京都旅行2001年秋

10月3日

●朝食

8時前には起床。チェックアウトしてから、荷物を預ける。四条河原町まで歩き、そこからバスで三条河原町へ。さらに三条を西へ歩く。

イノダコーヒー本店で朝食。どうしてもコーヒーが飲みたくなったのだ。食事はかなり迷ったが、あえて冒険して千円の「京の朝食」を選んでみる。ベーコン、卵、サラダ、オレンジジュース、パンといった、ホテルのような朝食。もちろんコーヒーがつく。まぁ悪くないけど・・・わざわざ高いものを注文しなくても、ロールパンのセットで十分だった。なんだか今回の冒険はことごとく外れているような。

●大徳寺へ

三条河原町から市バスに乗り、大徳寺へ。バスが停留所にいて、走っていったら待ってくれた。慌ててステップを上がると、若い雲水さんが大勢乗っていて驚く。あの装束はけっこう臭う・・・てっきり一緒に大徳寺前で降りると思っていたら、雲水さん達はそのまま乗って行った。彼らは仏教大学か金閣寺にでも向かったのか。

大徳寺は、来年に始まる大河ドラマ「利家とまつ」に向けて、ゆかりのある芳泉院を珍しく一般公開している。昨日のハイライトに続いて、もう一つの旅のお目当て。

入ると、どうも準備が周到すぎて、ほとんどテーマパークに近づいてしまっている。特別拝観の常で、京都教育委員会のボランティアが説明してくれる。枯山水、本堂から、裏手に回る。渡り廊下を持つ二層構造の楼閣が、池をはさんで対峙する。呑湖閣、小堀遠州の庭園の中核をなすものだ。南禅寺の庭は高名だが、こちらのほうが視線に動きがあってダイナミックだ。白鷺が飛んでくる池の様子は本当に絵のように美しい、という話などを交えてかなり熱心に解説してくれる。そして、最後に一言。

「私の解説はこれまでですが、どうぞご自由に御覧下さい」

いや、この一言、うれしい。こういう拝観の場合、流れ作業になってしまって意外に聞けないのだ。白壁、茶の窓枠、緑の銅板屋根が、雲ひとつなくひたすら高く青い空に冴える。一緒にいたおじいさんがこちらをジロリと睨み、一言。

「こんなもん見せられちゃ、写真駄目と言われてもなぁ」

一眼レフを取り出した。2枚ほどぱしゃり。それは止めようよ、と思うが、口には出さず。醍醐寺の桜の美しさに思わずカメラを構える人々に「撮影は禁止です!」と怒鳴る光景がダブったせいだ。池越しに座って見ることが出来る抹茶席で、お金を払ってしまった。抹茶を飲みきり、茶碗を置いて見上げる。目に焼き付けるように眺める。写真集をお土産に出た。

ついでなので、すぐ近くの大仙院に、久々に訪れてみた。しかし、団体とぶつかり、一緒に案内されてしまった・・・ここは人に積極的に触れてくるお寺なんだけど、私は静かに見たい。噛み合わず、ちょっと不愉快。案内を聞くおばさんたちのうなずきようは、みのもんたの番組の再現。とにかくデジタルカメラで写真を撮りまくるおじいさんたち。案内が終わり、少し解放された気分で狩野元之、元信の襖絵を眺めてから、出る。

逆に、高桐院はまったく人が触れてこない。客も少なく、静か。紅葉前の、緑が最後の濃い時期。竹のかそけき葉ずれの音を、オナガの泣き声が突き破る。風のため息が染み渡る。入った時には普通に話していた外国の方も、何となく小声になって立ち止まり、やがて本当に感じ入ったようにスローモーションで座り込む。

他、瑞峰院も廻るが、今回はあまりゆっくりできず。壷庭が印象的な龍源院は、拝観謝絶。なんでも屋根を直している最中だという。

松屋藤兵衛で和菓子を買ってから、市バスに乗る。二条城前で降りて、地下鉄東西線で市役所前へ。

●昼食〜散歩〜帰路

昼食を食べられる店を探したが、既に1時半になったせいか、よい店が見当たらない。値段がちょうどよい店は閉まってきて、まともなレストランは予算オーバー。今回は冒険が外れるので、つい二条のブション(Le Bouchon)に入ってしまった。塩がきいたサラダ、鶏のクリームソースに、大きなパン。満腹になり、また、満足。ただ、今回は鶏の煮込みではなく、火を通した鶏肉にクリームソースをかけたものだった。下がライスなのでこういう形態のメニューになったのだろうが、煮込みがなかったのはちょっと残念。

ゆっくり南下する。四条河原町から先へ歩いて、四条松原近くの雅趣という中国茶の店に向かった。んが、水曜日は定休日だった。昨日のうちに、確認しておくべきだった。仕方なく、戻る。先斗町の長竹も考えたが、あえてCafe le salutへ。

ここは前回、土日に入ったためかあまりいい印象がなかったが、今回は違った。好きな席を陣取ることが出来て、ゆっくりとカフェ・ラ・テを啜り、考えたりメモをとったり。土日の観光客モードではなく、平日の普段着の姿がこの店の本領なのか。と思いつつ、Meetsの京都特集を読んでいると、移転前は全然違う、もっとサロンのような雰囲気だったという。そうなのか。

元駸々堂・今Book 1stで少し本を眺めて、そこから寺町京極や四条、ジュンク堂あたりを歩く(自分の書いた本が置いてあるかも少し確認したり)。歩くこと自体が気持ち良い温度と湿度で、帰るのが惜しくなってくる。

夕方である。ホテルへ戻り、荷物を受け取る。そして、バスに乗って、京都駅へ。ジェイアール伊勢丹の地下で弁当を買う。迷いに迷って、今回はこしひかりで握ったおむすび弁当。新幹線改札を通り、売店で暖かいお茶を買ってから、プラットホームへ。滑り込んできた車両に乗り込む。ゆっくり出発する車窓からは、新駅舎が邪魔で京都の町並みは見えない。気付くと東山の山並みが過ぎ去っていく。満月の清々とした光も思いながら、今夜からすぐに東京の暮らしにリズムを戻さなければいけないことを思う。