省電力ソーラー LED マーカーの製作 (2012/11/21〜2012/11/28)

(Last update:2013/01/20)


改造のベースとなった
セリアの 100円ソーラーライト
基板上の余計なハンダを
吸い取り線で除去しつつ
ここまでバラす。
ケース内に収納できるよう
DIP PIC の足を広げる。

裏面でチップ 1MΩ x 2 を空中配線
最終配線の様子

基板の一部をカプトンテープで
絶縁してスイッチを再利用。
改造品外観

点滅 LED は紙やすりでスリをいれて
光を拡散させるようにした
市販マーカー(左)と大きさ比較

大きさでは勝てないが、
機能・持続時間・コストで勝負だ ^^;
ロープへの設置例

防水のためビニール袋を
被せることに(爆)
回路図

【きっかけ】

 先にも述べたとおり、33年ぶりのキャンプに繰り出した管理人。だがロープに足を引っ掛けて転びそうになる事態が多発し、蛍点滅 LED マーカーの製作に至った。

 おかげで事態は解決方向に向かったのだが、たまたま入ったアウトドア用品店で投げ売り処分(\1480 → \780)のロープ用マーカーを発見(むむむ、これは!)。だが残念なことに 1 つしか残っていなかったのだ。あぅ。


【市販マーカー】

 さすがにキャンプ用品だけあって、

・小型
・ロープに直接取り付けられる
・電池蓋がゴムパッキンで防水万全
・スイッチ操作で点滅と連続点灯切り替え可能
・連続点灯 20時間、点滅動作 50時間

 と完成度が高い。

 また100円ショップでも何種類か点滅マーカーが売られているのだが、いずれも電源がコイン電池でお財布と地球環境に優しくない。また秋葉原某店にてソーラー充電式で点滅可能なものを見つけたのだが、結構点滅速度が速く稼働時間については不安大。

 いずれにしても、理想的なマーカーは今のところ市販されていないようだ。


【セリア 100円ソーラーライト】

 そこで白羽の矢を立てたのが、100円ショップ「セリア」で売られているキーホルダー型のソーラーライト。太陽電池(推定出力 4.5V / 3mA )にニッカド電池 (40mA/h) まで付いてお値段 100円 @o@。ブラボー!

 太陽電池はご多聞に漏れず貧弱だがアモルファス系なので曇天や非太陽光でも一応出力は得られるのがせめてもの救い。


【ハードウエア】

 今回の電源は 40mA/h の NiMH 電池。いくら太陽光で補充電されるとはいっても極力省電力化しないとすぐに電池がカラになる可能性が高い。

 今回の太陽電池の出力はせいぜい 3mA 程度と予想されるので(詳細は後述)、平均消費電流をこれ以下に抑えたいところ。そこで前回製作した多機能 PWM モジュールをベースにし、さらに省電力を推し進めたのが今回の作品。

 仕様は、

 省電力化対策として

・PIC12LF1822 を使用
・クロックは内部 31KHz
・周囲の明るさを監視し、明るい場合は点滅停止
・電源 OFF 時は SLEEP に落とす

 またその他にも、

・電源電圧を監視し、低電圧で動作停止(過放電防止)
・点滅用と連続点灯用の 2 LED 構成
・スイッチ通常押しで点滅と連続点灯を切り替え
・スイッチ長押しで電源 ON/OFF
・電源 ON/OFF 時には電池電圧を表示

 といった仕様とする。


【LED】

 点滅用 LED には超高輝度の赤色を使用する。基本的にキャンプ場は暗いので超高輝度品なら 1mA も流せば十分。赤 LED は Vf = 2.0V 程度なので電流制限抵抗は大きめの 1.5KΩとした。

 一方、連続点灯用の LED はもとから付いていた白色 LED をそのまま再利用し、10mA ほど流している。


【太陽電池のスペック】

 取説の記載では充電時間 6〜12時間。単純計算では太陽電池から最大 6mA 程度取れるハズだが、管理人の経験上、アモルファス系でこのセル数 & セル面積で 6mA も取れるとは思えないので、実測してみた。

 2012/11/23(晴れだが薄く雲がかかっている状態)に直射日光を当てて測定してみたところ、開放時最大電圧 6.5V、開放時電流は 1.7mA までは確認したものの 6mA までは取れなかった。んー、本当に 6mA も取れるんだろうか。快晴の日にでも追検証が必要だなこりゃ。


【PIC12LF1822】

 LF シリーズは nanoWatt XLP technology 採用の超省電力品。その実力はいかほどのものだろうか。

 データシートによると特にクロック 31KHz での消費電流低減が著しい。例えばパラメーター番号 D015(クロック = 内部 31KHz、電源電圧 3.0V)の場合の消費電流は、

12LF1822 : 4μA
12F1822 : 27μA

 と通常品の 1/7 。また周辺回路(ADC や WDT 等)も通常品の 1/10 以下で、特にパラメーター番号 D022(全周辺回路 OFF の SLEEP 状態、電源 3.0V)では通常品 22μA に対し 12LF1822 はたったの 0.03μA と実に 1/733 の超省電力 @o@

 ただし 12LF1822 の絶対最大電圧が 4.0V なのは注意が必要。ニッカド電池の満充電電圧は 1.5V 程度あるので、いかに 4.0V 未満で充電を止めるかに注意を払う必要がある。

 また PIC12LF1822 の最大の問題点は入手性。2012/11 現在、秋月では売られていないので管理人は RS online でポチっとな。値段が結構違うのかと思ったら通常品とほとんど変らなかった(嬉)。

 なお LF 品が入手できなくてもプログラムはそのまま通常品でも動く(当たり前)。ソフトウエア面でもだいぶ省電力化したので通常品でもそこそこイケるのではないか(ただし未検証)。なお 12F1822 の絶対最大電圧は 6.0V なので上記の満充電電圧問題は生じず気が楽といえば楽。


【回路について】

 回路図では太陽電池が NiMH 電池に接続されておらず、しかも定石の逆流防止ダイオードすら無いように見える。これは今回の太陽電池出力がせいぜい数 mA なことから、PIC の I/O ポート〜 VDD 間に入っている保護ダイオードを逆流防止ダイオードとして流用してみたため。要するに PIC 内部経由で NiMH 電池を充電しているワケ。

 ちなみに太陽電池出力の接続は必ず NiMH 電池を配線した後に行うこと。NiMH 電池を繋いでおけば太陽電池の出力電圧が降下し 12LF1822 の絶対最大定格 4V を超えることはまず無いからだ。

 キーのプルアップ抵抗は PIC 内部で Weak pull up しており外付け不要。また RA3 ポートも通常はプルアップするところを GND に落として消費電流低減を図っている。


【ソフトウエア概要】

 今回もアセンブラ(逝)で実装する。今回はタイマー割り込みを使用していないのでプログラムは比較的シンプル。

 見所(?)は

 ・ウオッチドッグタイマ (WDT) + SLEEP による時間待ち
 ・キー入力状態変化割り込み + SLEEP による電源 ON/OFF

 あたり。特にキー入力による状態変化割り込み処理はキー入力の追加チェックといったコマゴマとした後処理が必要で、案外他の方の参考になるかも。


 また省電力化のために、

 ・Brown Out Reset (BOR) 不使用
 ・ADC、WDT、内部基準電圧、は必要時のみ電源 ON

 なんかにも配慮。


【キー操作仕様】

 ・通常押し(約 0.3秒)で点滅と連続点灯切り替え
 ・長押し(約 2秒)で電源 ON/OFF


【電池電圧表示】

 電源 ON/OFF 操作時、NiMH 電池の電圧に応じて LED を以下のパターンで点滅表示(4回点滅)させる。

・3V 以下 → 赤点滅( = 充電しましょう)
・3V 〜 3.9V → 赤・白同時点滅( = 電圧正常)
・3.9V 以上 → 白点滅( = PIC12LF1822 の絶対最大定格間近。充電禁止)


【過放電防止機能】

 2.7V・10秒継続で動作を停止。以降、電圧監視のみ継続し、3.0V・10秒継続まで電圧が復帰したら動作を再開。

 電源電圧は 1/2 に分圧して A/D 変換。分圧抵抗値を大きく(1MΩ + 1MΩ)してここに流れる電流を μA オーダーに抑えてある。


【明るさによる自動 ON/OFF 機能】

 太陽電池電圧を直接 A/D コンバーターで読み込み、2V 以上の出力が 10秒程度継続すると「明状態」と判断して点滅を停止させる。


【自動停止原因表示機能】

 低電圧や周りの明るさで自動停止する場合には、停止直前に以下の表示を行い、停止原因を確認できるようにしてある。

 ・低電圧で自動停止 → 赤 LED 高速点滅(2回)
 ・明るさで自動停止 → 白 LED 高速点滅(2回)


【実装のポイント】

 ケースは嵌め込み式(合計 6箇所)なので、隙間にピンセットやマイナスドライバを挿し込んで少しづつこじ開けていけば「殻割り」は容易。

 ケース内部の厚みはそこそこあるので実装は比較的楽。写真の通り、12LF1822 は DIP 品でも足を広げれば十分に収納可能。さらに 4pin、5pin を写真の通り 90度曲げておくと実装に便利。またさらに管理人は PIC の裏側にチップ抵抗を空中配線している。

 で、問題はスイッチ。代替品を探すのは難しそうなので、もとからあるタクトスイッチを再利用する方向で。となるともともとの基板は GND ラインしか使用できない。具体的には写真の通り LED のアノード側の配線を基板から浮かせてカプトンテープで基板と絶縁して配線。PIC まわりはすべて空中配線。

 あと LED は無拡散だと見づらいので 1000番台の紙ヤスリで磨いて散乱させることにした。

 で、最後に問題となるのが防水。どのみちスイッチ部分は防水が不可能なので小型のビニール袋に入れてロープにクリップすることに。


【稼働時間】

 満充電(3.9V)まで充電したところ、連続 60時間以上動作(60時間で測定を止めただけで、その時点でも電池はカラになっていなかった)。無充電でも数日間のキャンプに十分対応できることが確認できた。実際のキャンプでは昼間補充電されるため、一週間は楽勝でイケルはずだ。


【使用感】

 市販品よりもだいぶ大型化したことと防水ビニール袋のせいで見た目はイマイチ。ただ性能やコスト面では満足のいくものになった。

 冬季は気温低下による電池性能低下、霜による結露や防水への影響、など電子機器には厳しい季節。どの程度実稼動するかをこれから検証していくことにする。


【プログラム】

 改変自由とするが商用利用は厳禁

プログラム( asm & HEX ファイル)

Ver 1.3 (2012/12/12)
Power_Save_Marker_v1.3.zip

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