メニューへ ☆ 概要 ☆

「皇帝陛下は15歳!」は、ジングリット皇帝クリオン一世が、人に頼まれて、あるいはやむをえない事情により、あるいは自分の煩悩に引きずられて、当たるを幸いかたっぱしから、娘たちやそれ以外を手ごめにしていく話である。
 それに余計な設定がごちゃごちゃくっついているのはかなり見苦しい。特に第一話では濡れ場がどれほどもない。看板倒れである。
 しかし、これも後々クリオンが成長して、大儀の名の下に手を出しまくるための伏線なので、ご容赦願いたい。
 では設定を。


☆ 登場人物 ☆

●クリオン・クーディレクト・ジングラ 15歳 男
 ジングリット帝国皇帝ゼマント四世の十八男。
 五歳のとき、当時七歳だった侍女ソリュータとともに、辺境グレンデルベルト領へと預けられた。
 奇禍によってゼマント四世が崩御した後、ジングリット皇帝の座に就く。即位してクリオン一世。
 ごく素朴な田舎で育ったため、皇族らしからぬ言動が多い。即位後は自覚を持ち、帝国の指導者として育っていく。
 外見的特徴は以下の通り。

 淡い緋色の短衣とズボンを身につけた少年である。短衣は腰で縛って裾を流しているので、短いスカートのようにも見える。
 柔らかな金髪が初春の風をふわりとはらむ。大人のように刈り上げてはいない。首の後ろから耳の前まで、半円を描いて切り揃えている。
 手足も細かった。筋肉が足りなくて服の布地が余っている。腰に下げた突き専用のレイピアは、それが彼の腕力で扱える最適な武器なのだろう。両刃の長剣や槍兵のバンカーシールドは似合いそうもない。
 いくつかの特徴が、彼の姿をあいまいにしていた。遠目には少女のように見えないこともない。


●ソリュータ・ツインド 17歳 女
 クリオンの侍女。グレンデルベルト侯スピグラム・ツインドの長女。
 本来貴族の姫である娘だが、父によって忠実にクリオンに仕えるよう躾けられた。優しい心根と細やかな気配りを持ち、グレンデルベルト領民たちにも慕われている。
 芯はしっかりしており、クリオンとともに受けた高等教育のおかげで、時に周りが驚くような大胆な行動を取る。
 クリオンに主従を越えた愛を抱いている。
 外見的特徴は以下の通り。

 いたって飾り気のない姿である。服装は白いエプロンと袖のふくらんだ黒いブラウスと、膝下のスカート。装身具と言えば髪に差したレースのティアラだけ。絹糸のような長い髪は黒い。脚の肌すらタイツで隠している。多様な人種が多様な装飾を身につけるこの国では、地味な部類に入る。
 だが、背筋の通ったきれいな立ち方をしていた。すらりと伸びた両足のつま先が揃っている。歩き、走ったら、四肢が優雅に屈伸するだろう。
 顔立ちにも同じ印象があった。化粧といえるほどの手入れはしていない。必要ない肌だった。唇は小さく、鼻筋が涼しい。まつげは長いが、よくものを見そうな大きな瞳のおかげで、うるさく感じられない。
 整っていて、年より大人びて見えるようで、でもまだ育ちきってはいない。花というより柔らかな葉、それが朝露を乗せてきらめいている。清楚、という言葉では少し足りない。――そんな娘だ。


●スピグラム・ツインド 48歳 男
 グレンデルベルト侯爵。ソリュータの父、レグノンの兄、クリオンの育ての親。妻とは死別。
 かつて帝国府に勤めていた大貴族だったが、ゼマント四世に疎まれ、グレンデルベルトに封ぜられる。
 クリオン即位後は、非公式のよきアドバイザーとして彼を助ける。

●レグノン・ツインド 24歳 男
 ソリュータの兄。レグノン卿と呼ばれる。
 妹のソリュータと同じく美しかった母の血を引き、貴族的な美貌で娘たちに人気がある。クリオン即位後しばらくして帝国府に上り、国立汎技術学校エコール・ポリテクニックで教鞭をとる。
 クリオンのもっとも身近な同性。陰に陽に様々なことをクリオンへ教える。

●イシュナス・レンダイク 45歳 男
 レンダイク男爵、またはイシュナス卿と呼ばれる。
 有能なテクノクラートだが、スピグラムと同じく、前帝の時代には閑職に追いやられ、低い爵位しか与えられなかった。クリオンによって枢機に返り咲く。
 後、天領総監。

●ラハシュ・ジューディカ 68歳 男
 儀典長官。帝国府のしきたりに関することや、フィルバルト城内外の庶務を監督する。
 伝統を固守する保守的な人間で、グレンデルベルト大禍によって皇族がほぼ全滅したあと、残されたクリオンに皇室の血筋を守らせるため、世継ぎを作るようしつこく勧める。

●デジエラ・ジングピアサー 32歳 女
 軍人。ジングリット軍四十万を束ねる総司令官。
 東征将軍の称号を持つ。

●マイラ・ニッセン 25歳 女
 軍人。もとヴェスピア疾空騎団第一連隊長。クリオン即位後しばらくは近衛隊長をつとめ、皇帝の身辺警護に当たった。
 のち、高速勅使団団長になる。

●ホレイショ伯 30歳 男
 グレンデルベルト大禍のあと、かろうじて生き残った残存貴族の筆頭。改革を進めるクリオンたちに反対する。
 正式には、ホレイショ伯爵ノルド・メルチン。

●キンロッホレヴン四十九世 百数十歳 男
 ジングリット国教イフラ教の大神官。おそるべき老齢。

●トリンゼ 30歳 女
 皇帝付きの女官。侍女頭。
 侍女たちは前帝時代に選りすぐられた美貌の娘たちばかりであり、それを武器に、寵姫となることを望んでいる。

●ジュナ 19歳 女
 同上。紅茶色の巻き毛を持つ快活な少女。

●チュロス 20歳 女
 同上。青みがかった髪を持つ物静かな娘。

●ゼマント・ロフォーデン・ジングラ 52歳 男
 前ジングリット皇帝、ゼマント四世。
 武断と奢侈を好み、外征、遊行を繰り返した。また、十二人の寵姫たちとの間に十八男十四女の子供を残した。
 グレンデルベルト大禍にて帰らぬ人となる。



霞娜シャーナ 15、6?歳 女
 東方の異文明国、大明合衆帝国タイミン・エンパイアステイツの大統令。
 そのあどけない笑顔に隠された巨大な憎悪を知るものは少ない。

麗虎リーフー 22歳 宦官
 女性大統令に仕えるため生殖能力を捨てた美しい宦官たちの一人。
 霞娜の忠実な腹心にして愛人。


 以上、第一話既出。

 以下、第二話登場予定人物。

●エメラダ・ビアース 18歳 女
 豪商ビアースの娘。豊かな緑の髪とよく育った肢体を誇っている。
 才気煥発、利にも敏く、実務能力は高い。だが、教養でソリュータに負け、以後よきライバルになる。

●ジュゼッカ・デ・ビアース 40歳 男
 ジングリットいちの豪商。
 クリオンの政策に手を貸し、帝国府御用達商人のお墨付きを得る。

●キオラ・シッキルギン 14歳 男
 隣国シッキルギンの第一王子。クリオンとは昔馴染み。
 母国の政争が激しくなってきたため、ジングリットに避難してくる。
 美しい少年。

●マウス ?歳 道化
 どこからともなく王宮に現われた道化。不思議な幻術と見事な歌声でクリオンのもとにいることを許される。
 常にけばけばしい怪奇な衣装をまとい、踊り狂っている。
 十代の女のようだが、奇抜な衣装のせいではっきりとはわからない。


☆ 地理・用語等 ☆

●ジングリット帝国
 大陸中央、南北六百リーグに渡って広がる国。大陸いちの強国。
 人口九千万。王都は中南部の河川都市フィルバルト。
 北には北海という海がある。
 西にはシッキルギン王国を始めとする数十の中小国が接している。しばしば小規模な紛争が起こる。
 南には険しい山地と広大な半島があり、戎衣の蛮族が住んでいる。山地で鉱産物が取れるため、こちらとはごく日常的に国境を争っている。
 東には平坦な砂漠を挟んでタイミン・エンパイアステイツがある。距離は最も遠く、争いは稀だが、それだけに軍を送ってくるときはどちらも本気になり、激烈な戦いが起こる。
 通貨はメルダ金貨、フラグム白銅貨、バク鉛貨。一メルダ金貨が一万円に相当する。一フラグム、一バクは、それぞれ酒一瓶分、ひとさじ分の代金に相当するらしい。
 距離単位はリーグ、ヤード、フィート。それぞれ約五キロ半、一メートル、三十センチ。

●グレンデルベルト領
 ジングリット西部、フィルバルトより二百リーグの位置にある辺境領。
 風光明媚なグレンデル湖を擁し、保養地として名高いが、商産業的な価値はそれほどない。
 隣国シッキルギンとの間を湖が阻んでいるが、水運によって古くから交通がある。


☆ 言いわけ ☆

 一応様々な考証を行ったが、何分エロ小説なので、抜くのに差し支えるようなことはずいぶん略したり省いたりしている。
 たとえば、イフラ教の教義は中世キリスト教のそれに準じたつもりだが、純粋にまねると、もう色気も快感もへったくれもなくなってしまう。当時の娘たちはごわごわの帆布のシュミーズもどきを着て、前に開けた小さな穴から夫を迎え入れたらしい。当然不自由でおもしろくないが、それが目的で着ているのだ。
 だから却下。
 他のセックス関係、宗教関係、政治関係の用語などや、敬語についても、好き勝手に変形し、手を抜いた。
 準じているというより、中世のいいとこ取りをしていると言ったほうが正確。

 固有名詞については、なるべく既存の名前を避けた。
「レナ」だの「リナ」だの「マリー」だの「ファーナ」だの「クリス」だの「ティア」だの「ルミィ」だの「エリス」だのといった、吹けば飛ぶようなつかみどころのない手垢のついた根性なしな名前は、どうしても使いたくなかったのだ。
「ソリュータ」「デジエラ」「キオラ」「エメドラ」「レザ」「ハイミーナ」「チェル姫」「ポレッカ」「ジナ」「トリンゼ」等、舌に引っかかるか音節が長い名前が好き。ちなみにチェル姫の本名は、この四・五倍長い。
 しかし、それでたとえば、私の知らない妙な意味がかぶっていたり、女の子の可愛らしさが減ったりしていなければいいのだが。

 最後になったが、ご想像通り、これはアルスラーン戦記へのオマージュ。
 あちらもこちらも御免。



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