[番外編] そんな二人もあるのかも 前編  広い窓から波の音が聞こえる立派な部屋に、背の高い本棚が立っている。  そこには、日誌、とだけ書かれた、同じ形をした革張りの古い本がずらりと並んでいて。  普段ならそんなものは気にも留めないんだけど、一緒に来た友達が気になることを言っていた。 「ここには、学園艦ができてから今までの記録が、あることないことすべて書かれているそうですよ」  今、友達は少し離れた浴室へ行っていて、いない。時間はしばらくある。  私は無数にある背表紙に端から指を滑らせていって、何冊か、跳び跳びに日誌を取り出してみた。白紙。白紙。白紙。あ、何か書いてある。  濃い目のシャーペンで書かれたころころした文字に、目を走らせた――。      *   *   *   *   * 『これはきっと夢です。  だって、こんなことになるなんて、信じられません。      †    †    † 「私も、彼氏はいらないですね。西住殿がいますから」  それは、五人で行ったケーキショップの帰り道。私と西住殿だけで夜の街を歩いていたときのことです。  お店で楽しく話しているときに、恋愛の話が出て。武部殿や五十鈴殿は素敵な男性とお付き合いしたいという感じだったのに、西住殿だけは笑いながら、「やっぱり私にはみんながいるし、優花里さんもいるし」とおっしゃったんです。  冗談みたいな感じでした。でも二人で歩き出したら、妙に黙りこくってしまわれて。そのくせちらちらと視線をくれるので、これは、と思ったんです。  それで、思い切って――もし誤解でも逃げられるように、ごく軽い調子で――言ってみたんです。  そしたら、西住殿は。  ぽっと頬を赤らめて、まじまじと私を見て。 「優花里さんも、なんだ? じゃあ私たち……付き合っちゃう?」  言ってからあわてた感じでパタパタ手を振って、「あっ、冗談だからね、冗談!」と言われたんですけど。  私も「あ、冗談ですか。あはは、なーんだ……」と返しつつ、心の中がすごく盛り上がってきて。 「私は、まあ……冗談なのは半分ぐらいなんですけどね」と言っちゃったんです。  すると西住殿がすかさず「えっ、わ、私もそれぐらいかも……」と言い出して。  あとはお互いの本気を探るみたいに。 「半分ですか? あと半分は?」 「あー、あと半分は……優花里さんは?」 「半分ぐらいなら、本気かな……っていう?」 「ほっ、本気? じゃあ、私も半分本気でっ」 「え、そうなんですか? じゃあ、その、半分お付き合い……とか?」 「ええっ、いいの? ほんと?」 「は、はい。ほんとです。西住殿となら……」 「ほんとなんだ……じゃあ私も半分、ううん、もうちょっとは……」 「でしたら私ももうちょっと!」 「えええ……? ひょっとして、あの、優花里さん?」 「はい?」 「全部……とかは?」 「ぜっ全部。ひゃっ、そ、それは」 「だめ?」 「だめってわけじゃ……いっいえ、私も、全部……」 「全部いいの?」と手を握られて。「それって、つまり、好きってこと?」 「ひゃあああ……」顔が真っ赤に熱くなって。「はい……そういうこと、です……」 「わあぁ……そうなんだ、嬉しい……」  とても素敵に笑って言われたんですけど。  そこでふっと、西住殿、真顔になってしまって。 「あ……でもやっぱり、だめかも」 「えええ? なんでですか?」  思わず情けない顔で聞いてしまったら、ぐっと覚悟を決めた顔で。 「これ……大事なことだから、今言っておくね。私、あの……戦車道をやる女子は、普通じゃない子もいるって、知ってる?」 「普通じゃない、というと」 「体の全部が女の子じゃないってこと」赤らめた必死な顔で、口を動かして。「私……体がちょっとだけ、女の子じゃないの」 「あっ」  そういうことがあるっていうのは、知ってました。いえ、実を言えば、戦車道の名流である西住家なら、きっとそうに違いない、とも思ってました。西住殿は、お風呂なんかでも他人に前を見せないように、かなり気を遣っている感じでしたから。アンツィオ戦前に大浴場で立ち上がってみんなに声をかけたときは、思いっきり不自然にタオルで前を隠してましたし。 「ついてる……んですか。男性のが」 「はい……」目をぎゅっと閉じて、苦しげにうつむいて。「私、そうなの。誰にも言ってないけど」 「西住殿……」 「だから、それを知ったうえで、決めてほしいです。優花里さんは……ほんとの女の子じゃない私でも、いい?」 「えっと、それは――」  ちょっと言い方を考えようとしたとたんに、西住殿の顔が目に見えてこわばったので。  あわてて強く手を握って、言いました。 「いいです! そんなこと気にしません!」 「……ほんとに? 無理してない?」 「いえっ、無理なんて。今のは西住殿を傷つけないようにって思ったんです! その、ちょっとは予想もしてましたし。西住殿、女の子離れしたところがありますし」 「あ、うん。そういうところは、あるかも……」 「いえいえ、そういう意味じゃないんですぅ! 普通の女の子よりも魅力的だってことです。だから好きになったんです! 西住殿のほうこそ、どうなんですか? それは、私を女の子として、ほしいって言ってくれたんですよね。私なんかでいいんですか?」 「優花里さん……」かすかに涙を浮かべた目を嬉しそうに細めて、「卑下しなくていいよ。優花里さんはとってもかわいい。だから私、好きになっちゃって……」 「そ、そうですか」なんだかすごく照れくさくなって、うつむいてしまったら。  西住殿は両手を回して抱きしめて、耳元で優しく言ってくれたんです。 「じゃあ……私のものにしちゃって、いい? 優花里さん……」  そのとき初めて感じました。  寄せられた西住殿の体の、おなかの下に、スカート越しにほんのりと熱くて硬いものがあるのを……。  そのときはまだ、それがどういうことかわからなくて。ただ、西住殿っていう大きな存在の一部に、ちょっとだけ普通と違うところがあるぐらいに思ったので、何も気にすることはないって自分に言い聞かせて。 「は……はい、西住殿」  不安を感じながらも、嬉しさでうなずいていました。      †    †    †  楽しい毎日が始まりました。学校へ行って、戦車に乗って、おしゃべりして、甘い物食べて、ってところは同じなんですけど。「優花里さん」って呼ばれることがちょっとだけ増えて。「優花里さん」って手をつながれることがちょっとだけ増えて。「優花里さん」って体をすり寄せられるようになって。「優花里さん」って、物陰で唇を……。  初キスは告白から一週間後の、駐車場の木陰でした。  いえ勢いで適当に、とかじゃ全然なくて。その日は戦車道の練習がとてもうまくできて、夕方に片づけをしていたんですけど、古くなった部品を二人で旧校舎のほうへ運んでいたら、駐車場で西住殿が立ち止まって。 「ここで優花里さんと初めて会ったんだよね。あのときは私も内気だったからどうしようか迷ったけど……思い切って話しかけて、ほんとによかった!」  そんなふうに笑って、木陰へ入って、 「優花里さんはここでもじもじしてたよね。あのとき、とっても可愛かった……」  って木に押し付けて見つめてくるんですよ。  そんなこと言われたら、私も思い出しちゃって。あのとき自分から声もかけられなかった人が、今はこうやって私だけを見つめてくれるなんて……。 「西住殿……」  近づく唇を避けられませんでした。部品箱持っていなければそのまま抱きついてたと思います。  ほんとに、そのときは二人とも手がふさがっていたから、唇を軽く重ねただけだったんですけど、そうでなければ抱いて抱かれて、離れなかったと思います。西住殿、とろんとして、すごく引きこまれそうな目をしてました。  告白してからの西住殿は、ちょっとだけ積極的になってくれました。たまたま二人でお弁当なんか食べているときに、「西住殿、その……あ、あーん」とお箸で卵焼きを差し出してみたら。  一瞬目を見開いてから、すごい速さでぱくっと来てくれて。「優花里さんのだぁ……」と満足そうにもぐもぐしたかと思うと、自分の菓子パンを、はむっとかじり取って。 「ふぁい、わーん……」  口移し。  なんですよね、それはそういう意味で。私思わず周りを見て、人がいないか確かめてからもらっちゃいました。 「あーん」  そうしたらパンどころか唇ごと……。  はぷっ、という感じで。頭に腕を回されて。逃げることもできずに食べさせられちゃいました……。  さすがに口の中で噛んだりはしてないんですけど。西住殿の唾液のついた食べ物を、食べさせられてるって思うと、不快って言うんじゃないですけど、何かぞわぞわした感じがして、食べること自体がみだらに思えてしまって。 「ふぁ、あむ、んく……」  って、食べながらすごくほっぺたが赤くなっちゃいました。  そうしたら西住殿が聞くんです。 「優花里さん、嫌じゃなかった?」って。  普通、食事中にふざけた程度のことで、そんなの聞かないじゃないですか。聞くってことは、やっぱり西住殿も意識してるんですよ。  それがわかってしまったから、私もとぼけたりできなくて。 「嫌じゃなかったです……」って、頭から湯気でそうな気持ちで、素直に答えました。  西住殿は、なんだかいやに目をきらきらさせてました。      †    †    †  けっこう長いあいだ、健全なお付き合いが続きました。一ヵ月ぐらいでしょうか。キスとか抱きつく程度のことは、健全っていいですよね?  そういうことをする女の子ってたまにいますし、周りの人も、たとえ西住殿と私がいちゃいちゃしているところを見ても、ああ前よりも打ち解けたんだな、ぐらいに思われていたんじゃないでしょうか。  私も最初のうちは、それまでの友だち付き合いがいくらか親密になったぐらいだと思って、単純に楽しんでいたんです。  でも、次第にそうじゃなくって来て。私たちは、西住殿は、普通じゃないんだなって思うことが、起こるようになりました。  それはたとえば、練習後に戦車から降りてチームで歩いてるときなんかで。あんこうの他の三人が前で話していて、「優花里さん、今日はがんばったねっ」と西住殿が後ろからぴょんと抱きついてきたりすると。  当たるんですね。  その、お尻に、西住殿のスカートの前が。  露骨に押し当てるという感じじゃないんです、ただ気兼ねせずに抱きついたら、はずみで当たってしまうという感じで。それは断言できます。私がびくっとすると、あわてて離れちゃいますから。  でも、私が知らんぷりをしていると、西住殿、そっと当てっぱなしにしたりするんです。  みんなでカラオケに行った時のことです。そのときはあんこうだけじゃなく、元バレー部のあひるさんチームや一年生もいっしょの大所帯だったんですけど。  カラオケに大人数で行くと、島ができるじゃないですか。あちこちで二、三人ずつ固まって、けっこう別々のことをしたりするでしょう。  それで、私と西住殿もすみっこでそんなふうになって。武部殿とか、あひるさんのキャプテンとかが歌ってるときに、並んで入力端末を見たり、もたれあったりしてたんです。  それで、ちょっと雰囲気出すために部屋を薄暗くしたりしてて、みんな和気あいあいとして雰囲気がほぐれていたせいか、「優花里さん、私ちょっと疲れちゃった」って、西住殿、私の背中に抱きついてきたんですね。こう、半分おぶさるみたいな感じで。 「西住殿、重いですよぉー」って私、笑ってたんですけど。  西住殿、腰の横にあれを当ててきたんです。  スカートの前の、むくっとしたところを。それだけを当てるっていうよりは、腰全体をくっつけるっていうふうですけど、それでも、はっきり感じ取れて。  その場で固まっちゃったんですよ。軽くパニクってました。  恥ずかしくて、やめてください、って言おうかと思いました。でも、言ったら、周りの人に何のことかと思われちゃいますし、そうなったら西住殿も恥ずかしいだろうし。  何も言えずにじっとしてるうちに、少しずつ気持ちが落ち着いて。西住殿、ぴったりくっつきはしたけれど、それ以上は変なことしなかったですし。うなじのところで、ふー、ふー、って静かに息を殺して、時々もじもじっとあれをこすりつけるだけでしたし。  それがなんだか、すごく可愛かったんですね。  したいけどできないことを、薄暗さにかこつけて、ふざけたように見せかけて、ばれてないつもりで一生懸命やっているのが。  それで私、すごくいじらしくなってきて、密着しやすいように、んしょっと西住殿の外脚を引き上げて、こっちの膝にかかるようにしました。  そして、「今日は甘えんぼさんですね、西住殿」ってささやいてあげたんです。  そしたら西住殿、うんって小さくうなずいて、ますますもぞもぞ押し付けてきました。けっこう不自然な姿勢だったと思うんですけど、そのときちょうど一年生チームが合唱を始めて、場は大盛り上がりだったので、誰にも気づかれずに済みました。私も無理に笑って、手拍子なんかしてました。  でもそのあいだずっと、お尻の横でとくん、とくんって熱くなってる硬いものを、意識しちゃってたんです。  いつの間にかそれが全然恥ずかしくなくて。普通に手を当てられてるみたいに自然な気がして。西住殿がそういうことをしたいんだったら、別にいいかな、って思っちゃって。  それどころか、じんわりとすごく幸せな気分になってました。西住殿がこういうことするのは私だけなんだ、って思うと。  やがて一年生の番が終わって、マイクが回ってきそうだったので、「西住殿、起きてください、ほら」って急いで揺さぶりました。  起き上がった西住殿は赤い顔で、向こうを向いてスカートを引っぱったり髪を直したりしてたので、私もごまかそうと、歌を入力したり、飲み物を渡したりなんかして。「歌えますか」って聞きました。  そしたら西住殿は、うん大丈夫って言ったあとで、私にだけ聞こえる小声で言いました。 「ありがと、ごめんね」  私はにっこり笑って返しました。 「いえ、大丈夫ですよ! デュエットしましょうデュエット!」      †    †    †  そのカラオケのときのことが、きっかけになりました。  毎日の暮らしの中で、二人きりになって、友達モードから恋人モードに切り替わったときには、「そういうこと」をしてもいいっていう。  抱き合ってキスしながら、西住殿がぎゅっと盛り上がりをおなかにおしつけてくる、「そういうこと」……。 「優花里さん、優花里さん……」 「んっ、西住殿……」  二人のおなかの下あたりに挟まれて、ころころと大きくなってくる、不思議なもの。  最初のころは二人ともそれについて見て見ぬふりをしてたんですけど、だんだん回数が重なってくると、私もそれを無視できなくなっていきました。  ある日の旧部室棟で――そこに廃棄部品置き場を作ったので、二人でよく行くようになっていたんですが――私たちはまた、抱き合いました。腕を回して胸を押し付け合って、セーラー服をくしゃくしゃにして。 「優花里さん……んっ、んん」 「むぷ、ん、西住殿ぉ……」  くっつけた唇の間でくちゅくちゅと舌を押し合って、ふっふっと息を交わすのは、とても気持ちいいです。うっとりしてしまいます。  それとともに、プリーツスカートをかさかさとこすりながら、ぐっぐっとおへその下に押し付けられるものに、私はどうしても意識を奪われてしまいます。  西住殿がすごく硬くなってる……おねだりしてるみたい……これって、やっぱりそういうことなんだろうなぁ……。  普段は全然意識しないんですけど。顔を赤くしてはぁはぁと抱きついてくる西住殿のせいで、私も自分が女だってことを思い知らされてる気持ちになって……。  その日はとうとう、がまんできなくて聞いちゃいました。 「西住殿、あの……これって、あれですよね? おちん、ちん……」  消え入りそうな声でささやくと、はえっ? と驚いた顔をして、西住殿が赤くなりました。 「う、うん、実はそう。……気づいてた?」 「そりゃ気づきますよぉ、こんなにぐりぐりされたら……」  私は恥ずかしくて目を逸らします。西住殿が腰を引いて謝ります。 「ご、ごめんね。気持ち悪かった? やめるね」 「いえ……気持ち悪いってことはないですよ」 「そうなの?」 「はい、最近は、まあ。最初はびっくりしましたけど……」 「そうなんだ……」  信じられない、というみたいに瞬きします。そしておずおずと、また腰を出してきました。 「じゃあ……当ててても、いい? かな?」 「んっと、はい」こくりと唾を飲んで、うなずきました。  西住殿はほっとしたように肩をつかんで、腰をすり寄せてきます。「あは……」ととろけたような、なんとも言えない嬉しそうな顔で、むにむに、ぐりぐり、とおなかの下に硬いものを食い込ませます。  その様子に、私もなんだか、おなかの内側が、きゅうっ……て搾ったみたいにうずいてくる気がして、それは、続けていったらどこか深い穴に落ちてしまいそうな、どきどきする気持ちで。  私はそれをごまかすように、言葉を続けます。 「西住、どのっ。それ、どんな気持ちなんですか……?」 「んっんっ、きもちいい、の。ジンジンして、ひりひりして、すごくいい……」 「気持ちいいんですか……」  私は手を差し入れて、さわさわっと撫でてみます。ぷりぷりに張りつめて熱くなった、焼いたフランクフルトみたいな形がわかります。 「お、おっきいですね……」 「あっく、手っ」  西住殿が、がくっと腰を引きます。 「痛いですか?」 「ううん、いい。すごく、いい……優花里さんの手ぇ……」 「手、いいんですか」  目を潤ませてはぁはぁ言う西住殿が可愛くて、私はもっとそこを撫でちゃいます。くぼめた手のひらで覆って、さらさら、さらさら、と。 「ふあ、ふあぁぁぁあ、あっ、あっ、いいっ」  西住殿が袖にきつくしがみついて、ぶるぶると肌を震わせました。そんなに気持ちいいんだ、と私は嬉しさでいっぱいになります。  数分それを続けると、とうとう西住殿が「あっあっ、あ」とつま先立ちになって、大きくいやいやをしました。 「だめっ、優花里さん、もうだめっ!」  そのとき、西住殿のあれは、おなかに貼り付くほど反り返って、ガチガチに硬くなっていました。よく知らない私にも、ちょっと大きくなりすぎてまずいんじゃないかと思えたので、手を離してうなずきました。 「は、はい。わかりました」 「はぇ……優花里……さん?」 「やりすぎは良くないですよね。この辺にしときます?」  西住殿はしばらくピンと身体を固くしたまま、はー、はーと細い息を吐いてました。  それが少しずつ力を抜いていくと、はぁー……と深々とため息をついて、うなずきました。 「うん……この辺に、しておく、ね……」 「はい」私はにっこりうなずいて、背中を抱きしめてあげました。「もう、戻る時間ですしね。大丈夫ですか、それ、しまえます?」 「うん……だいじょぶ、だけど……」ごくっと唾を飲んで、西住殿が外を指さします。「もうちょっとだけ、かかるから。先に戻っててもらえる?」 「はい。――あの、西住殿」 「ふぇ?」 「今の西住殿、可愛かったです。気持ち悪くなんか、ないですからねっ」  西住殿は私を見つめて、うん、と小さくうなずきました。  私は空き箱を抱えて、出て行きました。      †    †    †  思い返すと、そのときはまだ何にもわかってなかったんです。  私が西住殿に頭をくしゃくしゃしてもらうと嬉しいみたいに、西住殿も、そこをなでなでされると、気持ちがふわーっとして、嬉しくなるんだと思い込んでたんです。  全然、そんなことじゃなかったんですけど。  それからも、私と西住殿は、人目のない時を見計らっては、さわりっこするようになりました。西住殿からすり寄ってくることもありましたし、しましょうか、って私がこっそり言うこともありました。  格納庫の物陰で立ったまま抱き合ったり、学園艦の横腹の公園でベンチに腰かけてすり寄ったり、みんなでお店にいるときに一緒にお手洗いに行ってちょちょっとしたり。  「西住殿、おつかれさまです。いいこいいこ……」 「はっ、優花里さん、あっ」  いつも西住殿はそれをしてあげると、うっとりと嬉しそうになって。でも切り上げるときには、ちょっぴり切なそうで。  私自身も、似たような物足りない気持ちになってたのに、本当は何をしたいのか、気づかなかったんです。ジンジンとしたうずきが残るようなその感じを、ただ単に体を離したから寂しいんだ、と思ってました。  西住殿はそうじゃなかったのに。  すごく内気な人だから。人に声をかけるだけでも、すーっと息を吸って勢いをつけなきゃいけないぐらいに。だから、言えなかったんですね。  全然満足してないって。  それがわかったのは、西住殿の部屋でそれをしたときでした。  みんなで集まっておしゃべりしたあと、私たちだけが残った夜。二人きりだねって笑い合ってから、そういう気分になって。  ベッドに並んでさわさわしてるときに、とうとう西住殿が打ち明けてくれました。 「あの、あのね……? 優花里さん」 「はい」 「これ、続けてほしいの。やめないで」 「え?」  そのときはもう、西住殿のあれは、いつも切り上げるときに近いほど、スカートの中でカチカチのあつあつになっていて。だから戸惑ったんです。 「で、でも、このままやったら破裂しちゃいそうですけど……」 「いいの」ふっ、ふっ、と苦しそうに鼻息を漏らしながら、西住殿が言うんです。「はれつ、したいの。たまらないの」 「そんな……」 「ゆ、優花里さん知らないんだよね? 知らないからいつも、途中でやめちゃうんだよね?」初めて見る、西住殿の、すね顔でした。「知っててやってるなら、意地悪すぎるよぉ……」 「何がですか? 私、意地悪なんてするつもりは」 「やめないで」手に手を重ねて、西住殿が早口に言います。「あのね優花里さん、これって、出ちゃうの。最後に飛び出しちゃうの。そこまでやってくれないと、せつないの……!」 「出る……?」そのとき、本や何かで見たことを、おぼろげに思い出しました。「それって……せ、精液……とかですか」  んっ、と西住殿が強くうなずきます。そしてカタカタ震える手でティッシュの箱をひっぱり寄せると、何枚か引き抜いてスカートの中にねじ込みました。 「に、握って。くしゅくしゅして。今まで、より、つよく」 「え、えっと」わけがわからなくて焦っちゃって。それでも、西住殿の頼みですから、なんとかやってみようと思って。「こうですか?」 「そ、そおっ……」  スカート越しに握った、ティッシュの中のごりごりしたもの。  けんめいに、言われるがままにくしゅっくしゅっと上下させているうちに、肩に捉まった西住殿が、ぎゅう、うっ……と指に力をこめて、もたれてきて。  太腿をきつく閉じながら、かすれ声で、「そのまま……そのまま、続けて……やめない、で……おね、がい……っ!」と哀願してきて。  そんな、必死な声を聞いたら、こっちもどきどきして、最後までしてあげたくなって。 「こうですね……? このまま……?」  と額に汗を浮かべてしごいていたら、不意に西住殿が、「くうっ、ンンンッ……!」と鼻声を漏らして、ぐうっと背中を丸めたかと思うと。  ぶるるるっ! って、手の中で膨れたんです。  熱いあれが。まるで背伸びする小さな生き物みたいに。何度も、何度も。  ふきゅぅぅ……ぅぅ……って、ものすごく可愛らしい声が聞こえて、ピンと伸びた黒い靴下の爪先が、ひくっ、ひくって開いたり閉じたりしてました。  私は、何が起こったのかわからないまま、めちゃくちゃに胸をどきどきさせて、痙攣する西住殿をしごき続けていました。  じきに、ふあぁっ……といやに熱い息を漏らしたかと思うと、一気に西住殿がぐったり崩れました。「やめて……」って言われたので、手を止めて、ようやく私も一息つきました。 「西住殿……?」  振り返ったとき目に入ったのは、ぞくっとするほど色っぽい顔でした。耳まで真っ赤で、汗だくで、額に髪が貼りついて、目もと口元がてろっと濡れていて。  はあ、はあ、と湿った息を吐きながら、見たこともないほど優しい笑顔で言ってくれたんです。 「ありがとぉ、優花里さん……よかったよぉ……」 「そ、そうですか」  それでもまだ私はよくわかってなかったんですが、そのとき、気づきました。  スカートの中の硬い感触がいつの間にか、消えていて。  その代わりに、ティッシュがぐっしょりと重くなっていることに。  ふわっと嗅ぎ慣れない匂いがしました。甘い花みたいな、プールの塩素の匂いみたいな……。  体って不思議ですよね。  それを嗅いだ途端、私、わけもなく胸の中がすごくざわざわしたんです。  西住殿が、そんな匂いのするものを出したってことが、なんだかすごく艶めかしくて、惹かれることのような気がしました。 「手、離して、優花里さん」そう言ってから、西住殿が少し回復した様子で言いました。「今の……ね? わかる? なんだったか」 「はい……射精、ですよね」しゃせい、って口に出すとすごくえっちな言葉に思えました。 「うん。私、優花里さんの手で出しちゃった……」  はー、はー、と西住殿が背中にもたれます。 「恥ずかしい……人前でこんなのしたの、初めてだよぉ……。でも、優花里さんが前に、気持ち悪くないって、言ってくれたから……」 「はい、気持ち悪くはなかったです。西住殿、すごく一生懸命で、可愛らしくて」 「そ、そう?」もぞっ、と背中に顔が当たります。「でも、一生懸命だったのは優花里さんのほうだよ。ごめんね、何も知らないのに、こんなことさせちゃって」 「いえ、あの……正直私も、よくわかんなくて。何分、初めてでしたし。今ので、よかったんでしょうか?」 「うん。文句ないよ、優花里さん。最高だった……」 「これっ、その、こういうことしたかったんですね? じゃあ、今まで私がやってたのは、下準備だけ……?」 「そうだよ」顔が出てきて、いたずらっぽく笑いました。「ずっと、お預けされてた……」 「あわ……す、すみませんでした」 「ううん、いいの」ちゅっ、とほっぺにキスして西住殿が言います。「好意でしてくれてたんだし。それに……私も、優花里さんに何もしてなかったし」 「私にですか?」 「うん」  西住殿がうなずいて、私のスカートに手を置きました。 「優花里さんも、うずうずしてこなかった? さわってほしくない?」  言われて、初めて分かりました。  抱き合ってるとき、触ってるときに感じる、どきどきとうずうずが、どういうことだったのか。  ずっとひそかに自覚していた、パンツの中のひどい湿りが、なんだったのか……。 「はい」勇気を出して、うなずきました。「私も、さわってほしいです……!」 「うん。さわってあげる、優花里さん……」  西住殿の手が、スカートの中に来ました。ぎゅっと肩が縮んじゃいます。 「優花里さんも、恥ずかしいの我慢してね? すごく気持ちいいから」 「は、はひぃ……」  パンツをさすっと撫でられました。  私のあそこに生まれて初めてさわったのは、西住殿だったんです。      †    †    † 「レオポンさんチームは前衛、ウサギさんチームは稜線に隠れて援護してください。パンツァー・フォー!」  四号戦車のハッチから身を乗り出して、西住殿が命令します。アイロンのかかったタンクジャケットをぴしっと着こなして、スカートから伸びるすらりとした足を車長席に踏ん張って、とても凛々しいお姿です。 「ダージリンさん、西さん。予定の座標に着きましたか? こちらは間もなくK地点です!」 『もちろん、準備は万端よ』『こちらもです。あっ、敵車両を視認! さすが西住隊長、読み通りですね!』 「油断しないでください、別動隊がいるはずです。側面の警戒を怠らずに!」  合同練習の他校の隊長にも引けを取りません。戦車に乗っている西住殿は惚れ惚れするほど勇ましいお姿です。  でも戦車を降りて夜になると。 「はうぅー、疲れたよぉ、優花里さぁん!」 「はいはい、今日はずいぶんがんばっちゃいましたね」  ベッドに腰かけた私に、がばぁっと倒れ込んできて膝枕です。それもうつ伏せです。私の腿のあいだに顔をぐりぐり押し付けて甘えてくれます。栗色の髪の左右に垂れた、バセット犬の耳みたいな房が、スカートの上でぽさぽさと跳ねます。 「優花里さん、いい? ぎゅーしていい?」 「はい、どうぞ。好きなだけしてください」 「んふ」  横たわった私の上に乗ってきて、西住殿がちゅっちゅとキスをします。胸にぎゅーっと抱きついて、顔や頭をくんくんと嗅いで回ります。 「はぁぁ……落ちつくぅ……。今日はね、人がいっぱいだったから。相手チームも強かったから。すごくいろんなこと考えて、すごくいっぱいがんばったよ」 「うんうん、偉かったですねえ」  子供みたいにもぞもぞと甘える西住殿を、私はしっかり受け止めて、なでなでしてあげます。 「大変でした。デブリーフィング、します? 反省会とか?」 「もうっ、そんなのあと!」ぷくっと頬っぺたをふくらませた顔が、食べちゃいたいぐらい可愛くて。「今はもうなんにも考えたくないぃ〜。優花里さんとちゅっちゅするの……」 「はぁい、すみませんでしたっ」  キスをして髪をさわって頬ずりして抱き合っているうちに。ぴしっと張りつめてた西住殿の身体が、あったかく柔らかくほぐれてきて、ぺったりと私の体に貼り付いてきます。  それにつれて、スカートの中に小さく隠れていたあれも、大きくなって私のおなかに当たってきます。  おろおろするだけだった以前と違うのは……私もそれを感じて、体を開くよう覚えたこと。  力を抜いて、身を任せて、自分の体の内側に意識を向けていくと。どきどきと血の巡りがよくなって、いろんなところが熱くなってきます。 「優花里さん、さわっていい?」と西住殿は聞いてくるようになりました。  当てていい? じゃなくて。私の体がお気に入りになってきたみたいです。 「はい……さわってください」  手とか肩とか頭とか、人前でも触っていいところから、服の下のいけないところへと、手が動いていきます。あごの下を手の甲ですりすりして。ジャケットの下のブラの縁をつつーっと指でなぞって。おなかをふかふかと手のひらで押して。  太腿にぴったりと当てた手をそわそわと上へ滑らせて――それがすごく秘密っぽくてえっちなかんじで――パンツの股のところを、きゅむっと握られます。 「はぁう……」「あったかい」  さらさらの布ごと、あそこのぷっくりした膨らみを、きゅむ、きゅむ、と何度もつかみます。曲げた指の背の尖りで、谷間をこすこすして。指でひだをきゅっと寄せ集めて。  「あったかいよ、優花里さん。気持ちよくなってる?」 「なって……ますぅ……」  ジンジンしたうずきが高まって、ぴりぴりとした電気に刺されるみたい。触られてるところがぴくっと震えてしまって、膝をぎゅっと閉じちゃいます。   「えへへ……優花里さんのここ、ぷにぷにして可愛い……」  片手で私の頭を抱きながら、西住殿はすごく熱心にあそこを触ります。撫でて、握って、こね回して、さすって。ぬるぬるとおつゆがしみ出してくると、それがまた嬉しいみたいで。布がきゅちきゅち滑っちゃうぐらい、しつこくそこをいじってきます。  最初は恥ずかしかった私も、すぐに夢中になって、スカートがはだけるのもかまわず脚を開いちゃいます。 「西住殿、気持ちいいですぅ……」 「そう? 優花里さん気持ちいい? さわっていい? もっとさわっていい?」 「ひゃい、さわって、さわって」  嬉しそうにぞくっぞくっと肩を震わせて、西住殿は思い切りキスしてくれます。ちゅぷちゅぷ口の中を舐め回されながらあそこを激しくこすられると、私も一気に気持ちが高まって、頭が真っ白になります。 「ぷふ、にしうみ、ろのぉっ!」 「んっ、いるよ。私ここにいるよっ。優花里さんっ……!」  優しい声を聞くと何もかも預ける気持ちになって、くちゅくちゅくちゅっ、とすごい刺激が頭のてっぺんまで走って、びくびくーっと私は……のけぞっちゃいます。  しびれて、ふわふわしちゃってる私の耳元で、西住殿がささやきます。 「イッちゃったね……優花里さん、またイッちゃったねえ」 「ふぁひ……」 「すごいなぁ。嬉しい……優花里さん、もうすっかりイけるようになったね」  いくってなんなのか、最初はわかりませんでした。西住殿はあれを出す時にすごくいってるみたいですけど、私は出ないですし、どうすればいいんだろうって思ってました。  西住殿にあちこちさわってもらうようになっても、しばらくはわからなかったんですけど。四回か五回目ぐらいに、ぎゅーってキスしながら触られると、気持ちよさが収まらずにどんどんどんどん強くなっていって。  何か勢いよく走り出したみたいに、すーっと体が動いたような気がしたら……いってたんです、私。  一度そういうものだってわかると、次からはずっと楽になりました。二人きりでゆったりできるときに、しっかり抱き締めて触られると、いけるんです。安心してることが大事みたいでした。 「可愛いよ、優花里さん。戦車の中ではやったぜーって感じなのにね。さわっちゃうと、すごく女の子っぽくなるね……」 「やっ、もう……やめてくださいよぉ……」  私、戦車好きでいろいろ言われますけど、女の子っぽくて可愛いなんて言われるのは、こういうときだけで。嬉しいとかよりも先に、恥ずかしくなります……。  そういう西住殿のほうは、私をいかせた後も飽きずにもぞもぞとさわっておられて。下だけでなく胸のほうも、後ろのホックだけ外して浮いたブラの下で、もにもにとまさぐっています。  まさぐってくれている、という感じでした。例によって西住殿もスカートの前を硬くされているんですけど、それをこすりつけるよりずっと、私を愛撫するほうに没頭しているみたいでした。  なんだか悪い気がして、私は聞いてみます。 「西住殿ぉ、そんなにしていただかなくとも……」 「あ、もういやかな?」 「いやじゃないんですけど。私が甘えさせてあげるつもりでしたのに……」 「え、違うよぉ、優花里さん」西住どのが面白そうに目を細めます。「甘えてるよ? 私、すごく優花里さんに甘えてる」 「そうなんですか?」 「うん」むきゅ、と右のおっぱいを搾って。「こんなにさわれるの、優花里さんだけだもん。こうやって柔らかい優花里さんにもにゅもにゅさわってると、気持ちいいの……」 「そう、んっふ、ですか……」  親指と人差し指が乳首をくにくにとつまみます。まぶたをちゅっと吸われます。おもちゃにされているみたいです。気持ちいいけれど、西住殿の言葉はちょっと引っかかりました。  さわれるのが私だけじゃなかったら……武部殿や五十鈴殿に頼んで、うんと言ってもらえたら、西住殿はしてほしいんでしょうか?  ……すぐに首を振って、そんな考えを打ち消します。たとえそうだとしても、西住殿とお付き合いするようになったのは私なんだから。そんなこと、考えても仕方ない……。  西住殿のほっぺたはバラ色に染まって、スカートの前にはくっきりと尖がりが出ています。身動きするたびにそれが手に当たって、私も気になってきました。 「西住殿、私もさわりましょうか」 「……ん、してもらおうかな」  起き上がってごそごそと姿勢を変えます。一番大きいクッションを積み上げて、ゆったりともたれてもらって、私がそばに寄り添って座って。このちょっとした準備が、私はすごくどきどきします。西住殿に、特別なえっちなことをするっていう意味だからです。 「ちょっとだけわがまま言っていい?」 「え? なんですか」 「ティッシュの代わりに、優花里さんのハンカチ、もらえるかな……」 「ハンカチ……はい」  スカートのポケットから出したハンカチを渡すと、すーっとそれを一度嗅いでから、西住殿はスカートの中にもぞもぞと押し込みました。見ているだけで背筋がぞわぞわします。 「もう、なんで嗅ぐんですか……」 「優花里さんの匂い、大好きだもん。いい?」 「はい」  胸に覆いかぶさってあげながら、スカートに手をかけると、「中で」と言われました。西住殿はパンツを少し下げていて……手を入れると、私のハンカチをあれが突き上げていました。  ハンカチごと握りしめます。「ふぅ……」と西住殿が鼻を鳴らして腰を浮かせました。 「やっぱり……ティッシュより気持ちいい……」 「そ、そうですか……」  右手をくしゅくしゅと上下に動かして、だんだん力をこめて。「ふっあ……んっく……」と西住殿が半眼になってあごを引き、気持ちよさそうに膝をもぞつかせます。指の中のものがだんだん背伸びして、膨れ上がって、硬くなってきます。西住殿のおちんちんが、ひくひくといななきます。  ハンカチ越しの熱さと硬さのせいで、私は興奮してきます。さっき一度、西住殿にいかせてもらった体が、火照ってうずいてます。  頭がぼーっとして、私はうわごとのように聞きます。 「気持ちいいですか、西住殿……」 「うん……いいよ……優花里さんの手……」 「また、とろとろを出すんですか。びくびくって、いっぱい出すんですか」 「うん、出す……すぐ溜まっちゃうから。いっぱいね、出したい……」 「手で、いいんですか。こういうのって……もっと別のことするんじゃ……」  ふっ、ふっと詰まるような息をしていた西住殿が、私に目を向けて、ぽろりと言いました。 「ほんとはね、優花里さんにしたい」 「私、に……」 「うずうずをね、優花里さんにかけたいの……押しつけて、浴びせて……それから、入れたい。優花里さんの中に、したい」 「な、か」  私は思わず凍りついてしまいます。 「うん。とろとろをね、優花里さんの中に、いっぱいいっぱい、詰めこみたい……」言ってから、んくっと強く息を呑みこんで、微笑みました。「ううん、いいの。そんなことしちゃったら大変だから。手で、いい。優花里さんの手、嬉しいよ」 「西住殿……」  袖にしがみついてきた西住殿が私の胸に顔を押し当てて、ふーっと熱い息を吐きます。 「続けて。優花里さんの可愛い手……優花里さんのハンカチ、使わせて。出しちゃえば、収まるから。ね……」  言われて私は、また手を動かし始めました。いっぱいに大きくなったあれを、根元から先っぽへ。ぐっぐっとしごきます。 「んう、ちょっと強い……」  「はい……」 「そう、それ。そんな感じ。そのまま、そのまま、ね……あ、あ、いい、いいよぉ。優花里さん、優花里さんだ、優花里さぁん……」  西住殿の声が上ずっていきます。はあ、はぐ、とむさぼるように胸の下に顔を押し当ててきます。  手を動かすだけだから、マッサージのようなものだから。私は、冷静にそれを続けられるはずなんですけど。  全然冷静でなんかいられなくて。私にぎゅーっとしがみついてはしたなく脚を開いてる西住殿の、頭の中のことを考えてしまって。  この人は、今されているより、もっとずっとすごいことを想像してる。  私の手だけなんかじゃなくて、私の体を、まるごと食べてしまおうとしてる。  そう思うと、なんだかものすごく、うずいてしまって。このまま押し倒されたい、食べられたい、めちゃくちゃにされたい、って思いが頭の中で渦巻いて。  出せないその気持ちを、手に込めました。その手が、私の体の代わりになったみたいなつもりで。指を絡みつけて、根元からなぞり上げて。  包むように優しく強く、きゅ、きゅっ……としごきあげました。  それはすごく効き目があったみたいで。「んうぅぅ、すごっ、優花里さっ……!」と喉の奥でうめいた西住殿が。 「かっ……は……」  口を開けて息を切らしながら、射精しました。  びゅーっ、びゅーっ、びゅるる、びゅるっ、びぅぅ……っという感じで、まっすぐのおちんちんが立て続けに震えて。スカートに包まれたお尻が、ぐいっぐいっとすごく激しく前へ跳ね出して。太腿の筋肉が何度も何度もぎっぎっと張りつめて、ひざ下が綺麗にぴぃんと伸びて……。  おなかに抱きつく力は、背骨がきしむほどでした。  「あはっ……」  私も頭がくらくらっとして、危うく倒れるところでした。西住殿がどれだけ激しく私を求めているか、まざまざとわかって、あてられてしまいました。 「はーっ、はーっ、はーっ……」  出し尽くした西住殿が、脱力しきって伏せています。うなじも太腿も汗びっしょりで、そこから甘い花の匂いが立ち昇って、むせ返りそうです。  私の指はしっとりと湿っていました。ハンカチを引き抜くとどろどろで、外まで染み出していました。布を開くと……あの青臭い匂いがむわっと立ち昇って、顔を撫でられたみたいな気がしました。泡立つ黄色っぽいクリームがたっぷりと乗っていました。  うわ……ぁ、という声を、懸命に呑みこみました。西住殿は今まで、あの部分もそのクリームも、決して見せてくれませんでした。スカートに隠して触らせるだけ。見られるのは死ぬほど恥ずかしいみたいです。  今も、気づかれたら、だめっと言われるに違いありませんでした。  そう言われる前に、私は――。 「……んぷっ」  なんでそんなことをしたんでしょう。冷静なときなら絶対しないと思うんですけど。  その、ほんのり温かいねとねとに唇を当てて、ちゅるりと吸いこんでいました。  ぞわっと鳥肌が立ちました。どこから出たのか考えると、ひどくおぞましくて。でも、そうしたくてたまらなかったんです。西住殿が汗だくで搾り出したそのクリームが、すごく大事なものに思えたんです。  ほのかにしょっぱくて苦い粘りが、舌と喉にからんで胃に落ちていきました。歯のあいだに糸を引くようなキシキシした後味が残りました。 「んっ……む」  抵抗感を、口を押さえて我慢しました。味とか匂いとは異なる次元で、おなかの底からじんわりと満足感が湧いてきました。  そうすることで、西住殿が私にぶつけられなかった激情を、受け止めてあげたような気持ちになったんです。  ハンカチを手にして震えていると、「優花里さん……?」と身を起こした西住殿が、ハッとしてそれをひったくりました。 「だ、だめだって、そんなの見ちゃ! 気持ち悪いでしょ? 大丈夫?」 「んえ……ふぁい……」 「これ、捨てるからね。後で代わりのを上げるから」 「はい……」  西住殿はハンカチをごみ箱に入れると、「ごめんね、優花里さん。私ちょっと、やりすぎちゃったかな……」と気遣いながら、私を洗面所へ連れていって、手を洗ってくれました。 「やっぱり、こういうのやめようか。優花里さんは普通の女の子だもんね。ごめんね、変なことさせて」 「いえ。大丈夫です……」  しきりに謝る西住殿に、気にしないでほしいってなんとか伝えたんですけど。  その後のキスだけは、受けられませんでした。  こんなの西住殿に味わわせるわけにはいかないと思ったんです。  好きじゃなければ、無理。  あの熱く硬くなるあれを、愛しく思える女の子じゃなければ、無理、って。      †    †    †  ごく小さなころは男の子みたいなかっこうで暴れ回ってた私ですから、小中の一時期に、ふっと思ったぐらいでした。  自分も大きくなったら、お母さんみたいに男の人と結婚するのかなって。  思春期にかかってくると、逆にそんな思いはきれいさっぱり消えました。誰とも付き合わない選択肢もあるとわかってきたので。自分が恋をして結ばれることはないだろうと割り切ってました。  でも。  いまは百八十度考えが変わりました。自分でもびっくりするほどの超信地旋回です。  もし自分が誰かと結ばれるんだとしたら、見知らぬ男の人なんかよりも。今ここにいるあの人に捧げたい。  私にもそういう時期が来たとわかったからには、きちんと調べて対策を練ることにしました。マニアの本領発揮です。私の好きな人は、この方面にさっぱり疎いみたいですし。  そうやっていろいろシミュレーションして通販して日程を合わせて、ある計画に踏み切りました。 (後編へ続く)