公開:2005年1月15日

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写真


解説:閉じ込められた縫いぐるみ

 この被写体は、あるゲームセンターの中で見付けました。この写真からは分からないでしょうが、1体の縫いぐるみが1つの瓶の中に入っていて、こうした瓶が何個も一緒に置いてあります。その中の1つを選び、瓶の中に閉じこめられている雰囲気で切り取ってみました。

 閉じ込められている雰囲気というのは、今まで写したことがありません。仕方がないので、その場で考えてみました。ファインダを覗きながら悩んだ末、2つの要素が必要だと考えました。1つは、瓶の中に入っている窮屈な感じ。もう1つは、閉じこめていることが分かる外の空間です。

 窮屈な感じを出すために、縫いぐるみと瓶の写る範囲を、できるだけ一部分にします。ただし、縫いぐるみの顔は入れなければなりません。顔を入れながら、その他の部分を最小限にします。瓶自体の写る範囲は、瓶に入っていることが分かる程度であれば大丈夫です。こんなことを考慮しながら、いくつもある瓶の中から、最適な被写体を1つ選びます。切り取った状態で、窮屈に見える被写体を。実際、選んだ被写体は窮屈な感じがまあまあ出ています。一緒に詰めてあるヒモ状の白いものも、窮屈な感じを演出するのに役立ちました。

 外の空間はできるだけぼけた方がよいので、絞りは開けぎみです。あまり開けると主役の縫いぐるみがぼけるので、開放より少し絞った方がよいと判断しました。当然ですが、ピントは縫いぐるみの目に合わせます。左右の目までの距離が異なるなら、目立つ方の目に合わせます。今回なら、左側に位置する右目ですね。

 写真全体の中で、外の空間をどれぐらいの面積にするかは、縫いぐるみや瓶の写る形と関係するため、一概には決められません。写す被写体が決まってから、ファインダを覗き、写真全体でのバランスを見て決めます。もし背景があまりぼけなくて、表現意図を邪魔する背景なら、少なめに入れるしかないでしょう。

 以上のように考えて写したのが、今回の写真です。実は、もっと寂しい感じに仕上げたかったのですが、縫いぐるみの顔が可愛いために、期待通りにはなりませんでした。そのまま写るのが写真ですから、こうした点はどうにもなりませんね。