順調に進展するBWR炉内構造物交換計画
ニュークリアエンジニアリング
インターナショナル
スウェーデンのBWRプラント所有者は、プラント寿命がそのほぼ半ばに達した時点で、圧力容器炉内構造物を交換することを計画している。同国での初号炉のオスカーシャム1号で計画されていた大規模な交換作業は、1998年に終了した。現在、2000年末までに終える予定で進められているフォルスマークの交換計画では、交換される炉心シュラウドとトップガイドは、溶接部の存在しない最新の一体型設計構造が採用されるようになっている。これによって、プラント所有者が将来被る恐れのある溶接部でのクラック発生に伴う検査コスト増といつた経済的リスクを回避させることができるようになる。
現在、原子炉の多くが、その寿命のほぼ半ばを迎えつつあるということもあり、機械設備にかかわるトラブルの発生が顕著になってきている。この内、BWRで最も多く見られるのが、機械摩耗や、腐食、クラックの発生、脆化などの事象である。
一次冷却系については、従来から徹底した水質管理が実施されてきているにもかかわらず、1990年代に、国内外の何基かのBWRで、炉内構造物にクラックの発生が検出されたことから、その健全性に対し、高い関心が寄せられるようになった。特に、BWR炉心シュラウドの周方向に対するクラックが、欧州や米国、アジアなどで観察された。
オスカーシャム1号での経験
ABB アトム設計によるBWRは、スウェーデンやフィンランドなどで現在11基運転されている。これらのうちの6基はインターナルポンプを採用した最新設計のプラントである。
FENIXプロジェクトとして知られた、同国の初号炉のオスカーシャム1号に対する総合改造計画は、すでに数年前に終了した。システム除染後に、一次冷却材が抜き取られ、圧力容器の内面から、RPV本体や炉内構造物に対する供用期間中検査が実施された。圧力バウンダリーについては、その健全性が確認されたが、RPV炉内構造物については、応力腐食割れや熱疲労に起因すると見られるクラックが数カ所で検出された。FENIX
プロジェクトで交換された炉内構造物の中には、給水系や非常用炉心冷却系の炉内ライザー管、炉心シュラウドサポートなどが含まれていた。炉心シュラウドや炉心スプレーシュラウドヘッド、汽水分離器、給水スパージャーなどの炉内構造物についても交換が決定された。
1996年にABB アトムとの間で工事契約が締結され、1998年にプラント計画停止期間を一部延長して交換作業が開始された。オスカーシャム1号で交換された新型炉内構造物は、基本的にはオリジナル設計仕様に準拠して製造された。しかし、幾つかの点で改良が施された。材料仕様の改善や、ある特定方向に対する溶接カ所の大幅削減が図られた。炉心スプレーについても設計改善がなされ、また汽水分離器についても高性能機器への交換が行われた。これらの機器については全般的に、機器の交換作業の容易性や、また将来のその必要時に備えての検査の容易性という観点に重点を置いて、最適設計がなされた。
ABB アトム製以外のプラントへの適用
オスカーシャム1号で実施された炉心シュラウドの撤去や据付け作業状況が、克明にビデオ記録された。これら炉内構造物の撤去や据付け作業に対して、放射線遮蔽対策やカッティング作業、溶接準備、溶接作業、検査活動などを含め、4週間の工期が費やされた。これは、ABB製以外の
BWRに対する同種作業の実施の際の一つの指標にもなるが、ABB製以外のBWRに対しては、オスカーシャム1号での経験に基づいた評価結果から、以下の作業に関連し、燃料交換フロア全体で約14週間のクリティカルパスが必要になることが判明した。
* 制御棒と制御棒案内管の撤去及び保管
* トップガイドと炉心プレートの撤去と保管
* 新炉内構造物の搬入とそのハンドリング作業
* 旧炉内構造物の撤去と処分
* 交換作業の実施
フォルスマーク1&2号での交換作業
スウェーデンで最近、原子力発電プラントの検査や保修作業に対する適用コードや要求条件などに対し見直し改訂が実施された。特に検査手法の妥当性の検証に費やされるコストに顕著な上昇傾向が見られてきているのに対し、機械設備本体の価格コストが大幅低下の様相を見せ始めている。
RPVの炉内構造物の検査1件当たりに費やされるコストも最近、機器本体価格コストの1/3近くにまで上昇してきている。ライフサイクル全体を対象にしたコスト(LCC)評価結果から、将来の検査コストのさらなる高騰や、追加保修作業の増大、新規問題の発生などといった要因を考慮すると、炉内構造物は早めに交換した方が、経済的に有利になるとの結論が得られた。
フォルスマークマーク1&2号で採用が予定されている鍛造型炉心シュラウド
最近、フォルスマーク1&2号BWR 2基に対する上部炉心支持グリッド(トップガイド)と炉心シュラウドの交換契約がABB
アトムとの間で締結された。一連の作業は、2000年内に終了する予定になっている。両号炉に対する契約締結に際して、顧客により、鍛造による機械加工(溶接カ所を設けない)と、従来型の溶接を伴う機械加工の2種類の選択枝についての比較評価がなされた。両ケースに対しプラント所有者により実施された検査コストに関する評価結果から、鍛造加工方式が選択採択されることになった。シュラウド主要部は、単一鍛造材から機械加工されるが、トップガイドはセン2種類の鍛造材によって加工され、ターピースと外部リングガイドはピンによって結合される構造になっている。設計寿命は、両ケース共40年が想定された。
鍛造加工技術の進歩によって、これら最新設計手法の採用が可能になった。BWR炉内構造物の材料仕様の決定や、形状にマッチしたリングやディスクの鍛造プロセスの開発作業が鉄鋼メーカーの主導によって進められた。これらの鍛造品は詳細仕様に基づいて加工される。炉心シュラウドと上部炉心グリッドの加工を、同一業者に発注することにより、サイトへの搬送に先立ち、これら構造物の機械寸法に対するマッチング検査を、同一製造工場内で行うことができるようになる。
将来計画
これまでに蓄積された多くの運転経験から、BWRの寿命は、そのほとんどが当初の40年の設計目標から大幅延長できるとの見通しが得られた。しかし、たとえば炉心シュラウドなどの幾つかの炉内構造物のについては、プラント寿命期間中に交換する方が有利になるとの認識を持つ必要がある。このため、ABB
アトム設計のBWR炉内構造物については、寿命半ばでの交換が容易に行えるよう、設計時に多くの配慮が払われている。これは、現在運転中のABB
アトム設計のBWRすべてに共通の設計思想になっており、またこの考え方は最新設計プラントのBWR90+にも引き継がれている。
オスカーシャム1号での交換経験に基づいた評価結果から、他のベンダー設計の
BWRプラントに対しても、プラント計画停止期間を一部延長させることによって、合理的なクリティカルパス内で、炉心シュラウドの交換の可能なことが判明した。最近の機械設備機器コストの上昇傾向や、加工技術の進歩といった状況を考慮すると、最新の鍛造設計手法の採用は、将来のBWRの新規建設時だけでなく、既存プラントの炉内構造物の交換に対しても、最も魅力的な方法になる可能性を秘めている。プラント燃料交換停止時に同時実施される他の作業の内容にもよるが、炉内構造物の交換に必要なクリティカルパスは、プラント所有者の実施するコスト評価に際しての重要パラメータの一つになる。ABB
アトムは、今後の活動方針として、BWR 設計プラントすべてに対しシュラウド交換期間のさらなる短縮化の実現にその目標を定めている。