公開:2004年11月18日

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写真


解説:邪魔な木

 この被写体を見たとき、木が邪魔だなと感じました。それなら、邪魔な木を主役にして、邪魔な感じを写し取ってみようと考えました。写真表現からすると、少し邪道に属するものでしょう。

 何かを邪魔する表現では、邪魔しているものが主役となります。そして、その主役が存在しなかったら、邪魔されたもの(主役に対して背景の場合が多い)が本来の姿(美しいとか力強いといった、良い印象のことが多い)で写るだろうなと“感じさせること” が、とても大事です。さらに言うなら、邪魔な主役を実際に消したとき、邪魔された被写体(背景など)が本当に良い形で写る必要はありません。あくまで、邪魔な主役が入った状態で、それが消えたときに良い写真になるように感じさせればいいのです。

 実際には、次のような手順で、主役と背景のバランスを整えます。まず最初に、邪魔する主役がない状態を思い浮かべ、背景だけでフレーミングを最適化します。そのそき、主役の邪魔する効果が十分なら、そのまま写します。逆に、邪魔する効果が不十分なら、邪魔する効果を高めるように、フレーミングを修正します。そうすると、邪魔される被写体の良さが崩れますから、両方を満たす妥協点を探すわけです。良い妥協点が見付からなければ、作品の完成度が低くなります。

 今回の被写体では、邪魔な木が存在しなかったら、後ろの背景が美しく整って見えるように感じました。そこで最初に、後ろの被写体を整って見えるようにフレーミングしてみました。そのままでも、木が邪魔している効果が十分だったため、そのまま写して終わりです。というわけで、邪魔を表現する意図にとって、もっとも簡単な被写体でした。

 この手の表現は、邪道に属するものですから、ごくたまにしか使いません。サイト内には、こうした例も重要だと思い、あえて入れてみました。