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immu03-0805202300/ウイルスと免疫2 ......

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さて、免疫軍団の戦術は、大きく分けて攻撃パワ−と防御パワ−を上げることの2面あるが、抗体による攻撃は、初感染でもメモリ−が存在する場合(= 再感染)でも迅速かつ有効な手段である。しかし、HBVの場合は、通常のウイルスのように、1-2週で中和抗体が出来ると言うわけには行かず、取りあえずHBcab,HBeabが出来、敵の攻撃パワ−を落す。たのみの中和抗体のHBsabは、急性感染でも4ケ月くらい、慢性感染に至っては数年かかって形成される場合もあり、HBV軍への対抗手段を中和抗体に頼る免疫軍団の弱いところである。
2.細胞性免疫
 まず、先に述べたように、M(マクロファージ)情報隊(APCmacrophage)が出てきて、ウイルスを貪食する。HBウイルスであれば、骨髄由来のものと、組織由来のもの(肝臓のクッパーKupfer 細胞)のあるものがAPCとして、ワ−プロならぬ抗原のprocessingを行なう。これを味方軍に呈示する方法は、先の図のように、抗体産生の主経路としての抗原fragmentの直接呈示と、 Th細胞系にMHCに照らしながら行なわれる間接呈示がある。ここで重要なのが自己と非自己の認識システムである。このことは後でも触れるが、文献を引用すれば、「生体は異物not selfに対して免疫応答をおこすが、その最初のステップは生体の免疫系による異物の認識である。このさい生体の免疫機構が認識しているのは、実は異物そのものではなく、その異物によって修飾された自己のMHCであり、生体に生じたエフェクターeffector細胞は、この修飾されたMHC細胞(altered self)を標的として働くと考えられる」と言う説をaltered self theoryと言う。もう一つのdual recognition theoryは、ここでは省略した。なぜなら、要は情報を受ける側(T細胞)の受信の差異であり、T細胞が受ける情報源が、MHCが1つprecessed agの1つの2つである点はかわりがないからである。
因みに、主組織適合性Main Histcompatibility(MHC)は、主にIとIIの2つあり、遺伝的拘束を受ける。
では、なぜMHCが必要なのか。抗原だけを情報としてTc軍が働けば自己細胞を障害する恐れがあるし、MHC だけを情報として排他的に障害すれば、免疫学的寛容が生じないとも考えられる。このように、double checkingは、慎重な良い戦略システムである。更に、認知段階でdouble checkするだけでなく、攻撃段階でもdouble checkするのである。MHCIを感染細胞に認識したTc細胞軍団は感染細胞に結合する。 更に、APC隊によるTh軍(= 支援部隊)への情報伝達が刺激となって、M軍がIL-1をTh軍にふりかけ、その活動を強化する。IL-1をふりかけられたCD4軍団(= Th軍団)は、CD8軍団(= Tc軍団)にIL-2をふりかけると、Tc軍はパワ−アップし、ウイルス感染細胞を強力に破壊することができる。
逆に、このMHCによる非自己と自己認識の慎重すぎる過程、および、細胞免疫攻撃はウイルスを直接殺すわけではないことが、かえってHBVなどによる慢性活動性炎症などと言った、巧妙な敵軍の戦略がつけいるスキを与えているのである。自己と非自己の区別、これが合理的なようで不思議なものなのだ。なぜ、ウイルスというエイリアンを阻止するのに、まず自分の細胞達との区別をしっかりさせろと言う必要があるのか。これが解かったようで分からない免疫の奇妙なカラクリなのだ。ここでの図にはないが、情報ホルモンインタフェロンガンマなぞは、自己認識の作用をもつ抗原であるMHCを強化する作用をもっている。つまり、MHCIIを強化するのである。これが防御パワ−を高める一翼をになっている。これほど、生体は「自己と非自己の区別」に気を使っているのである。しかし、なぜゆえdouble checkしなければ、区別出来ないのか? 何度も繰り返す疑問だが、このことこそが免疫の弱点の本質でもあるのだ。その区別を失敗したらAIDSや癌、それに自己免疫疾患になってしまうのだから。当然我が仇敵HBV軍による慢性感染攻撃は自己免疫疾患の側面も持っているのである。
3.インタフェロン
インタフェロンは防御パワ−を高める働きをする。インタフェロンはアルファ、ベ−タ、ガンマに大きく別れる。ベ−タはB細胞にも効く。アルファ、ベ−タはウイルスに対して抗ウイルス蛋白を作るよう分泌される。ガンマは主に、M軍、Tc軍、 NK細胞軍のパワ−アップホルモンの作用がある。いづれにしてもウイルスは複製が邪魔され、細胞は防御パワ−をますのだ。
4.その他
その他の直接ウイルス攻撃は、白血球軍、M軍、NK細胞軍による貪食攻撃や、M軍やキラ−細胞軍(CD8)、孤立回遊軍団NK細胞軍などが行なうような、自分のFC受容体でウイルスが感染細胞に生えたウイルス抗原についた抗体とくっついて壊してしまう方法(ADCC)などもある。しかし、いづれもHBV軍相手ではあまり有効でない。
以上簡単に免疫軍の戦略を説明した。 このように大きくわけて体液性免疫と言う戦略と細胞性免疫と言う戦略をそれぞれの担当軍団が効率良く行ない、インタロイキンやインタフェロンのようにそれぞれの軍団から、相互にパワ−アップホルモンをかけあって、攻撃パワ−と防御パワ−の両方を高め合いながら戦闘を繰り広げている。
このように見てくると、敵軍がたとえ老獪なるHBV軍であろうと、戦略が効果的に働けばおそるるに足らないはずだ。事実中和抗体つまりHBsabミサイルが爆撃を開始すると完全に勝利できるのである。ただそこに至るまでの時間が長いため、時として体力が弱るとか自己抗体ができるなどして形成が逆転するわけで、その理由は少し前にも触れた。もう一度そこをまとめると、
a.攻撃情報は常に非自己と自己認識をcheckしなければならない
b.細胞免疫攻撃はウイルスを直接殺すわけではない と言う事である。慢性のHBV感染即ち慢性活動性肝炎(以下Chronic Persistent Hepatitis= CPH)は、日本では大部分HBeag+の母から垂直感染を受けている。ウイルスは直接に肝毒性がないし、母親から受け継いだIgGは、キャリアとしての母のものだから、肝細胞の表面かKupfer細胞の表面かに、Precessした抗原(altered antigen)でも出ていないかぎり抗体は存在しない。子供の側はというと、感染がないのに自前のIgGは産生できるはずもない。つまり、免疫学的寛容の状態が出来ている。おそらくTh情報軍は、HBVの情報をキャッチしているが、MHCdouble checkingシステムが作動するので、それをTc攻撃軍には伝えられない。これが無症候性キャリアの状態である。それが、大人になってなぜかこの免疫学的寛容が解かれる時が来る。Th軍からの情報はただちにTc軍に伝えられ、攻撃開始となる。しかして感染肝細胞が破壊され、肝細胞内にある酵素GOT,GPTが血中へ放出され、s-GOT,s-GPT値が上昇し臨床的にはウイルス性肝炎になる。CPHではその炎症反応がゆっくりしているのであるので、ウイルスが一度に排出されることなく感染肝細胞と感染T細胞の反応によって出現する病態がCPHの病態と理解されている。
免疫学的寛容がなぜ解かれるのかは不明であるが、その結果はステロイドによる人工急性肝炎とあい通じるものがある。おそらくは、MHC拘束のcheckが故意に弛められるのだろうが、かといって急性炎症反応が生じれば効果ももっと良いかわりに、劇症化してしまう危険も出てくる。この辺の調節の難しさは、免疫軍も分かってやっているのだろう。