伝不詳。『古今和歌集目録』にも「子細不分明」とある。下野氏は崇神天皇の皇子豊城命を始祖とする東国の大豪族。雄宗の歌は古今集に一首見られるのみ。
題しらず
曇り日の影としなれる我なれば目にこそ見えね身をばはなれず(古今728)
【通釈】曇り日の影法師のようにほのかに寄り添う影となった私ですから、お目には見えないでしょうが、あなたのそばを決して離れません。
【補記】恋をすると身体はやつれ、また魂はしばしば遊離して生命力を衰えさせる。そのような状態を「影となる」と言った(【参考歌】)。掲出歌では「曇り日の影」であるから、存在感はいっそう薄い。陰にこもった、不吉な感じさえする、王朝和歌には珍しいタイプの恋歌。
【参考歌】よみ人しらず「古今集」
恋すればわが身は影となりにけりさりとて人に添はぬものゆゑ
よみ人しらず「古今集」
よるべなみ身をこそ遠くへだてつれ心は君が影となりにき
【主な派生歌】
我が心めにこそ見えねくもる日の影と君には添へてしものを(俊恵)
公開日:平成16年04月14日
最終更新日:平成21年08月11日