丈部稲麻呂 はせつかべのいなまろ 生没年未詳

駿河国の人。天平勝宝七歳(755)二月、防人として筑紫に派遣される。

 

父母が(かしら)かき撫で()くあれて言ひし言葉(けとば)ぜ忘れかねつる(万20-4346)

【通釈】父母が私の頭を撫でながら「道中無事であってくれ」と祈った言葉――あの言葉だけは忘れようにも忘れられない。

【語釈】◇頭かき撫で 無事であるよう、神の加護を祈る所作。◇幸(さ)くあれて 「幸(さき)くあれと」の駿河方言であろう。◇言葉(けとば) 「言葉(ことば)ぞ」の訛り。

【補記】防人として故郷を出立した時の、両親との別れを回想しての詠。


更新日:平成15年03月21日
最終更新日:平成15年03月21日