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第3話
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TOMONA! 第4話

「劣勢だな……」
 十月、青海高校。学園祭実行委員会の席上で、やり手と名高い二年四組の級長、高杉鋭司郎は眼鏡を押さえた。
 黒板には、一年から三年までそれぞれのクラスが提案した出し物のリストが並んでいる。
 多いのはやはり、喫茶店とお化け屋敷。あまり同じ店が重なっても問題なので、他の企画に変更するよう、調整が進んでいるところ。高杉のクラスも例に漏れず喫茶店を提案していたが、分は悪かった。 
 各クラスとも、一味二味の工夫をこらしてオリジナリティーをアピールしている。本場セイロンからの留学生を助っ人としてセイロンティーを売り物にするクラスや、銀座風月堂から名物のカステラを茶菓子に取り寄せるという触れ込みのクラスなど。
 枠は埋まりつつある。二年四組ははねられるかもしれない。高杉が沈思黙考していると、二つ隣の席から誰かが勢いよく立ち上がった。
「はいはいはい! 俺たち二年二組はァ、これぞ喫茶店という正統派の喫茶店を提案いたしまっス!」
 やたら声の大きなその男子は、高杉を見てニヤリと笑った。秀才・高杉のライバルを標榜する、二組級長の大元篤である。
「正統派の喫茶店とは?」
 議長の問いに、大元はわざとらしく一拍置いてから、言い放った。
「メイド喫茶!」
「メイド喫茶……」
 ほおお、とため息が漏れた。オブザーバーの教師たちがぴくりと顔を上げる。
 大元は大弁舌を披露する。
「喫茶店の存在意義とは何でありましょうか。それは一杯の飲み物に託したおもてなしの温かい心にあります! 我が二組の麗しき女子一同が清楚なるメイド服の姿をもってお出迎えすれば、お客様の心をいっそう和ませることは必定! これを正統派の喫茶店といわずしてなんぞや! であるからして、我がクラスはメイド喫茶を提案するものであります!」
 メイドとはなんなのかという根本を忘れ果てた言葉だったが、この案はいたく男子たちの興味を誘ったらしかった。あちこちから賛成のつぶやきが漏れる。
 ふっ、と笑って、大元は高杉を見下ろした。
「どうだ!」
「……下らん。そもそも女子は賛成しているのか」
「貸衣装の実物を見せたら大盛り上がりだった。女の子は可愛い服を着たがるものなのさ」
「む……」
 高杉は議場を見回した。大勢は賛成の方向に傾きつつあるようだ。二つ隣の二組が喫茶店に決まったら、四組は間違いなくはねられる。まずい。
 議長と副議長がうなずき合う。
「えーそれでは、皆さん賛成のようなので、二年二組にも喫茶店の許可を――」
「ちょっと待った」
 高杉は立ち上がった。一座の視線が集まる。
「うちの二年四組では、二組を上回る趣向を用意しています」
「はあ、それは?」
「それは」
 高杉はある言葉を言った。
 うおお、とどよめきが上がった。オブザーバーの教師たちが目の色を変えた。


「ここか……」
 野球部主将、国城陽一は、二年四組の戸口の前で立ち止まった。
 看板は、なんとネオンだった。赤白青のド派手なロゴが明滅している。
「なんつーセンスだ」
 つぶやきながら教室のドアを開けた陽一に、やけっぱち気味の黄色い歓声が降りかかった。
「いらっしゃいまっせえ!」
 レオタードやハイミニのワンピースを来た女子たちだった。思わず絶句するほど露出度が高い。中を覗くと、同じスタイルの女子たちが腰に片手を当てて足首をひねる歩き方で、盆に載せたティーカップを給仕して回っていた。席はにやけた顔の男子で満員である。男子というか、半分は教師だ。
 女子たちのコスチュームには、こうプリントされていた。
『Budweiser』
 陽一はため息をついた。
「まさかほんとに、バドガール喫茶なんてものをやるとは……」
 女子の一人が気づく。
「あ、国城先輩だ。てことはお目当ては友菜ですよね」
「うん、そうだ」
「いますよ。ちゃんとこれ着て。今トイレに行ってるけど」
 陽一はちらりとその女子――友菜の友達の西脇洋子を見る。手製の衣装などではない。ビニールっぽいつやつや光る材質の、体のラインがもろに出るレオタードだ。
「君らそれ、恥ずかしくないのか?」
「そりゃ恥ずかしいですよ。サイズ余るし」
 洋子は胸元を隠す。
「でも、しょうがないんです。うちの級長、ものすごい実力派だから。やるって行ったら後に引かないんだもの」
「まあこれはこれで楽しいかもしれないしね」
 ははは、と女子たちは乾いた笑いを交わす。
「呼んだか?」
 カーテンで仕切った厨房から、高杉が顔を出した。カッターシャツの上にベストを身につけ、ボウタイまで締めたバーテンの服装である。片手にはシェイカーならぬシロップの袋をぶらさげていて、かなり間抜けだ。
「よくこんなこと強行できたな」
「三年生の人ですか。いらっしゃいませ」
 律儀に頭を下げてから、高杉は眼鏡を直して得意げに言った。
「新趣向ですよ。男性客に強力にアピールするバドガール喫茶。コスチュームとネオンはバドワイザージャパンから借り出した本物です。歩き方の訓練までしましたからね」
「ビールを売るわけでもないのに、よく許可がもらえたな」
「そこは交渉次第で。ロイヤリティーさえ払えばなんとか」
「本気で商売してるのか。まったく……」
「やり方が汚ねえよ」
 そばのテーブルでアメリカンをがぶ飲みしながら、男子がぶつぶつと言った。誰かと思えば、二組級長の大元だった。全校生徒の中でも一、二を争うほどうるさいので、陽一も顔を知っている。
「こんな飛び道具でうちのメイド喫茶を潰しやがってよ」
「駆け引きというものを知らんお前が悪い。実際に開店許可を出すのは先生方だぞ。メイドとバドガール、どっちが中年男性に受けるかを計算したおれの勝利だ」
「先生方なんて言ってやがる。これっぽっちも敬ってねえくせに。ああもう、お姉ちゃん水割りお代わり!」
「誰がお姉ちゃんよ!」
 やけ酒ならぬやけコーヒーをあおり始めた大元を見て、陽一は苦笑した。
「ただいまー、あっ、せんぱい!」
 トイレに行っていた友菜が戻ってきた。陽一は振り返り、しばらく見つめた。彼女はレオタードではなく、ワンピースのほうだ。
「やだ……そんなに見ないでください」
 友菜は胸の前で手をもじもじ合わせて後ずさったが、陽一が不意にくすっと笑った。
「おまえさ……無理があるな」
「無理って!」
 ぱっと頬を赤らめて、友菜は叫ぶ。
「悪かったですね、やせっぽちで!」
「情け容赦のない服だからなあ」
 陽一はからかい半分の顔で友菜の体を見回した。
 もともと大人の、それも肉体派の美人が着てこそ似合う衣装である。白い肌は映えているものの、細身の友菜ではあちこち布が余っている。ぴったり張り付いているはずのお尻のところはひらひらとはためき気味で、胸もパットを重ねているのが丸分かりの不自然な形だ。ロゴにしわがよって『udweiser』になっている。
「やっぱり着なきゃよかった……」
「あー確かに、友菜が一番抵抗してたもんね」
 洋子が深々とうなずく。友菜は真っ赤な顔で陽一を廊下に押し出そうとした。
「もう、せんぱいなんかお客さんじゃありません! 出てってください!」
「いいのか?」
 陽一は、ポケットから紙片を取り出してひらひらさせた。
「お前が見たいって言ってたやつ。二日目の三年六組の、『EXORCIST PIG』のステージ前チケット」
「そ、それ手に入ったんですか? 三年生の親衛隊が買い占めちゃったって聞いたのに」
「野球部主将をなめるな。どうする、ほらほら」
「……ずるいです、せんぱい」
 友菜は泣きそうな顔でうらみがましく陽一を見つめる。
 洋子が苦笑しながら割って入った。
「国城先輩、意地悪もほどほどにしてあげたら。ほんとは可愛いって思ってるんでしょ」
「もちろん。それいいぞ、友菜」
 平然と陽一は答える。そういう彼の余裕に、友菜はいつも逆らえない。
「……こっち、来て下さい」
 カーテンの中に誘う。大元がすわった目でにらんだ。
「VIPにはマンツーでサービスと来たもんだ。徹底してるね」
「だったら大元君も来たら! 席がないんだからしょうがないでしょ!」
 友菜ににらまれて、大元は両手を上げた。
「うわ、説教のマンツーかよ。遠慮しとく」
「俺も遠慮しようか」
「せんぱいはこっち!」
 友菜に耳を引っ張られていく陽一を、洋子たちが口笛を吹いて見送った。

 忙しく働く二年生たちの間を抜けて、厨房の奥の椅子に座ると、コーヒーミルを回していた高杉がまず釘を刺した。
「先輩、独り占めは十分だけにしてくださいよ。三池はうちの一番の売れっ子なんだから」
「おまえも来たらどうだ。店長特権で」
「結構です。店長は店の切り盛りで忙しいので」
 おい三番テーブルオーダー! と高杉が怒鳴る。堂に入った店長ぶりに、二人は苦笑する。
「あれじゃ、おまえもコスプレを拒否できないわけだ」
「拒否してほしかったんでしょ」
「怒るなよ。さっきは悪かった。それ、いいぞ」
 根が素直な友菜は、誉められてあっさり表情を和らげる。
「もう、調子いいんだから……」
 手ずからコーヒーを入れると、友菜は陽一の隣に座った。二年生たちは忙しくてこっちのことなどかまっていないので、陽一は遠慮なく友菜の姿を見つめる。
「あの店長殿、嘘は言ってないな。やっぱりおまえが一番可愛い」
「これ、結構つらいんですよ」
「何が。……ああ、胸か」
 パットを入れている女子は他にもいる。だが友菜は、基準がゼロなのだ。それを隠すのは確かに苦労するだろう。
 しかし、友菜は曖昧に首を振った。
「胸もですけど……その、あれ」
「あれか」
 陽一は、さりげなく友菜の下腹に目をやる。友菜が膝をさする。
「この服、前がぴったりしすぎてるんです。ちょっとでも油断すると……」
「友菜」
 不意に陽一が、いたずらっぽく笑って言った。
「意識するだろ」
「え?」
「男の目。脚、見るよな。そういう服なんだから」
「や、やめて下さい」
「セーラーみたいに隠しようがないもんな。今だって、ばれてるかもしれないぞ。ちょっと下から見ればわかる」
「やあ……」
「俺も見たい。――見せたいだろ」
「や、やめて!」
 友菜は手で陽一の口を塞いだ。頬が赤い。色白の友菜はすぐ顔に出る。
「せんぱいのいじわる!」
 楽々と友菜の手をどけて陽一はさらに責める。
「お前が悪い。可愛すぎるから」
「……はあ、もうっ……」
 友菜はぱっと立ち上がった。飲み残しのカップをかき集める。
「お皿洗ってきます!」
「おう、急げよ」
 高杉の言葉を背に、二人は教室を飛び出した。

 人気のある場所に人が集まっているということは、他の場所が空いているということだ。
 普段でも人通りの少ない北館一階の資料室付近は、ほぼ無人だった。二人は廊下の行き止まりにあるトイレに入った。
 カップを洗面台に放り出し、個室に入って鍵をかける。追い詰められたように友菜が壁を背にし、陽一がその前に迫った。
「ここへ来る途中にも、何人かに見られたよな。みんな釘付けだったぞ、友菜」
「い、言わないでください」
「おまえ、脚きれいだからな。気づいたやつもいたかもな」
「やめてってば!」
 叫んで友菜は首を振る。だがその声には、甘い媚びがにじみだしている。こんなところへきた理由はただ一つ。心置きなく責められるため、それしかない。
「ほら……もう我慢しなくていいぞ。見せてみろ、本当のおまえを」
 陽一が顔を寄せ、友菜の脚に触れた。女子とは異質な、太ももの薄い筋肉をなで上げる。
「ひ、ひっ」
 友菜が唇をかみ、腰を突き出した。
 変化が起こった。ぴりっと小さな音とともに、ビニールのコスチュームが張り付いた下腹のくぼみが、小さく盛り上がった。陽一が手を滑らすにつれ、それが大きくなる。
「テープ……はがれちゃった……」
「テープで押さえてたのか」
 こくりと友菜はうなずく。陽一はその頬に唇をつけて言った。
「なら、もう大きくできるだろ。……見せろよ、友菜。おまえの興奮」
「は、はい。……見てください」
 カラフルなコスチュームの下端に、はっきりと細長い形が浮き出した。陽一はくちゅくちゅと友菜の耳を舌でくすぐりながら、愉悦とともにその姿を見下ろす。ほっそりしたバドガールの股間に盛り上がるペニス。正体を現した偽装少女。
「み、見てますか?」
 潤んだ瞳を横目にして友菜が聞く。
「わたしの、大きくなっちゃったおちんちん……」
「ああ」
「せんぱいだけのです。好きにして、強くして。わたし、もう我慢できない」
「ああ……」
 陽一はビニールの上からそれをこすり上げる。片手だけではなく、もう片方の手もスカートの中に突っ込んで、下から柔らかいふくらみを揉み上げる。友菜はびくびくと体をよじらせ、ますます性器を硬くする。布がぴったりしすぎていて、もうその上からでも先端の丸みやその下のくびれが分かる。
「うふ、いきそう……」
 突き出した舌の上に熱い息を乗せながら、ひずんだ声で友菜がつぶやく。
「服、汚れちゃう……せんぱいのせいですからね……」
「汚さないよ」
「え……」
 陽一がしゃがみこんでも、何をされるのか友菜は気づかなかった。いつも通り、陽一の手でいかせてもらえればいいと思ってた。
 だから、陽一がスカートをめくり、ショーツを引きずりおろし、飛び出したペニスを口に含むのを見て、目を疑った。
「せ、せんぱい?」
「いけよ、友菜」
「え、あっ、ああっ!」
 ぬめらかで温かい感触に、友菜は我を忘れた。陽一の妹にされたことはあっても、まさか彼本人にされるとは思ってもいなかった愛撫だった。
「せっ、せんぱいの中に? そんな、そんな!」
 止めたいのか押し付けたいのか、自分でもわからないままに友菜は陽一の髪をかき乱す。そんな彼女の混乱ぶりが嬉しくて、陽一は細く硬い幹を舌でくすぐり上げた。
「いやあ、だめェ! はあんっ!」
 もともとこらえ性のない友菜が、錯乱しながらあっさり達した。陽一の口の中の熱いものが、びくびくと膨らみながら蜜を吐き出した。いきなり飲み込んだりしたら挑戦した意味がない。陽一は舌の上でそれをすべて受け止める。
「だ……出しちゃった……」
 取り返しのつかないことをしてしまったような顔で、友菜はがくりと肩を落とす。心に恐れが湧き起こっていた。
「せんぱい……ごめんなさい……」
「ん?」
「せんぱいに出しちゃった……気持ち悪いでしょう? せんぱいノーマルだもの。わたしが女の子みたいだからエッチしてくれてたんですよね。冗談でも、今みたいな事しないでほしかった……」
 友菜は涙を落とす。
「いやになったでしょ。わたしがやっぱり男の子だってわかって……」
 陽一は友菜のものを口に入れたまま、じっとそれを見上げていた。だが、やにわに顔を押し付けて、力の抜けた管を強く吸い上げた。
「あはッ?」
 友菜はびくんと震え、次いで目を見張った。陽一が飲み込んでしまったから。
「ど、どうして……」
 戸惑う友菜の震えが、陽一には可愛らしく思える。彼は新しい愉しみを見つけた喜びで笑い出したいほどだった。
 舌にまつわりつき、喉を降りていく友菜の精液。それは、医者にすら普通と異なると言われたほどのものだ。思ったとおり、その粘液に不愉快な生臭さは少しもなかった。なんに似ているとも言いようがないが、甘くてほんの少しだけ苦い、天然のシロップのような味。
 陽一は知らなかったが、その味は以前、彼の妹の明日子をも狂わせた味だった。
 陽一は立ち上がり、強引に友菜にキスした。たっぷりと唾液を交換してから、口を離してささやく。
「甘い」
「え?」
「おまえの。おいしかった。悪くないよ」
「せんぱい……」
 友菜が頬を震わせ、陽一に抱きついた。
「いいんですか? ほんとに……」
「ああ。また今度してやってもいいぞ」
「今度も……飲んでくれるの?」
「いくらでも」
 胸が一杯になって、友菜は陽一の肩に顔を押し付けた。
 それから、身を翻して背中を向けた。
「わたしにも出してください。いっぱい」
 頭を下げ、両手でミニスカートの裾をかきあげる。
「あんなに気持ちいいことしてもらったんだから、わたしもしてあげないと不公平。て言っても、いつもとおんなじことしかできませんけど……」
 肩越しに振り返って、健気に誘う。
「今日はちょっと格好違うから……それがサービスってことで、いいですか?」
「サービスね」
 苦笑しながら陽一がファスナーを下げる。友菜はなおも懸命に訴える。
「何してもいいです! 今日はすごく嬉しいの! わたしはもういいから、せんぱいだけ気持ちよくなって!」
 友菜は手のひらに唾液を落とし、それを後ろに回して、柔らかな丸みの間のつぼみに塗りつけた。両手で肉を割り開く。
「せんぱい……使って」
 陽一のペニスも痛いほど硬くなっている。友菜のものと違って力強いそれを、陽一は友菜の小さな袋の上に押し当てた。
「いいな」
「はい」
 ぐっと陽一は力を入れた。めりめりと亀頭が花びらを押し開く。
「痛ぁ……」
 そこへの前戯がない。ちりちりと熱い痛みを感じて、友菜は嬉しそうに漏らす。
「せんぱい、大きい……んふ、わたし、壊れちゃいます……」
「嘘つけ。おまえがこれぐらいで壊れるか」
 侵入しながら、陽一は腰を上下に動かす。むっちりとした括約筋が柔軟に形を変えてそれを追う。自分の体の従順さに、友菜はうめく。
「つ……いやあ……開いちゃう……」
「きつ……友菜……」
 ゆっくりと進んだペニスが、腹の奥に吸い込まれた。友菜の直腸は、女のように子宮で男をせき止めたりしない。どこまでも深く、体の内部まで、無抵抗に陽一を受け入れる。
 若鹿のように華奢で美しいこの生き物が、体も、仕草も、心も、すべて陽一の思いのままになる。陽一は、猛る。
「友……菜……」
「きゃ」
 陽一は背後から友菜を、腕ごと胸ごと抱きすくめて、ぐいぐいと動き出した。柔らかな髪に顔を埋めて花の香りを荒くかぎ回る。コスチュームに爪を立ててわき腹に食い込むほど強くつかむ。
 友菜はぬちゃぬちゃと腸液の音を立てる。友菜はきしきしと全身の骨をきしませる。友菜ははあはあと湿った息を壁に吐く。
 だがそれ以外の声は立てない。立てようにも肺がつぶれるほど強く抱きしめられている。
 中から刺激された自分のペニスも針のように鋭く立っている。しごいて出したい、でも動けない。それでもいい。今なら思いだけでいける。
 このまま陽一の腕の中で抱き潰されて、陽一の快感を受け止めるだけのモノになりたい、そうとさえ友菜は妄想する。
 そんな友菜の狂った恭順が陽一にも伝わる。たくましい陽一の腕に締め付けられて骨が折れそうなはずなのに、友菜は尻を押し付けてせがんでくる。何をしてもいい、というのは嘘ではないのだ。
 そこまで捧げられて愛しくならないはずがない。陽一は強く突きこみながら、腕だけふっと緩ませて、友菜を呼んだ。
「友菜! いいか? 気持ちいいか?」
「全然! 苦しいです! 死にそう! 幸せ!」
「よくしてやる!」
 陽一は友菜の腹の下で、ペニスをつかんでしごきだした。友菜の中で喜びが飽和する。壊してくれて、出させてくれる。こんなに素敵な人っていない!
 意識と本能の両方にうながされて、友菜の胎内がひくひくとなまめかしく蠕動する。少しでも多くの快感を陽一に与えるために。
「せんぱいいいです、もういって!」
「いくぞ!」
「はいイッ!」
 どぶっ、と腸の中に放たれた。突き進み引き戻りまた押し入る陽一の肉槍が、友菜の体液と陽一の精液を混ぜ合わせて、友菜の細胞になすり込む。
「来て……くれた……!」
 陽一に所有されていく喜びを、自分の射精の快感が白く切り裂いていった。


 ぐっとつばを飲んで、陽一は友菜から抜け出した。自分で立つ力を無くした友菜を抱き上げて、洋式便器の上に座り込む。
 彼女を見下ろして、改めて優越感に浸る。似合わないなどと言ったが、とんでもない。ぐったりと腕を垂らして失神している友菜の姿は、たとえ本職のバドガールでもこうはいかないと思えるほどの、したたるような艶っぽさを漂わせていた。
 陽一は彼女のなめらかな頬に唇を当て、流れていく汗の粒を味わう。また欲情しかけたが、下半身が応えない。今までで最高の痴態を見せてくれた友菜のせいで、股間が空っぽに感じられるほど出し尽くしてしまった。
 こぽこぽと粘液をあふれさせながら閉じていく友菜の尻にペーパーを当て、汗も残らず拭いてやると、友菜が身じろぎした。
「んん……せんぱい……」
「大丈夫か? どこも痛くないか」
「だいじょうぶです。ほんとにやさしいんですね……」
 嬉しそうに顔を上げた友菜と、陽一はまた長いキスを交わした。
「さあ、起きろ。お客さんが待ってるぞ」
「はい。……お客さん?」
 あ、と友菜は口を押さえた。
「お皿! ティーカップまだ洗ってません!」
「そういえば」
「早く洗わないと! やだ、もう三十分もたってる! あああ、衣装も汚れちゃった! 高杉君に怒られちゃう!」
「こら、まだ立てないだろ」
「だったらせんぱいがお皿洗ってきてください! わたし身支度しますから」
「おれが?」
「女の子は手間がかかるの!」
「女の子?」
 友菜はきっと陽一をにらんで、ふらふらと立ち上がった。精一杯の強がりで振り向く。
「男の子の時間は終わり、もうわたしは女の子です!」
「テープ貼ってたくせに」
 友菜が何か叫ぶ前に、陽一は笑いながら個室を飛び出した。





※今回の「TOMONA!」は、女装美少年とレースクイーンが登場する「ぽけっと・ぶらざー」を書いたときに、「レースクイーンコスプレの女装美少年をやっちゃう」シーンが思い浮かんだため、急遽執筆しました。ちょっとひねってバドガールにしましたが。
 本物のレースクイーンとしたい方は、上記「ぽけっとぶらざー」もご覧下さい。


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