roujin-12@8.在宅看護のゆくえ
a.流れ
今回の改正が適用される老人診療報酬の中では、在宅医療の充実が上げられている。これは、例えば、当北海道では、特殊需要、つまり、冬寒い時期を病院で過ごす老人、通称「越冬隊」と言う問題等の解消の一方法である。これを解消するためには、在宅ケアが整備されていればよい。ところが、元気な「越冬隊」は、定額制の老人病院にとっては魅力ある営業活動となって来たのである。これらの反省も含めて、今回在宅総合診療料なるものが新設された。この設定は実験的なもので、正確には、老人診療報酬の「ねたきり老人在宅総合診療料」2200点である。これは、都道府県知事の施設承認を受けた診療所が、月2回以上訪問診療を行なった場合につき1回算定される。これには、老人慢性疾患生活指導料、投薬料、検査料などがまるめられるかわり、訪問診察による「ねたきり老人訪問診察料」700点(週2回まで)が算定できる。また、注射手技料も算定できる。また、老人訪問看護制度の導入で、老人訪問看護療養費は一回当たり7240円で、月4回訪問となる。
このように、在宅ケアへのシフトが具体的になった。
9.まとめおえて
以上今回の医療法及び診療報酬の改定を主に、療養型病床群および老人病院を中心として簡単に解説し、その問題点を考えてみた。
1)医業重視か、医療重視かを明確に
いずれにしても、その運用は、行政による枠であるだけに、営業に力点を置くか、医療に力点を置くか、医療者の判断で良く
も悪くもなる。確実にいえるのは、一部医療者の取り続けてきた営業的な医業経営が、自由な診療をシステムという聞こえのよいタガで、多くの真の医療者のコンプライアンスを奪う好例であるのは確かである。行政は行政で医療ではない。医療は医療者の手で改善すべきものだから、どちらを重視するにしても、行政より先行した、患者にもわかりやすいシステムをまず計画することが必要である。いつまでたっても、後追い非自立型の経営的不安の付きまとう状態で患者に接しても、長期的に見れば失敗する例が多い。患者の幸福は医療者の独立自存(医療においても医業においても)によって初めて現実となる。
2)人員確保:人員確保は戦略か--「一寸の虫も五分の魂」--
確かに、世代の交代問題とも重なりあって医療が直面している荒波を乗り切るのはこれ以外にはない。ところが、人員を確保すれば、人件費が上昇する。そもそもやや過小な施設でフルに稼働すると患者も職員も活気がでるし利益もでる。これら現に成功している病院をマスコミ・行政が、悪いほうに過大に宣伝している。しかし、これは、どの産業でも正常な状態である。人員確保に腐心するあまり、経営的な数の論理に固執すればどうなるか。職員は、教育もされず、若干ダブついた状態で放置されれば、自然淘汰が行なわれ、適正化される。患者も同様である。これを然りと言う人もある。しかし、この態度は、既に「ひと」を超越している。人は、淘汰と言う自然界の法則を容易に人間社会に適用してはならず、それを行なえば、人のプライドをむしばみ、その結果、活気ばかりでなく生産性すら奪ってゆく。これは、行政後追いの不安で医業経営者が陥ってきた間違いである。広く世界の動向を見ても、資本主義的世界の勝利にみえたものが、実はこの失敗だったことが一目瞭然である。「権力又は、力の論理」と言ってもよいかも知れない。これは、本来、福祉という概念とはまったく別のものである。
「一寸の虫も五分の魂」。患者は一床の自宅で懸命に生きており、介護する職員も家族と共に同様である。これらの共感なしには、福祉で食べて行く経営そのものの存在すらないことを医療者のみならず行政も深く銘記すべきである。生きていくためには仕方がないという論理は、福祉の理念に馴染まない。
老人病院看護料○基準看護 種別 看護要員 正看・準看 介護職員 看護料 旧看護料 老人特例1類看護料(I) 6:1 4:8 5.7:1 329 308老人特例1類看護料(II) 6:1 3:7 5.7:1 320 老人特例2類看護料(I) 6:1 4:8 8:1 302 268 老人特例2類看護料(II) 6:1 3:7 8:1 284 ○その他の看護料 介護職員1人当たり患者数 4 5 6 7 8 10 13 15 看 1 6 − − − − 234 228 150 140 護人 7 222 210 205 200 195 186 130 130 婦当 8 166 156 150 145 140 130 90 80 た 10 90 90 90 80 80 70 70 ★ り 13 70 70 70 70 70 70 ★ ★ 15 70 70 70 70 70 70 ★ ★ ★
★は重点指導体策病院として別途定める。(その他の看護料を含む。)○入院医療管理料病院 種別 看護要員 介護職員 投薬・注射・検査・看護 旧点数 入院医療管理料(I) 6:1 4:1 698 573 入院医療管理料(II) 6:1 5:1 652 537 入院医療管理料(III) 6:1 6:1 621