公開:2004年7月2日

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写真


解説:天への突進

 ジェット機が上空を飛んでるのを見ると、思わずシャッターを切りたくなる人は多いのではないでしょうか。そんな写真では、ジェット機と白い軌跡だけを写しがちですが、それだと魅力的な写真に仕上げるのは難しいでしょう。

 この写真を撮ったのは夕方で、舗装された道の端を歩いてました。上空のジェット機を見付けたとき、真っ先に考えたのは前景として何を入れるべきかです。周囲を見渡したとき、街灯と電柱ぐらいしか見あたりませんでした。レンズを上に向けて撮影するため、高さのあるものしか対象になりませんから。

 この手の写真は、時間との戦いです。下から見るジェット機は、それほど高速に去っていくわけではありませんが、刻々と前に進んでいき、すぐに小さくなってしまいます。素早く行動して、少しでも多くの写真を撮る必要があります。このときも、街灯の下まで走っていき、フレーミングを考えながら素早く撮影しました。それでも撮影できたのは、たった6枚です。3つの街灯の下で、それぞれ2枚ずつ。

 深く考えている余裕がないので、まず標準ズームを望遠側に合わせ、縦位置で写すことに決めました(望遠側が一番大きく写せ、縦位置だと力強く写せるため)。あとは、ファインダを覗きながら、パッと感じたフレーミングで写します。この1枚は、街灯を下側に大きく入れて、写真全体での安定感を整えました。ジェット機の軌跡が斜めだったので、対角線ぎみに入れて。これ以外のことは考えず、あとは自分の感だけでフレーミングしました。考えている間にもジェット機が進み、狙ってるフレーミングが崩れていくからです。

 夕方だったので、空が少し暗く写り、ジェット機の白い軌跡が強く浮かび上がりました。単なるラッキーですが、ラッキーを生かすのも撮影者の腕の1要素ですから、ラッキーを大切にしたいですね。

 縦位置で写して、軌跡を対角線気味に配置し、軌跡が白く浮き上がったことで、全体が力強くなりました。天に向かって突進している感じが、まあまあ出ています。下側の街灯も、写真に安定感を与えています。街灯の重心が、左右方向の中心に位置しているのは、とっさの撮影でも適切にフレーミングできていた証拠でしょう。