■東武鉄道日光鋼索鉄道線■

1.沿革

(1)歴史
月日 出来事
1927(S2) 日光登山鉄道設立 初代社長 吉野傳次氏(東武鉄道専務)
1929(S4) 着工 その後、恐慌の影響で中断
1931(S6) 当初電気鉄道の建設を予定していた、明智平−中善寺(中宮祠)間を工事中の軌道敷を利用した自動車専用道に変更することとする
11 工事再開
1932(S7) 8・28 日光登山鉄道(鋼索鉄道)開業 馬返-明智平 1.2km
日光電気軌道は馬返駅を移設し連絡を開始
1933(S8) 11・3 日光登山鉄道(架空索道)開業 明智平−展望台 傾斜長300m
1943(S18) 戦時体制 架空索道休止 その後施設撤去
1945(S20) 2・28 日光軌道株式会社に併合される
1947(S22) 6・1 東武鉄道と合併 東武鉄道日光鋼索鉄道線となる
1950(S25) 10 東武鉄道 日光普通索道線として架空索道を再開
1968(S43) 2・24 軌道線廃止
1970(S45) 3・31 鋼索鉄道線廃止
1985(S60) 4・1 日光交通へ普通索道線の営業権を譲渡
(2)路線
 
馬返-明智平以下は、1.2km。途中交換所1箇所、トンネル2箇所を設けた。両駅の高低差は約430m。勾配は、250〜300パーミルとなる。明智平駅の直近に大谷川をまたいで対岸の山肌へ取り付く雄大な鉄橋(橋長195.4mの上路アーチ橋:スパンドレルブレーストバランスドアーチ)を設けていた。第二いろは坂は、この下をくぐっていたのだが残念ながら廃止時に撤去され、その雄姿を見ることはできない。
以下の図は、1957(S32)の地図を元に現在の地図に路線を加筆したものである。
(4)車輌
  写真資料などによる。と、車輌はA、Bと名づけられていたようである。
(5)廃止に至る経緯
  1953(S28)、1954(S29)は、日光の観光ブームだったのか旅客数は236万人〜252万人という盛況ぶりであったが、その後、10年間は100万人前後で安定して推移したものの、第二いろは坂完成の翌年度(S41)は対前年度比40%以上の減少、軌道線廃止の翌年度(S43)は対前年度比35%減少と急激に衰退して、廃止年度(S44)はわずか25万人を輸送したにとどまり、経営状況の悪化から廃止に至ったものである。

 

2.廃線跡の現状

 調査時期は、2004(H16).11である。
なお現地は、急斜面、風化した路盤、猿害など悪条件が多くまた、国立公園内であることからも、調査を行われる諸兄には常識に従い、自己責任での行動をお願いしたい。特に、単独での行動はリスクが高い。達磨小僧の調査は、現地状況に精通した関係者のご協力・ご指導により実施した。
以下は、馬返から明智平に向かっての調査記録である。
馬返から大谷川を隔てた急斜面の林の中に残る鉄橋の橋台(明智平方)。
上の橋台にいたる路盤跡。枕木のくぼみがコンクリート面にはっきり残っている。奥が馬返方。
わずかにカーブして、西南西方向からほぼ西に向きを変えるところ切り通しの状況も分かる。山歩きのプロでない達磨小僧は、すでにこの辺で心臓が破裂しそうだった。
交換所付近。路盤の広がりが分かる。中央には2本の線路間にあったホームのようなものが残っている。
1本目のトンネル坑口。ちょっと荒っぽい作りだ。
なお、交換所−トンネル×2−明智平の部分は第二いろは坂の途中から望見できるとのこと(落葉の季節に限る)であるが、達磨小僧は場所を特定できなかった。
明智平ドライブインの裏手から見下ろした路盤跡。ここでもちょっと足がすくむ。奥に、柵のようなものが設置されているのが分かる。2本目のトンネル坑口が見てもいいと思うのだが・・・。
上と同じ場所の夏姿。路盤跡は緑のトンネルの中だ。(2004.6撮影)
明智平の巻上げ設備があった場所。ドライブインの建物がかつての駅舎であったこともよく分かる。


3.あとがき

 にぎやかな明智平ドライブインの裏にひっそりと廃線跡は、たたずんでいた。命脈の尽きた遺構たちは、これだけ厳しい自然条件の場所での工事にどれほどの苦労と努力があったかを無言のうちに伝えてくれる。
なお、関連の深い日光軌道線についてもあわせてご覧いただければ幸甚である。
 なお、日光交通に営業権が譲渡された普通索道(ロープウエイ)は現在も盛業であり奥日光随一といわれた展望台からの眺望は今も変わらない。
参考文献: 1,19,22,25,26(一覧表のNoを示す)



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更新    
作成    2005.2.20
写真撮影 2004.11

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