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immu03-0805202305/ウイルスと免疫3 ......

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immu03-0805202305@ さて、B細胞軍団も活躍を開始する。抗原はcoreとウイルス表面だ。coreからはウイルスDNAによる蛋白合成の座がほぼ重複するHBcagとHBeagが破壊された肝細胞から出ていく。ここで、ウイルス軍は巧妙な戦術を使う。うまり、HBeagを過剰生産することにより、スカベンジャ−ミサイル戦術をとるのである。B細胞軍団はこれにより、HBeabを沢山作らされて、攻撃パワ−を割かれる。肝心のHBsabの生産を阻害されるのである。HBeab自体は肝細胞の破壊が起きている状態では常に存在する筈だが、HBeagが存在すると測定できない。HBeagはHBcag蛋白に乗っかっているので、HBVがcoreをキチンと作ってしまい、抗原がどこにも表出されていなければ、Tc軍も感染肝細胞の探しようがないし、NK軍などもADCC攻撃が出来ない。
B細胞軍はと言うと、血中のスカベンジャHBeagだけをおっかけるはめとなる。実に巧妙な戦術ではある。 CPHは、日本人の場合、そのほとんどがHBeagからHBeabへ変換(sero-conversion)する過程でみられるとの事で、そのころになるとHBcabも減ってくる。当然HBcagひいてはHBeagも減ってくる。つまり、HBeagがタマ切れで我が免疫軍が優勢となってくる。肝細胞も再生がさかんとなり、その際残った感染細胞へHBsagが呈示されるようになりパトリオット型HBsabミサイルで迎撃されてゆくのである。HBVがほぼ完全に肝臓内から取り除かれる過程、つまりHBeag+でかつ核酸物質であるDNAポリメラ−ゼ(DNA-P)+であったものが、HBeab+あるいはHBeag-で、かつ DNA-P - へと変化し、HBeabが出始めてからHBsabが出現するまで、たとえ急性の一過性HBV感染でさえ2ケ月以上を要する気の長さである。さすがのCPHもついには、急性炎症同様 s-GOT,s-GPTは正常化してくるが、こうなると、たとえHBsag+でも一応治癒したと診断する。つまりsero-conversionが起これば、後は体力さえあればOKな訳である。実際 sero-conversionは栄養状態の改善と共に若年化する傾向が見られるという。このようにHBVのように古つわ者の敵は、その戦略として、免疫の本質をついてくるのである。
さて、最後のまとめcに話をうつそう。
 c.HCVによるCPHは自己免疫疾患としての側面をもつと言う事についてである。
ヨ−ロッパでの調査ではB8、DRw3の両抗原が活動性慢性肝炎で多いとの報告がある。特にB8の3倍増しに比べ DRw3の頻度は10倍増しなのだそうだ。これから、HBVによるCPHは自己免疫疾患としての側面を持つことがわかる。ちなみに、DRw3と言うと霊長類の抗原発生学的には、人類より古い抗原である。いかに、HBVと人類の闘いが長いかわかる。よって結局は、最後の側面つまり自己免疫疾患としてのCPHが一番問題なのだ。またまたここで、「免疫の本質即ちこの自己と非自己の区別」のキマリ文句が思い出される。これこそがHBV軍の戦略の本質でもある。逆に、免疫軍は、HVB軍ひいては全ウイルス軍との戦いで戦略をあやまると、癌や自己免疫疾患になってしまうのだ。
話をもとに戻そう。HB軍による慢性感染攻撃は自己免疫疾患の側面を持つとはどういうことなのかをもう少し考えてみる。
文献によると、一般に、ウイルス感染の結果産生される抗体免疫グロブリンが、ウイルスと結合してimmune complexを形成し、これが末梢血管壁に沈着して、immune complex legionを作る場合や、ウイルスが細胞内にかくれていた抗原を露出させたり、自己成分を修飾して抗原化させたりする(T細胞 bypassという)ことにより、自己免疫疾患が成立する機序が考えられていると言う。ウイルスの特性から、例えば麻疹やHSVでは、感染すると免疫反応に関与する細胞の機能が低下したり、亢進したりする。伝染性単核症は感染B細胞に対するT細胞の反応性増殖を起こすこともある。このようにウイルスに対する免疫反応が生体に不利に働いたとき生じる疾患をImmunologic diseases(免疫病)とも呼ぶ。自己免疫疾患はこの範疇に入るものである。
 ここで興味ある文献を引用する。これによると、以下のような点から、Auto-immune diseasesは、すべてウイルスによって起こりうると説明可能だと言うことである。
 1)ある種の腫瘍原性あるいは突然変異原性をもったウイルスは禁止クロ−ンの出現を誘発しうる。
 2)免疫系から隔離された条件下に存在する自己成分も、細胞障害性を示すウイルスの感染やそれによってもたらされる局所の炎症によって免役系と接触する機会が与えられる。
3)ウイルスは、宿主細胞中において自らの遺伝子でウイルス粒子の構造タンパクを合成するが、これが宿主細胞膜を始めとする種々の細胞構造に組み込まれることによって、いわゆる自己成分を修飾し、さきに述べたT細胞bypassの誘因となる。
  4)ウイルス自体が自己抗原と交叉反応性の抗原を持っている(核酸や粒子膜抗原)。
  5)ウイルス感染が感染リンパ球と非感染T細胞との間に、同種効果allogeneic effect様の効果を誘発して、非特異的に自己抗原産生を誘発する。またある種のウイルスは、B細胞を非得意的に活性化する能力を持っている。伝染性単核球症の時に、抗リンパ球自己抗体を含む種々の自己抗体のあらわれることはよく知られた事実であるが、これはEBウイルスがB細胞を非特異的に活性化する   ためと考えられている。
  6)ウイルスが選択的にマウスのサプレッサ−T細胞機能を障害することが、水疱性口内炎ウイルスの例で証明されている。ウイルスの直接的障害性を介することなく、たとえばTs細胞表面上に形成されたウイルス抗原に体する宿主の免役反応などによって、間接的にTsが障害される可能性もある。
まとめ このようにみてくると、HBVがCPHを起こし治癒しにくいのは、哺乳類出現のときからの古いストレッサ−であり、うまく生態の免疫という防御反応を逆手にとっていることだと言うことがわかる。第一そんなに難しく考えなくても、HBVウイルスの感染細胞の破壊は、hostの細胞破壊の面を持つ事は事実だし、その病態は、感染細胞表面のウイルス抗原を認識したT細胞による肝障害が主体であることも事実だ。つまり感作リンパ球は、ウイルス抗原に接触すると活性化されて化学伝達物質を出し、これがウイルス感染に伴う炎症性変化や組織障害になる。薬が薬と同時に毒になるように、生体をまもる免疫軍の働きは、そのまま病気の本態を示すことがある。
ウイルス病といわず広く感染症では、このことを最初から頭に入れておく必要があり、刃の両面のうち、どちらが主体かを見極めて治癒したか否かを論じるべきである。要は、ハイ、感染しましたネェ、クスリでよくなりましたネェ、オヤ免疫ができましたョ式のとらえかたでは、事実と真実位の違いがでる。さらにまた、全身症状とは、ストレスが加わったことによる自立神経の症状が主体であり、ウイルスによる特異的症状がそれに加わると見た方が自然だ。ストレスが加わるから当然心因も関与している訳だし、から今までのようにウイルス症候論もウイルス特異的に論じるのはそもそも無理がある。したがって治療も、単に免疫力を高める方向性の炎症サイトカインをいくら勤勉な大腸菌が沢山作ってくれるとは言え、いとも安易に使用しては、最後には自己免疫疾患を作ってしまって大負けする可能性がある。こう考えると、ステロイドによるだまし急性肝炎療法の方が賢いやり方のように思える。とは言え、治療法としては手っ取り早いため、interferonアルファやベ−タによる療法や、C-GSFパワ−ホルモンを用いてleucocyteを増殖させ、その白血球が貪食する際使っている抗微生物質(antimicrobial substanses of phagocytes)のうち、酸素依存系因子である超酸素ラジカル(O2-), H2O2 , OH・, O2 , OCL- , HOCL -などの活性による療法などが研究され、一部すでに治療に利用されてはいるが、HBVに関するかぎり結果は満足とは言いがたいようだ。
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