4 つづきを読むまへがきへ戻る       *                                              世の中の 憂けく辛けく  世の中は何とやりきれず辛いことか                           うらさびて 嘆かひいます 悲嘆に暮れてをられると             愛しきよし 君は此の頃  鳴呼 親愛なる君が この頃                           伝て言に 我に語らく   伝言として私に語つたことには                           玉鉾の 道来る人の    遠路をやつて来た使ひの者が                           思ひ恋ひ 息づき居るに  恋しさに切ない吐息を洩らしてゐたところ           ただに遇はず 日の重なればぢかに逢へない日が重なつたので                           風雲に 言は通へど    風雲に任せて便りは交はすものの                           あしひきの 山河へなり  遥か山河を隔て                           夷放る 国を治むと    都を遠く離れた国を治めると                           天皇の 命かしこみ    陛下のご命令を畏れ謹んで                           定まれる つかさにしあれば定められた役割なのであるから                           大王に まつろふものと  天皇陛下に服従するものであると                           うつそみの 八十伴の男は この世の朝廷に仕へる男子は皆が皆                           天地の 初めの時ゆ    天地の創成の時から                             挽歌一首 并せて短歌