二人のとっくん作戦です!  ちょこんと椅子に腰かけたみほの前で、タンクトップ姿の優花里が床に横たわる。 「まずはプルオーバーからです」  日暮れ過ぎの秋山理髪店、優花里の部屋だ。畳にはナイロンのヨガマットを敷いてある。  聞き慣れない言葉を、みほはオウム返しに口にする。 「ぷるおーばー」 「胸と背中の筋肉使うやつですね」  仰向けの優花里がそう言って、重さ三キロのダンベルを両手に握る。  それを、寝たまま前へならえのように天井へ向かって差し上げる。そこから頭の上へ向かってゆっくりと倒してばんざいする。垂直に戻してからまた倒す。垂直に戻してからまた倒す。  十回繰り返すと、ばんざいして目を閉じる。 「インターバル約一分です」 「いんたーばる」 「一セット目に遊んでた筋肉に召集かける感じですか」 「へえ」  時間を数えているのか身体の調子を感じているのか、しばらくじっとしてから、また同じ動作を十回くり返す。一分空けて、また十回。  それが済むと体を起こし、あぐらをかいて両のダンベルを耳の横に構える。 「次はプレス」  ぐぐっ、と頭の上の高さまで持ち上げ、ゆっくりと下ろす。持ち上げて、下ろす。 「これは手首と上腕筋ですね」 「うん」  十回ずつ三セット繰り返して、はーっと深呼吸すると、立ち上がる。 「それからアームカール」 「あーむのかーる」 「こうして」ダンベルを腰の横につける。「ここまで」ぐぐぐ、正面からすくい上げるように肩の高さまで上げる。 「んっ……と、んっ……と」 「それは砲弾持ち上げるのに効きそう」 「全部ですよ」  十回を二セット、それから九回。最後は少し息が荒くなっていた。優花里は例によって、女の子向けのダイエット用の可愛いダンベルではなく、いかにも筋トレ用という感じのごつい鉄ダンベルを使っている。体が火照ってきたようで、肌が上気して汗ばみ始めている。  優花里さんてどうやって鍛えてるの? と昼にみほが訊いたのだ。本人は最初恥ずかしがっていたが、頼みこんで見せてもらうことになった。  三つめのメニューを済ませた優花里は、続いてダンベルを床に置き、また仰向けに寝る。かと思うと腋の外に両手をついて胴を持ち上げた。体が滑り台のように斜めの板になる。 「リバースプッシュアップ」  肘を背後方向に曲げて、また伸ばす。盛り上がった胸がゆっくりと上下する。くっふ、くっふ、と息を漏らす。 「これが、なかなか」 「そろそろきつくなってきた?」 「まだまだ、ですっ」  だが優花里はもう、歯を食いしばっている。  それも三セットこなすと、どふん、と脱力して仰向けになった。ぐったりと力を抜く優花里のそばにみほが膝を突いて、渡されていたタオルで、とんとん、と額を叩く。 「汗かいてきたね」 「ありがとうございます……気持ちいいです」 「拭いただけだよ?」 「それでもです!」  ぐるりと体を回してうつ伏せになり、マットにぱんと手の平を置く。 「次っ、腕立て!」 「ここから腕立てなんだ」  すでに二十分以上続けている。構わず優花里は肘に力を入れ、「んぐっ」と身体を持ち上げた。かかとから首筋まで一本の棒を入れたように、ピンとまっすぐにしたまま、ぐいっ、ぐいっ、と肩を上下させる。 「ひとっ、ふたっ、さんっ、よんっ」 「無理しないでね、優花里さん」 「春、から、やって、ますしっ」  十回上下して、うつ伏せで休んで、次に九回。その次は八回。 「ふたろく、ふたなな、ふたはち……はーっ!」  どべっ、とマットにうつ伏せになって、優花里ははあはあと背中を喘がせた。みほがちょっと笑う。 「優花里さんって面白い数え方するよね」 「軍隊式です……いちとしち、にーとしーなんかは、戦闘中に聞き間違える恐れがありますから」 「あ、それでなんだ……」 「インターバル、三分取ります! ちょっと疲れました……」 「うんうん」  みほはそばで正座して見守る。うつ伏せであえいでいる優花里の二の腕から肩はピンクに染まって、うなじの後れ毛がしっとりと汗ばんでいる。それはとてもきれいな眺めだ。  開き直って筋トレに邁進してしまったアリクイさんチームとは違って、優花里はあまりチームの前で努力しているところを見せない。男の子みたいな激しいトレーニングをしているのが恥ずかしいらしい。でも、そんなことないよ、とみほは思う。  産毛の残る肌にうっすらと筋肉の輪郭を浮かび上がらせて、力いっぱい運動している優花里の姿は、うっとりするほど魅力的だった。  思わず身をかがめて、つ、と肩に唇を当ててしまう。ツンと爽やかな汗の香り。 「んっ?」  優花里が振り向く前にさっと身を引いている。目が合うと、えへへ、と笑った。 「なんですか?」 「ううん」 「あの、そこらの漫画でも読んでていいですよ。見ててもつまんないでしょうし」 「ううん、そんなことない! 楽しいよ?」  身を乗り出すと、楽しいですかぁ……と優花里はくすぐったそうな顔をした。 「楽しいようなものですかね……」 「楽しいって言うとあれだけど、優花里さんが砲弾込めるために一生懸命鍛えてるんだから、嬉しいよ! これ毎日やってるんでしょ?」 「毎日じゃないです。週に二、三回ですね」そう言って苦笑する。「みんなと遊んだり、みほどののおうちに行くときなんか、ついサボっちゃいますけど」 「それでも立派だよ! 私ちゃんと見てる。あ、一緒にやろうか?」 「みほどののお仕事はみんなの指揮でしょう。頭のほうを使ってくれればいいんです」 「それはそうだけど……」 「それにですね」優花里はまたダンベルを手にして立ち上がる。「ほんと言うと、見ててもらうだけですっごい助かります」 「そうなの?」 「そうですよ。好きな人に見られてたら、もりもりやる気出ちゃいますよ」 「あ……そっかぁ……」 「えへへ」  優花里は直立して片手にダンベルをぶらさげ、片手を頭の横に当てた。自分で自分の頭を押すような形で、ぐいっとダンベルを深くおろす。 「サイドベントです」 「頭、鍛えるの?」 「いえー、こっちの腋の筋肉ですね。こう、ぐぅーっと」 「優花里さんの腋って素敵だよね……」 「へ、変なとこ褒めないでくださいよぉ!」  優花里が照れくさがってわしわしと頭を掻く。可愛いなあ、とみほは目を細める。  左右二十回ずつダンベルを上げ下げすると、また天井を向いて横たわり、今度は足を持ち上げた。真横に伸ばした両腕で体を支えながら、ショートパンツから伸びるすらりとした両脚を上に向け、ぐいん、ぐいん、と左右へ大きく倒す。 「これ、はっ、リバーストラン、クツイス、トッ」 「おなかすごい捻ってる。ダイエットみたい」 「ダイエット向き、ですよっ。武部どのも、やればいいん、ですけどっ」 「明日教えてみようよ」 「です、ねっ。はー」  みほの目の前でぐいんぐいんと脚を振り終えると、また全身を伸ばして大きく息をついた。後どれぐらいやるの? とみほは聞く。 「あと腹筋背筋バッククロスタッチで、三メニューですかね」 「一時間かかっちゃうね……」 「もうちょっとですね。走るんで」 「走るんだ!?」 「そうですよぉ、これはまだ筋トレですから」ぐるんと仰向けになりながら優花里は言う。「このあと持久力つけにいきます。八キロちょっとある四号の砲弾八十七発、場合によっては全部装填することになるんですからね!」 「そ、それはそうだけど……」 「一緒に走ってもらえます?」  聞かれたみほは、拳を握って答えていた。 「走るっ! 走ります、優花里さん!」 「あはっ、ありがとうございます! んよっ……と!」  ゆかりは嬉しそうにうなずくと、顔を引き締めて背中をのけぞらせた。   学園艦の市街地を、千メートルずつ右舷、艦首、左舷、艦尾へ。ぐるりと一回りするコースを、意外にもみほは遅れもせずに走り抜いた。聞いてみると彼女も一人の日はけっこう走っているようで、ジョギングなら負けないから! と子供っぽく胸を張った。  それが終わるとさすがに優花里もくたくたになってしまったが、みほがさらにあることを誘ってきた。 「優花里さんあれやろうよ、あれ」 「あれ?」 「ほら、ぎっこんばったん!」  ジョギング前にジャージ姿に着替えていたみほが、優花里の後ろへ回って背中を押し付けた。 「こうしてー、腕を組んで」 「な、なんですか?」 「えいっ」 「わ」  背中合わせになったみほがぐっと腕に力をこめる。優花里はぐいっと仰向けに持ち上げられた。突然の浮遊感に、思わず足をばたつかせる。 「あっ、ちょっ、みほどの!」 「わあ、暴れないで、優花里さん!」  すとんっ、と地面に下ろされる。背中にぴったりくっつついたみほの声がする。 「やったことない?」 「体育の授業では、やらなかったですね」 「いいストレッチになるから。力抜いて。身体をゆったり預けて。ね?」 「は、はい」  もう一度同じように肘を引かれたので、言われた通りおとなしく身を任せてみると、両脚と胸から下が、体重から解放されてぶら下がった。――酷使されて熱を持っていた筋肉が、ぐぅっと引き伸ばされていく。えも言われず心地いい。  それに、丸まったみほの背中の温かみが、いっぱいに伝わってくる。 「うあ、あ……これは……」 「どう?」 「いい……です……」 「でしょ? はい、つぎ優花里さん!」  地面に下ろされたので、真似をしてみほの肘に力をかけ、うんっと前かがみに背負いあげてみた。ぶらん、と脱力しきったみほの体の重みが、ずっしりとかかってくる。 「ふわあぁ……伸びるぅ……」 「こうですかね……?」 「あ、やりすぎやりすぎ、落っこちちゃう!」  頭からみほを背負い投げにしかけて、あわてて優花里はみほを戻した。 「す、すみません!」 「そんな優花里さんは、こうだよっ」 「わっ」  ぐいっ! と思い切りまた持ち上げられる。一瞬湧き起こる恐怖心を、大きく深呼吸して逃がす。だんだんこの運動のコツがわかってきた。頭から逆落としにされるこわさを、相手を信頼して乗り越えればいいのだ。  全身の力を抜き切って、頭までのけぞらせて、みほにもたれる。それが伝わったようで、みほが絡めた肘に、ぎゅぅっ……とすごい力を込めた。ぎちぎちと腋を絞めつけながら、「優花里……さん……っ」と楽しそうにささやく。ただのストレッチ以上の意味がこもっているのがわかる。  向きは逆だけれど、これは抱き締めているのだ。全身で優花里を支える喜びを表している。 「ふきゅぅぅ……みほ、どのっ」  肺の底まで呼気を搾り出された優花里は、自分の足が下ろされると、今度は同じように腕に力をこめて、しっかりと自分の背中でみほの背中を支え上げた。 「えいぃっ……!」 「ふああぁ……ゆかりさん……いいっ……!」  みほのほっそりした体が、自分の上で長々と伸びる。重みがとても心地いい。  通る人のいなくなった夜の細道で。二人はジャージの胸を大きく上下させながら、何度も相手を背中に担ぎ合った。         〇oooooooo〇  結局その日も、みほは泊まっていくことになった。秋山一家の夕食に加わって舌鼓を打ち、楽しい夕べを過ごして、一緒に床に就いた。  目いっぱい運動したあとだったので、すぐに眠りに落ちてしまったが、疲れのためか、優花里は明け方に夢を見た。  ――うさぎさん、このまま進むと危険です、停止できますか!  ――無理でーす!  ――わかりました、うさぎさん、あひるさん、あんこうと間もなく合流するので、合流したら南東に進んでください。  ――あ、いた、せんぱーい!  ――はい、落ち着いて!  はっと目が覚めた。  悪夢というほどではないが、緊張に満ちた夢だった。発砲の轟音と着弾の地響きにぐらぐらと揺れる四号の中で、恐怖と焦りに圧倒されかけていた記憶。  ほっとため息をつく。夢でよかった。草色のカーテン越しに、夜明けの光が染みこんでいる。  あれはいつのことだったろう。うまく思い出せない。とにかく、自分たちがくぐり抜けてきたいくつものピンチの中の、どれかだ。四号戦車の装甲は大半の場所で厚さ五十ミリもなく、ちょっとまずいところに当たれば簡単にやられる。チャーチル、T−34、パンター、シャーマン(そうだ、シャーマンだ)。たくさんの敵に狙われた。車体が砲弾をはじくたびに、ぞっとして鳥肌が立った。手がすくんで砲弾をつかめない時だって、本当は何度もあった。  そんな中で。  ――わかりました。落ち着いて!  耳を疑ったものだった。  苦しい時にみんなを励ますとか、難しい局面で打開策を思いつくとか、そういう次元の話じゃない。そういうことなら、自分にだってできなくもない。  でも、予想もしない方向から突然撃たれて、いるはずのない敵に囲まれて、驚いて混乱して、何が起こったのかもわからないときに、すくみ上がらず、悲鳴ひとつ上げずに。  とっさに身を乗り出して、一瞬で事態を把握して、ほとんど反射神経だけで逃げ場を見つけ出し、あまつさえ……パニックに陥っている仲間を、ひとことで従わせていくなんて。  凄い。  思い出すだけで、あのときのざわざわとした得体の知れない高揚が戻ってくる。イヤッホウ、と叫びたいような奮い立つ気持ちだ。  自分は、自分たちは、間違いなく信頼できる指揮官に率いられているという喜び。この人の下でなら、たとえ勝っても負けても、全力を尽くして納得のいく戦いができるという確信――そんな気持ちを、初めての奇襲を凌いだあの時から、抱くようになった。  優花里にはわかる。それはダイヤモンドよりも貴重なものだ。世界中の戦車乗りが願って、それなのにほとんど手に入れることのできないもの――正しい資質を持つ指揮官。それに恵まれるという幸運を、自分たちは味わっていたのだ。 「う……ん」  かすかな声がして、温かいものがぽふんと身動きし、甘い香りが肩の横の布団の隙間からふわりと流れ出す。  右を見ると、その人がいる。  さらさらした栗色の髪を、貸した自分の枕に流して、幼な子のように安らかに目を閉じ、すうすうと寝息を立てている。  優花里はまじまじとその顔を見つめて、何度も瞬きする。口元が歪む。  きっと今が人生で一番幸せな時に違いないから。  眠るみほの肩にそっと腕を回して、髪に頭をこすりつける。世界中の何よりも大事なもの。人の形をした奇跡。この人の行く手はきっと大きく開けている。無限軌道に身を乗せて、想像もできないほど遠くまでいくだろう。  自分はそれに、どこまでついていけるだろうか。  わからなかった。いくら、見上げないでと言われても。比べものにならないほどこの人はすごい。  悪い夢がきっといつかは醒めるように、この幸せな夢だっていつか醒めないわけがなかった。 「うう……う」  そう思うと無性にせつなくなって、腕に抱いた肩を少しだけ引き寄せた。柔らかくて細い肩。キスされるために置かれたみたいに近い唇。眠っているみほに誰かが黙ってキスなんかしていいわけがない。  許されないことを、優花里はする。 「ん……」  みほの唇は、と優花里はいつも思うことを思う。自分の唇よりも小さめで、しっとりと水気がある。唇だけでなく鼻も頬もひどくきめが細かくて、まるで赤ちゃんの肌みたい。おっぱいもそうであることを知っている。南のほうの人だからかな、とちらっと思ったこともある。なんにしろものすごく素敵で、こんなに柔らかいのに砲弾と破片の飛び交う戦車の上に出ていられるなんて、それもやっぱり奇跡のように思える。  そうして、この唇に触れた人は、今まで自分しかいない。自分よりずっと昔からみほを知っているご両親もお姉さんも(いや、その三人はほっぺたにキスぐらいはされたことがあるかもしれないけれど)、黒森峰の誰かれも、みほの唇を知らない。  自分だけ。  みほがどんなにたくさんの人に愛されていても、今は自分の腕の中にいてくれるのだ。  みほが微笑んだ。 「ん……? ううん」  目を細めて口元を緩めて。その瞬間、優花里は心臓が止まる。けれどもみほは、ちょっとくすぐったいから、とでもいうように穏やかに首を振っただけで、ごろり、とむこうを向いてしまう。  寝息が続いている。起きなかったみたいだ。  優花里は息を吹き返す。どっどっと心臓が脈打っている。寝ているところにこっそりキスしてしまったという自責と、寝ているところにこっそりキスしてしまったという暗い喜びと、寝ていてもいなくてもこの人は許してくれるはずだという希望が、胸の中で荒波みたいにぶつかりあって入り混じる。  こんな幸せは今だけだ、という思いが、一つ目を押し流して、二つ目と三つ目の気持ちを際立たせる。   ――恋人なんですし。私の部屋ですし。昨日だって多分、きっと、ひょっとしたら。こっそりキスされましたし。  優花里はあれに気づいていた。腕立て伏せで潰れていたとき、そっと肩に唇をもらっていたのを。  気づかないふりをすることで、大事に胸の中に取っておこうとした。  しまい込んだはずのその思いが、今ひょいと転がり出して、むくむくと大きくなってきた。早朝で、まだ体に眠りの熱が残っていて、そしてみほが可愛すぎるせいも、もちろんあった。  ――みほどの……。  ごそ、と身体を横向きに立てると、肩から冷たい空気が入って、今の場面をくっきりと意識した。  冬の平日の朝、たぶん六時すぎ。外から小鳥の声と車の音は聞こえるけれど、明かりと暖房を消してあった自分の部屋は冷たくて薄暗く、砲弾とプラモと戦車グッズと自分の布団と自分が、いつもと変わりばえもなく静まり返っている。もうあと少しすると目覚ましが鳴って親が呼びにきて、カーテンが開かれる。  普段と同じ一日の始まりだ。一点だけを除いては。  それは、まだ自分の布団にみほがいるということ。 「んふっ……」  始まっていない朝の手前に、少しでも長く留まろうとするみたいに、優花里は布団をぐっと引き上げ、みほの後ろ頭に顔を埋めて、ぴったりと背中に抱きついた。 「ふーっ、ふーっ、ふーっ……」  うなじの香りをいっぱいに吸っては吐いた。昨夜は同じシャンプーを使ったけれどそれですっかり匂いが消えたりしない。みほはみほの匂いがする。優花里が何よりも好きな、慎ましやかな花の匂い。  みほの頭は大きい。  頭の鉢がいやに大きい。チームの五人で撮った写真を見ると、自分や麻子も同じぐらいあるように見えるが、それはやたらと髪が多かったり、顔が小さかったりするからだ。でも、みほはそうではなくて、頭骨からもう、かなりの大きさがある。  誰も気にしていないようだが、優花里は今まで何度も抱き締めるうちに、そのことに気づいていた。  昔、百五十両以上もの敵を撃破した、伝説の戦車乗りがいて、その人もやはり、人一倍頭が大きいので有名だった。きっとみほの大きな頭にも、みんなを勝たせてきた魔法が詰まっているのだ。  そして自分への想いも。そんなふうに考えるのは自分でもおかしいというか、いやらしいと思うのだけど、抑えられなかった。優花里はみほの頭が好きだった。それにそこは、涙滴を逆さまにしたような完璧なまでの丸みがあって、単純に見たり触れたりしているだけでも心地よい。  栗色の細い髪に覆われた頭を両手で包み、さらさらと飽きもせず撫で回した。  それからそっと丁寧に、でもためらいなく、左腕を前に回してシャツの上から乳房をつかんだ。右手はやり場がなくて二人のあいだに折り畳む。腰はお尻に押し付ける。足がいちばん大事で、みほの左足にかかとをかけて両足で挟んだ。  自分の右腕以外、邪魔なものはないから、鎖骨からすねまで隙間なくみほに密着している。肋骨を抱き寄せてさらに圧力を強める。もちろん傷つけるつもりはないから、痛まない程度に。でも昼間に勢いで抱きつくときよりも、ずっと力強く。好意を越えた欲情だとはっきり示すように。  下腹をつるりとしたお尻の弾力で押される。みほは優花里が貸したシャツとショートパンツを着けているが、布地の感触がかえって心地いい。愛撫の真っ最中でもなければ、みほのお尻になんか触ったことはない。どんな時でも遠慮が働いてしまう。その遠慮をねじ伏せて、ぺったりと押し付けている。  胸。ノーブラだ。八十二センチの形のいい乳房は優花里のそれよりも成長していて、下から手を当てると乗ってくる感じだ。今の気持ちから言うと、これはもう優花里のものだ。ほかの人間なんかに絶対触らせたくない。こちらはTシャツの薄布すら邪魔くさい。一度手を下げて、裾から差し込んで、生でもう一度握った。  指に肌がぴたりと貼りつく。温めたプリンみたいに滑らかで頼りない。その先端まで見つけてしまう。ふにっとした儚い手ごたえの乳首。みほのそこは自分よりも少しだけ大きくて女らしい。  かかとで引き寄せた左足は、自分の両足の甲と裏で挟みつけて、すりすりと撫でまわした。  もうこのときには自分が無抵抗のみほを犯していることも、気づかれるに決まっていることも、自覚していた。みほが気づいて、優花里さん? と戸惑って聞いてきても、哀願して懇願して、しゃにむに抱きすくめ続けようと思っていた。  けれどもなぜか、みほは反応しない。  すー、すー、すー……と穏やかな寝息が続いている。優花里はいぶかしく思う。  ……みほどの、こんなに寝つきのいい人でしたっけ……。  そして、ハッとあることに気づく。  栗色の髪から覗いている耳たぶが赤い。完全に上気して、火照っている。  ……あ。  起きている。  みほはもうとっくに、自分が何をされているのか気づいているのだ。  それがわかったとたんに、優花里も恥ずかしさで、かっと体が熱くなった。  いつからだろう? ううん、それはどうでもいい。大事なのはみほが抗わないということだ。すー、すーという穏やかな寝息も、注意して聞くと、一生懸命自然な感じで保っているのだとわかる。  戸惑って寝たふりをしているのだろうか。それとも、怖がって?  相手の気持ちがよくわからず、優花里は少し動きを止めてしまった。  するとしばらくして、きゅっ……とかすかな感触があった。  手でも肩でも頭でもお尻でもなくて。  みほの足の指が、優花里の左足の親指を握った。  きゅっ、とためらいがちに一度。間をおいて、きゅっきゅ、と二度。強くはなくて、くすぐるよう。むしろ、ねだっているか急かしているみたいな、せわしない間隔。  それはほんとに、小さな小さな合図だった。昼間に楽しく話していたら、気づきもしないだろう。でも今ひとつ床のなかで身を重ねていると、声に出して言われるよりもはっきりとわかった。  声、出したくない。  そして、声をかけないでほしい……。  みほどの、という呼びかけをぐっと呑みこんだ。汲み取れた。聞かないことが、この朝のルールみたいだった。  ひとことも発しないまま、優花里はみほの腰のくびれの下を通して、右手を前に出した。お腹をピンと横切るショートパンツのゴムをくぐって、下腹部に滑りこませる。肌に張り付いた下着を剥がすように指先を股間へ押し進めると、くしゅくしゅした感触の先が、湯たんぽでも挟んでいたみたいに、ぼうっと熱くなっていた。  ふっくらと充血して熱を持ち始めている女の子の大事な部分。布とひだのあいだに溜まったぬるぬるする手触り。ひくっ、と声なく震えたみほの全身。  優花里はぐいっと身体を揺さぶって、恋人を抱え直す。息づいて熱くなって待っている、自分と同じぐらいの大きさの、同じ作りの身体に、とても親しい気持ちを抱く。  この姿勢で何をどうすれば気持ちよくなるのか、よくわかっていた。自分一人の時も同じようにするから。  右手をあそこに、左手を胸に、深々と貼りつかせて、じっくりとこね回した。胸からどくどくと伝わってくる鼓動と、切れ切れのかすかな可愛らしい喘ぎ声と、さわさわと首を振る動きから、感じ具合は手に取るようにわかった。与えているだけで頭の芯がしびれるほど自分も心地よかった。耳元に熱い吐息を吹きかけて返した。  布団の底でみほの足首がもがき、爪先が跳ねる。自分の足で挟みこんでぎゅっと押さえる。ふるるっ、とみほの体に震えが走った。強く捉まえるようにしてやるほど、嬉しいみたいだ。  ぐいぐいと細い体がねじれ、のけぞる。はーっ、はーっと激しい息遣いが聞こえてくる。優花里は指を深々と食い込ませる。それまで入れたこともないほど深くみほの胎内に指を抜き差しし、ぬかるんだ内壁をこすり立てる。  ふるっふるっ、とみほが首を横に振った。快感が強すぎるのか、何かを嫌がっているのか、よくわからない。  かと思うと、ごそごそと暴れたみほの左手が、こちらの腹に入ってきた。下腹部をまさぐろうとする。  声をかけないルール。みほがそうしたいなら、合わせることにする。優花里は乳房から左手を離してみほの手に重ね、自分の下着の中へ連れていった。恥ずかしいところに導き入れ、ここですよ、というように重ねたままの手で押し付ける。  手探りでそこを見つけ出したみほが、少し調べるように指を這い回らせてから、遠慮がちに、きゅっ……と丘の全体を握りこんできた。  指技というほどでもない、稚拙な触り方だったけれど、みほの指が来てくれたと思うと、それで十分だった。重ねた自分の指でみほの指を谷間に押し込みながら、優花里はぞくぞくと背筋を震わせて、みほのうなじに頬ずりした。  それきり目を閉じた。  意識するのは、自分が触れているみほのあそこと、みほがふれている自分のあそこだけになった。みほもまったく同じに違いないということが、何よりも嬉しかった。  ゆっくりと丁寧にかき回して、くじり上げて。そこがよければ、みほがあごを上げる。ずれてしまうと少し息遣いが落ちる。観測砲撃みたいだと思った。正しい反応が得られるところを熱心に攻め立てた。自分のいいところは指で直接教えた。  今朝のみほは、今までにないほど強くされたいみたいだった。激しくまさぐり合う二人の熱で、布団の中がうだるほど暑くなってきた。指も手のひらもすっかり濡れそぼり、意識するのは夢見心地の快感と一体感だけになって、もうすぐ焼けて飛んでしまう、というころに、みほが達した。 「はあっ、はっ、はくぅっ……!」  大きく口を開けてあえいだかと思うと、ぎゅぅぅっ……とすごい力で太腿で優花里の指を挟みこみ、全身を棒のように固くこわばらせた。びくん! びくん! と鋭い震えがさざなみのように走って、うなじの毛がさっと逆立った。  その瞬間、脱力してわななくだけになったみほの指を、ぐいと自分のぬかるみに押し込んで、優花里も後を追った。 「くうぅぅんっ……!」  ミサイル除けのフレアを放ったみたいに、ぱあっと頭の中に火花が散って、白く焼けた。ぴったりとくっついたみほの背中で痙攣すると、それは確かに伝わったみたいで、きゅっと一度だけ、再び指に力がこもった。  二人でいくのは、一人のときよりもずっと嬉しくて、そして少しだけ苦しかった。――今が最高の一瞬なんだとわかってしまったから。         〇oooooooo〇  優花里の携帯が「ジョニーが凱旋するとき」を鳴らし始めた。目覚まし代わりのマーチだった。  こわばりが引き潮のように薄れていく中で、優花里は布団から手を伸ばしてティッシュを取った。音楽を止めるまで少し時間がかかった。  布団から這い出して、押し入れのクロゼットから下着を二着取り出し、一枚を黙ってみほに差し出した。受け取ったみほが頭まで布団をかぶって、中でごそごそやり始めた。――優花里はそのあいだに外で自分の後始末をした。  ついでにセーラー服への着替えまでしていると、もぞりと顔だけ出したみほが言った。 「優花里さん、あの……何か袋あるかな。できればキルトか何かの」 「はい」  ポーチを探し出して渡すと、やがてみほが布団から出てきて、ぼそぼそと言った。 「あの、いったん持って帰るから……洗濯して返すね」  そういう彼女は腰から下が下着だけだ。優花里は横を向いて、「はい」とうなずいた。  それからまた、みほがセーラー服に着替えたり優花里が布団を畳んだりということがあって、まともな会話はしばらくなかった。けれどもそこまで急いだ甲斐はあって、ノックとともに「おはよう、起きた?」と母親が顔を出した時には、二人ともそれなりの格好を見せることができた。 「あら早い。ご飯作るわね」  母親が階段を下りていくと、二人はほっと胸をなでおろして、顔を見合わせた。 「危なかったね……」 「はい。あ、あの」優花里は座りなおして、みほに頭を下げた。「おはようございます、みほどの」 「あ、うん。おはよう、優花里さん」  答えるみほの様子は、知っていればまだ普段通りではないとわかる。髪はくしゃくしゃだし、頬はまだ上気が抜けきっていない。それは優花里もそうだ。少し見つめ合う。  崩れたのはみほが先だった。 「優花里さぁん」ぺたぺたと畳に手をついて近づき、ばふっと肩に抱きつく。「好き……」 「みほどの」言ってから、抱き返して耳にささやく。「みほさん」 「ん」  したいことはわかっていて、潤んだ目を見交わしながら、改めて、ずっとできなかったキスをした。  体奥にしんしんと残っていた余韻のままに、たっぷりと長いキスを交わすと、互いの肩にあごを預けて、深々と息を吐きだした。 「はぁ……素敵だった、優花里さん」 「私もです。寝てるとこ、襲っちゃいましたけど」 「うん、いいよ、優花里さん」ぐりぐりと顎を当てながら首を振って、「襲って。あんなの初めてだった。優花里さん完全に本気だったよね。ぞくぞくした……」  ぶるっと背筋を震わせてから、「あの、今からそういうこと言うのはですね!」優花里は無理やりみほを引き剥がす。「ちょっとやめてください……また火が点いちゃうんで」 「ああん……学校かぁ」  みほは残念そうにくすくす笑った。  階段を下りて顔を洗った。一緒に朝ご飯を食べて、家を出る。 「行ってきまーす」「うぁー、寒ぅ! いい天気!」  たたたっ、と先を走っていったみほが、くるりと戻ってきて、横に並んだ。空いている手をひらひらさせる。 「優花里さん?」 「あ、はいっ」  手をつなぐ。みほが嬉しそうに肩を寄せてくる。まぶしい朝の陽ざしと、目覚めた町の喧騒の中を歩く。みほの手が温かい。優花里はその温かみを感じながら、心のどこかで恐れを感じている。    みほのアパートに立ち寄る。「すぐ支度するね」と中に入っていった彼女を待って、玄関の外で壁にもたれる。  現実感がまるでなかった。  今日もまた大好きなみほと過ごせる。明日も、明後日も。戦車に乗って、走り回って……。  来年は?  その先は?  コートの上に巻いたマフラーに、あごをうずめる。 「お待たせ!」  また並んで歩き出してもみほは上機嫌だったが、不意に眉を曇らせた。 「優花里さん……? どうしちゃったの? 何か忘れものとか、今日苦手な授業がある?」 「いえ、別にそんなことは」 「そう? ……ううん、違うよね」  みほが足を止めた。じっと優花里の顔を見つめる。 「何か気になってるよね。教えてくれない?」 「いえ……なんか変な話なので」 「やっぱり何かあるんだ。聞かせて」顔を寄せてくる。「聞きたいよ。もう他人じゃないんだし」  その一言で、優花里はつい自制を忘れてしまった。「みほどのぉ……」と肩に抱きつく。 「こ、こんなの、幸せすぎて怖いんですよぅ……!」 「ふえ、幸せすぎ?」 「あい」戸惑うみほに、涙声でうなずく。「私っ、戦車が好きで、戦車に乗るみほどのが好きで、みほどのと戦車に乗るのが好きでっ。ちょっとだけでも十分なのに、今もうぜんぶ手に入っちゃったじゃないですかぁ。私、この先、どうしたらいいのか……」 「え、ちょっと、どうしたの? 落ち着いて、優花里さん!」  みほになだめすかされて、優花里はどうにか、自分の思いを口にした。  それは優花里自身も考えすぎだと思うようなことで、きっと沙織や麻子に話したら、今を楽しめばいいとか、もうちょっと冷静になれと言われそうな話だった。でもみほはそれを聞くと、笑い飛ばしたりはせずに、真面目にうなずいた。 「そっか……ずっと先のことを考え始めちゃったんだね」 「はい、これまではみんなとの暮らしで頭が一杯でしたけど。なんかこう……欲が出てきちゃったっていうか」  あの、と優花里はおそるおそる切り出してみる。 「みほどのは? この先……何かお考えはあるんですか?」 「うん……あのね、これはまたゆっくり話そうと思ってたんだけど、いい機会だから今ちょっと言っとくね」  歩こう、と優花里を引っ張りながら、みほは話す。 「私は、この先も戦車道を続けたいよ。高校卒業して、大学いって、あ、どういう大学かはまだわからないけど、それに西住の家とも、なんとかしなきゃなって思うけど……社会人のほうとかプロリーグとか、いろいろあるみたいだけど」 「はい」 「あっ、ゆっくり話すとか言いながら、まだ全然固まってないんだけどね。固まってから話せばよかったかな、ううん、でも……」 「いえ、続けてください」  いつものように、直接戦闘の指揮を取っていない時のみほは頼りない。話がてんでまとまらなくて、すぐ自信なさげになってしまう。  けれども優花里はうなずいて、彼女の言葉を待つ。それも優花里が好きになったみほの姿だから。 「それでね、そういうときに……あ、これ今気が付いたんだけど、優花里さんのことを全然考えてなかったかもしれない。どうしよう……」 「え?」思わずまた足を止めてしまった。「わ、私のことを……」 「うん。ついつい自分のことだけ考えてて――」言いかけたみほがこちらを見て、えっとつぶやき、あわてて手を取る。 「あっ、違うから! そういう意味じゃないから! 優花里さんをほっとくって話じゃないの!」 「は、はい……」 「あのね、つまり――ああう、ええとね」  困った顔で手を泳がせたみほが、いきなり頭を下げた。 「私ね! 何考えるときも、優花里さんがそばにいると思ってたから!」 「――え?」 「大学とか、社会人とか、プロとか、それからうちに帰ってお母さんと話すこととか!」全部ぶちまけることにしたらしくて、一気にみほはしゃべる。「優花里さんがいるところしか思いつかないの! 戦車乗ってる想像しても、西住流継がないって言うこと想像しても、ちょっと振り向けば優花里さんが絶対そこにいる、っていう感じなの! いなくなるなんて考えられない! だってこんなに私を分かってくれた人、他にいないもん!」 「……みほどの……」  優花里は言葉を失う。  自分の手を握って頭を下げているみほが、心配そうに顔を上げた。 「でもね? それって……優花里さんの将来を縛っちゃうってことでしょ。私が、将来何するかわからないけど、とにかくついてきて、なんて言ったら……大学だって一緒に来てほしいけど……とにかく私に合わせてほしいなんて言うの、乱暴すぎるから……優花里さんのこと考えてなかったっていうのは、そういう意味で」  みほが何を言っているのかわかるにつれて、優花里は我慢できなくなってきた。 「だから、優花里さんの希望も聞いておきたいっていうか、これ、先に聞いてから話さなきゃいけふあっ!?」 「みほどの!」  腕を引っ張って力いっぱい抱き締めた。 「ついていきますよぉ……!」 「え、あ、そう?」 「ついてくに決まってるじゃないですか!」細い肩に回した腕に、ありったけの力をこめる。「とにかく黙ってついてきてなんて……そんなこと言われたら! いかないわけないじゃないですか!」 「そうなの? あのちょっと、苦しい……」 「あっ、すみません!」  腕を緩めると、みほはほっとした顔で言った。 「よかった。優花里さんのことだから、どこか別のところに好きな戦車があったら、行きたいって言うかもって思ってた」 「そんなわけないじゃないですか!」  なかば怒って優花里は言ったのだが、みほはあははと笑って小首を傾げた。 「ごめん、私まだ優花里さんのこと、よくわかってなかったのかな」 「そうですよ……まあ、私もですけど」 「とにかく、私は将来のこと、そんな感じだから」すたすたと歩きだしたみほが、足を止めて、ふふっと一人笑いした。「そっか……ついてきてくれるんだ、優花里さん」 「ええ」  二人はまた歩き出す。もう、手はつないでいない。周りにも登校中の大洗の生徒が増えてきた。  ちらりと横顔を見たみほが、「もう大丈夫?」と訊く。「はい」とうなずいてから、優花里は思わずひとことを付け加える。 「私、前に言いましたよね? 一生ついていきますって」 「うん、そうだけど」みほはごく軽い調子で答える。「でもあのころはまだ付き合ってなかったし、お互いに、相手のことよく知らなかったし。優花里さん、勢いで言っちゃっただけだと思ってた」 「それは――」 「みぽりーん!」  声が飛んできた。見れば、行く手のコンビニの前で沙織と華が手を振っている。そばのガードレールにだらりともたれた麻子は、まるで干した洗濯物だが、とにかく起きては来たようだ。 「あ、みんなー! おはよう!」  みほが手を振って、うながす。 「いこ、優花里さん!」 「はい!」  後を追って足を速めながら、優花里は胸の内でつぶやく。  ――私はずっと知ってましたよ。この人についていくんだって。       (おわり) 付記:問題は優花里に何キロのダンベルを持たせるのか、ということでした。  ガルパン二次創作界隈でやたらと出てくる、「装填手は腕力が強い」というモチーフに、それなりのディテールを与えてみたくて、この話を書いたわけですが、何しろ筋トレなんにも知らない。それにガルパン世界の女の子たちの腕力というのは、装填手とかどうとか以前に普通に凄まじくて、KV−2の重さ五十二キロの榴弾をさくさく装填したり、三トンを越えるCV33を二人で簡単にひっくり返したりする。常識が通用しないわけです。  昨日今日ダイエットを始めた女の子なら、一キロとか二キロの軽いやつを持たせてエクササイズなどさせるんですが、ちょっと鍛えていれば、女性でも五キロとかそれ以上を持つらしい。また優花里は筋トレ始めてからもう半年以上たつわけで、三キロじゃ軽すぎないか、メニューはこれでいいのかなど悩むところもいろいろあったんですが、私自身、スポーツ用品店へ出向いて三キロのダンベルでアームカール三十回してみたら、パソコンのキーが打てないほど手がふらふらになり、逆に三キロでもすごくない? と思ってしまった。  もうよくわかんなくなった結果、出来上がったのがこれです。  筋トレ詳しい人、すみません。  あと感想うれしいです。