roujin-8@a.老人病院制度の改革のとらえかた
この、主に非基準看護病院をタ−ゲットとした、老人診療報酬改定による老人病院制度の改革は、その目的どおりに、医療法の人員の基準を満たしていない病院にとっては看護師不足が深刻な折、打撃は非常に大きい。
初めに述べたように、医療法の側が、92年6月の改正の中の特定機能病院と療養型病床群の機能分化の中で、老人をも取り込んでいく療養型病床群という法的な枠組みを作ったことに対し、92年10月の改正は、基金側の取り扱いの変化であり、老人入院医療管理料IIIに準じたものを療養型病床群の特例としての「老人病院」に適用して報酬とすると言う、具体的な規定を作ったことになる。その流れから、それまでの「老人診療報酬規定に基づき厚生大臣が定めたところの特例許可外老人病院」は廃止となった。
この、改定版「老人病院」には、65才以上の*老人収容比率が60%を越える病院は、原則として、全て含まれることになる。つまり、一般病院のうち医療法上の医療員数を欠き、老人収容比率が60%以上の病院は、全て診療報酬上の老人病院と言うことになる。請求は当然、老人医療診療報酬が適用される。
では、人員が既存の医療法の基準を満たしている場合や、基準看護病院の場合はどうかと言うと、基金側は、一般病院として取り扱い、老人収容比率に関係なく老人病院扱いとしない事になっている。(注:*老人収容比率(%)=算定期間の延老人収容病床数/算定期間の延許可病床数×100)
中には、医療法の人員を満たしてさえいれば、100%老人でも、「老人病院」にはならないからと言って老人病院を蹴るべく奮起する病院もある。そして、老人専門で治療活動をしっかりすればするほど、病院側の負担になると言う結果を生んでいる。行政は、このような紆余曲折を経て、近い将来、老人専門の病院でも急性期型の一般病院と、「老人病院」の二つに自然に整流されて行き、現在増えてしまった老人病院的な一般病院は段々淘汰されていくと踏んでいるようだ。
例外は、49床以下の病院でかつ入院平均日数が30日未満の外科系病院、伝染病院、地域の実情から特別に知事が認める知事認定病院が適応除外である。ちなみに、知事の特別の事由とは、病院を含む医療圏が、国勢調査上で、65才以上が20%を越えている地域である。
この適応除外の特例を受けようとすると、例えば、92年7月に申請したら、年度途中で申請をする病院の暫定期間は、申請までの1年間である。そして、申請した日から老人収容比率で算定されると言うことになる。
このように、老人病院制度の改革は、その一面では、行政が病院に、急性病院か慢性病院かの選択を迫ったもので、しかも、病院として生き残りたければ、基準看護が最低要件、と言うコンセンサスに絞り込もうとする意志表示である。その証拠に、基準看護を取っている病院の看護料は10〜15%あがるが、その他看護をとっている病院のそれは横這いとなるように改正している。従って、その他看護を取っている病院が、診療報酬で生計を立てるためには、老人入院医療管理料の選択しかない。(これだとおおむね20%位引き上げられている。)