関連書籍


現在、書評を執筆中。金探査に役立つ本があったら、紹介してください。(石川潤一) 

山師が読む本
■ 石井康夫(1986)
 「きみも金鉱を発見できる−金鉱の有望地域と探し方」
(土木工学社)
 著者は、以前、日東金属鉱山株式会社におられた方である。大変な博学だ。
 新書版の本だが、これ一冊読めば、わが国の金山や金鉱について一通りのことを 知ることができる。 
 ただ、著者が博学に過ぎて、「恒星の進化」とか「プレートテクトニクス」 とか、少々啓蒙的・総花的になりすぎている。
 全国の「有望地域」を挙げながら、幸か不幸か、南アルプス(赤石山脈)を見逃している。
 事情はわかるが、業界や官界の方策の枠組を凌駕できていない。やっぱり、著者が山師でないことによるのか。
 ひとに金鉱の発見を勧めるだけでなしに、是非とも著者が率先して金鉱を発見し、暗い鉱業界に希望の光明をともして欲しい。

■ 日本金山誌,資源・素材学会
 日本鉱業会が名称を改めた資源・素材学会が発行している。
 日本金山誌編纂委員会が編集。全部で5冊(編)。
 1989〜1994年に逐次発行された。
 当センターと関わりが深い「第4編 関東・中部」を評してみたい。
 記載されている鉱山のうち「南アルプス」の範囲にあるのは、
 以下の(旧)鉱山だろう。

 長野県
  金鶏

 山梨県
  芦安
  焼山
  茂倉
  西の宮
  都川
  保
  老平
  大島
  稲又
  甲州
  甲永
  
 静岡県
  捻切
  金沢
  笹山
  井川
  日影沢
  
 私のような鉱山師にとって、第一級の貴重なデータが提供されている。
 当センターにとって、秘密にしておきたいことが多いので個々の箇所について詳しく述べることは差し控えるが、南アルプスの旧金山が、ほぼ糸魚川−静岡構造線に沿って配列していることは、いわずもがなだろう。
 また、武田信玄時代や江戸時代には、2g/t程度の低品位の脈も採掘されたらしいことが窺われる。
 近代になって、金鉱採掘が始まるのは概ね明治末期〜大正期で、明治中期に何故盛んでなかったのかはよくわからない。大戦期の「金山整備令」に類似した、戦争のやりすぎよるものかもしれない。そのころの日本人は、金より銅に興味をもっていたようだ。
 大正期には概ね数十g/t程度の金鉱が採掘されている。 これは、それくらいでなければ採算が合わないというより、むしろ、それくらいの金鉱が多くあったのだと解釈したい。
 しかし、昭和に入ってからは、採掘鉱の品位は低下してゆき、ひどい箇所では数g/tである。この地域では、一般に、銀があまり多くないことを考えあわせると、とんでもないことだ。もちろん、富鉱部を掘り尽くしてしまったとか、昭和に入ってからの凶作や社会不安のために、それくらいでもがんばって掘ったとか、解釈できる。1932年(昭和7年)に産金法が施行され、政府(日銀)が金を買い上げるようになったことも関係するのだろう。金鉱の探査・採掘はパチンコみたいなもので、いちど手をつけるとなかなかやめられないということもある。それも、大戦直前の「金山整備令」で、打ち止めとなるのである。

 以上、あまり「書評」になっていないが、私が頼まれて書いても、同程度のものになるだろう。もし、これ以上のものを書くとしたら、地質構造や火成活動の変遷と金鉱脈の形成過程を、論理的に考察する、と言うことになるのだろう。「南部フォッサマグナ」云々というように。しかし、それは、この冊子の編纂者の仕事ではなく、私の仕事である。





■ 東京地学協会(1955)「日本鉱産誌(BI-a)金・銀その他」(砧書房)
  この本は、近頃たいへんな貴重本になっている。神田の大久保書店あたりにもしあったとしても、いい値がするにちがいない。 もちろん私の手元にあるのはコピーである。
 所収されている休廃止鉱山の数は、日本全体でみれば日本金山誌をうわまわる。本文中の、伊豆半島の金鉱山(清越、土肥、河津、およびそれらの支山)の記載は精緻である。が、私のフィールドである南アルプス地域では数カ所程度の記載しかない。
  この書物が、わが国の金等の鉱山のもっとも基本的な資料であることは、現在でも変わらない。たぶん、将来もこれ以上の資料が作成されることはない気がする。この書物が編纂された時は、まだわが国の主要金山は戦後の回復期にあり、旧鉱山を鎮魂する記載は、秩父や金峰など、ごく一部にしかみられない。時代の違いを感じさせる。

■ 井澤英二(1993)
  「よみがえる黄金のジパング」(岩波 科学ライブラリー 5)

 入手しやすい、啓蒙的・入門的な書物である。
 まず、日本が立派な産金国であることの説明があり、その次に菱刈鉱床の発見の経緯が記載されている。
 更に、地球全体の、地殻の形成とその後の構造運動のなかでの金鉱床の形成について、考察が及んでいる。金の濃集には、始生代末(約30億年前)と新生代(現在を含む哺乳類の時代)の、二極大期があることが述べられている。始生代末の金鉱床生成のプロセスについては、まだわからないことも多く、記述も歯切れがわるい。初心者には読みづらいかもしれないが、仕方がない気がする。
 このあと、日本で最も一般的な、新生代の浅熱水金鉱床の生成機構が述べられている。どうやら、金は塩素イオンと化合した状態よりはむしろ、硫化物錯体として熱水に溶解するらしいこと、および、金鉱脈の生成する時間は、地熱活動全体のなかでは、一部のごく短期間であるらしいことが示唆されている。
また、圧力の減少で熱水が気化する場所、あるいは、性状が異なる流体が混入して化学条件が変化する場所が広いほど、有望な金鉱床ができやすいことが述べられている。「あたり前だ」などと言っている者は、いつか罰せられる気がする。
 金の供給源としては、基盤岩(菱刈の場合は四万十帯)の可能性が触れられている。このことは、地化学的な<異常>について、再検討の必要を感じさせる。
 そして、企業や公的機関の活動を賞賛しつつも、近年の金探査の成功例には偶然の要素もあることや、探査過程で新しい知見の蓄積があることも触れられている。ただマニュアルどおりに処理してもなかなかうまくいかないだろう。その場所で、何に注目するか、ぬきだしたり、メリハリがなければ駄目だ。ということだ。同意するしかない。




■ 薗部龍一(1965)
  「探鉱ハンドブック」(ラテイス刊)


■ 現代鉱床学の基礎

■ 「佐藤信淵鉱山学集」

■ 日本の鉱床総覧

■ 小葉田淳(1968)
  「日本鉱山史の研究」(岩波書店)



これらの書籍には、普通の本屋で入手できないものが多くあります。
お手数ですが、以下に問い合わせてください。


             記

国立国会図書館
資源機構 金属資源情報センター(図書館)
東京都立中央図書館
明倫館書店
大久保書店

そのほか、国立大学などにも資料があるはずです。
なお、地域の「○○村誌」の類にも、昔の鉱山の情報が
記されていることがあります。



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