石川郎女 いしかわのいらつめ

伝不詳。大津皇子の宮の侍であった石川女郎(万2-129)と同一人か。久米禅師に娉(つまど)われたのも同名の石川郎女であるが、同一人かどうか不明。大伴氏に嫁いだ石川内命婦と同一人かどうかも不明。

大津皇子、石川郎女に贈る御歌一首

あしひきの山のしづくに妹待つと我立ち濡れぬ山のしづくに

石川郎女、(こた)(たてまつ)る歌一首

()を待つと君が濡れけむ足引の山のしづくにならましものを(万2-108)

【通釈】私を待ってくださるとて、あなたがお濡れになった、その山の雫になれたらよいのに。

【補記】新勅撰集巻十二恋二に入集(初句は「われまつと」)。

【主な派生歌】
あしひきの山のしづくに立ちぬれて妻恋すらし鹿ぞなくなる(藤原家隆[続後撰])
時鳥山のしづくに立ちぬれて待つとはしるやあかつきのこゑ(藤原定家[新拾遺])
あしひきの山のしづくに立ちぬれぬしかまちあかす夏の夜すがら(藤原良経)
いもまつと山のしづくにたちぬれてそほちにけらしわが恋衣(土御門院[風雅])


更新日:平成15年03月21日
最終更新日:平成15年03月21日