MacOS X Technology Briefing

on MacWorld Expo 2002 Tokyo


●ExpoやConference開催中の、もう一つの説明会

なんかだいぶ間が開いてしまっているけど・・・(苦笑)

現在、東京ビッグサイトにて、MacWorld Expo and Conference 2002、開催中である。巷の関心はExpoのほうにいってるし、Jobsの基調講演で新ハードがなかったり新ソフトがなかったりで「見るもんがない」などという話もあるみたいだけど、今年はとにかくConferenceのほうが充実しているようだ。それに、基調講演でBluetooth対応をうたったのは、結構大きいと思う。PCなどでもなかなか普及していないが、Macの採用で普及する可能性が高くなってきた。

閑話休題、JavaOneなどを見ていても、展示会などは正直言ってそこそこで、Conferenceや、その場での交流のほうが大事、という流れは確実にある。特にアップルは今後、UNIXベースを武器にして市場を広げようとしているのだから、当然の方向だろう。

とはいっても、私は実は種々の都合でConferenceには申し込んでいない。で、その代わりといってはナンだが、午後の半日を使って、ビッグサイトからちょっと離れた場所で、"Introduction to MacOS X : Technology Briefing" なる説明会が開催されることになっていた。事前申し込みが必要ので、ちゃんと申し込んで行って来た。

あくまでTechnologyに関わる話で、developer相手という前提がある。OSのレイヤー図だけ見て満足している人向けの話ではない。以下もそういう話になる。


●面白かったよ!

正直いって、ちょっとドキドキだった。というのは、いってみてひどい内容だったとなれば、今後のアップルの姿勢はかなり疑われてしまうし、developerも離れてしまうだろうし、何より自分が使い続ける気力が半減してしまう。

XDarwinにより、X-Windowも動くし、makefileを取り扱うコンパイルも一発だし、今までSunOS向けに作ったものなどが割合スムーズにコンパイルできるようになっていたので、通り一遍の話だったらつまらんなぁ、という気持ちもあった。

それでもいったのは、少し前にやっていた "Java on MacOS X" というセミナー(アップルが自社のトレーニングセンターでdeveloper向けに開催したもの)に出て、意外によい内容をかっちりまとめており、しかも「我々はもっともよいJavaプラットフォームとして、この業界にきちんとコミットしたいのだ」と話すに足ることが出ていたからだ。個人的に好きなプラットフォーム上で、こういう話が聞けるのはやはり、うれしい。

内容は、4部構成。

  ☆概説

  ☆MacOS XのDevelopment Environment

  ☆Java and UNIX

  ☆Cocoa

細かいことはまぁ、いちいち書きません。

私にとって面白かったのは、UNIXやJavaからみのところ。(UNIXなどには慣れているけど、MacOS 9以前の環境ではプロじゃなかったので。)

UNIXの移植が簡単に済むのはもう経験していたのでわかっていた。素直なBSDだから、ライブラリの場所さえしっかりしてやれば、たいがいのmakeは通る。面白かったのは、当然と言えば当然の、UNIX command lineとGUIの融合。

開発者とか、ネットワークに詳しい人ならみんな知ってる、/Applications/Utilitiesの中にある、Network Utilities。これはping, finger, tracerouteなど、よく使われるコマンドを、オプションなども含めて視覚的に扱えるもの。これは、CocoaのGUIを使っていて、単純にpingを呼んで、その結果を画面に表示するだけ。

この際に、Cocoaの中では、NSTaskでUNIX commandを起動させて、結果をNSPipeで受け取っているという。なーんだ、すごく素直なつくりね。

となれば、いくつもあるコマンド群や、それを活用してのシェルスクリプトなどをうまく統合すれば、けっこうな規模の科学技術計算プロジェクトをGUIで扱えるね、と思っていたら、その実例についてまで触れた。大規模な遺伝子解析プロジェクトで、200以上のUNIXコマンドと、XMLのデータを、非常に扱いやすいGUIでくるむ例。当然だとは思うけど、すでにやっていました。


●雑感

今回はみな、Apple本社から来日したTechnology ManagerやEvangelistらが講演した。通訳付き。気合いが入っていた。

また、Q&Aで、英語で直接質問する人が多かった・・・というより、日本語で質問したのは私だけだったはずだ。

何を聞いたかと言うと「UNIXのコマンドを移植するにしても、現在のTerminal applicationは日本語を通さない、これでは困るのだが」という話。聞いていた方々の中には「初心者?」とか、「なんでも人にやってもらおうと思って」と感じた方もいらっしゃるかもしれない。私、JTerminalの存在は知っていますし、使っています(質問時には「私が知らないだけかもしれないけど」とも言いましたが、それはMac開発歴が浅いから)。現状はフォントを指定しても、lsで日本語のファイル名さえきちんと表示されないのだから、少なくともこういう部分はApple自身に認識してもらわねば。

答えは「CJK (Chinese, Japanese and Korean)はUnicode対応にして通るようにできるから、将来のバージョンで」という話。Next version? と聞いたら「将来の話は約束できません」。

「ぜひお願いします」と言って終わりにしたが・・・

TerminalがUnicodeグリフをきちんと表示できるようになったとしても、だ。SunOS上のコマンドで日本語メッセージなどを埋め込んだものは、EUCなんだよね。これをどうするかなどは、解決策はあるにせよ、きれいにやらないと、あとあと困るだろうし。たぶん、日本人がフィードバックすべきなんだよね、きっと・・・

あと、WWDCは日本語サポートがつくので、ぜひきてください、というのがアップルから日本の開発者へのメッセージだった。


いずれにせよ、今回のも、3月上旬の"Java on MacOS X"も、本気が感じられるものだった。


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