最近のNewton,Inc.の様子

今まであえて書かなかったことに、最近のNewton,Inc. (つまり、ニュートン社)の動き、というのがあります。
アップルの内部にあったニュートン関連事業は、John Scully 退社後は売上が伸びずに冷や飯を食わされていた状況でした。 Windows95デビューとほぼ同時にあったメジャーバージョンアップ Newton OS 2.0 で再度脚光を浴び始め、96年発表のeMateなど で評判を上げつつも、Macに注力すべきという判断から、 97年7月にアップル社から分離してNewton,Inc.となり、 資本はアップルながらも独立した事業を始めていました。

これがよい方向に出るか、悪い方向に出るかは難しい ところです。
現在のところ、NewtonにはMessagePadシリーズ(一般に Newton, PDAというとこちらが思い浮かぶはず)と、 eMateシリーズがあります。
MessagePadシリーズは最初のNewtonOS搭載マシンであり、 4年の熟成を経てついに性能面では開化しつつあります。 それにも関わらず、 フラッグシップ・マシンのMP2000は性能と評判の割に 売上が伸びず、PDA市場はむしろPalmPilotが市場の半分を 制圧してしまいました。 97年に入って急激になってきた小型化競争に、遅れを とったのが影響しているのでしょう。
その一方で、発表当時から注目を浴びた教育市場向けの キーボード内蔵型NewtonであるeMate 300は、注文が 相次ぎ、「これぞ真のポータブルコンピューターだ、 ビジネス用にもほしい」という声に応えて、ついに一般 販売にも踏み切りました。見た目からいっても、実際に 触れた感じからいっても、Allan Kay の描いた Dynabook に今最も近いのがeMateだから、当然といえば当然でしょう。 日本にもアップルの保証がないのに輸入され始めており、 実際にそれを買っていく人がいるのを、私も目撃して います。
つまり、MessagePadシリーズの不調を後目に、eMate シリーズが快進撃を続けている状況です。Newton,Inc. 独立後はeMateの好評を背景に、アップルのみのハードウェア 生産によらず(MessagePad2000はNewtonマシン生産の ライセンスを持つシャープが生産しているが、eMateは アップルが設計から生産まで行なっている)、 様々なハードメーカーにOSや周辺技術をライセンスしながら、 より小型でより高機能の世界へ入るようでした。また、 NewtonOS向けの開発者を増やすために、開発環境や 技術資料を無償で公開を始めています。
この市場は特に、今年大きな立ち上がりがあった市場です。 Newton,Inc.がうまくやれるかは、市場にはずみをつける 話題性を提供できるか、開発者をそれによって取り込めるかに かかっているでしょう。

しかし、Newton,Inc.の分社化をしたDr.AmelioがCEOを やめた後で、Steve Jobsが権力を取り戻してから、いきなり 分社化したNewton,Inc.を再びアップルに戻す、という 話が出ました(日本語の記事は、 ここで読めます)。
独立して2カ月、ようやく方向が定まって歩き始めたのに、 また戻るのですかね。どうでもいいから、ちゃんと一本道を 歩かせてほしいな。ゴタゴタが多くて、日本語のMessagePad はまだ発表さえありません。

全世界のSteve Jobsのファンには悪いけど、彼はやっぱり よいことをもたらしたとしても、害もたくさんもたらす人なんじゃ ないかな。(笑)
Bill Gatesなみのわがままなんでしょうね、きっと。彼は Newtonの技術がよそへ流れるのがいやなんだな、きっと。


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