猫時間通信

2003年7月

 

■2003/07/23■ 寒いよ!

京都ページ街ネタ篇に、新規追加しました。


昨日からは、涼しいというより、寒いよ! 7月下旬の東京とは思えない。

19日から21日にかけて大風邪を引いて、久々に寝込んでしまった。その前の週末に風邪を引き、ちょっと市販の薬でしのいでいた。週が明けた14日、しっかり医者で診てもらい、投薬も受けた。それから数日、薬も終わるし、そろそろおさまるかなと思っていた頃、ちょっと知人のパーティがあって夜遅くなったりした。ちょっと体調を崩しそうだったところだが、もともと整体のお世話になるスケジュールもあり、戻ったはずだった。

ところがその翌日から、急にダウン。汗びっしょりで起きて、身体から熱が吹き出すような感じ。しかし計ってみると、37度真ん中あたり。驚くが、とにかく身体が痛いし、気持ち悪くて食事どころか水分もあまりとれない。結局、丸一日以上、ろくに水分もとれないまま、汗ばかりかいて寝込んでいた。そういう中でも不思議に頭で「先週の段階で熱でも出してすっきりしてればよかったのかな、でもこのまま水分もとれないなんて、こんなに汗かくのにどうなるんだろう」などと考えていたりする。

翌朝の明け方、急に起きてポカリスエットを飲んだ。そうしたら、少し飲める。飲んでは寝て、飲んでは寝てをほぼ1時間おきに繰り返す。熱は上がらないが、引かない。結局、同居人と一緒に救急医院に駆け込んで、弱めの薬を出してもらう。この日に行く予定だった王子ホールは、まったくパァ。涙が出そうになる。ただ、前日より少しよい。

さらに21日、やっと熱が引いていく様子になった。

しかし、こうして振り返っても、なぜそう高くない熱で、動けなくなるほどの症状に至ったのか、不思議。風邪ではある程度の熱は出したほうがいいという話も聞くのだが、無理の抑え込むとこうなる?

起き上がれたら、九州は豪雨でたいへんなことになっており、東京は寒い。どうなってるんだろう。


その病み上がりの寒い22日、東京は夏休みのスタート。打ち合わせに行き、帰りに駅で切符を買おうと歩くと、女子中学生3人が人通りの少ないところでしゃがみ込んでいる。皆、携帯電話を手にして、楽しそうに話し、じゃれている。ふと耳に入ってきた。

「あたしたち、30年後、何してんのかな」

そういえば、そんな会話をしたこともあったかもしれないな、おれは男だけどな。なんでそんな話をしたかももう忘れた。ただ彼女達、あの楽しそうな表情の合間を見る限り、未来にはこんな楽しいことはないだろうなと感じているらしく、おれはそういう文脈で会話した記憶はない。

人生の全盛期が中学生という発想はもう1980年代末にはあったようだし、実際近所の接骨院に気遣いのストレスからくる肩凝り対策で通院する中高生はたくさんいる。電車に乗ると、子供の犯罪、子供の暴走といった週刊誌の見出しが踊る。のんきなのは大人のほうだよな、そういうおれも大人だけどさ、と思う。


 

■2003/07/16■ カナブン

夜、家に小さなカナブンが飛び込んできた。小指の爪に満たないくらい、小さな甲虫。蚊取り線香を焚いていたし、うちにいても何も食料がなく、餓死してしまう。つまんで外に出してやろうと、玄関の扉を開けた。昼間のお天気雨が去り、少しひんやりした外気が肌を包む。とたんに、足下からぴゅーっと走り去るものあり。

猫だった。薄いグレーの縞模様、あわくって逃げていくのを絵に描いたような走り去り方。たぶん、時々涼みに(あるいは寛ぎに)来ているのだろう。驚かして、かわいそうなことをした。けど、ここは我々の生活圏だから仕方ない。まぁ気が向いたらまた居眠りでもしに来てくれ。

カナブンはしばらくうずくまっていたが、近くの手すりまで飛んでいった。家に戻ると、想像以上に蚊取り線香で燻されていた。


今週のモーニング(講談社、青年〜大人向け)が出るのは明日だが、それで少し思い出した。最近スタートした連載がことごとく、少年漫画の雰囲気を持ったものに感じる。というより、どちらかといえば少し前のヤングサンデー(小学館の青年誌)に出ていてもおかしくないような空気。一方で「大使閣下の料理人」や「ジパング」のような、どちらかといえば大学生から中年にウケそうな連載もあるし、ドラマ化されている「ブラックジャックによろしく」もあるのだが、その一方で新たな傾向が出てきたのは興味深い。

というのは、いささか旧聞に属する話だが、講談社漫画賞の選評コメントで気になることがあったからだ。多くの審査員が一致して「少年漫画はいま実に面白い、例年なら受賞してもおかしくないものが並んだ、すんなり1本に決まったけど、みんなレベルが高かった」と書いている。候補作は以下のごとし。

   「クニミツの政」(朝基まさし・画/安童夕馬・原作)

   「遮那王−義経−」(沢田ひろふみ)

   「仮面ライダーSPIRITS」(村枝賢一・画/石森章太郎・原作)

   「ゴッドハンド輝」(山本航暉)

受賞したのは、今テレビドラマ化されている「クニミツの政」。私は熱心に読んでいないのだが、「遮那王」と「ゴッド」の2本も確かになかなか面白い。漫画が本来持っていた熱気が、しばらく沈滞していた少年漫画に甦っているのがここ数年だろうか。(「ヒカルの碁」の功績は確かに大きかったのだろうと思う。)

この傾向を反映したのかしなかったのか、それはわからない。モーニングは数年前、全盛期の勢いを取り戻そうと、「夏子の酒」や「沈黙の艦隊」の番外編を連載していたが、もちろん取り戻せなかった。その後「ブラックジャックによろしく」などが評判になったが、一方で「オーダーメイド」というテーラーを舞台にした佳作を割合早く打ち切ってしまったり、少々迷走気味だった感じも受けていた。今後モーニングがどういう評判になって、どうなっていくのか、そういう意味で興味深い。


ついでに、今年の講談社漫画賞では少女部門がやや静かだったようなことも、書かれていた。「ハチミチとクローバー」(羽海野チカ)、「きみはペット」(小川彌生)の2作が受賞したが、「ハチミツとクローバー」は連載当初のComic Cutieが休刊し、集英社のヤングユーに引っ越して再開したもの。この引っ越し連載から読んで、さかのぼって単行本も買った(宝島社から第1巻のみ出て絶版になっているが、後に集英社から第1巻を含めて出し直した。私は宝島版の1巻から読んだ)。舞台が美大で登場人物の強烈な個性がそれぞれの作風に結びつけられて、はちゃめちゃな行動パターンなど許されてしまう空気に仕上げたところがいい。実は先の漫画にある少年漫画的熱気を、少女漫画的青春群像に仕立てたようなところがある。毎月のささやかな楽しみの一つ。

ちなみに、講談社漫画賞は本来、講談社の漫画家に晴れ舞台を用意するものだろうから(そうじゃないものには「手塚治虫漫画賞」などがある)、そこで集英社の作品がとるのは、やはり面白いからこうなっちゃう、ということだろう。このパターンでの大出世は、集英社「ぶーけ」に連載されていた逢坂みえこの名作「永遠の野原」(この作品、最後はやや尻つぼみだったのが残念だったけど、中盤の盛り上がりはおそらくほとんどの人が涙なしに読めないだろう)。


 

■2003/07/12■ 圓通寺

近所の猫だまり分布が以前と変わってきた。その年に生まれた猫達、さらに猫を可愛がる人と嫌がる人の構い方(あるいは追い払い方)にもよるのだろう。

ここ最近よく見かけるところは、かなり車通りがある4メートル道路に面した私道。2匹の大柄な猫と、1匹のちみっちゃい猫、みな柄がよく似ている。今年生まれたと思われるこの小さい子、もう産毛はなくなってきたが、なかなか大きくならない。栄養状態があまりよくないのだろうか。

ノラだなぁと思うのは、食事。近所でわけてもらえるらしい餌皿の前で、びくびくしながら一口食べては周囲を見回す。車は平気だが、人が集団で通り抜けるとさっといなくなる。そして、そうっと様子を伺ってからまた餌皿にやってくる。

それでも、よく門柱に小さな身体をあずけて、和んでいる。門をおおうように繁る木が、きっと安心させてくれるのだろう。今日の夕方は雨もなく、涼しく吹く風に目を細めていた。


昨日の朝日新聞夕刊に出ていた記事で、京都の圓通寺が庭へのカメラ持ち込みを昨秋から許可していたと書いてあり、驚いた。

洛北、深泥池から北、宝ケ池からは北西へ離れたあたりに位置するこのお寺には、広大な枯山水の庭がある。訪れればわかるが、驚異的な広さの庭一面に苔が広がる。生け垣の向こうには比叡山が入る。これがまさに画竜点睛、庭の青と実に調和がとれている。周囲に高い建物はなく、あるのは田園と住宅ばかり。カメラ持ち込み禁止のため、自然に立ち止まり、座って、景色を目に焼きつけようとする。夏の木漏れ日など陶然とする。静かなファンが非常に多いお寺だ。

カメラを許可した理由は、周辺の区画整理が始まったことを考えて、完全な比叡山の借景があるうちにカメラに納めるという意図があると、記事は伝えていた。なるほど、あのあたりは区画整理が始まっているのか。

京都が建都1200年祭を終えてから退潮傾向にあることは、何度か私も触れた。観光資源だけでやれることはむしろ限界にきている、それに住民の生活全体を向上させたい、このまま地方都市化してしまうのは何としても避けたい、というのが京都市の考え方のように見える。だからこそ、洛中のビル開発を活気づけ、生活圏の改革に手を染めているのだろう。それでは、東京や横浜のような発展をすればいいのか、それは現在の横浜の退潮を見ると、必ずしもいいとはいえないようにも思うが・・・誰もよい解決策がないのだ、きっと。

ただ、京都は現在すでに地方都市である。むしろ、東京から離れた、しかしそこそこの規模がある都市だからこそ、見えることもある。過密人口が一斉に同じ方向へ視線を送る現在の日本の典型ではなく、様々な産業や商業がそれぞれの地盤を固めつつ着実に生きていく姿。せめて大学をもう一度呼び込んで、大規模商業都市とは違う発展ができないものだろうか、とは思う。


圓通寺はまだですが、京都観光篇、追加しました。


 

■2003/07/09■ リニューアル

Studio KenKen、予定通り、リニューアル。トップページの項目を大幅に簡素化し、散らばっていたものをよみものとしてまとめました。猫時間通信(ここです)も、目次を簡素にしました。また、Macなどの電脳もの、音楽など作者のこだわりに関しては、About this siteページに格納しました。

これからもよろしくお願いします。


さて、iBook。ホームページだけでなく、自分の作業環境までリニューアルすることになろうとは。購入の翌日にはデータと主要アプリケーションの移行を終え、ホームページのリニューアルをしてからほとんどすべての環境を整えた。

左手パームレスト部が熱くなることを除けば、速度も含めてまずまずの使い心地。一番印象に残るのは、静かさ。ハードディスクの動作音が大幅に小さくなった(HITACHIの40GBを積んでいる)ため、ファンが回らないと非常に静か。その分、左手だけ妙に暖かいのが気になるし、残念。

ヘッドフォンで聴くiTunes4の音は、PowerBook G3のほうがよかった。やはり元が高いマシンは、その分隅々まで行き届いた設計になっているもの。少々たわみやすいキーボードも、デスク上では外付けキーボードで対処、と割り切ることになるか。

いま、巷ではNEC、東芝、日立などがiBookと似たデザインのマシン(もちろんWindowsXP搭載)を出して、売れている。VAIOは紫(violet)で統一してきたが、やはりこの夏、初めて白のノートTRを発売した。いわば白いノートパソコンの元祖がiBookだが、キートップの文字からロゴまで統一感のあるアップルのデザインは投入されて2年以上経っている。にもかかわらず、飽きずに使えそうだ。シンプルで、いい。Mac OS Xにもあうし、Macの画面は白が基調なので、本体と画面の明度コントラストが低くなって、むしろ目にも楽。個人的にはPowerBook G4 12inchよりも好きなカタチ。


リニューアル前後、そんなこんなで忙しくなってしまった。また追加していきます。


 

■2003/07/07■ 七夕の、二つの行事

梅雨らしく雨のそぼ降る七夕の日。行く先は秋葉原。

実は、PowerBook G3/400 (FireWire)、ついに不調が・・・iTunes4でのCD取り込みを行おうとして、ディスクを食べさせた。そのまま虹色カーソルがぐるぐる回ったままになっている。うまくマウント(CDやハードディスクなどを認識すること)できないのか。10.2.6にしてから2回目だなぁ、と思いつつ再起動。起動はする。が、ハードディスクのうち、起動システムが入っていないパーティションをマウントしない。ディスクユーティリティでチェックをかけたりするが、どうもだめ。

他のパーティションにあるMacOS 9や、Mac OS X 10.1はうまくいく。CD-ROM起動させると、どうも10.2の入っているディスクがうまく修復できない。非常に(というか異常に、とさえ言える)安定しているだけに、こういう時のショックは意外に大きい。

ただ、見えなくなったデータはない。対処するなら今のうちだが、すでに3年を経過したマシン。ハードディスクを買ってきて載せ替えたところで、ケースの変型もあるだろうし、あまり長く使えるわけでもない。ノート型マシンの基本は「寿命は3年と思って大事に使い、致命的になる前に次へ移項する」である。

結局、予算その他の問題もあるが、iBookにした。12インチ液晶ディスプレイで、CPUはG3/900MHz。PowerMac G5が出る御時世ではあるが、ノートマシンにG5が載るのは少し先になるし、G4とG3の差は意外に小さい。自分の使用目的を考えても、実は十分である。というわけで、メモリだけ最大にしたiBookを買った。


で、すぐに帰ってiBook設定かというと、秋葉原から湯島へ回る。

湯島天神にて、七夕の雅楽奉納。これを聴かずには帰れない、というか、前々から予定していた。久々に訪れた湯島天神は、もはや以前の面影がまったくないくらいきらきらした建物に改築されていた。本殿で、奉納の神事をともにしてから、静々と楽のひととき。笛、笙、絃(琵琶、和琴、箏)という最小編成。

御神楽をまず納め、続いて管弦。夏を司る黄鐘調を中心に、本殿の中央に音が捧げられ、聴衆も御相伴にあずかる。かなり蒸していたが、琵琶が鳴る瞬間にすぅっと外から風が舞い込む瞬間の涼感など、こたえられないものがある。もしかすると演奏者は万全とは言い兼ねる状態だったのかもしれないが、やはり楽は寝殿/神殿で聴くものだと思った。

旧知の方々、最近知り合った方々と話も弾み、素敵な夜になった。

じゃぁ、その間、iBookはどうしたか? ちゃっかり、一緒に神事を受け、楽を聴いてました。よくきたね、よろしくね、という気持ちも込めて。


つまり、iBookの設定は明日である・・・とはいいつつ、動かしてはみた。実はそう期待していなかったのだが、意外に速くて驚いた。なるほど、これは高い機種が売れなくなるわけだ、そこでG5投入となるわけだ、と一人で納得。


 

■2003/07/02■ タテノリ

今日、東京は爽やかな夕方だった。夜は涼しいくらい。猫があちこちで虫干し。みんな気持ち良さそう。どこにいたんだろうというくらい、飼い猫から野良猫まで、たくさん見かけた。


とある日。カフェで隣に座った若い男性。数学の問題をしきりに解いているのはわかる(行列と2次関数かな)。ヘッドフォンを耳にして、時々足がトツン、トツンと音を立てる。音楽を聞きながら、ノリながら、数学を解いていくのかぁ。そう思うや、やにわにウェストポーチから白く小さな物体を取り出した。

iPodである。

ハードディスクに納められた音楽を、ホィール操作で切り替える。そして、また解き始める。

と、激しいヘッドハンギング。頭が止まる。鉛筆が紙を走り抜ける。その音も激しく大きい。ノリノリの、タテノリ。ついでに問題、解きまくり(かどうかはわからないけど)。

受験生にしては年くってるようにも見えるし、家庭教師の予習? 予備校関係者?

iPodを作ったアップルが見たら喜びそうだけど、そんなことあるか、と思うでしょう。実話です。

不思議な光景ではあった。


 


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