水無瀬恋十五首歌合―集計―


親定           勝十四     負一
左大臣良経        勝九      負六
前大僧正慈円       勝九  持三  負三
権中納言公継       勝三  持三  負九
俊成卿女         勝五  持四  負六
宮内卿          勝四  持二  負九
大蔵卿有家        勝四  持二  負九
左近衛権中将定家     勝四  持四  負七
上総介藤原家隆      勝六  持三  負六
左近衛権少将雅経     勝四  持五  負六

【感想】後鳥羽院(親定)の圧倒的な好成績に、もちろん表敬がなかったとは言えまい。しかし、創作力の最盛期を迎えていた院の出詠歌の水準の高さには、実際ただ驚嘆のほかはないのである。
良経・慈円は円熟の境地を示し、高水準の安定感を見せるが、俊成卿女や定家に比して秀逸が多いとは言えず、成績を額面どおり受け取るわけにはゆかない。
院以外に、特に活躍がめだった歌人を挙げるとしたら、俊成卿女であろう。当歌合からの新古今入集歌は三首、良経と肩を並べる。かかる歌合の試みは、本質的に恋愛歌人であった彼女のために設えられたかと思えてくる程である。恋歌を必ずしも得手としなかった宮内卿・雅経も、生涯最高の恋歌を当歌合で残したと言えようし、有家・定家・家隆、それぞれに恋の代表作に数えられる忘れ難い名作をものした。
新古今集の恋の部がこの歌合によってどれほど豊饒となったことか。後鳥羽院の所期の目的が、十分すぎる程達せられたことは疑いがない。



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最終更新日:平成14年3月5日