公開:2004年7月3日

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写真


解説:立ち入り禁止の紅白

 私の場合は、空いている時間を使って、都会の街を撮り歩きます。都会には様々なものがあるので、幅の広い作品作りが可能な被写体といえるでしょう。また、写真の腕を磨くのにも、最適な場所です。「普通の人から見ると作品になりそうもない被写体を、切り取り方を工夫して作品に仕上げる」という練習ができる、貴重な空間だからです。

 この写真も、そういった写真の1つです。工事現場に置いている赤いコーンと、部外者を入れないための白い仕切りを組み合わせ、無理矢理に紅白を作り出しました。実際の風景は、もっと汚いです。仕切りをより白く写すことと、写真全体を整った感じにフレーミングすることで、少し綺麗な感じに見せています。写真ならではの“嘘の世界” ですね。

 この写真には、白いゴミが何個か写っています。これを手で取り除いてから写すことも可能ですが、そうした演出は絶対にしないようにしています。被写体を操作することによって、リアリティを低下させることがよくあるからです。「スナップでは被写体をいじらない」が基本だと思います。

 紅白が主役なので、それ以外の要素をできる限り入れないようにフレーミングしました。赤いコーンが4個なので、それが安定して見えるように、写す左右範囲を決めました。範囲に合わせてコーンを下に入れ、その状態で上側に何も入らなかったので、写す範囲は決まりです。

 そのままではシャッターを切りません。この写真のように縦線が入る場合、少しでも整っているように見せるためには、どの縦線も垂直に写す必要があるのです。そうなるように、ズームを望遠側にセットし、膝を曲げてカメラ位置を下げます。この被写体の場合は、人通りが多くて後ろに下がれなかったので、仕方なく広角側で写しています。

 縦線を垂直に写すには、ファインダを覗きながら膝を曲げ、垂直になる高さを見付けます。つまり、CCD面と被写体が平行になる位置を探すわけです(こういうところで手を抜くと、写真は上達しません)。この写真では、縦線が左右端に接近してないので、まあまあの合わせ方でも問題ありませんでした(手を抜いて構わない範囲を知り、上手に手を抜いてますが、腕が鈍る原因となるためお薦めできません。本当は、いつも手を抜かないのがベストです)。

 膝を曲げながらカメラの高さを調整する機会は、かなり多いです。年齢とともに体力が衰え、こうした行為が辛くなります。写真の腕を落とさないためには、体を少しは鍛えないといけないかも。最近は、とくにそう感じますね。