MacWorldExpo Tokyo 2001


●21世紀最初のExpo

2001年のMacWorldExpo Tokyo 2001(いい加減、TokyoはやめてMakuhariでいいんじゃないだろうか?)に、一応いってきた。お祭りは楽しいし、買い物もできるし(秋葉原や新宿でも特価販売があるけど、やはり会場内の「今だけ投げ売り」で時々不思議な安さの買い物ができるとうれしい)、1月に発表された新製品のお披露目だし。

第一印象。すご〜〜〜〜く空いている!こんなに空いているExpoは、第1回以来じゃないか、というくらい。私がいったのは土曜日だけど、木〜金曜日はどうだったんだろう。IDG(主催者)の発表によれば、開催期間が1日減ったにも関わらず、人数は微増だという話。

しかし、ほんとうだろうか?水増ししているんじゃないか、と疑いをかけたくなるくらい、人が少なかった。それに、コーシングラフィックシステムのような、老舗のソフトハウスで第1回から参加している会社が出なかったりする。

PCWatchでも書かれていたが、元々ここ数年に渡ってゆっくりと、MacWorldExpo Tokyoは出展者が引き気味に構える傾向があった。今年はそれに拍車がかかった形に見える。
最近のサポートや情報提示に関する傾向として、少数者に対してはWeb経由のリソースを使うことが増えている。つまり、わざわざお金をかけて大規模な展示会をしなくても、少ない手間と費用でやっていく。Macは少数者だ。Web販売、お試し版のダウンロード、FAQの提示、e-mailサポート、といったことが結果的に、Expoに人を集めない方向に導いているのだろうか。

なお、入場証ホルダー(首から下げるもの)は1995年のExpoを最後に、首ひもの触り心地がいいものは配付されなくなっている。


●印象に残った展示

入って最初に目に入る大きな展示は、Apple Computerだ。しかし、これが印象に残るのは当たり前で、最後に扱う。

しかし、むしろ印象に残ったのはやはり、Amuletだろう。私は今年、ここでハードディスクの交換を依頼した。秋葉原のショップへいってもいいのだが、最近はそうそう頻繁に秋葉原へ赴かなくなっているし、やるならついで。また、このための心づもりとしてPowerBook G3を持参していた。30GBが格安になっていたのだが、20GBにしておくと2万円も安いため、価格につられて20GBにした。これにすれば、安心してiTunesのデータ取込みができる。で、内蔵ハードディスクをFireWireのCitiDiskに格納して、外付けハードディスクとして使えるようにしてもらう。
取り付け完了までしばらく待ち時間がある。

その間にいろいろ見て回った。Amuletは他に、あつかっている製品を開発している人々を直接呼んできた。たとえば、昨年も来ていたLinux PPCのJeffもいたし、SoftMac 2000 の開発元であるEmulator, Inc.の代表者が、SONY VAIO-C1上で動くMacOS 8.1のデモをしていた。これはなかなか面白かったが、古い68K時代のメディアでちゃんと使えるものがいくつあるか、とても不安で購入には踏み切れなかった。
イタチョコシステムはいつものごとし。なんだか物品の売れ行きが激しいようで、めぼしい(というか新しい商品)はけっこう売り切れていたような。
沖電気はプリンタの宣伝をしていた。私が使っているML12nは製造中止。後継のML14nが出ていた。ここにいた係の人に、サポートの電話が要領を得ないのだが、MacOS 8.6以降で、最新のプリンタドライバでも縦書きの印刷が途中で消えてしまう件について尋ねたところ、別の電話を教えてくれて、そちらに電話をすれば、解決策があったはずなので教えてもらえるはず、と伝えてくれた。場違いな質問に親切に応対してくれて、感謝。
また、Palmのブースにいったら、元QuickTimeのアーキテクトであるPeter Hoodieがいた。サードパーティとして、Visorの上で動画を扱うソフトウェアを見せてくれて、CD-ROMもくれた!なお、彼は現在、自分が開発した様々なOSやマシンの上で見ることができる動画ストリーミングの技術普及に取り組んでいて、その一環である。

あと、Power-Yuを含む複数の会社が集まって作る展示・販売のブースで触ったPowerBook用の高級キーボード。これはすばらしかったなぁ。ThinkPadタッチになるのだ。憧れるが、今回は予算オーバーなので手を出さず。
他にも鞄やキーボードなどに面白いものがいくつもあったが、こういうのはすでに雑誌にも出ているので割愛。

忘れちゃいけないのが、裸のままPowerBook G4を自慢げに持ち歩き、そこここで知人とミーティングしては開いている人たち。会場はAirMacが通っていたらしく、使っているらしい人がちらほら・・・AirMacをまったく持っていない人間としては、PowerBook G3の本体があるのになぁ、と指をくわえていた。
PowerBook G4はすげーかっこいいです。うらやましくて仕方なかったが、処理速度などには現在でも満足しているので、しばらくはおあずけだ。

[おまけ]コンパニオンが立っているブースもけっこうあったが、じゃんけんして買ったらCDをあげる、というブースが目立っていた。で、ここに照れもせずに挑むのは、外人さんです。明らかに出展のために来ているアメリカ人が、どんどん挑戦する。負けるとゲンコを握って「くぅー!」と動作をするし、勝つとはしゃぐし、アメリカ人ってやっぱりああなのか。(別にいい意味も悪い意味も特になく、単にそう感じただけ。)


●お店の出展

なんというか、今年はイケショップのブースも小さく、T-ZONEはなく、特価競争も起きず・・・販売という側面ではやや寂しいExpoだった。くじ引き目当ての人が異常に多く、やっぱりみんな出費を抑えているのね、とよくわかった。そういう私も、例年より出費が少なかったし。

よく考えてみると、昨年の最終日、けっこう品物が売り切れにならなかったブースが多かった記憶がある。今回は早々にSold outが目立ち、過剰在庫にならないようにしていた。また、本体を購入する人が非常に少ないのも目立った。

Expo=買い物、というお祭り騒ぎは曲り角に来たのだろうか。それはそれでちょっと寂しいものがあるが。


●Apple Computerのブース、MacOS X

もちろんプレゼンテーションにも人がいっぱい集まっている。今年はiMovieの他に、iTunesで音楽CDを焼く、なんてデモもあった。

で、その音楽CDを焼ける新しいiMacには人があまりたかっていない。ではどこにいるのか?もちろん、PowerBook G4。並んでいるのに、前の人がずーっと使っていてなかなか触れない。
やっと順番が回ってきて触ると、後ろに人がくる。でも、ついつい触っちゃう。なんというか、磁力のようなものを感じる。チタンは鉄みたいに磁化しないんだけどね。キーボードも悪くないし、画面が横に広く、縦はむしろPowerBook G3の画面より低いのだ。圧迫感が減って、しかも画面の有効面積が横に広がっているため、すごくよくなった気持ちになる。これが「いいなぁ」と感じる最大の理由だ。
人にもよるだろうけど、私にとっては画面の印象はすごく大きい。見やすい画面とフォント、それがないだけでやる気が半減するくらいだ。文章を書く時に、紙とペンはできるだけ好みのものを用意して、というのに似ている。そのためにWindowsをメインマシンにしていないくらいだ。
ただ、PowerBook G3の満足度もかなり高い。買い替えるまではいかない。うらやましいけどね。

ちなみに、私は新しい花柄iMacは、悪くないと思う。巷では「あれをいいと思う人とはともだちになりたくない」なんてことを言う人もいるらしい。まぁ、好みの問題だからとやかく言うことじゃないけど、あれをいいと思う人もそこそこいると思うよ。
やはり、今までMacというか、コンピュータに触れようかどうしようか迷っていた層の中に、何かを感じて買う人がいると思う。「スーパーモデルのPalm」なんてものが出回る世の中なのだし(この例はちょっと方向性が違うけど)。

***

なお、今回、個人的に最大にインパクトを受けたもの。それは、MacOS Xに触れて、しかもアップルの方と直接会話をできたことだ。
私はUNIXを知っているし、昔少しだけNeXTSTEPに触ったことがある。このため、まずTerminalを出して、lsコマンドでディレクトリの様子を観察。なるほど、きちんとそのユーザのホームディレクトリの下にいるんだ。で、psコマンドで走っているプロセス(よくわからん方へ、マルチタスクのタスクにあたります。つまり、複数のプログラムが同時にきちんと動いているはずなので、その中身を見ようとしたのだ。厳密にはタスクとプロセスは違うんだけど、ここでそれを言い出すと切りがない)を表示させようとした。すると、アップルの方曰く

「それなら、こちらのウィンドウのほうが早いですよ」

そう、すでにプロセスコマンドの結果を表示するウィンドウが隅に出ていて、そこに立ち上がっている全プロセスが見えていた。しかも、これは動的にどんどん変わるし、「プロセス名」などのカラムを押すと、それに応じてソートできる。便利!
こちらがUNIXを知っているのを見て、あれこれ突っ込んだ話につき合ってくれた。とてもフレンドリーで感謝している。NFSも動いていて、とにかくカーネルレベルでは完全にBSD UNIXの階層が見える。そして、その上に、かなりMacらしくなったユーザインタフェースが動いている。
Java2は日本語化されているか、という質問に対して(私の関心はこれだった)、内部的には大丈夫だが、エンコーディングの部分が完全に国際化されているかどうかまではわからない、できればADC (Apple Developers Connection)の個人会員になって、そこで情報を取得してほしい、と言われた。逆に、通常のUNIXのソースコードなどは簡単にコンパイルして動かせるので、ADCに入ってgccなどをぜひ使ってみてほしい、とも言われてしまった。(苦笑)

また、Public Betaで問題になった部分は、かなり修正されていた。

とにかく、触れてみてショックだったのは「一度これに触れてしまうと、いかに従来のMacOSはモードをユーザに意識させていたかがわかるくらい、MacOS Xのシームレスさに驚く」ということ。たとえば、ウィンドウの切り替えの時に、アプリケーションごとにがばっとウィンドウが切り替わるのが従来のMacOS、MacOS Xはフォーカスしたいウィンドウだけが切り替わってくれる。また、カラム表示のファインダー・ウィンドウは、確かにWindowsのExplorerみたいとも言えるが、私にはじゅうぶんNeXTSTEPのファイラをリファインしたものに見えるし、動作がスムーズでひどく使いやすい。
もっともこの部分は人によって様々で、文句を言いまくって帰っていく人もかなりいたようだ。やはり「変わってしまう」ということに対する抵抗は大きいのだろうか。

逆に、私が今までやっていたことで出来ないこと。一番大きいのは、ポップアップフォルダがなくなったことだ。
私はポップアップフォルダにDrag and Dropするためのアイコンを整理して置いてあり、必要に応じてここにドキュメントアイコンを持っていくことにしてある。こうすると、デスクトップが散らからないので、好きなのだ。
こういう形での階層化は、MacOS Xの最初の版ではできないそうだ。いろいろ議論はあったそうなのだが、断念したとのこと。

ただ、私はMacOS Xを一応指示する側に回ろうかと思い始めている。Public Betaも入手しなかった分、完成一歩手前の版に触れることができた。その結果、意外によくできている、という印象を持つことができた。
最初の版は仕事には使えないだろうと思う。だが、7月のプリインストール版を目指してさらなる改良を行うだろう。それまでのどこかでインストールして使ってみたい、と思わせるものがあった。

もっとも、私はUNIXに触れてきたからかもしれないが。


さて、今回のExpoで3/24のMacOS X発売日がどんどん楽しみになってきた。


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