• [種別]寺院
  • [名称]金閣寺(鹿苑寺)
  • [宗派]臨済宗相国寺派
  • [地域]洛西は衣笠山の麓、西大路通と北大路通の交わるあたり。
  • [特徴]足利義満(室町幕府三代目将軍、室町幕府全盛期)が、西園寺家(公家)の山荘を譲り受けて御殿を建設。義満の死後、禅寺となる。
  • [拝観料]2002年、400円。
  • [+α]「金銀清水」の一つ、団体客も多い。ゆっくり見るなら朝一番、昼食時、夕方がいいかもしれない。夕焼けに映える金閣も意外に人気がある。雪の日にあたるのもラッキーと言える(ほんとうに寒いけど)。

概略

金閣寺は通称で、正式には鹿苑寺。

足利義満の建立した北山御殿が元になっています。政治の中心として栄えましたが、義満の死後に禅寺となりました。応仁の乱でほとんど焼けましたが、水を目前にたたえる金閣は残りました。これも、昭和の放火で1950年に消失、その後再建されました。さらに金箔をはりかえたものが、現在の姿です。

境内は広大で、中心となる御殿「金閣」の前に広がる池、さらに背後の丘にも池を持ち、その近くに金閣を見下ろすように茶室が設えてあります。

数多くの文芸作品や随筆に扱われてきましたが、特に終戦間も無い頃の実際の金閣炎上にヒントを得て、美への嫉妬と内面の確執を描いた三島由紀夫の小説は高名。

美的命令

受付をくぐると、すぐに池を望む金閣に迎えられます。池に写る青空、静かな湖面に広がる金の御殿。神殿様式、武家様式、唐の禅宗様式を第一層から第三層まで配し、頂上にも金箔の鳳凰が輝くそれは、銀閣寺の左右非対称な様式と異なり、広大な空間に対峙し圧倒さえする力が漲っています。晴れ、曇り、雨、雪のいずれにも揺るがぬ強さ。義満の自信と視線の高さもあるでしょうが、それ以上に感じるのは、新しい美を作る意志。

三つの様式を一つの建物にまとめるなど、下手をすれば単にひっつけただけのものになりかねないが、それがない。好き嫌いを超越させる、揺るがぬ形の希求。だからこそ奈良町以来の楽(伎楽、雅楽、そこから生じた日本様式の音楽)から離脱して、猿楽/能/狂言を新たな芸能と位置付けることもあったのでしょう。平家は雅楽に馴染んでいましたが、鎌倉を経て室町期で日本はあらゆる方面に新しい美を見出しています。その真骨頂の一つが、この金閣として集約されているのでしょう。

好き嫌いを問われると、好きな建物とは言い兼ねる私でも、これがすごいということは納得します。それは、人の不確かな心は確かな形にとらえられてこそいきいきと動くものだ、それを感得したものだけが美の深奥に入っていける、そういった美的な命令に到達した形を持っているから、感じることだと思います。逆に言えば好きでない人には、見ていると息苦しくなることもあるかもしれません。

入ってすぐにベストショットコーナーがありますが、その前に右手「陸船の松」を見てから、おもむろにベストショットコーナーに移動し、ゆっくり池から金閣に対峙し、それから近付いていくのもいいです。

絵葉書だけの構図ではなく

近づけば背後から眺めることもできます。絵葉書のような構図ばかりでなく、背後の庭や湧き水なども含めて、この庭が持つ抗いようのない小宇宙も見どころと言えます。

その意味ではむしろ、金閣の背後にある、一段上がった丘にある茶室「夕佳亭」から眺めるのも趣があります。人によっては「こここそベストショット」と主張される方もいらっしゃるくらいです。

なお、この丘には安民沢という池があります。水不足でなければ満々と水をたたえ、中央に白蛇塚を持つこの池も含めて、意外に湿度が高いこの場の空気と、それを切り開く金閣という建物の存在の不思議なバランスもまた、見どころかもしれません。

周辺の情報

金閣寺は衣笠コースの出発点。ここから南下して等持院をて、さらに京福電車沿いに嵐山まで行くこともできます。また、ここから北上して鷹峯へ赴き、江戸時代の文化を感じるのも一興でしょう。北大路を東へ向かえば、大徳寺もあるので、室町文化を継承する大寺院を立続けに見ることもできます。