「NPOによる路上生活者宿泊所の効果的運営のための環境共生事業」

活動概要報告書 

環境共生モデルとしての「ふるさと千束館」事業

「ふるさと千束館」とは、職を失い劣悪な住環境の中で道を見失いつつある、路上生活者等の自立を支援するための施設である。NPO自立支援センターふるさとの会が、第2種福祉事業として東京都から委託を受ける形で運営している。

「山谷」ふるさとまちづくりの会では、路上生活者等の自立を促すことによって、そうした人々の生活を保障するのみでなく、まち全体に活気を甦らせようと考えている。

そのために今必要なのは、まず、地域住民の理解と関心である。

今回の環境行動は、ふるさと千束館の存在を地域にアピールしていく1つの有効な手段ともなり得た。出来上がったものもさることながら、この作業を進める過程においても、道行く少なからずの人々に関心をもってもらうことができたと思う。

 

具体的に行なった事業は以下の4項目である。

(1) ソーラーシステム

(2) 廃棄物再利用

(3) 緑化計画

(4) 地域交流ニュース・イベント    

 

ふるさと千束館<環境行動実施前>

2階平面図 (→拡大図)

1階平面図 (→拡大図)

 

  (1)ソーラーシステム

コンサルタント・施工:町田和行氏((有)ひまわり/自然エネルギー事業共同組合レクスタ)

目的:入居者約20人が毎日の入浴で長時間使用し続ける大量の湯を自然エネルギーでまかなうため。

内容:真空式ソーラー温水器(サンファミリー)UK-30を、南東に面した屋根上に設置。太陽電池パネルの設置。

今後の課題: 導入以前のガス使用料との比較や使用勝手などから、今後の方向を探るとともに、このような福祉型の共同生活施設において、環境共生型エネルギーがどのような役割を担い得るかということを検討していきたい。

(→拡大図)

ソーラーシステム

                  

 

(2)廃棄物再利用

目的:入居者約20人に毎回食事提供をしており、多量の生ごみの処理が必要なため。

内容:・家庭用生ごみ処理機2台を設置。

@生ごみ処理機(ナショナル)MS-N33納入:(有)ナカノ(地元業者)

A台東区環境部リサイクル推進課あっせん「コンポスト容器・生ごみ処理機」ゴミナイス(SANYO)

・建物周辺に土面がないため、室内・ベランダ等に設置可能なものとした。

・設置場所は、当初2台ともに台所であったが、Aの処理機から臭気が発生したため、@のみベランダに移動。

・現在の状況としては、@のみ日常的に使用している。

千束館では、専任の調理師が生ごみの出を極力少なくしているため、@のみでもある程度処理できている。

今後の課題:

・Aの処理機から臭気が発生した理由を次のように考えた。

・ 処理機@は、家庭用のシンプルなものであるため、生ごみを短時間で乾燥し体積を小さくするが、完全に分解させるまでには、土に混ぜ込み1〜2年間待つ必要がある。

・ Aは、わずか2〜3日間で、土になるまで生ごみを完全に分解できるものである。しかし2〜3日とは言うもののその間水分を保持し続けているため、室内で使用した場合には、臭気を感じてしまうと考えた。

・ 本来、@である程度まで分解したものをAに入れることで、@とAを組合わせた有効な使い方ができると考えたが、それを現実的な話にするためには、設置場所や作業のしやすさなどをもう少し工夫する必要があった。

・ 今後、設置場所を再検討し、@Aの組合わせの方策を動線的に解決する方法等を考えていきたい。

@

A

 

 

(3)緑化計画

コンサルタント:河合嗣生氏(ランドスケープデザイン・アトリエ風)

目的:
・壁面緑化により断熱性能を高める。
・地域住民に対し視覚的にアピールをしていく。

内容:
・道に面した壁面の下部と、屋根上、ベランダ手すり壁の外にプランターを設置。
・道に面した壁面にはワイヤーをめぐらし、ナツヅタ、アケビ等のつる性植物を這わせることで、壁面緑化を目指す。

全部で10種類の植物を散らばせたため、色々な表情を楽しめる。

 

 

作業:・現場実測により立面図を作成。それをもとに河合氏の助言を受けつつ、全体の計画・材料の選択・施工方法等をメンバーで話し合って決めた。

・寒さのうすれる3月初旬まで待ち、作業を行なった

・3ヶ所のプランターの設置、土入れ、植栽までをボランティアにより行なった。

ボランティア間の新たな交流も生まれた。

・既製品をうまく利用して作業がやりやすくなるよう計画したが、既存の構造が不明瞭で、十分な道具もなかったため、構造に関わる穴あけ等の作業ではやや難渋した。

今後の課題:・つる性植物の成長を見守りながら、居住者の手を借りつつ、壁面に良好な緑の暖衝面を形成していく。

・つる性植物がある程度成長した後には、足元プランター等に野菜やくだものなど実のなる植物を植えたいと、考えている。

・育てたものをきっかけとして、イベントを企画するなど、千束館の居住者間や地域の住民との交流につなげていきたい。

ナツヅタ、ムベ、アケビ、クレマチス・モンタナ、ツキヌキニンドウ、ツルバラ、ノウゼンカズラ、カロライナジャスミン、イタビカズラ、ラベンダー


 

 

 

 

緑化作業完了時

緑化作業完了時

将来イメージ (→拡大図)

 

 

(4)地域交流ニュース・イベント

○「ふるさと千束館特別コンサート」悠久の音色〜胡琴の夕べ〜

目的:住民や地域で活動する人々に千束館に関心をもってもらい、また、千束館の中の様子を体験することで千束館を身近に感じてもらう機会にもなると考えた。地域でのネットワークづくりにつながるとよい。

日時:1999年10月30日(土) PM5:30〜7:00 場所:ふるさと千束館

内容:費 堅蓉(フェイ・ジェンロン)さんによる三弦とヒ琵琶の演奏。分かりやすい解説とともに何種類もの楽器を演奏してくれた。素晴らしい演奏に一同釘づけとなった。 

 

参加者:地域住民(町内会等)、
千束館居住者、
東京都関係者、報道関係研究者、
ふるさとの会会員、
まちづくりの会メンバー

 

○まちづくり雑誌「(仮)浅草史誌」0号

製作数:250部

配布:行政や地域へのはたらきかけを中心に、興味のある人に配布している。

日英交流シンポジウム「ホームレスの雇用創出とまちづくり」(活動記録参照)においても資料として配布した。

現在、引続き1号の発行に向けて準備を進めている。

 

 

○第1回「山谷花一杯運動(仮)」

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