roujin-9@b.クリニック、特殊病床、高機能病院以外で生き残るには
一般病床と療養型病床群の病院は、今述べたように、減額が強化されている。繰り返して言うが、文献を見ても、この改正は、老人医療を先進させたというよりは、一般病院の質をそろえると言うペナルティの意味合いが強いと言うことだから、まずはやはり人員の確保である。ところが、当然老人病院を選択した病院に対しても、人員基準を満たしているかどうかを重点的に監視するのは目に見えている。老人病院の中でも、特に重点指導対象病院は、点滴注射料の入院時医学管理料へのまるめとか、検査・画像診断料の算定制限とか、丸1年を越えた入院患者に対する薬剤料の上限設定などにより監視が厳しい。従って、一般病院として生き残るにも、療養型病床群の特殊型としての老人病院として生き残るためにも、
1)人員確保:入院患者のみが医師数等算出の対象となることの再確認
2)ベットを減らす
3)老人を減らす
4)ケアユニットミックスの導入
の4つの方法しか残っていないように見える。
c.ケアユニットミックス
さて、生き残り法の1)〜3)は、解釈としては実に単純だが、行なうは難しである。そうすると、4)のケアユニットミックスが実利的である方向に選択させられていると言える。
このケアユニットミックスとは、1つの病院のなかに、一般病棟と、老人入院医療管理病棟を併設するもので、病棟単位で承認が受けられることになる。と言うと聞こえはよいが、一般病院としてやってきた病院が、基準看護が取れないばかりに、例えば40床減らされ60床とされ、あとの40床を老人病院とさせられることでもある。従って60床が一般病院として残っても、そこが非基準看護であれば、結局基準看護を選択させられてしまう。つまり、残ったほうが基準看護に合う方向に看護師
を確保する事、老人病院の方は介護員を充足する事と、どう転んでも、人員の確保が求められている。また、ケアユニットミックスを安易に導入すると、初期経済効果で一時しのぎにはなっても、結果として質の低い老人病院になる可能性がある。つまり、この場合は、老人医療の専門性に関するしっかりとした思想システムがないことによる失敗と言える。又、病院全体のマネジメントからみると病棟毎に人員配置が変わることで、管理がしにくく、責任の所在が不明確となり、職員の不満が出るかも知れないということもある。その導入の実例では、
145床のうち、83床を特例許可老人病棟、62床を2交替のままで基準看護特1(II)を取り、頑張ろうという病院の例がある。やる気の問題をクリアするため、6ケ月程度のロ−テ−ションを組むと言うのもよいと言う提言もあった。
d.老人病院への移行に際しての留意点
資料にケアミックスユニットの経済効果試算例が挙げられているが、導入に当たっては、経済効果を熟慮する必要がある。中小病院では早目に切り替えるのも一手だが、無駄な治療が減る一方、検査が二月や三月に一回では、満足な監視ができず不安がのこる。従って、定額の点数を上げてくれればその範囲で検査等の充実を図りたいとの反省の声も多いことを忘れてはならない。定額であることから、後になって医の心に立ち戻ろうとしても遅いからである。
その他、留意するポイントしては、病室は原則4人で、病室及び廊下面積は1.5倍必要。また、食堂、談話室、浴室の整備や検査、滅菌消毒、給食、洗濯などの外部依託なども、定額制ゆえの支出と、病院であるための必要十分なケアとのバランスを熟慮し、正確な判断が求められている。このあたりのマニュアルはまだなく、国側もその青写真を欠き、従って万が一の際(事故、倒産)の法的救済はないのである。現在は、改正後間もないこともあり、旧施設のままで移行している病院もある。
なお、老人病院では付き添い看護は認められない。ただし、付き添いを廃止する病院は、その移行期間が設けられているし、点数も融通される。
厚生省の入院医療管理料承認病院実体調査(1991.11まで)で、108病院のうち86病院からの解答では、入院収入が10%増え、薬代金と材料費が10〜30%減ったので、結局収益は60%くらいあがっている。給与は約15%増えた結果となっている。患者側からみれば、薬が減った。またリハが増えた結果日常生活動作ADL(activity of daily living)もよくなった。死亡退院が減り、平均寿命が延びた病院もあると言う。ところが、人件費の増加分が高い病院は、先の調査のように行かずに収益が相殺され、改善が見られない。こうなったときの保証が定額であるために逃げがないし、後述するように重症患者を避ける傾向もある。その他、急性期患者の診療介助をもっと勉強したいという若い看護師には不満があると言う。