歌枕紀行 阿武隈川

―あぶくまがわ―

阿武隈川

 阿武隈に霧立ちくもり明けぬとも君をばやらじ待てばすべなし(「古今集」)
 よとともに阿武隈川の遠ければ底なる影を見ぬぞわびしき(「後撰集」)
 行末に阿武隈川のなかりせばいかにかせまし今日の別れを(高階経重「新古今集」)
 秋の夜の月はのどかに宿るとも阿武隈川に心とまるな(藤原実清)
 思ひかねつまどふ千鳥風さむみ阿武隈川の名をやたづぬる(定家)
 君が代にあぶくま川の埋れ木も氷のしたに春を待ちけり(家隆)
 今宵こそ阿武隈川のみをつくし朽ちぬる袖のほどもみゆらん(浄意)
 阿武隈や五十四郡のおとし水(蕪村)
 夏の靴しまひてをればげに遠く光にうねる阿武隈川は(河野愛子)


表紙陸奥東山道歌枕紀行歌枕一覧

©水垣 久 最終更新日:平成12-08-22
thanks!