1  次頁へゆくまへがきへ戻る       *                                                                      京の丹比家は 一説に家持の実母の家     るやうに いつさう頻りと恋しさに襲はれて過ごす毎日です  東風が激しいので奈呉の浦に寄せる波がますます募つてく                                 いや千重しきに恋ひ渡るかも 十八|四二一三                            あゆを疾み奈呉の浦廻によする浪                                       京の丹比家に贈る歌             *                                             り寄せて来る 東風が激しいせゐであらうか  英遠の浦に寄せる荒波は いつさう勢ひを増して立ち重な                               立ち重き寄せ来あゆをいたみかも 十八|四〇九三                            英遠の浦によする白波いやましに                                       英遠の浦に行きし日に作る歌        *                                             る海人の小舟が 高波に隠れながら漕いで行くのが見える  あゆの風がひどく吹いてゐるらしい 奈呉の江で釣りをす                                  釣する小舟漕ぎ隠る見ゆ 十七|四〇一七                            あゆの風いたく吹くらし奈呉の海人の                              無題                           *                    一 あゆの風                       *                 家持秀歌選