東欧の原子力事情

                                         

ニュークリアニューズ

ブルガリア

● 運転中の原子炉          6基
● 総発電設備容量      3,538 MWe
● 原子力発電のシェア        42%

ブルガリア政府は1999年に、欧州連合(EU)の交渉当局によるコズドロイ発電所の最も古い1及び2号炉の2基を2003年までに閉鎖し、3及び4号炉の運転を遅くとも2006年までに停止すべきとの要求に同意した。これら4基のプラントはすべて、VVER-440 加圧水型軽水炉である。
それ以来、コズドロイはブルガリアでのホットな政治問題となった。EU提案の全面的受け入れはまだ困難と考えられるが、その一方で原子力はブルガリア国民から幅広く支持されており、政府は現在、2006年以降についても、3及び4号炉の運転は続けるとの見解を明らかにしている。EU内の国の一部は、原子炉容器の脆化、非常用炉心冷却システムの不備、格納システムの耐漏洩特性といった、従来からこれら旧ソビエトによって設計された原子炉に指摘されている問題点を挙げながら、運転の継続に反対の姿勢を示している。
その一方で、コズドロイ 1-4号炉はブルガリアで最も経済的な発電プラントとなっている。この発電所は1999年から2001年にかけて、同国での電力の49%を発電した。その内訳は 1から4号炉が32%、5及び6号炉が17%となっている
コズドロイ発電所の原子炉は1970年に2基単位で建設された。最初の2基(V-230型)は 1970代半ばに商業運転を開始した。安全システムの強化や圧力容器内面にステンレス被覆の施された230型炉の改良型の3及び4号炉は、1980年代初めに商業運転を始めた。出力1,000 MWのVVER型及びV-320型PWRの最後の2基は、1988年と1993年にそれぞれ完成した。サイトには、低及び中間レベル放射性廃棄物の暫定貯蔵施設にくわえ、使用済み燃料貯蔵施設も設置されている。国際原子力機関 (IAEA) によって1991年に実施された最初の安全評価に続いて、コズドロイ VVER-440/230型炉の安全性を最新の国際水準に引き上げるため、これらプラントに対し大規模な改良工事が実施された。初期タイプのVVER型炉の国際水準への引き上げは困難と見なすEUの考えは、時代錯誤と言えると同国の原子力フォーラム、ブラトムは批判している。第三者によるレビューを多く受けるとともに、大規模な改良計画の実施によって、同炉はもはや初期のV-320型炉とは異なり、その安全性は西洋のそれにひってきするレベルにまで向上している、とブルガリアは主張している。



コズドロイ:ホットな政治問題になっている

ブラトムは、同国の最も古いプラント4基の早期閉鎖はブルガリア経済に悪影響をもたらすと考えている。また、これによって、2002-2006年に予定されている 5及び6号炉のリニューアル計画の達成も間違いなく困難になる。最も古いプラントの早期閉鎖に伴う収入減は電力事業者にかなりの財政的負担を強いるものと思われる。EUへの加入を果たすために、同国は最終的には協定を受け入れざるを得なくなると考えられるが、その一方で、ブルガリア大統領はEUに対して2006年の3及び4号炉の閉鎖要請を再考するよう要求している。炉寿命の延長が可能なことを欧州のパートナーに認識させるには、ブルガリアの交渉当局はかなり厳しい対応を迫られるようになる、と同大統領は述べた。産業界は1999年以降実施されて大規模な改良工事を考慮し、4基のプラントすべてについての廃炉スケジュールを、EUの専門家とともに見直し検討していきたいと考えている。ブラトムはまた、廃炉のもたらす別の視点としての技術的、経済的、社会的影響を指摘している。例えば、この国の最も経済的発電システムの1及び2号炉の廃止は、市場を不安定なものにするだけでなく、電力価格の高騰を引き起こし、ブルガリア経済に多大な損失をもたらすものと思われる。ブラトムは、原子炉廃止による発電損失はエネルギー利用効率の改善によって埋め合わせできるのではないかという考えは非現実的すぎる、と述べている。原子炉の廃止はまた、すでにその大部分をブルガリアに依存するバルカン諸国が現在直面しているエネルギー危機を、さらに悪化させることになる。経済や社会に対する影響への懸念が、閉鎖反対を訴える国民の意見の大多数を占めている。同国は1999年に、EUとの協定について再検討するため、18の地域組織を代表する高名なブルガリアの科学者や知識人、政治家などにより構成されるコズドロイ原子力発電プラント存続委員会を設立させた。


チェコ共和国

● 運転中の原子炉          4
● 総発電設備容量      1,648 MWe
● 原子力発電のシェア        20

テムリン-1号炉は2002年の6月に、その建設工事を終了し、18カ月間にわたる試運転の実施が許可された。これが終わると、出力981MWe(正味)のVVER-1000 加圧水型軽水炉の商業運転が開始されることになる。同サイトでの2基目の原子炉は、2002年5月31日に臨界に達し、2003年末に試運転が終了する予定になっている。
テムリンの原子炉やドコバニ原子力発電所の4基のVVER 440/213型炉はいずれも、欧州連合(EU)がグレードアップ化の困難な原子炉とは見ていないため、原子炉の安全性はチェコ共和国のEUへの加盟交渉に際して主要テーマになるようなことはないと考えられる。しかし、隣国のオーストリアは、ドイツからも支持され、もう何年にもわたってその加盟に拒否権の行使をほのめかしつつ、テムリンの運転に抗議してきている。 しかし、その過激な対応にはドイツも賛成しかねている。
テムリンの2基が運転を始めると、原子力はチェコ共和国の需要電力の40%を賄うことになる。テムリンの建設は1986年に開始された。ソ連の崩壊後に、政府はとりあえづ2基(当初の計画は4基)のみを完成させることを決めた。電力会社、CEZはプラント建設中にその安全性を国際水準にまで引き上げるために多くの設計変更を行なった。その内容には次の事項が含まれていた:計測制御システムの交換、新型炉心や新型燃料の採用、最新の放射線モニタリングシステムの導入、一次系診断システムの改良、電気系統のグレードアップ化。安全性の改善対策には、これら以外にも水素再結合器や最新の火災防護設備の設置などが含まれていた。またこれらには、最新の安全解析、確率論的安全評価、事故管理手法への新たなアプローチ、運転手順の評価、運転員に対する訓練システム(実規模シミュレーターによる支援)の改善、西洋の炉心管理技術の導入なども含まれていた。
主にプラントケーブル工事の全面的やり直しが必要にな最新のデジタルI&Cシステムの導入によって作業に遅延が生じた。これによって、費用が30億ドル近くにエスカレートした。それにもかかわらず、テムリンは実績のある欧州や米国の原子力機器サプライヤーなどから供給されたコンポーネントやシステムを効果的な組合せて利用する方法を確立した。チェコ のスコダ・JSが原子炉を含む主要機器トの大部分の製造を担当した。ウェスティングハウスが、I&Cシステムの交換や、原子燃料やその関連機器、診断及び監視システム、放射線モニタリングシステムなどの供給契約を獲得した。

テムリン:国際的に認められた安全水準を達成した

ドコバニの原子炉は1985年から1987年にかけて順次運転を始めた。これらのプラントは年間に平均して約130億KWhの電力を供給し、国内の全発電量の約20%を賄っている。プラントの平均設備利用率は81%を超えている。プラントでこれまでに発生した事象は国際原子力事象スケールのレベル2相当が1件のみとなっている。ドコバニはロシアの原子力産業の訓練サイトとしても使用される予定になっていなる。単に安全基準が満たされるようにするだけでなく、チェコ共和国がEUに加盟後も、ドコバニの原子炉がさらに厳しさを増すエネルギー市場での競争に対抗できるようにするため、CEZは約4億2500万ドルに上る意欲的なグレードアップ計画に取り組んでいる。その狙いは、プラントの運転認可期間を30年から40年に延長させることにある。CEZはチェコ共和国の最大企業の内のひとつで、10基の石炭火力プラント(主に国内で採掘された低品質の褐炭を使用)や13基の水力発電プラント、2基の熱電併給プラント、3基の風力発電プラント、1基の太陽光発電プラント、2カ所の原子力発電所などによって、60%以上の電力を供給している。EUへの加盟のための準備活動の一環として、政府はエネルギー市場の規制緩和やエネルギー産業の改革などの取り組みを進めている。2001年の世界的景気低迷による海外の主要企業からの低買値の申し出によって、CEZはその株式の売却を断念せざるを得なくなった。それにもかかわらず、CEZはその将来のためには戦略上のパートナーの存在が不可欠と考えている。しかし、最終的には5または6つにすぎない多国籍エネルギー企業によって支配されることになると見られる西欧市場は視野に置いていない。CEZは欧州中央部で主要な役割が担えるよう望んでいるが、それには強力なパートナーが必要になる。CEZはEU法によって定められた石炭火力プラントに対する厳しい排出基準をすでに満たしている。6,000 MW以上の設備にすでに脱硫装置または流動層ボイラーが設置されており、約2,000 MWの設備がテムリンの完成後に廃止された。発電プラントにはまた、安全性や信頼性に関して西欧プラントのそれにひってきする最新の制御装置や各種システムが備えられている。
他の多くの原子力推進国と同様に、廃棄物処理や廃炉用の資金は、その大部分が主に廃棄物発生事業者からの負担金やその利息、投資資金などで構成される原子力基金から調達されることになる。放射性廃棄物処分の責務は、放射性廃棄物処分機関(RAWRA)に課せられており、その認可を取得するため、放射性廃棄物や使用済み燃料の管理のための長期計画を政府に提出した。深地層処分にかかわる研究開発が1993年から開始された。低及び中間レベル放射性廃棄物処分施設がドコバニに設置されている。この施設は両発電所からの運転や廃炉に伴う廃棄物を受け入れるに十分な容量を有している。使用済み燃料は現在、これまでと同じようにプラントサイトに貯蔵されている。
テムリンは隣国のオーストリアで引き続きホットな政治問題になっている。チェコは、これら一連の取り組みはEU加盟国それぞれの法律に十分適合しており、またIAEAの勧告をも満たしていると主張している。原子力の安全を担う州規制機関は、完全に独立した組織で、その経験や能力は国際的にも十分認められている。それにもかかわらず、チェコ政府はいくつかの見解の相違について解決を図るため、欧州共同体の調停を介して、オーストリアとの間でハイレベルな情報や意見交換を行なうことに同意した。チェコに対しいくつかの追加措置を義務づける協定について合意がなされた。これはオーストリアを十分に満足させるものではないかもしれないが、ヒートアップを鎮めるという点である程度役に立っている。


ハンガリー

● 運転中の原子炉          4基
● 総発電設備容量      1,755 MWe
● 原子力発電のシェア        39%

パクス原子力発電所の原子炉4基はハンガリーの電力の約39%を賄っている。これらプラントはすべて、第2世代 VVER-440/213型炉で1982年から1987年にかけて送電を開始した。累積の設備利用率は1988年に目標の80%に到達し、ここ5年に至っては、大規模なグレードアップ対策やリニューアル計画がまだ継続中であるにもかかわらず、85%以上を達成している。
グレードアップ対策によって、2から4号炉については発電能力が標準の440 MWeから460 MWeに、1号炉については470 MWeにそれぞれ増加した。この取り組みは欧州連合(EU)の規制緩和エネルギー市場への参入に際しプラント競争力の強化に役立たせることができる。
また、VVERの設計運転寿命の30年を少なくともさらに10年間延長させるための長期目標が立てられている。
EUへの加盟を果たすために、ハンガリーは移行猶予期間を設けることなく欧州の原子力規制体系の導入に踏み切ることを宣言した。例えば、ハンガリーの各種原子力機関や原子力規制当局、原子力安全審議会の独立性の強化といったまだ政府によって解決されなければならない課題がいくつか残されている。西欧原子力規制連合(WENRA)によるレビューによれば、これら組織の役割と責務は、混乱や利害の衝突をもたらす恐れのあるようないかなる事態の発生も阻止できるよう明確化されなければならない。パクスのほかにも、ハンガリーでは研究用や訓練用原子炉が2基運転されている。1980年代や1990年代のある時期まで、ハンガリーはウランを採鉱し、そのイエローケーキをロシアに移送し、最終的に燃料集合体に組み立ててプラントに供給していた。
パクスでは運転の初期段階からその使用済み燃料はロシアのマヤカ再処理施設に輸送されていた。これらの輸送は1995年に終了した。使用済み燃料は現在、1997年にサイトにて運用を開始したモジュラー・ボールト・タイプの乾式貯蔵システムに保管されている。必要に応じシステム容量の増大が図られている。発電所にはまた、放射性廃棄物の処理や貯蔵用施設がこれとは別に設置されている。使用済み燃料や高レベル廃棄物の処分施設建設のための予備地質調査が行なわれている。中央原子力基金がパクスでの放射性廃棄物管理や廃炉資金を賄うために設立された。1976年以降、別の場所で操業を行なっている放射性廃棄物処理処分施設は、より厳しい国の基準に適合できるようグレードアップ対策が実施されている。現在、新たな処分施設建設のためのサイト調査が進められている。放射性廃棄物の管理責務は現在、プラムと呼ばれる政府機関に課せられている。
政策の一環として、プラントに対してその寿命にわたって安全改善対策が実施されるようになっている。パクスは最新の安全基準に適合させるためにグレードアップ対策が施された旧東欧圏での最初の原子炉となった。パクスの運転事業者は、ロシアのサプライヤーからの脱却を目指している。彼らは現在、工事の実施に際して公開入札競争にさらされている。

パクス1及び2号炉(上部)、3及び4号炉(下部):グレードアップ対策により出力が増大

原子力プラントは運転やメンテナンス分野で多くの斬新的な取り組みを始めた。運転員の訓練のための重要ツールは、ハンガリー-とフィンランドで共同開発したプラント特有の実規模訓練用シミュレーターである。最近、メンテナンス・トレーニング・センターが設置され、ここでプラントでの実際の機器検査やメンテナンス作業の実施に先だって各種トレーニングが行なわれている。同センターは、訓練用原子炉や蒸気発生器、循環ポンプ、隔離弁、その他補助機器などが、決して運転に供されることのなかった他のプラントかまたは自身のプラントのいずれかから入手された当初の工場製造品であるという点で、ユニークなものになっている。この施設は1997年に完成した。
安全改善計画が1996年に、最新の評価ツールを駆使してプラントの安全性評価を西側基準に照らして行なった総合安全評価計画(アグネス)結果に基づいて開始された。特に、事故解析のやり直しや必要なグレードアップ対策の確立、その優先順位付けなどに重点が置かれた。アグネスの結果からはプラントの基本的安全にかかわる新たな重要問題は特定されなかった。これに続き、2002年末に終了予定になっているプラントの自主的リニューアル計画に3億ドルの予算が認められた。
この計画での実施内容は以下のようになっている。

■ 原子炉防護システムの改造
■ 耐震性の改善
■ 耐LOCAケーブルの使用によるI&Cケーブルペネトレーションとケーブル本体の交換■ 火災安全性の強化
■ 蒸気発生器の漏洩管理対策
■ 一次系過圧保護システムの改造
■ 非常用ヨウ素フィルターシステムの追加
■ ヒューマン・エラーの減少対策

第三者組織による国際評価活動によって、これらプラントに対して実施された安全性向上計画によって、安全性はすでに同一稼動年数の西側原子力発電プラントのそれにひってきするレベルにまで到達していることが確認された。
WENRAによれば、認可、規制、原子力施設管理にかかわるハンガリーの法体系整備への取り組みはここ10年の間に急速に進歩した。合理的認可プロセスの制定や、各種法律や規制法の改正によって、ハンガリーの規制枠組みは西欧諸国のそれにひってきする水準にまで改善された。報告によれば、現在の安全システムに大きな問題のあることは確認されなかった。VVER型炉に対する大きな懸念に関連した、大規模冷却材喪失事故時での気泡式復水器の封じ込め性能については、EUの支援により実施された実規模試験によって問題のないことが確認された。これまで原子炉容器はすべて、必要な安全マージンは確保されてきており、それら材料の靱性も十分保持されている。
国際原子力機関 (IAEA) は2001年10月に、安全性についてレビューを行なうためパクスに対しオサート・ミッション(運転安全性に関する評価チーム)を送った。
そのチームは、プラント全体にわたるプラント材の状態管理やプラント管理基準の改善計画、従業員に対する管理能力や技術ポテンシャルの向上計画を含め、いくつかの斬新的取り組みに注目した。

リトアニア

● 運転中の原子炉          2基
● 総発電設備容量      2,370 MWe
● 原子力発電のシェア        78%

ソ連の崩壊後にその引継ぎを余儀された多くの厄介なものの内のひとつにイグナリナ原子力発電所が含まれていた。
しかし、それは現在同国の電力の80%を賄い、それとほぼ同量の電力を輸出する経済発展の重要な原動力になっている。それにもかかわらず、イグナリナは現在、その出力が1,500 MWeから200-300 MWeに抑えられているものの、世界最大のRBMK-1500型炉2基を安全に運転するためにスウェーデンを中心とする西側の支援をかなり必要とする状況にある。プラントでは最近、安全性を改善するための大規模な短期計画が終了し、最新手法による安全解析が行なわれた。原子力に対する合理的規制枠組みの確立や、より実効性のある国の規制機関、VATESIの設立が特に重要テーマになっていた。安全性のグレードアップ対策はまた、稼動率の向上にも寄与している。イグナリナは2002年に、国内消費用に55億kWh、輸出用に57億kWh弱の電力をそれぞれ売却する計画を立てている。
それにもかかわらず、欧州連合(EU)がRBMKをグレードアップ化の困難なプラントと見ていることから、欧州共同体(EC)は、2000年のメンバーシップ協議の開始に際してリトアニア政府を招いた時、原子炉は停止されるべきと主張した。昨年の交渉時に、リトアニアの担当者は1号炉は2005年までに、2号炉は2009年までに停止するとの提案を行なった。これに応えてEUは、リトアニア外務大臣が23億ドルの資金を必要とすると述べた廃炉措置の遂行のために、十分な支援策の提供を整えていた。
リトアニア議会は実際に、最初の原子炉を2005年1月までに廃止するために必要な準備作業を可能にする法律をすでに通過させていた。しかし、廃炉開始の正確な時期は、利用可能な資金の調達状況に応じて政府が決めることになっている。2号炉に関しては、国の新たなエネルギー戦略が確立された後の2004年に決定されることになっている。それにもかかわらず、EUの交渉担当者は両炉の閉鎖時期はすでに決定済みとの見解を抱いている。交渉での取り決めや政府の約束にもかかわらず、国内には原子炉の運転は可能な限り長く続けるべきとの意見が国民だけでなく政治的にも広く支持されている。リトアニア大統領でさえも2号炉は同国にとっても非常に重要であるため2009年以降も運転を続けるべきとのキャンペーンを行なっている。

イグナリナ:経済発展の原動力になっている

プラント停止と廃炉に必要な資金調達を支援するため、2000年6月に欧州共同体(EC)とリトアニアによりドナー会議が設立された。その会議で決定されたがイグナリナ・インターナショナル・廃炉支援基金(IIDSF)であった。それに対して、欧州共同体や欧州のいくつかの国から約 2億1000万ドルの支出が確約された。これらの基金は特に廃炉計画の準備や、環境影響アセスメント、放射性廃棄物の安全管理や貯蔵に必要な廃炉施設の技術仕様の策定などに充てられることになっている。
最初の主要ステップとして、廃炉に向けての準備活動を管理するプロジェクト管理チーム(PMU)を設立するため、英国のNNCの率いる欧州コンソーシアムとの間で1,150万ドルの契約が結ばれた。
ベルゴ・アトム(ベルギー)とスエッド・パワー・インターナショナル(スウェーデン)から構成される合弁企業はまた、イグナリナと調整を図りながら、それらの下請のスティーグ(ドイツ)とともに、PMUに職員を送ることになる。PMUプロジェクトへの必要資金はイグナリア原子力発電プラント廃炉基金とIISDFの両方から賄われることになる。
PMUチームの主目的には、廃炉プロセス技術の確立やそのト実施計画の策定などが含まれている。ドナー国は2002年6月19日に、次の3つの最優先プロジェクトの推進のために約1億2700万ドルの資金の提供に同意した:廃止後の国の需要量を賄うための熱及び蒸気プラントの建設;使用済み燃料貯蔵施設の建設;及び廃炉プロジェクトのための技術アーカイブの整備。プラントの廃止時に、発電所の運転員は1号から2号炉に燃料移動を行なう計画を立てている。この作業に必要とされる資金は、廃炉ドナー国が商業プロジェクトへの資金提供を拒否していることから、国内で調達されることになる。
プラントについては2002年に、2号炉に対する多様な閉鎖計画の策定や、安全解析報告書の作成作業などが進められることになる。これらはいずれも運転を継続させるための必要条件になる。スウェーデンのインターナショナル・プロジェクト(スウェーデンの隣国に対する原子力安全支援を目的に設立された)からの協力は続けられることになるが、これによる支援は、リトアニアがEUに加盟した時点で打ち切られることになる、とスウェーデンの当局は述べている。


ルーマニア

● 運転中の原子炉         1基
● 総発電設備容量      655 MWe
● 原子力発電のシェア      11%

その最初の商業運転開始から5年後に、ルーマニア唯一の原子力発電プラント、チエルナボーダ-1号炉は2001年末に87.11%の平均設備利用率を記録した。2001年に原子力発電プラントは同国の電力の約11%を賄った。
チエルナボーダサイトには当初、同一タイプのCANDU 6 (カナダ型重水炉)が5基建設される計画になっていた。資金不足により1989年に他のプラントとともに建設が中断された2号炉は、主要機器の購入をすでに終え、その約48%が完成していた。プラント運転事業者、ニュークリア・エレクトリカは2001年5月18日に、プラントを完成させ運転が開始できるようにするため、カナダのアトミック・エナジーとイタリアのアンサルドとの間で契約を結んだ。これらの活動に必要な追加資金は7億ドルと見積もられている。ルーマニア政府はプラントの完成に必要な機器やサービスなどの輸入経費を調達するための外債導入の保証に同意した。政府は3及び4号の両炉を完成させたいと望んでおり、どうすればこれが実現できるかを調査するため各省庁から成る合同委員会を設置した。同委員会はプロジェクトの完成に国による保証の必要性が回避できるBOT(建設-運転-引渡し)方式の可能性について調査を行なっている。原子炉やタービン建屋を含めプラント2基の土木・建築工事はほぼ終了しているが、2号炉と異なり主要機器はまだ調達できていない。
政府は以前に実施されたサイト調査結果を見直すとともに、すでに完成済みの構造体の状態についても再点検を行なうよう要請した。政府はまた、エネルギー分野の改革に取り組んでいる。電力事業者は2000年に、発電事業者、送電網運営事業者、送配電事業者にそれぞれ分割され、エネルギー市場の形成への動きが部分的ながら進展しつつある。従来型の火力発電プラントの方が原子力発電プラントより設備容量の増加率がかなり高い状況にあるが、2001年中旬に、電力価格を実際の発電コストにより近づけるため価格規制策を緩和することにした。これは、今後さらなる負担増が予想されるニュークリア・エレクトリカの財務状況の改善にかなり寄与することになると思われる。
チエルナボーダで使用される燃料集合体は、1995年にAECLの認証を得たニュークリア・エレクトリカの子会社、FCN-ピテスティによって製造されている。その製造能力は2基のCANDU プラントの必要量が満たせるよう容易に増強できるようになっている。天然ウランは国内の鉱山から供給されている。燃料の運転実績は極めて良好である:過去2年間に、燃料破損はまったく検出されなかった。重水の必要量はすべてルーマニアのロマーグプラントから供給されており、2001年には2基の CANDU 6 プラントの初期インベントリーを賄うに十分な原子炉級重水を1,000トン製造した。
チエルナボーダサイトに使用済み燃料乾式貯蔵施設を建設するため、2001年に、カナダのアトミック・エナジーとの間で1,100万ドルの契約を結んだ。サイトにはすでに低レベル放射性固体廃棄物の暫定貯蔵施設が設置されている。
政府の戦略は低/中間レベル廃棄物処分施設を比較的浅い地下に建設させることにある。
産業界による2号炉の完成を含め、政治やメディア、国民などから幅広い支援が得られるようにするための活動が順調に進展している。2002年4月のプラント訪問の際に、大統領は2号炉の建設は2004年末までに終了する予定になっていると述べた。ルーマニアのアトミック・フォーラムは2002年初旬に、「ルーマニアでの原子力推進に最も貢献した2001年の政治家」賞を、2号炉は「ルーマニアの経済にとって最も重要である」と宣言した同国首相に授与した。

ロシア

● 運転中の原子炉         27基
● 総発電設備容量     20,799 MWe
● 原子力発電のシェア       15%

多額な資金と経済改革が不可欠となるにもかかわらず、もしロシアが原子力拡大計画を推し進めようとするなら、最近の原子力プラントの稼動実績から見てその可能性はかなり高いと言える。原子力省(ミナトム)によれば、昨年の設備利用率は70.3%と前年(69.1%)よりわずかながら上昇した。
出力 950 MWeのVVER-1000型ボルゴドンスク-1号炉(以前はロストフ-1号炉と呼ばれていた)が2001年12月に、商業運転を開始した。
2001年のもう1つのマイルストーンは、同国での最古のVVER-440型ノボボロネジ-3号炉に対して30年の設計寿命を超えての運転を可能にさせるための寿命延長計画が完了したことであった。これらのプラントが順調に運転されていることもあり、国有原子力発電事業者、ローゼン・エルゴ・アトムは1,440億キロワット時の発電目標を達成することができると思われる。再建プログラムの完了に続くクルスク-1号炉の再起動もまた、この目標の達成に寄与するものと思われる。
重要な改革の1つに旧システムの廃棄があった。これによって、原子力発電所は法的に独立した事業体になった。2002年に、原子力発電所はすべてローゼン・エルゴ・アトムに併合され、直接その管理下に置かれることになった。レニングラード発電所(出力925 MWeの軽水冷却黒鉛減速炉4基から成る)はその組織体に吸収された最後の発電所となった。この改革は、実際にローゼン・エルゴ・アトムにもたらされる電力収入の大幅増によって、電力事業者により効率的な投資計画の立案を可能にさせることになった。現在、その取り組みの重点は、プラントの寿命延長や設備利用率の改善に向けられている。現在、設備利用率の目標値は73%に設定されているが、ローゼン・エルゴ・アトムは2006年にこれを80%に高めることを計画している。ノボボロネジ-3号炉の寿命延長プロジェクトが成功裏に終了したことにより、このプロジェクト画は今後、今年運転30年の記念すべき年を迎えたノボボロネジ-4号炉からスタートして、順次次のプラントへと引き継がれることになる。これらにはクルスク-2号炉、レニングラード-1及び-2号炉、コラ-1及び-2号炉、ビビリノ-1,2.,3及び-4号炉(いずれも出力12 MWeの小規模コジェネレーションプラント)が含まれている。
現在建設中のプラントが4基ある(最新情報による):カリーニン-3号炉(2004年に完成予定)、ボルゴドンスク-2号炉(同2005年)、パラコボ-5号炉(同2006年)及び出力925 MWeの黒鉛減速軽水冷却炉(同2006年)。現在、これらのプラントはすべて65%以上完成した状態にある。ローゼン・エルゴ・アトムは2010年までに、ノボボロネジの2番目の発電所での1号炉、カリーニン-4号炉、パラコボ-6号炉の運転開始を計画している。また、2000年9月のニューヨークの国連ミレニアムサミットにて プーチン大統領の発表した核拡散防止計画に基づいて、ロシアはプルトニウムを燃焼させるためベロヤルスクでBN-800(出力800 MWeのナトリウム冷却高速炉)と鉛冷却高速原型炉(BREST-300)の建設を計画している。
ロシアはまた、インドに1基、イランや中国に2基のVVER-1000 型炉の供給を含め、海外での原子力発電プラントの建設プロジェクトのいくつかにかかわっている。また、VVER型クメル ニッキー-2号炉とロブノ-4号炉を完成させるためウクライナと協議を進めている。
ソ連の崩壊後に、ロシアはかなり逼迫していた状態にあった外貨を獲得するためウランや濃縮サービスの市場取引量を増大させた。これは、西側との間で摩擦を引き起こすこととなり、輸入割当量の設定を含め、欧州連合や米国に輸入規制を強いさせることになった。しかし、ロシアは、国内需要の高まりや生産量の減少、すでに売却契約済み量の確保などのために、西側市場への天然ウランの供給量を減少させてきている。しかし、西側の濃縮事業者に対するダウンブレンド高濃縮ウラン(HEU)の供給や廃棄ウランの再濃縮サービスの提供を通して、第2サプライヤーとしてのポジョンを依然として維持している。
原子力省にとっての比較的その可能性が高いと思われるもう1つの収入源は、外国に使用済み燃料サービス(貯蔵、再処理、処分など)を提供することである。これを可能にさせるためには、放射性廃棄物や使用済み燃料(既存のいくつかの顧客からの使用済み燃料は除く)の持ち込みを禁止する現在の法体系を改正しなければならなくなる。
現在新たな法律の制定がなされているものの、これに関心を寄せる顧客に対しこのようなサービスの提供が実際に行なえるようになるまでには、さらなる規制面の整備が必要になる。その可能性の高いクライアントとしてしばしば言及される日本や韓国、台湾と共同して、極東ロシアに使用済み燃料貯蔵施設を建設するといったアイデアが提案され、米国の核拡散防止トラストプロジェクトからの支持も得られている。しかし、これらの国々では核燃料の輸送に対して、そのほとんどに米国の同意が必要になるということもあり、ロシアによるイラン支援問題が解決されるまで、その進展の可能性は低いものと思われる。
兵器材料の処分プログラムが順調に進められている。1993年に米国との間で署名されたメガトンからメガワットへの転換プログラムによって、2002年6月1日時点で、発電用燃料に使用するためロシアの兵器級高濃縮ウラン(HEU)146 トンがすでに低濃縮ウランに転換された。これはロシアに約25億ドルの外貨をもたらした。このプログラムは20年間継続され、500 トンのHEUの処分が計画されている。
プルトニウムのフロントエンドに関しては2000年9月に両国は兵器級プルトニウム34 トンの処分計画に合意した。ロシアにとって、このプログラムは約20億ドルと見積もられる資金を調達できるかどうかにかかっている;他のドナー国は引き続き資金提供に反対の意向を示している。9月11日に続いて巻き込まれる恐れのあるリスクへの懸念によって、核拡散防止に必要とされる資金の大部分が全G7国から提供されている。この他にも、西側の電力事業者への混合酸化物燃料の売却やリースなどを含め、コマーシャルベースによる資金調達法がいくつか検討されている。
資金調達問題がロシアの廃棄物対策の取り組みに制約を課している。これを憂慮して、特に北欧を中心とする西側諸国が同国での廃棄物処理や貯蔵プロジェクトに多くの資金援助を提供している。コラ半島での除染土壌の浄化活動を支援するためのプロジェクトがいくつか検討されている。この地域での放射能汚染や他の環境問題などの負の遺産に対処するため、原子力プロジェクト(バルト海や北極海、北西ロシアなどを含む)にその使途が限定された6,200万ドル規模にのぼる新たな「支援基金」が2002年7月にスタートした。約5億ドルの資金が必要と想定される原子力廃棄物管理プロジェクトに対し、その優先順位付けリストが作成された。これはバーレンツ海域での使用済み燃料や放射性廃棄物などの負の遺産に対処するための最初の主要ステップで、これはこのような廃棄物処理のための世界最大の貯蔵施設を提供することになる。これに必要な基金は欧州復興開発銀行によって管理されている。


スロバキア

● 運転中の原子炉          6基
● 総発電設備容量     2,512 MWe
● 原子力発電のシェア       53%

スロバキアの6基の原子炉は総発電設備の32%を占め、総発電量の50%以上を供給している。ボフニチェ-1及び-2号炉(ボフニチェ V1としても知られる)は第1世代のVVER-440/230 型炉で、ボフニチェ-3及び-4号炉(ボフニチェV2)とモホフチェ-1及び-2号炉は第2世代のVVER-440/213 型炉である。ボフニチェのプラントは1978年から1985年にかけて順次発電を開始した。安全性をさらに強化して建設されたモホフチェプラントは20001998年と年にそれぞれ運転を開始した。
EUへの加盟交渉に際し、スロバキア政府の行なったコミットメントのうちの1つは、2億5000万ドルにのぼる再建計画を2000年に完了させていたにもかかわらず、その213 型炉を2006年と2008年にそれぞれ閉鎖させるというものであった。電力市場の開放に向けてのもう1つの取り組みは、国有電力事業者、SEからその事業の一部、例えば送電部門を分離し、原子力プラントだけでなく、化石燃料プラントや水力発電プラントの運転業務のみを行なう純粋な発電事業者に転換させることであった。
VVER型炉の導入前には 、ボフニチェにはガス冷却重水減速炉(A1として知られる)が建設されていた。炉心損傷事故を引き起こしたこともあり、この原子炉は短期間の運転の後、1977年に永久停止された。同プラントは現在、廃炉措置が進められており、その燃料はすべて、ロシアのマヤカ再処理施設に移送された。
モホフチェの建設は1983年に開始されたが、1及び2号炉がそれぞれ90と75%、3及び4号炉が30から40%完成していた1993年に建設が中断された。最初の2基については1995年に建設が再開された。このプロジェクトへの資金調達のため、政府は欧州復興開発銀行(EBRD)にアプローチを図ったが、EBRDから特にボフニチェの最古のプラントの早期閉鎖を強く要請されたこともあり、スロバキア政府はこれに代わって、チェコやフランス、ドイツ、ロシア、スロバキアの各銀行から資金を調達せざるを得なくなった。フラマトム・シーメンスとロシアのサプライヤーとの合弁企業の主導の下に進められたプロジェクトによって、モホフチェはソ連設計の原子炉のうちで国際安全基準をクリアーした最初のプラントとなった。
3及び4号炉については1992年以来中断されたままの状態になっている。2000年に、プラント保全のための5カ年戦略計画が発表され、2001年に、保存作業の継続や、プロジェクト・ドキュメントや最新データの保存を図るため、特別作業チームが設置された。しかし、現在の発電設備増設の必要性が乏しいような状況下では、政府はこれとてそれらを完成させるための資金調達にほとんど寄与することにはならないであろうと述べている。それにもかかわらず、スロバキアでは原子力は国民の間で広く支持されている。

ボフニチェ:スロバキアの全電力の32%を賄っている

スロバキアでの放射性廃棄物や使用済み燃料、廃炉の管理は両発電所で施設の運営に携わるSE-VYZの一部門によって行なわれている。ボフニチェの放射性廃棄物処理センターでは、A-1の廃炉、VVERの運転、他のユーザー(医学機関や調査研究所、産業界など)などからの液体及び固体廃棄物のほとんどが処理されている。ここでは、固体廃棄物の類別、液体放射性廃棄物の濃縮やセメント処理、ガラス固化、高圧圧縮、焼却技術などの導入がその特長になっている。モホフチェでの国の核分裂性廃棄物貯蔵施設( RFPWS )の建設が1999年に終了した。最終的に低及び中間レベル廃棄物の貯蔵も予定されているこの施設にて、コンクリートコンテナへの核分裂生成物を含む放射性廃棄物の充填作業が2000年6月から開始された。
使用済み燃料は1986年までは、再処理のためロシアに返還されていた。それ以降は、これらはボフニチェの暫定燃料貯蔵施設に貯蔵されている。この貯蔵施設は原子炉の寿命中に発生する使用済み燃料すべてが受け入れられるように1999年に拡張された。深地層による高レベル廃棄物や使用済み燃料処分サイトの選定手続がすでに開始されている。将来の廃棄物処分や廃炉費用をまかなうため、1995年に国レベルによる基金が設立され、これに電力事業者はをKWh 当たり一定の負担金を支払っている。
スロバキアの原子炉については1990年代以降、安全性のグレードアップ対策が実施されてきている:ボフニチェ V1の1及び2号炉-1990年代初旬に、ボフニチェのプラントはその最古のVVER型炉の設計に関連した重大欠陥に対処するため、緊急計画の実施に着手した。これには原子炉圧力容器の焼きなまし、各種診断システムの導入、確率論的安全解析(PSA)の実施などが含まれていた。電力事業者は安全性を大幅に向上させた新設計基準を制定した。
安全システムの分離やその能力にかかわる問題点についてはそのほとんどが修正された。これによって火災リスクやサイトの耐震性、LOCA後の冷却材の再循環といった問題点に対処できるようになった。初期の原子炉防護システムは交換され、事故後プラント監視システムが新たに導入され、非常用電力供給システムに対し設計変更がなされた。また、このような事象に対処するための格納システムの能力に関しては依然としてその懸念が解消できていないため、一次系配管の大規模破断確率を低下させるための対策が講じられた。一次圧力バウンダリーの健全性は適切レベルに維持されている。
ボフニチェ V2の3及び4号炉-1990年以降実施された大規模な改造工事によってその安全性が西欧のそれと同等レベルにまで向上した。圧力容器についてチェックした結果、焼きなましの必要性のないことが判明した。現在実施中のリニューアル計画(1999-2006年)には、例えば、供用期間中診断システムの設置、計測制御系の改造、電気系統の改善、火災や耐震性の強化などといった対策が含まれている。
モホフチェ 1及び2号炉の設計の際にいくつかの改善策が導入され、これによってこれらのプラントの安全性が西欧プラントのそれにひってきしたものになることが保証されるようになった。これらには高品質機器(例えば最新の原子炉制御システムや新型加圧器安全弁、新式の給水制御システムなど)の使用や、事故時対応システムの改善(例えば蒸気ダンプシステムやタービン室外の改良型緊急給水制御システム、消火システム、一次回路ベントシステム)などが含まれていた。原子力規制機関(UJD)が、スロバキアが独立した1993年に、独立組織として設立された。西欧の原子力規制連合によれば、スロバキアの原子力規制体系の枠組は西欧のそれと協調性の取れたものになっている。UJDは、スイスの支援により、かなり高いレベルの評価能力を備えることができるようになり、そのレベルは西欧諸国の同種機関のそれにひってきしたものになっていると述べた。


スロベニア

● 運転中の原子炉          1基
● 総発電設備容量      656 MWe
● 原子力発電のシェア        39%

スロベニア唯一のクルスク原子力発電プラントは、ウェスティングハウス製の2ループ加圧水型軽水炉である。その当初の出力の632 MWeは2000年の蒸気発生器の交換によって678 MWeに増強された。政府は40年の寿命に達する2023年にプラントの閉鎖を計画している。プラントの運転特性は良好で、負荷率や設備利用率は概して81%を超えている。
クルスクプラントは、その権利として出力の1/2を所有する隣国クロアチアの電力事業者との共同プロジェクトとして建設された。ユーゴスラビア旧連邦の崩壊以来、プラント所有権やその他の問題を巡ってこれら2国間では長い間論争が続いている。これらの問題は除々にではあるが解決に向かいつつある。その間に、スロベニア政府はクルスクプラントを所有するENEKを株式会社に転換させた。同プラントについては2000年に、大規模安全改良計画の最終ステップが終了したことにより、プラントの安全性がEUの同種原子炉のそれにひってきするレベルに維持されることが保証されるようになった。また、実規模シミュレーターの導入が図られた。それまでは、運転認可事業者の訓練や再教育は米国にてシミュレーターを使用して行なわれていた。サイトでプラント特有の実規模シミュレーターが利用できるようになった結果、クルスク原子力発電プラントに対して2000年に運転訓練に対する全責任が課せられるようになった。現在、クルスクの使用済み燃料はサイトの使用済み燃料ピットに貯蔵されている。運転に伴って発生する固体放射性廃棄物は処理され、スチールドラム缶に充填され、サイト固体廃棄物貯蔵施設に保管されている。現在の計画によれば、使用済み燃料は2050年までに最終処分が開始できるようになる。この戦略は、3から5年間隔で見直しされている。スロベニア当局は将来のクルスクの使用済み燃料の管理は、もしこのアイデアが.いつか採用されることになるなら、地域共同処分計画に参画できるようにしたいとの要望を持っている。短期的視点から、現在の使用済み燃料ピットは将来にわたって燃料集合体がすべて貯蔵できるようにするため拡張工事が行なわれている。
スロベニアにはまた、ヨーゼフ・ステファン調査研究所での出力350 kWtのトリガ マルク原子炉や、現在閉鎖措置が進められているウラン鉱山や粗製錬施設工場がある。1966年に運転を開始したトリガは、1992年の大規模な修復工事や再建計画の後に、定常運転とパルス運転に対する再認可を取得した。
現在これは、調査研究やクルスク従業員の訓練、医学や産業、原子核化学のための放射性同位元素の製造などに使用されている。調査研究炉からの使用済み燃料は米国に定期的に返還されている。低及び中間レベル固体廃棄物は調査研究所の中央放射性廃棄物貯蔵施設に保管されている。この施設はまた、他の小規模な廃棄物発生者にも利用されている。その運営責任は1999年に調査研究所から放射性廃棄物管理機関に移管された。
同国でのウラン鉱山と粗製錬所は、1985年から1990年にかけて操業され、452.5t(U3O8 換算)のイエローケーキを生産した。鉱山と粗製錬所では現在、廃止措置や土壌浄化活動が行なわれている。ARAOにはスロベニアでのあらゆるタイプの放射性廃棄物の管理や処分活動に対する責務が課せられている。低及び中間レベル廃棄物管理戦略が、その評価や認可の取得などのために、ARAOからスロベニア政府に提出された。この提案では2007年か遅くとも2010年までに処分施設が使用できる計画になっている。
EUへの加盟条件として、スロベニアはその原子力法体系や規制体系をEU方式に一致させることが要求されている。大枠ではその要求条件を満たしていると言えるが、EUはスロベニアに対しいくつかの懸念事項についての対応策を求めている。例えば:
■ スロベニアの原子力安全当局、SNSAがそのすべての義務や責務の遂行に必要な人的資源を保有し、かつ独立した組織体から必要に応じてテクニカル・サポートを得られるようなルートを確立していることの実証。
■ クルスコサイトでの耐震強化対策の完全実施。
■ クロアチア当局との役割分担を考慮した総合危機管理計画の策定。
規制体系の改革に際して、スロベニアはまた、IAEAや西欧原子力規制当局のレビューチームからなされた勧告を受け容れる考えがあると述べた。

ウクライナ

● 運転中の原子炉           13基
● 総発電設備容量      11,195 MWe
● 原子力発電のシェア        46%

レオニッド クチマ大統領は、ウクライナがG7国に対して行なっていた、まだ3号炉が運転されていたチェルノブイリ発電所を閉鎖するとの約束を2000年12月15日に遂行した。その時でさえも、この出力1,000 MWeの RBMK型炉は同国にとって重要な発電設備となっており、2000年には67.2億キロワット時を発電し、その年での最も高い設備利用率を達成していた。クチマ大統領はこれまでは、まだ未完成のVVER-1000 型炉2基と、クメル ニッキー-2号炉とロブノ-4号炉(K2/R4)を完成させるに必要な資金がG7によって提供されることが確証されるまでは発電所を停止することを拒否していた。クチマ大統領は支援の提供にま全面的に満足しているわけではなかったが、最終的に譲歩した。1995年の当初協定では、G7がサイト廃止やこれに伴う電力損失を補償するための財政支援の保証を約束していた。例えば、ドイツのようなG7政府のいくつかが原子力に依存しない解決策を望んでいたが、クチマ大統領にとっては、このことはK2/R4を完成させることを意味していた。G7とそのエージェントの欧州復興開発銀行は、K2/R4への資金支援が費用対効果の最も高い解決策となることが明白になった場合に限り、この提案に同意するものと思われていた。両プラントがすでに85%以上完成していることや、ロシアからの輸入依存を意味する天然ガス利用よりも望ましい選択肢であることからも、クチマ大統領にとってこれは明白なことであった。
チェルノブイリ-3号炉が最終停止される数日前に、EBRDはいくつかの条件を付した上で、原則的にこの提案を了承し、2億1500万ドルにのぼる資金援助を約束した。さらに重要なことは、この協定によってEBRDの専門家が14.8億ドルと試算したプラント完成に必要な追加資金が主にG7や欧州連合からの借款によって保証されるようになったことである。EBRDの付した条件には、例えば、完全独立の規制機関の設立や、ウクライナのすべての原子力施設で行なわれている安全改善活動の継続、電力改革、特にエネルギー供給会社の民営化、課税強化などの取り組みが含まれている。さらに1年にわたる詳細交渉の末に、ウクライナとEBRDは当初2001年12月6日に署名される予定になっていた協定に最終合意した。しかし、調印の数日前に、ウクライナは EBRDに、例えば電気税の大幅増といったこれらの条件のうちのいくつかについては、まだ受け入れられる状況にはなく、また14.8億ドルのコスト見積もりについても同意しかねるとの考えを明らかにした。ウクライナのクチマ大統領が、ロシアが約5億ドルで可能と試算したこのプロジェクトを完成させるためにロシアとの協定に署名したと発表した数日後に、その拒否の姿勢はさらに強くなった。その最初のステップとして、ロシアは2002年の国家予算にこのプロジェクトのために約1億5000万ドルの費用を盛り込んだ。このことにもかかわらず、ウクライナはまだ西側からの財政支援や借款を望んでおり、財政支援への制約緩和だけでなく、コスト評価のやり直しなどを要請しながら、EBRDとの間で協議を続けた。

チェルノブイリでの暫定使用済み燃料貯蔵施設は2004年に完成の予定。サイト規模は
750m×
250m。

K2/R4の完成に固執するウクライナの姿勢は、ウクライナがすでに原子力先進国の一翼を担っていることからも、ある程度は理解できる。ウクライナは5カ所の原子力発電所にて13基のプラントを運転しており、その容量は総発電設備の22.7%に相当する11,195 MWeに達している。2001年の原子力による発電量は、その年の目標値を7.5%上回った。
6基の VVER-1000 型炉で構成される欧州最大のザポロジエ発電所によって全発電量の2分の1以上が供給された。その年に発生した67件の運転事象のうち、 INESスケールのレベル1を超えたものは1件もなかった。この4年間、ウクライナは原子力産業の改革や安全性の強化に取り組んできた。特に、チェルノブイリの閉鎖時に、ウクライナは規制体系の再構築に着手し、その独立性や権限、EBRDから要求されたプラント監査機能などを備えたウクライナ原子力規制委員会(SNRU)を設立した。
政府はまた、原子力事業者、エネルゴ・アトムの単なる一部門としてだけでなく、現在その活動に関連した原子力災害すべてに全責任を担わされた「政府の特殊事業体」になったチェルノブイリ発電所の位置付けや、その4号炉の内部残存物を覆うシェルターの現状について明らかにした。国際コミュニティによって、すでに10億ドル以上にのぼる支援がなされ、またシェルターの修復だけでなく、チェルノブイリの廃炉やクリーンアップ活動などにも、かなりの規模の支援が行なわれている。
廃炉プロジェクトの主要対策のうちの1つは100年間わたって使用済み燃料集合体を20,000体以上貯蔵できる暫定使用済み燃料施設を建設することである。これが予定通り2004年に完成すれば、これまでに建設されたうちで最大規模の使用済み燃料貯蔵施設になる。もう1つのプロジェクトとしての液体廃棄物処理施設の建設は2002年4月に終了した;2003年から操業を開始した。
シェルターを環境に対して安全かつ安定なシステムに変換するための修復工事が、1998年から活動を始めた国際シェルター実行プロジェクト (SIP) によって実施されている。必要資金はチェルノブイリシェルター基金から提供されており、7億5000万ドルと見積もられる資金のそのほとんどについてすでに確約が取り付けられている。
EBRDによれば、シェルター内部の核廃棄物には約200 tに及ぶ燃料やダスト、放射性液体が含まれている。SIPの行なう修復計画への技術仕様がウクライナとの間で合意された。2007年に完成すれば、このアーチ形状をした鉄骨構造の新シェルターは100年にわたって既存シェルターやその内部残存物を環境から隔離することが可能になる。それはまた、将来、廃棄物処理作業を行なう際の安全な作業環境をも提供することになる。