スウェーデンでのプラントの運転経験
ニュークリアエンジニアリング
インターナショナル
2001年は、2000年時に比べ原子力発電量が25%増加するなど、スウェーデンの原子力発電プラントにとって記念すべき年となった。オスカーシャム発電所での発電量は過去最高を記録し、またリンハル発電所についてもこれまでで3番目に高い値を達成した。プラント事象分析機関によって、スウェーデンの原子炉の稼動状況についての調査報告書が作成された。
安全性に関しても、2001年は特筆すべき年であった。重大事象の発生は1件もなく、スウェーデンの原子力プラントは国際的に見ても高い安全水準を引き続き維持することができた。発電量については、2001年はスウェーデンの原子力発電プラントにとって画期的な年になった。
原子力発電量はトータルで69.2TWhに達し、2000年に比べ25%増加した。先に述べたように、オスカーシャムでの発電量はこれまでの最高を記録し、またリンハルについても3番目に高い値を達成した。原子燃料の有効利用のため、燃料交換停止に先立って導入されたコーストダウン運転によって、5%の設備利用率の損失がもたらされた。国全体にわたっての電力調整による設備利用率の損失への影響は1%以下であった。
リンハルのPWR 3基については、平均で87.9%の設備利用率を達成した。その一方、BWR
8基については、90%の設備利用率を記録した。また、フォルスマルク1、2号とオスカーシャム1号はすべて、90%以上の設備利用率を達成した。
発電電力
スウェーデンでの2001年の原子力を含めた全発電量は
157.6TWh であった。これは、年間発電量としては過去最大のものとなった。原子力発電量は、2000年には54.7
TWhであったのに対し、 2001年には69.2TWhと26.4%増加した。これは、これまでで最大の1991年の73.5TWhにひってきする数値である。2001年との比較を正確に行うため、
1991年の数値からバーゼベック1号による発電量を差し引くと、69.0TWhになる。
スウェーデン全体での電力使用量は150.2TWhで、2000年時に比べ3%増加した。この増加量の大半は、引き続き好調な経済活動や石油価格の高騰などに起因している。これによって、バーゼベック2号の暖房源が石油から電力に切り換えられた。
*(注)バーセベック1号はすでに閉鎖
バーゼベック2号
バーゼベックでの年1回の燃料交換作業については、当初は30日を予定していたが、実際には36日を要した。この期間中に次の作業が実施された。
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安全性のより一層の向上を期すための補助給水系への電源供給ラインの増設。以前バーゼベック1号で使用されていた電源供給ラインを活用することによって、バーゼベック2号への電源供給ラインは2から4に増加した。
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原子炉圧力容器の炉内構造物に対し、遠隔ビデオ検査が広範に導入された。来年に予定されている原子炉格納容器内の一次系システムの交換のための準備作業が同時に実施された。
停止作業時の集積被ばく線量は0.54マン・シーベルトで、予想より0.10マン・シーベルト多かった。
バーゼベック2号では、2001年には2件の自動停止が発生した。4月18日に安全系について試験を行っていた際、格納容器内部と外部の隔離弁2台がそれぞれ急速閉鎖し、これによって原子炉が自動停止した。弁閉鎖の原因はリレーカードの導通不良であった。
7月31日にはまた、燃料交換作業を終了しプラント再起動を行なっていた際に、原子炉が自動停止した。その時、原子炉は低出力運転モードにあり、中性子束モニタリングシステムにの調整作業がマニュアルに基づいて実施されていた。この際、原子炉出力を5%からさらに上昇させた時に、自動停止が発生した。中性子束モニタリングシステムの較正を低出力領域で行なうと、その感度が極端に高まることが判明した。
フォルスマルク1号
年1回の燃料交換作業は10日より若干多めの期間を予定していた。しかし、原子炉の起動に際して、特に原子炉停止時冷却系の隔離弁や制御棒駆動機構シャフトシールの漏洩など、多くの予定外作業が必要になった。燃料交換作業は、最終的には11日と15時間で終了した。
この期間中に以下の作業が実施された。
■ 昨年発生した3件の燃料損傷事象。破損燃料棒が特定され、炉心から除去された。
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原子炉停止時冷却系や給水系の漏洩弁に対し補修作業が実施された。
■ 主再循環ポンプ4台に対し点検作業が行われた。すべてのポンプモーター対して絶縁抵抗試験が実施された。モーター2台について、固定子絶縁材に劣化傾向が見られたため、巻き戻し作業が行われた。
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高速回転時に振動問題へのリスクが最大になると見られるポンプを特定するため、共振試験が実施された。その結果、4台のポンプすべてがバランスを失しやすい傾向を有していることが明らかになり、またこれらポンプ支持部の剛性がほかのポンプに比べて劣っていることが判明した。
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前回の燃料交換時に設置されたインバータシステムの遮断器と断路器のいくつかについて交換がなされた。
■ エンクロージャー円筒部の温度は、1997年の燃料交換停止時の環状部での作業の実施以降ずっと、高い値に維持されてきた。多くの断熱材の欠陥カ所が1999年の燃料交換時に修理された。その後さらなる改良が加えられ、その温度を59℃の許容値内に収めることができるようになった。
燃料交換時の集積被ばく線量は0.25マン・シーベルトで、予想に比べ0.08マン・シーベルト多かった。この差異にかかわる主要因は格納容器内の放射線レベルの上昇にあった。
フォルスマルク2号
年1回の燃料交換停止は、当初は10日を予定していたが、実際には12.5日を要した。この日数の増加分は、制御棒駆動機構シールの漏洩事象の是正や、残留熱除去系のパイロット弁の補修、燃料装荷装置の監視カメラの不具合の修正などに費やされた。
この期間中には通常の作業ほかに、以下の作業が実施された。
■主循環ポンプディフューザのロックリングの点検。ピンボルトとロックタブが4個欠落しているのが見つかった。寿命近くになり出力降下時に誤信号が発せられるようになっため、中性子束検出器1台が交換された。また制御棒駆動機構7台が交換された。
■残留熱除去冷却系の格納容器内部隔離弁のパイロット弁について、補修作業が実施された。このほかにも、主循環ポンプのインバータが交換された。
昨年、燃料の有効利用の観点から、運転サイクル末期に実施されたコーストダウン運転によって、296.2GWhの電力損失がもたらされた。これは、全出力で13日間運転した場合に相当する発電量である。
フォルスマルク3号
燃料交換時に実施された作業は、主要設備のリニューアル化に重点が置かれた。燃料交換停止は48日以上続き、予定を約2日オーバーした。
原子炉とタービンの両設備の制御装置が交換された。タービンロータに対する検査の結果、3台の低圧.ロータすべてについて、き裂の成長が認められた。この期間中に以下の作業が実施された。
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原子炉に接続された系統の配管交換のための除染作業。これによって、この系統の線量率は99.5%低下した。この配管交換は、燃料交換作業時の機械関連工事のなかでの最大規模のもので、必要な停止期間がこれによってほぼ定まることになる。これらの一連の作業は順調に進展し、計画停止日数も遵守され、被ばく線量も非常に低くかった。配管交換作業に関連し、炉心への汚染物質や微粒子の流入による燃料破損を防止するため、フラッシング作業が広範にわたって実施された。
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原子炉格納容器のスチールライナーについて点検が行われた。復水プールについて、シールプレートの腐食の成長状況についてチェックがなされた。
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制御棒駆動機構と位置指示装置についてリニューアル対策が実施され、また30個の制御棒駆動機構アクチュエータについて点検がなされた。
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中性子束測定システムに最新機器が導入された。
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主再循環ポンプのインバータが交換され、機械式エネルギー蓄積装置が新たに4台設置された。
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主再循環ポンプ2台と、隔離弁や主要大型弁のパイロット弁のいくつかについて点検がなされた。
停止作業中の集積被ばく線量は1.18マン・シーベルトで、予想を0.82マン・シーベルト下回った。これは作業開始に先立って実施された除染活動の効果に起因している。
運転サイクル末期に、燃料の有効利用の観点から実施されたコーストダウン運転によって、約16日間の全出力運転に相当する451.3GWhの電力損失がもたらされた。
オスカーシャム1号
オスカーシャム1号は2001年には3回の自動停止を経験した。最初は、1月6日に低出力レベルで運転していた際に、蒸気配管の急速閉鎖によって発生した。このトラブルの発生前に実施されていた同配管での内部隔離弁の試験時に、その作動時間にかなりの遅れが生じていた。原子炉圧力逃しシステムについて試験を行なっていた際、炉圧が急上昇し、原子炉圧力高でプラントが自動停止した。これは、蒸気ライン隔離弁の閉鎖によって、タービンバイパスシステムが利用できなくなったことにより発生した。
1月10日に、プラント再起動を行っていた際、高圧給水系予熱器の復水レベルが上昇した。
給水予熱器の温度上昇が続いていたため、給水ヒーターは復水ドレンで満たされた状態になり、ポンプにより手動で排水を行なわねばならなかった。しかし、ポンプ能力の不足により、復水ドレンを速やかに排水できなかったため、復水レベル高で原子炉が自動停止した。
また3月28日には、100%
出力で原子炉運転中に、主蒸気隔離弁のひとつが突然閉鎖した。その20秒後に原子炉圧力高によってプラントが自動停止した。
原因究明の結果、新たに設置したパイロット弁内部での短絡事象により小型遮断器がトリップしたことが判明した。
オスカーシャム1号でのリニューアル化対策
オスカーシャム1号でのリニューアル化工事は2001年12月からスタートし、10カ月間継続される予定になっている。これはオスカーシャム3号の建設以来、プラント所有者のOKGが実施する工事のなかでの最大規模のプロジェクトである。プラント余寿命をいかなる時点でも20年以上確保することがOKGの基本方針になっている。この対策は以下の4つの分野からなっている:
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安全性の向上。現在の安全機能を補完かつ強化するための新たな安全概念の導入。
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コンピュータの大幅導入をベースにした制御システムの構築。実証技術の採用がOKG
の安全基準の重要な柱に据えられている。コンピュータをベースにした制御システムの現在の開発状況は、原子力産業に課せられた厳しい要求条件をも十分に満たすことのできる段階にまで達しているものと考えられる。オスカーシャム1号は、コンピュータをベースとした設備によって運転管理が行われるスウェーデンでの最初の原子力発電プラントになる。
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コントロールルームの改善。たとえば、ディスプレイスクリーンをベースとした最新のプロセス制御技術は、新たな可能性をもたらす。このような技術は、何も原子力産業界以外では目新しいものではなく、OKG
は、これについては原子力分野にも適用の可能な実証技術はすでに存在していると考えている。リニューアル化対策の終了後には、コントロールルームのオペレーターは、プラントの監視制御の多くを現行のコントロールパネル方式に代わってコンピュータ・スクリーン上で行なうことができるようになる。導入が予定されている最新機器については、OKGの要求する高い技術仕様を満たすことができるかどうか、細部にわたって慎重に検討が進められている。リニューアル化対策終了後には、オスカーシャム1号は最新のコントロールルームを備えたスウェーデンでの最初の原子力発電プラントになる。
■ 新型タービン。OKG
は高効率タービンに交換することによって、プラント利用率の向上を図ろうと考えている。新型タービン導入によるメリットのひとつに、メンテナンス性の向上(メンテナンス作業量の減少)があげられる。設備利用率の向上にくわえて、15Mwの出力増強が見込まれ、これによってプラントのトータル出力は460MWeに増加することになる。
主再循環ポンプケーシングの交換は、予定される大型工事のうちのひとつである。
12月7日から31日までの停止期間中の集積被ばく線量は0.35マン・シーベルトで、予想を0.06マン・シーベルト下回った。
オスカーシャム2号
年1回の燃料交換停止は、当初は25日を予定していたが、実際にはこれより1日早く終了した。炉心スプレーの支持装置についての検査結果から、新たな損傷の発生のないことが確認された。このことは、さらにこれ以上の検査の必要性のないことを意味している。
この期間中に以下の作業が同時に実施された。
■ ボロン注入システムに対する積み残し作業。
■セパレータが補助給水ポンプと復水器の吸込み側にそれぞれ設置された。
この停止期間中の集積被ばく線量は0.66マン・シーベルトで、予想に比べ0.16マン・シーベルト多かった。被ばく線量の増加分の大半は、主蒸気弁の手入れに関連したさまざまな問題点や、将来の作業の準備活動の一環として実施された多くの個所での放射線量率の測定作業に起因している。
8月9日に原子炉が自動停止した。2本の制御棒駆動機構のシール部で発生した漏洩事象によって、原子炉を停止し低温状態に置く決定がなされた。しかし、発電機を送電系統から切り離し、タービンを停止させるために復水器の真空破壊操作を行なっていた際、復水器圧力の測定装置に不具合が発生した。これにより、真空破壊弁が長時間にわたって開放されたまま状態になり、復水器圧力が自動停止開始レベルにまで上昇した。
オスカーシャム3号
年1回の燃料交換作業の停止期間は、この16年に及ぶ運転経歴のなかで最も短く、予定期間内にすべての作業を終了できた最初のケースになった。作業停止期間は全体で16日と8時間であった。この期間中に以下の作業が実施された。
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原子炉主蒸気ライン弁のパイロット弁の交換。
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原子炉停止時冷却系の熱交換システムのフィルターにかかわる制御装置の交換。
停止期間中の集積被ばく線量は、予想を0.02マン・シーベルト下回る、過去最低の0.19マン・シーベルトを記録した。
燃料の利用効率を高めるために実施したコーストダウン運転によって、
全出力での0.6日間の運転に相当する15.1GWhの電力損失がもたらされた。
12月1日に原子炉自動停止が発生した。この事象は、原子炉自動停止システムの作動特性の試験中に起きた。試験と並行して原子炉温度の上昇を行なっていた際に、原子炉出力が急上昇した。
リンハル1号
年1回の燃料交換作業は28日を予定していたが、実際には32日を要した。改造工事はわずかで、また一般の作業量そのものも全体的に少なかった。予防メンテナンス作業や各種試験にくわえ、以下の作業が実施された。
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次回停止時に予定されているシュラウドヘッド交換のための準備作業(放射線測定など)。
■ 炉心スプレーシステムの検査。
タービンについてもいくつか工事が実施された。これには以下の内容が含まれていた。
■ 3台の低圧タービンロータのひとつに対するタービンブレード検査と侵食防護膜損傷ブレードの交換。
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漏洩試験、流量測定、固定子巻線の真空度と圧力試験、回転子の圧力試験、ブラシチェンバーと回転スリップリングのクリーニングなど、発電機全般にわたる検査。
■ 蒸気条件を変えないでプラントの出力増強(110%)を可能にさせる機器のレイアウト変更の導入。これは高圧タービン周囲にバイパス回路を設置するもので、これによって蒸気の一部が直接低圧タービンに供給され、タービン出力の増加が期待できるようになる。停止作業中の集積被ばく線量は、0.80マン・シーベルトで、予想より0.30マン・シーベルト少なかった。
リンハル2号
年1回の燃料交換停止は28日が予定されていたが、実際には29日を要した。最新のプラント制御システムの導入に向けての第一ステップがスタートした。プラントリニューアル化対策は次回の燃料交換停止時まで続けられることになる。通常の定期点検と燃料交換作業にくわえ、放射能モニタリング装置のリニューアル化工事が実施された。燃料集合体のトッププレートが交換された。
作業期間中の集積被ばく線量は、0.33マン・シーベルトで、予想を0.15マン・シーベルト下回った。
6月17日に主変圧器のひとつに微少な油漏れが見つかった。漏洩コネクターの締めつけを行っただけでは漏洩が止まらず、漏洩量が増大する傾向が見られたため、プラントを停止せざるを得なくなった。しかし、この手動停止に先立ってすでに変圧器は停止状態に置かれ、一部の電気機器に対しては電力供給がストップされ、また原子炉冷却ポンプも停止していた。出力を定格状態に維持するためには原子炉冷却ポンプはすべて運転されていなくてはならないため、原子炉が自動的に停止した。
リンハル3号
年1回の燃料交換は25日を予定していたが、実際には32日を要した。停止期間が長びいた要因の主なものは、原子炉容器と原子炉冷却ループの溶接接合部に検出された不具合である。停止期間の延びたほかの要因としては、加圧器や機器冷却システムでの弁の補修作業があげられる。
プラント停止時の作業には、通常の定期検査と燃料交換作業のほかに、上述の溶接部や原子炉圧力容器ヘッド、蒸気発生器とスイッチギヤーなどに対する検査などが含まれていた。蒸気発生器については、特別プログラム.に準拠して作業が実施され、また電力システムの整流器が交換された。
停止作業時での集積被ばく線量は、0.27マン・シーベルトで、予想より0.05マン・シーベルト少なかった。
原子炉容器ノズルと原子炉冷却ループのホットレグとの溶接部にき裂が2個所検出された。また、溶接内表面にもき裂が3カ所見つかった。これら3カ所のき裂はその周囲材を切除することによって除去された。他の溶接部についてもチェックが行われ、これら以外にはき裂の発生のないことが判明した。このほかにも、この溶接部にはさらに3カ所の内部き裂のあることが判明した。き裂の発生原因はまだ十分に解明できていない。しかし、これらのき裂は製造工程に起因した材料構造の変異によって引き起こされた可能性が高い。
解析の結果、これらのき裂の原子炉システムへの影響は無視できるほど小さくまた、安全マージンへの影響もほとんどないことが分かった。既存材料については、長期的観点からは新たなき裂の発生の可能性を無視できないことから、
リンハルでは現在、溶接影響部と配管部を元の新規の状態に回復させるべき準備作業に取り組んでいる。リンハル4号の溶接部は、2002年の燃料交換停止時に補修される予定になっている。リンハル3号については.
2003年の燃料交換停止時に補修が行われる予定になっている。
これまでき裂の検出に用いられてきた非破壊検査手法は、その深さを正確に測定できない。このためリンハルでは、測定装置や試験手法の改善を進めるための研究プロジェクトをスタートさせた。このような改良手法や装置が実際に利用できるようになると、き裂周辺の材料サンプルを切り取ることなく、
欠陥深さを特定できるようになる。もうひとつの狙いは、これらの改良手法について規制当局の認可を得ることである。もし認定されることになると、これらの配管回路について、10年周期で検査が行なわれていた以前の点検計画への復帰が認められることになるものと思われる。
リンハル4号
年1回の燃料交換は30日を予定していたが、実際には39日を要した。停止期間が長びいた要因は、リンハル3号での説明と同様に、原子炉容器と原子炉冷却ループの溶接部で検出された不具合である。
停止作業には、通常の定期検査と燃料交換のほかに、上述の溶接部や原子炉圧力容器ヘッド、蒸気発生器とスイッチギヤーなどの検査が含まれていた。電源システムの整流器が交換され、原子炉格納容器について漏洩試験が実施された。
作業期間中の集積被ばく線量は0.30マン・シーベルトで、予測値に比べ0.03マン・シーベルト少なかった。
4月 17日に原子炉保護システムの試験を行なっていた際、オペレーターのエラーによって原子炉が全出力状態から自動停止した。試験に携わっていたオペレーターのひとりが操作すべき回路を間違えて、別の類似回路のブレーカーを操作したため、プラントが自動停止した。この際、安全システムはすべて正常に作動した。
そのほかの問題:バーゼベック2号でのラプチャーディスク
原子炉格納容器フィルターベントシステムに設置されているラプチャーディスクについて試験を行なっていた際、2つのディスクが互いに入れ替わって設置されていることが判明した。この結果、格納容器とベントシステム間に連絡経路を形成させる圧力閾値が非常に低く、またこれと反対にフィルター容器の加圧防止逃し管の作動閾値が非常に高くなっていた。
これら2つのディスクはそれぞれ、同一形状のアダプターリングに据え付けられていた。唯一の識別方法は、ディスクエッジの近くに取りつけられた弁番号が記された金属製のタグであった。タグは、ディスクがアダプターリングに据え付けられた状況では、非常に見えにくい状態になっていた。プラントにディスクを設置した請負業者は、これら2つのディスクの破壊圧力が異なっていることに気づいていなかった。
これまで燃料交換時にこれらディスクの交換作業が行なわれたことはなかった。従って、ディスクが途中で入れ替えられたということは考えにくい。この場合、2つのディスクはそれぞれのアダプターリングに設置してから所定の場所に据え付けられるべきであった。
現在のベントシステムには新型ディスクが据え付けられており、その取り付け手順も改訂されている。
リンハル2号での過負荷保護装置
6月20日、リンハル2号は全出力で運転されていた。一般機器用の電源システムに負荷切替えを行なった直後に、プログラマブル過負荷保護装置がトリップした。この過負荷保護装置は、これらの機能は短時間ならば必要性のないことが確かめられていたため、切り離された。これらの装置はソフトウェアの不具合を修正した後に、元に戻されることになる。装置のソフトウェアの演算用アルゴリズムの欠陥によってトリップが引き起こされた。
この最新式のプログラマブル過負荷保護装置は、リンハル2号の電源システムに対するリニューアル化対策の一環として設置されていたものである。これらの保護装置はリレー保護機器の内部に納められており、熱的過負荷からケーブルや変圧器を保護することを目的にしている。
この事象についての調査結果から、58個の過負荷保護装置のうちの44個が、このソフトウェアの欠陥により設計値より低い負荷でトリップする恐れのことが明らかになった。