洛西・極私的概略

 

西の範囲は広い

洛西は意外に範囲が広いと言えましょう。それぞれの地域ごとに特徴があって、一概にまとめることは出来ません。総じて、洛中ほど高い建物がないため、空間が広く感じられるのが、このあたりの特徴でしょうか。

究極の観光名所である金閣寺から、西へ長く連なって、嵐山へ至るゾーン。ここは衣笠から妙心寺にかけて続く大伽藍の群れ、太秦のひなびた空気を経て、穏やかな嵐山の風景の続く絶景地帯です。一般に思い描く「京都らしさ」を味わいやすい場所でもあります。

嵐山から北上して嵯峨野一帯、ここだけでも広い観光地域です。嵯峨野の果てにある化野の奥には愛宕山があり、そこから連なる山並みをハイキングコースにして、高雄方面へと伸びています。

また、嵐山から南へ下ると、松尾から桂方面(桂離宮で有名)も、地味ながら見るもののある地域です。ただし、歩きを前提にすると相当歩くことになります。

衣笠から妙心寺

衣笠山を背景にして、有名な金閣寺が建ちます。地図で確認するとわかりますが、金閣寺は京都の碁盤目市街の、西端に位置します。ここから少し南西に下り、立命館大学の裏手に等持院。そこから西へ、石庭で有名な竜安寺を経て、御室の仁和寺へと続きます。そして、仁和寺から南東へ下ると、妙心寺と多数の塔頭が街を築いています(花園高校近く)。

門跡寺院である仁和寺を除くと、すべて禅寺です。金閣寺や等持院は足利家縁のお寺、妙心寺も室町文化の保存地帯になっているので、このあたりと洛北の大徳寺(紫野)をまわると、いっぺんに多数の禅宗文化に触れることが出来て、目が慣れます。(目が慣れるということは、ものを見て廻るときに重要だと思う、目が慣れると自然に時代や背景に対する反応が出てくると感じる。)

なお、御室の仁和寺も、門跡寺院の中でも五重塔の威容や、御室桜の花見、春と秋の宝物展示など、見どころ多数。

こういう地域であるため、観光シーズンは混雑します。また、洛東と違って、市街中心部から少し離れており、スポット間の距離もやや長めなので、時間を勘定に入れて動く必要があります。たいていの寺社は午後4時か4時半には入場終了、午後5時退出ですから。

太秦

御室や妙心寺から西へ進むと、太秦。ここは聖徳太子ゆかりの広隆寺で有名です。それよりも、東映太秦映画村のほうが有名かもしれませんが。

少し東に蚕の社、西に車折(くるまざき)神社鹿王院があります。

このあたりは、京都になる前から渡来人がハイテク産業(つまり絹産業)を起こしていた地域としても有名です。現在歩くとむしろ、御室から続く穏やかな空気を残した街と感じます。疲れた時にゆっくり歩くと、ほっとするところがあります。

嵐山周辺と嵯峨野

京福電車やJRの西の果てには、嵯峨野駅があります。JR嵯峨野駅は、嵐山よりだいぶ手前で終点になり、嵐山そのものを目的にするなら、京福電車のほうが楽でしょう。

ここからは、桂川(保津川)の川下りも楽しめますし、渡月橋で風景を楽しむこともできます。天龍寺の広い寺域でのんびりすることも、亀山公園大河内山荘の散策を楽しむことも可能。以前は御室・太秦から流れて、ここで景色が開けるという楽しみがありましたが、芸能人ショップなどが立ち並ぶ1985年以降は、おそろしくにぎやかです。

ここから北に、嵯峨野が開けています。門跡寺院の大覚寺(さらに北には瀬戸内寂聴の直指庵)、清涼寺、平家物語ゆかりの祇王寺滝口寺、立派な二尊院、紅葉の美しい常寂光寺、源氏物語に出てくる野宮神社などがあり、小倉山を見上げるここだけで、ほぼ1日のコースになります。また、嵯峨野の奥に化野念仏寺、その先には愛宕山が控えています。愛宕念仏寺もここ。

二尊院など、小倉山に近いお寺は山の空気が降りてきます。想像以上に山深い空気であり、電気もない時代に洛中から離れたここに隠居することがどういうことを意味するか、想像するとなかなかすごいものがあります。

高雄から清滝

ここまで連続していた視点を、一度分離します。高雄は、市街地からバスで1時間ほど北西へ向かったところに位置します。ここはまず、澄んだ山の空気を楽しむコース。

高雄のバス停から、清滝川の流れる谷底へ降りて、そこから山を登ると神護寺。途中、茶屋などもあり、のんびり歩くことも出来ます。清滝川沿いに散歩しつつ、西明寺からさらに道沿いに進み、国道162号線を北へ進むと、高山寺

神護寺の開けた境内、高山寺の杉木立の深さ、いずれもまったく違った魅力があり、1日で2箇所廻れるのもうれしい地帯です。

高山寺からバスで移動して、北山杉見学をすることが出来るそうですが、私は訪れたことがありません。また、高山寺から入って、神護寺を見てから、清滝川に沿ったハイキングコースもあります(私は未経験、勧められたことは何度もあるが)。降りる先は愛宕山。ここで嵯峨野の端に連なっています。

松尾から桂あたり

嵐山の渡月橋から南へ下ると、すぐに法輪寺、そこから歩いて松尾大社があります。酒の神様であり、わき水でも有名。さらに下ると、鈴虫寺という通称のほうが有名になった華厳寺苔寺(正式には西芳寺)があります。

阪急嵐山線で桂へ移動して、そこから徒歩で桂離宮

ここは、中心となる苔寺と桂離宮がそれぞれ、拝観を事前に申請する制度をとっているため、日程を決めたら往復はがきを準備して申し込む必要があります。苔寺はお寺に直接申し込みますが、桂離宮は宮内庁に願書を出して許可をもらう形です。したがって、これらの事前申込をしておかないと、見どころがかなり減るため、ふらりと行く地域ではないかもしれません。(私個人は、どうも日程があわず桂離宮を訪れていない。)