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envd01-01511271159/四ヒルカワ冤罪事件2 ......

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ところで、今の発言は、「どうせまた同じ繰り替えしかァ」と思いつつ、時間を変更してもらうため電話をしたときの感想を先に述べちゃった訳。ついでに言えば、確か検察官は、2年か3年に一回資格審査のような試験があるはず。チョイト見で、はや50位には見えるこの人が何故パスするのかなとも、のちになって疑問に思ったことも付け加えましょう。 「エー蛭川と申しますが、チョット事情をお聞かせいただきたいのでおいで願おうと思いましてね。ご都合が悪ければ、何時にしましょうか。(おしつけがましく)ワタ、わたしの方は何時でもいいですから。」
「では、6月30日にお願いします。」
「6月30日!ソ、それまででは、ダ、だめでしょうか。」
「はい、患者をほっといていけないものですから。」
「しかし、あなたは、法を犯されたわけですから。立場はお分かりと思いますが、刑事事件は、交通違反だろうと他の犯罪と扱いは同じわけですからね。スピ―ドを出すことは非常に危険で人を殺すことだってあるわけで、ブツブツブツブツ」
 植物の十大必要元素も、人間の必須アミノ酸も、、どれかそのひとつが欠けると、全てがバランスを崩してしまう仕掛けです。これを「最小量の法則」などと言ったりします。つまり一つの問題が全体の問題で、一つをかたるには全部のシカケを説明しないと分からない。これらのシカケを ボクはその後「ヒルカワの法則」と呼ぶことにしました。
 彼にとって、すべての出来事は、同じ次元に並んでいるのだろう。それを彼は知らない人に教える立場にあるわけだ。知らなければ、バツ!バツ!と叫ばねばならないのです。真っことの人間の教師ですタイ!
「では、6月30日に」
「...デ、では、そうしましょうか」
どうも私は、ヒルカワの法則には適合しない人種のようです。
 広島から山口市までの道程は、実はそうとう大変で、広島から新幹線に乗り、新小郡駅で降り、タクシ―に乗り換えること30分。患者さんに悪いなァとおもいながら、11時半に診療を終え、車に飛び乗りました。飛ばしたかどうかなんてとても言えませんよ。
 ヒルカワくんは、40台後半から50台かな、良く年の分からないタイプの人で、小柄な体にお役人のチョッキを来ていました。隣では、こそドロ常習犯のおじさんが、おなかの突き出た精力絶倫タイプの検事ホさんに叱られていました。後ろでは、やっと普通の人タイプの検事ホさんに、ポン引き風のオッサンが叱られています。そこで、ボクはどういう風に叱られるのかと想像しながら、ヒルカワくんの前に座りました。彼の横には、「太陽にほえろ」で刑事をやった、西山くんにそっくりの検事ホホの助手が、ゾウリを履いて座っています。
「始めまして。私が蛭川です。」
「はい。」
「....私は、事情を知りませんから、ひとつホントのところを教えてください。警察官も間違えることがありますからね。私は、そうだったら、警察にそう言いますよ。良く判断して正しく裁かなければウソになりますからね。」
「(うそツキ!ここは裁判所かァ)ハア。」
「で、どうだったんですか。」
また、一から話さなくてはならない。何度繰り返したことだろうと思いながらも事情を話し、
「一番正確なのは、わたしの自動車クラブの長に宛てた手紙で、そのコピ―はお持ちのはずですが。」と、とても親切に言いました。
「ああ、これですね。エ―と、F.D.M.ってなんですか。」
「フォ―ミュラドライブミ―ティングの略です。」
「フォ、フォ―なんですか」
「フォ―ミュラドライブミ―ティング!」
「そうするとあなたは、フォ―ミュラカ―にのられるんですか。フォ―ミュラカ―ね。(これはいいぞ、書いとこ!)」
フォ―ミュラカ―! 以後、非常な興味をもってヒルカワくんは、このカタカナを繰り返しました。この人は英語はだめそうですね。従ってカタカナを繰り返したのです。この時、ニシヤマくんも興味をもって、あったかい視線をこちらに向けたので、私も、ニシヤマ君に「いいやつだね」と言う意味の視線を返しました。
「エ―、「わたしは、広島に向けて返る途中、運転し、」」......「運転していたのはあなたですか、それとも丸大さん(ユミちゃんの姓)ですか」
「(なに言ってんだろうねこの人は。おれのハンザイを立証しようとしてるんだろうに。ハイ。実はガ―ルフレンドの丸大さんでした、なんてて答えたらどうなるんだろうね。)
...彼女は免許を持っていません。」
ニシヤマくんが、顔の筋肉を出来るだけ使わないようにニヤっとします。
「ソ、そうか、じゃ、「運転していたのは丸大さんではなく、私でしたが」..」
ニシヤマ君がさらに下を向きました。ヘンなの。こりゃ変ってるわ。
その時隣では、例のおじさんが、「言いたくないことだってありますよ。」と言いますと、ただちに、「悪いことやってて、その態度はナンダ!」と、さも悪いことをすると人格が免許停止になるかの様に叱られました。ツミビトハラストメントなのです。罪を憎んで人を憎まず、なんてウソ。そういえば、
例題その1: 東京の弁護士会に、困って電話をかけたときも、偉い弁護士さんに、検事が職場に電話をかけてきて迷惑して居るんだけど、どうしたらよいでしょう、と聞くと、「ちょっとまってくださいね。...コイツさァ、事故じゃないみたい。どこにする?...おまたせしました。函館の弁護士会をお教えしましょうね。...」
 おおよそ、人に迷惑をかける人格が罪を作るかのようです。罪を責めるためには人格を責めるのです。で、ツミハラでは、人に迷惑をかける人格は、法に則る清いお仕事の人にとっては、仕事上で会話する相手の人すべてが持っている人格なのですから、困ったものです。ただし5時までみたい。5時から普通の人になってもいい自由を持った清いお仕事の人はオンナを求めて夜の町。そして、「私だって人間だ。ウソも言えば、アヤマチもおかすのだ。今晩俺一人なんだ。ナア不倫しようよ。」
「テメエ、ザケンジャネェ!」っと、例のコソどろのおじさんも言いたかろうな。ボクも言わせて。
 世の中セクハラブ―ム。おんなのひとに迷惑をかける人格は、すべての男の人が持っているのですからソリャ大変です。いっそ人格ハラストメントと呼べば、人に迷惑をかける人格はすべての人が持っていることになり、とっても簡単になるようですけどね。つまりあたりまえ。これが精神医学の真髄なんじゃないかな。逆に言うと、セクハラは男がイケナイ。ツミハラは、自分の前に立つ奴がいけないと言う事に。人格より前の属性が問題になるようでは、本当の民主主義なんて来ませんね。あたしに言わせりゃ。
例題その2: 例題1の方式で行くと、患者は迷惑な人格で、それが病気を作るはずです。そして困ったもので、そう信じているようなセンセがいます。「あんたみたいなユーコトを聞かない人はガンでしんでしまうよオ!」
 オット話をもとに戻さなくては。
「...「丸大さんでなく、私でしたが、私はフォ―ミュラカ―を運転し」、 フォ―ミュラカ―でしたね。「スピ―ドをよく出すこともあります。」....」
 あまりの支離滅裂さに、ボクは、かばんからカセットを取り出しました。事実と違う作文を調書にされて、収拾がつかなくなることを恐れたからでした。
「ナ、なにをやってる!ここでそんなことをしてはいかん!」
「(おやおや、「いけませんよ」、じゃないの)そうですか。」
こんな調子で、作文、じゃなかった、「自白調書?」は読み上げられ、西山君は、それでもあくびすることもなく、イッショ賢明書いて行きます。ボクはふと時計をみました。
あ―あ、患者さんに何というかな。もう3時を回っていました。休憩の終了時間です。......それから4時をとっくにまわり、窓の外は夕暮れ時。ほかのおじさん達はもう終わったようで、残された事務机の表面の、白い反射が徐々に失われ、光を失って黒ずみ始めていました。
「ド、どこか、間違いがありますか。ありましたら、遠慮なく言ってく...」
「はい。8箇所ほど。」
「ド、どこですか!」
「まず、...」

 そんな調子で結局4時50分までかかり、作文、じゃなくて自白調書の完了です。そんな具合ですから、この時、頭によぎったのが、このところ騒がしいエンザイ事件のいくつかだったのも当たり前のような気がします。