ソーラー庭園灯の製作 (2006/6 〜 2006/8/23)

(Last update:07/08/03)


製作(改造)の土台となった市販品。
6 灯 (内部 2 パラ接続の合計 12 LED) で、
電池は 700mAh ニッカドという仕様
市販品付属の太陽電池パネル。
開放時で 4V 250mA 程度。
もともとはこのパネルの裏に基板が入っていた
市販品の基板を取り出して別ケースに入れたもの。
典型的なブロッキング発振回路が 2 つ入っている。
アルミ電解コンが 2年の屋外使用でヘタったため(汗)、
大容量積層セラに交換済み。電池も若干容量アップ
秋月のキット等、
いろいろと試してみる。
ブレッドボードありがたや ^^;
Ver 1 回路図 単3より二回りは大きい
4500mAh の大容量電池を 2 セル採用。
もともとノート用の電池らしい
結局 MAX879 を使った昇圧コンバータを採用。
外付け部品も少なく、出力電圧の変更も容易
Ver2 実装の様子。このユニットで
合計13個のLEDを点灯させる。
使用時には秋月昇圧コンバータと
庭園灯ユニットを 6 個接続
Ver 2 回路図
最終回路図 最終基板

 もう2年ほど前に購入した市販のソーラー庭園灯を改造することにした。購入以来、何度か改造(電池容量アップ、電解コンデンサ交換、LED への電流量変更)して使用していたのだが、(1) 動作が不安定になる場合アリ、(2) 点灯時間が短い、(3) LED が暗い、と課題が山積みで、根本的な対策を施す必要があったためである。

 この製品、内部はいかにも中国製。部品がナナメに付いているのはもちろんのこと、半田付けは下手くそだわ(笑)、部品がケチってあってプリント基板の回路と実際の回路がだいぶ違うわで、ある意味大変楽しめるモノ ^^;。写真からも判る通り、点灯部分の回路はインダクタを使った典型的なブロッキング発振回路で同じものが2回路入っているという構成。いずれにしてもコスト優先であまり効率は高くなさそうなので、この際完全に作り直すこととした。ただ太陽電池や庭園灯部分は防水を考え、市販品をそのまま利用することとした。

 まずはネット等で資料を集めて検討したところ、秋月の白色 LED 投光キットと、同じく秋月で扱っている昇圧コンバータ IC MAX879 が候補に上った。どちらも 1V 程度から動作可能で、特に前者はパルス発光のため電池のもちは期待できそうである。どれぐらいの数の LED が点灯できるかは未知数だが、これはブレッドボード上で組んで検証してみることにする。一方 MAX879 は出力電流が 200mA 強取れるから、点灯できる LED の数は問題ないと予想される。

 早速両者をブレッドボード上で組み立てて消費電流を測定してみる。MAX879 は出力電圧 = 4V で部品を選定し、後はほぼデータシート通りの回路構成。2.4V、13 LED での消費電流は投光キット(標準部品で作成)が約 120mA、MAX879 が約 70mA であった。投光キットの消費電流が若干多いので、2SC1815 のベース電流をいじったところ、ある程度は消費電流を抑えることもできたが、やや動作が不安定な場合もあったので、今回は MAX879 を採用することにした。

 この MAX879 にはシャットダウン端子もあり、ここを Vcc の 1/2 以下の電圧にすると負荷が切り離される。したがってこの端子で点灯を制御した方が制御トランジスタの CE 間電圧降下がないぶん効率が良くなるはずだが、実際に試してみるとシャットダウン端子の印加電圧が Vcc より低いと出力も下がるらしく、全体として LED が暗くなってしまった。明るさに応じてリニアに LED の明るさを制御する(例えば CDS を使う等)にはこの端子は便利だが、今回は節電を考えて一定電圧を境に点灯・消灯するデジタルな動作としたため、シャットダウン端子は使用しないことにした。

 さて、ここで消費電流 70mA でどの程度 LED が点灯するか考えてみる。気をつけなければいけないのは、一応デジタルテスタで 70mA と出ていてもそれはあくまで平均値であって、この手の昇圧コンバーターなら負荷量が短時間に変動している可能性が十分にある、という点。そこで満充電状態の 1500mAh のニッケル水素電池で連続点灯をさせてみたところ、だいたい 20 時間程度点灯した。これなら理論値と実測値はほぼ等しい結果なので、以後 70mA で考えることとする。

 そうなると太陽電池からは 200mA 程度で充電できると思われるので、充電時間の3倍ぐらいは LED が点灯する計算となり、日照時間の短い冬場(日照 5 時間、点灯 15 時間を想定)でも一晩中点灯する・・・はずだ・・・タブン。

 また逆に夏場は充電量 > 放電量となるのでこれを無駄にする手は無い。曇天・雨天時を考え、電池容量はなるべく大きくして余分な電力を極力溜め込むことにする。そこで充電池には大容量ニッケル水素電池 4500mAh を採用。単3より二回りほど大きいが、満充電なら計算上は 60 時間程度はもつことになるので、数日は無充電でも大丈夫・・・かも・・・ホントか? ^^;

 ということで充電周りのスペックはほぼ確定。ただせっかく貯めた電気をコンバーター以外のところで無駄遣いしては元も子もないので、点灯制御部にはいろいろとシカケを施すことにする。まず点灯時の検出方法だが、CDS で明るさを検出する方法と、太陽電池からの電圧を監視する方法が考えられる。CDS を使うと理想的な点灯制御が可能だが、常に CDS に電流を流さなければならず、過放電で電池を傷める可能性が高い。また電流量を抵抗で制限すると、電圧変動で案外と消費電流に差が出てしまうという問題もある。そこで今回はフォトカプラを使い、制御 LED の電気は完全に太陽電池から賄うこととした。これなら太陽電池側と点灯制御部が分離されるため過放電も防止できる。

 またフォトカプラや点灯制御トランジスタのベース電流は、通常なら抵抗で電流量を制限するところだが、電圧が変動すると意外に電流量に差が出てしまう。例えばベース電流に大体 5mA を流そうとすると、電池電圧が 2.4 V の時には BE 間電圧、およびダイオードの順電圧降下ぶん合計 1.8V を引いた 0.6V で抵抗値を計算することになる。この場合、120Ωあたりを選択することになるのだが、ニッケル水素電池の満充電時はおよそ 3V ぐらいにはなるため、120Ω ではベース電流だけで 10mA ぐらい流れてしまうことになる。これはかなり無駄なので、ここは定電流ダイオードを採用することとした。(たかだか数十円の違いだし ^^; )。同様に、フォトカプラ側の点灯にも定電流ダイオードを使用したため、太陽電池の出力を無駄なく充電に廻せることとなる。この回路の場合、太陽電池側の電圧が約 1.5V で LED が点灯し始めた。なるべくなら 1V 以下で点灯するようにしたいのだが、まぁ、ここらへんは我慢するとしよう。

 あと、点灯制御用のトランジスタは Ic = -500mA の 2SA562 を選択。定番の 2SA1015 でも Ic = -150mA なので問題は無いのだが、「トランジスタは定格の 1/2 以下で使う」の原則から縁起物として余裕を持たせてみた。

 というわけで、最後にユニバーサル基板上に実装し、ケースに組み込んで製作完了。早速 2006/7/3 より実戦投入した。なお余談だが、制作費は電池が一番高くつき、2 セルで \1200、コンバータ IC が \300(いずれも秋月価格)。その他は手持ちのパーツを利用したので \1500 程度で済んだが、ここらへんも新規で購入するとケースやらコネクタやらで \1000 は余計にかかるかも。やっぱりコストでは中国製品にはかないませんなぁ ^^;


2006/8/13 改造記

 というわけで 1ヶ月ほど運用してみたところ、いろいろと不具合が出てきたため改良することにした。ある程度実験して決めた回路ではあったが、やはり実験レベルとフィールドレベルでは結果が変わってくるものである ^^;

 主な問題点は、(1) まだ明るいうちから点灯してしまう、(2) ニッケル水素電池の過放電、(3) LED が試作時より暗い、の2点。そこで改造を施したのが Ver 2 回路図である。

 まずは明るさ制御の問題から。この問題、そもそも太陽電池の性能をちゃんと把握していなかったことが原因(最初にちゃんと測定しとけよ、というツッコミは無し方向でひとつ・・・ ^^; )。この太陽電池は暗くなるまでわりとリニアな出力電圧特性を有しているので、フォトカプラの 1.2V をスレッショルドとした Ver 1 ではスレッショルド電圧が高すぎたのだ。そこで Ver 2 ではフォトカプラではなく定番の抵抗による分圧検出とした。この場合、1MΩ に約 0.6V の電圧が発生した時点で C1815 が ON となる。フォトカプラの場合の設定電圧は約 1.2V だったので、今回の改造により暗くなるまで多少は粘ってくれるだろう。この場合、C1815 のベース電流は 10KΩ を介して供給されるため 1mA 以下とだいぶ省電力となる(今回は 1MΩ は固定としたが、100KΩぐらいの VR にしておくと明るさ検出感度を調節できて便利かも)。なお、本来はヒステリシスのために C1815 のベースに 10μ ぐらいのコンデンサを入れるべきであるが、基板に余裕が無かったので実装を見送り ^^;

 次に過放電対策だが、幸い MAX879 がシャットダウン端子を有していることから、この機能を活かすべく電圧監視IC(セイコー S-1000N18)を使うことにした。この電圧監視 IC はニッケル水素電池の電圧が 1.8V になると L 信号を出すため、これを MAX879 のシャットダウン・ピンに接続すれば自動的に昇圧が停止してくれるという算段。また電圧監視用 IC 自体の消費電流は 350nA と極めて微小であり、ニッケル水素電池の自己放電に比べればはるかに無視できる値 ^^;。お値段も 70円と安価なのだが、この超低消費電力バージョンはパッケージが面実装タイプ (SOT-23-5) で、半田付けは面倒なのが難点といえば難点。ちなみに購入(通販)したのはここ

 最後に LED の暗さであるが、どうも試作時の LED と購入した LED の特性が違うのが原因のようである。そこで MAX879 の出力電圧を可変できるよう、50KΩ VR を追加。これで 4V〜6V まで出力電圧が可変できる。

 また副次的な作用ではあるが、以上の改造に伴い電源供給を制御していた 2SA562 が不要となったことで IC への供給電圧=ニッケル水素電池電圧となり、昇圧効率も改善することになる。改造後、数日様子を見てみたが、動作も安定しており、だいぶ点灯時間も延びた。また電源監視 IC を投入したことも大きいようで、過放電の症状(=昼間晴れていたのにほとんど点灯しない。つまり充電分が過放電ぶんに充当されただけで点灯できない)も見られなくなった。


2006/8/23 さらに改造:

 上記改造後、しばらく様子を見ていたのだが、やはり常時昇圧・点灯ではエネルギー効率が悪いのか、真夏の日差しでたっぷり充電しても 3〜4 時間で電池切れとなってしまうようだ。そこで最終手段として、一度は採用を見送った秋月のキットをベースにして、若干の改造を施して投入することにした。

 低電圧検出部分はそのままに、発振部分を 555 を使用したブロッキング発振とし、定電流回路も設けた(実際これが働くことはまずないのだが、縁起物として実装)。発振効率を左右する発振トランジスタにはストロボ用の定番トランジスタ 2SC2500 を使って効率を高めた。

 電源系は、電源監視 IC の出力が低電圧時 L なので、2SA1015 で出力を反転し、2SA562 で発振回路への電源供給を制御。ただしこの方式だと低電圧時に A1015 に 2mA ほど流れてしまうので、本来なら N-ch MOS-FET で直接スイッチしたいところだが、 2V 程度の低電圧で確実に制御できる MOS FET が手持ちに無いのと、ローサイド制御にすると LED 部のアースを分離する改造を施さなければならないのでこの方式とした。

 この改造により、夏場ならおよそ 6 時間は動作するようになった。その後1年ほど様子を見たのだが、日差しの弱い冬場でも 3時間程度は動作することを確認。これにて一件落着とした。



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