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envd02-01511281251/第5回公判4 ......

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弁論要旨  弁護人
被告人は無罪である。公訴事実は合理的な疑いをいれない程度に立証されたとは認められない。以下、理由を述べる。

一 はじめに------検察官は何を立証すべきか
本件において、被告人が有罪とされるためには、被告人運転の車両の速度が時速120キロメ−トルであったことが、合理的な疑いを入れない程度まで立証されていなくてはならない。
 時速120キロメ−トルという数値は、取締にあたった警官が感知したものではなく、レ−ダ−のスピ−ドメ−タ−が表示したものに過ぎない。したがって、本件公訴事実が認定されるためには、レ−ダ−による測定が正確であったことが立証される必要がある。
レ−ダ−による本件測定が正確であったというためには、(1)本件レ−ダ−が誤測定の可能性のない機能・性能を有していること(2)レ−ダ−の設置、操作が正確であること(地形上問題はないか、障害はないか、測定時複数車両が存在しなかったか、現認・測定係の警察官に操作.認知ミスはなかったか)が認定されなければならない。
言うまでもなく、本件における最大の争点は、被告人運転車両以外の車両が存在していたか否か、である。しかし、レ−ダ−による速度認知の事件である以上、右に述べた(1)、(2)の点すべてにつk検察官による立証がつくされているかどうか、厳格にチェックされる必要がある。

二 本件レ−ダ−の機能、性能について
本件検挙に用いられたM社製RS−720CR型というレ−ダ−が、機能、性能の点において、およそ誤測定のおそれのない機械である、との立証はまったくなされていない。
レ−ダ−を操作した警察官であるK証 人も、定期検査をしたという電機会社のS証人も、レ−ダ−の機能や性能については無知である。S証人は、レ−ダ−が対象車両の速度を誤って計測する可能性があるかどうか、レ−ダ−の設置が不適切な場所ばどういうところか、ニ台以上の車両があった場合どうなるか、測定可能距離、使用投射角度の意味、使用測定範囲切換スイッチの意味、音叉テストの結う公正すべてについて「わかりません」と答えている。K証人についてもほぼ同様である。しかも、書証としては、全く知識のないS証人らが行なったとされる定期点検の成績書があるだけで、レ−ダ−の性能機能を示す何らの証拠もない(K証人やS証人がより所とした「取扱説明書」すら出ていない)。業務日誌の記載によれば、当時、レ−ダ−の使用投射角度10度、使用測定範囲切換スイッチ高、となっているのであるが、右のような状況では、このような設定をしたことが適切であったという立証もなされていないことになる。レ−ダ−による誤測定の危険性については、すでにいくつかの裁判例でも指摘されている。もし、レ−ダ−の機能・性能について本件のような立証で足りるとされるならば、「レ−ダ−の仕組みがわからなければ、レ−ダ−を信じろ」というに等しいものになり、刑事裁判における事実認定を放棄することになってしまう。

三 レ−ダ−の機能と複数車両の存在
レ−ダ−による測定領域内に複数の車両が存在していた場合には、レ−ダ−がどの車両を測定したのかと特定が困難となり、車両誤認の危険性がある。一般に、レ−ダ−の機能上、右のような限界があることは、公知の事実といってよい。この問題に着目して無罪判決が出された例もある。本件においても、この理は、K証人も認めている。そこで、問題は、本件において、被告人車両以外の車両が存在していたか否か、である。被告人及びM証人は、他車両の存在を供述証言している。他方、K証人は否定している。測定・現認係の警察官はK証人だけであるから、取締りの側において、他車両の存否について認識しうるのはK証人ただ一人ということになる。したがって、被告人とK証人とどちらの供述・証言を信用するか、という問題に帰着する。

四 K証言の信用性------誤測定の可能性
K証人は、複数車両の存在を否定する証言をしている。しかしながら、以下の理由により、その信用性には疑問がある。

  1.  測定現認係の位置は、見通しが悪く、複数車両の存在を見落とす危険性が認められる。すなわち、請求番号10操作報告書添付写真No4及び5によると、測定・現認係の位置からの見通し状況がわかるが、山口インタ−方面徳地インタ−方面ともにガ−ドロ−プとその支柱が視界を妨げているほか、山口インタ−方面では円形の反射板が視界の妨げとなっていることが認められる。K証人によれば、現場の見通しは、山口インタ−方面100メ−トル、徳地インタ−方面120メ−トルとのことであるが、少なくとも右の写真によれば、その間見通しが100パ−セントということはいえないことになる。K証人によれば、対象車が約40メ−トルに接近した時点で警報音が鳴る、それから車の特徴とナンバ−を確認する作業をしながら、ホ−ルドボタンを押して記録係に無線連絡をする、とのことである。たとえば、対象車が時速120キロメ−トルで走行しているときは、秒速で約33メ−トルということになり、現任・測定係の警察官には、相当すばやい判断と動作が要求されることになる。かなりの訓練を経たとしても、緊張感を持続させることには限界があるはずで、ましてや、前述のような見通しのもとでは、もう一台の車両の存在を見落とした状態でボタン操作をしてしまう危険性は十分にあるといわざるをえない。
  2. 複数車両は存在しなかったというのは)「証人の記憶か」という弁護人の問いに対して、K証人は「何かあればB点に伝えています」と答えていることが、それを示している。(ちなみに、記録・取調係のI,T両証人とも、「検挙時のことは覚えていない」と証言している)
K証言は、結局のところ、複数車両が存在するときは検挙しないことになっていた、被告人は検挙されている、そって被告人のケ−スにおいても他の車両が存在しなかったはずだ、という理屈をのべているにすぎない。この裁判で問われているのは、事実である。複数車両が存在するときは検挙すべきではなかったにもかかわらず、K証人がレ−ダ−を操作し通報した事実がなかったかどうかが問題なのである。この点、先に述べた誤操作ないし誤認の危険性は否定できない。先に引用した、「何かあればB点に伝えています」という証言は、複数車両が存在していたにもかかわらずホ−ルドボタンを押す可能性があることを認めたものと解される。そうである以上、K証言をそのまま採用することは出来ない。3.業務日誌の記載内容も、K証言の信用性を減殺するものである。すなわち、同日誌の取締り結果の欄には、被告人車両につき「(A)ブレ−キ」という記載があるが、ブレ−キをかけた事実を示す記載としては他車両は「(ア)ブレ−キ」とされていて、特異な記載となっている。証言によれば、(A)とは測定係のすぐ横の地点を(ア)とはアンテナのすぐ横の地点を示すということだが、両地点は距離としてあまりにも至近であり明らかに区別の実益はない。そうすると、右記載は意図的に改ざんしたものか、そうでなければ、ブレ−キをかけた事実以上の特別の意味を持った記載ではないか、という疑念が生ずる。このような日誌の記載内容からも、K証言の信用性に対する疑問が否定できない。


(続く)