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envd02-01511281215/第四回公判 ......

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蛭川エンザイ事件 その五
----第四回公判(平成2年8月27日)

 いよいよ、ボクらの番になりましたね。それにしても山口の夏は暑いです。けれど北海道の異常気象のせいで、それほど函館との違和感なしに暑さを受け取れます。
 今回は昼飯が遅くなっちゃって、バタバタと裁判所に駆けつけました。いつもの食堂では、例の判事おばさんが元気に歩き回っていました。今日の相談人は食事中の若い母親でした。なんの相談でしょうね。我々の裁判長も庶民の味方でしょうか。それともよく噂されるように検察庁の延長なのでしょうか。
 少しヒンヤリする法廷です。ヒルカワさんがいつものように難しい顔をして書類を漁っています。きっと何にも考えていないのです。何にも考えていないのにかってに手が動くことを無意識の行動と言いますが、条件反射とも言い、パブロフの犬の実験で有名ですね。
少し遅れて裁判長が入廷し、全員席につきました。証言台には丸小さんと、あれれ、も一人の男性が宣誓をするではありませんか。またヒルカワの独断か。
さて、そのE警官が証言します。
「距離は3人で測りました。」ですって!!? ヒルカワさんすかさず、
「そうですか。では犯行当日の計測と証拠書類のものとは違わないということですね!(キッパリ)。」
ナ、なんなんだア?恐らく現場付近の計測を後でしたのを報告し、そのことを「正しい」と確認するためだと思いますが。一体なんのためにそんなことが必要なのでしょうか。ヨ、読めない。こいつはもしかしたら天才かもしれない、とゾ〜としたのでした。
 さて、いよいよユミちゃん登場です。頑張れユミちゃん!
厳しい顔したヒルカワ検事ホが訪ねます。
「エ−、あなたの職業は?」
「看護婦です。」
「あなたと、被告人との関係は?」
「婚約者です。」
「被告人の前の奥さんは吉田民子さんとおっしゃる。ご存じですか。」
「しっています。」
「いまあなたは函館に住んでいらっしゃるんですか。そこは何町ですか。」
「A町です。」
「吉田さんがお住まいなのはB町ですがご存じですか。」
「知ってます。」
「A町とB町の距離がどれぐらいかご存じですか。」
ユミちゃんムッとして、「...よく知りません」
「あなたは被告人と婚約をなさっているんですか。」
「はい。」
「婚約なさっている。(間)婚約をなさって何年になるんですかァ。」
「2年です。」
と、ヒルカワさんが突然顔を赤くし、眉を吊り上げて
「デ、では婚約して2年も経つのにまだ結婚してないのですか!!(やはり犯行をおかしたな!)」
 およそ、事件以外のことにはなかなかのツッコミをするヒルカワ検事補さんなのです。マ、意味は不明なのですが。
しかしかわいそうなユミちゃん。ボクは弁護士さんの顔を見ましたが、弁護士さんは、異議を唱えません。あとで、あれ以上言ったらなんかいってやろうとおもいましたヨだって。あれ以上なんてあるんでしょうか。かわいそうじゃないですか。
話は、この調子で続いた後、やっと事件の話です。
 では、裁判長証拠書類第x号の図を見ていただきます。証人、アの車にはどこで気がつきましたか。」
「あのォ、図がなければわかりません。」
「ソ、そうですか。裁判長証人に第x号をみせますが、よろしいでしょうか。」
「どうぞ。」
ゆみちゃん、図を見ながら、
「図の1のところで見ました。アの車には、この時点で気づきました。」

「図の2の点でブレ−キをかけたんですね。」
「少し前です。..ブレ−キがかかって、つんのめって、手をついて、頭を打ち、また頭をあげて左を見たとき、西本さんの後ろに人影が見えました。」
しかし、2の点でブレ−キをかけたんですねえ。(シツコイナ。違ッテイッテンダロ。)そうすると、被告人のすぐ左にみえたんじゃありませんかァ。」
「後ろの窓からです!」
「そうですかァ」
どうやらヒルカワ君は、ブレ−キがかかって停止したと固く思い込んでいるようです。いくら急ブレ−キをかけても暫く空走するわけでしょ。それに、停止するとどう言う風に彼に有利になんだろうね。
この人の考えは分かりません。 質問が変わります。
「...あなたが見たのは白のフォ−ドアということですがそうですか。」
「普通の車でしたが"フォ−ドア"と言う事で確認はしていません。」
「しかし、"フォ−ドア"とこたえているではないですか。!」「普通の車とこたえましたが、"フォ−ドア"といったのは、函館の検事さんです。(キッパリ)普通の車は"フォ-ドア"ですから、"フォ-ドア"と言われた時にうなずいたと思います。」
「それから、被告人は、レ−ダを見つけてブレ−キをかけ、停車し ヒルカワくん、調書を覚えていないのか、思わず「ソ、そうですかァ」と言いながら難しい顔をして調書をひっくり返します。
「その車に乗っていたのは女の人ではなかったのですね。」
「わかりません。」
「人影が見えたが、男か女か覚えていないのですか。」
「覚えていません。女の人には見えませんでしたけど。!」
「.....被告人は、車の色はあづきいろといっているのですが、しっとられますか。」さてさて出ましたあずき色のス−プラ!
「一瞬でしたから、白にみえたと思います。」
「あなたは、前の座席に男のひとがいたことを見ているのに、自動車の色が分からないと言うことですね。ひとが見えるくらいですから、当然色も覚えているんじゃないですか。....」「被告人は、何キロぐらいだしていたのですか。」
「100キロぐらいだと思います。」
「メ−タを見たのですか」
「見ていませんが、日頃良く乗せてもらっているし、その感じから、100キロぐらいだと思いました。」
「わかるんですか!」
「わかります。(キッパリ)」
ヒルカワさんややおこって、
「あたたは、この前お聞きしたとき110キロだったといったじゃないですか。!」
「100キロです。110キロは西本さんが言ったことです。」
「....!」
「それから、被告人は、レ−ダを見つけてブレ−キをかけ、停車し
たのですね。被告人は停車はしていないといっとられますが。」
テヤンディ!異議あり!! 完全に停止した車が、大事な大事な業務日誌に書いてないのは変じゃないか。
「横を見て、前を見て、頭を打つまではすぐでした。」
「停止した時に警官が見えたですか」
「停止したかどうかはっきりしません! 停止したと思ったぐらいつんのめったのは確かです。その時、西本さんの後ろの座席の後ろに人が見えました。」
「あなたは、停止したとおっしゃったじゃありませんか!!」
 要するにヒルカワさんは、ユミちゃんの言うことはころころかわるので、信用できないということを裁判長に解からせたいための質問を次々と繰り返しているのです。が、ユミちゃんの答えは、
「ヒルカワさんから電話があったのは、勤務中です。患者さんがいて診療中なので後にしてくださいと頼んだのに、どうしても電話を切ってくれないので、調子をあわせていただけです」と切り返しました。ワォ!言っちゃったゼ!
「B点で警官が出てきましたね。何人だったですか。」と裁判長。さすが。グットタイミング。
「2人だったと思います。」
「警官はAの車が被告人の車かどっちを止めるか迷ったのですか」
「そのように見えました。」
 こんな具合で、半分ヒルカワさんへの抗議のようなユミちゃんの応答が続きまして、ちょいとハラハラなんとか無事終了。


(続く)