、庚申山へ至る。でも、天気が怪しくなっていて、ガスで何も見えない。庚申山付近にしか咲かない、その名もコウシンソウという特定種の食虫植物が生息するのだが、その花の咲く季節ももう過ぎているようだ。
 あとはひたすら下るだけ。この下りの長いこと、長いこと。ビールが飲みたくてしょうがない。飲みたいと思ったらもうだめである。頭から離れない。そのかわりといってはなんだが、沢の水を思いきり飲む。
 最後は、立派に舗装された林道の歩きになり、銀山平に到着。ここには国民宿舎があって温泉がある。でも、あんまり温泉という気分でもなかったし、それなりに混んでいるようであったので、そのまま下山する。とはいうものの、疲れてしょうがなかったので、久しぶりにヒッチすることにする。ペリカン便の車を出そうとしていた、人の良さそうなおじさんに声をかけたら、すんなり乗せてもらえた。一発でOKとはラッキーだ。
 国道まで乗せてもらい、その後、駅まで歩く。駅は新しくこぎれいだったが、自販機が何もない。がっかり。もっとも、銀山平ですでに飲んでいたのだが。汽車は30分ほどの待ちだった。自販機がないくせに、なぜか、血圧測定器が置いてある。暇だったので、何回も測ったが、コンスタントに最高が100ちょっと。山登ると血圧下がるんだっけ?そんな、ばかな。
 と、待っていると、皇海山を往復しようとして挫折したおじいさんがやってきた。年寄りにとって、庚申山荘からの往復は長いと嘆いていた(皇海山付近に山小屋はない)。そうですね、車を持っていない人はつらいですよね、と話を合わせる。実際、群馬側の林道から皇海山へは2時間足らずで登れてしまうらしいのだ。
 そうこうしているうちに、汽車がやってきた。


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