キャンプ用 PWM ファンコントローラーの製作 (2013/7/23〜2013/8/20)

(Last update:2015/07/31)


LOGOS 「どこでも扇風機」
(写真は現行 2 way 電源モデル)
基板表
基板裏 制御回路実装の様子。
基板と 2色 LED は
ホットボンドで固定。
平滑部実装の様子 外部電源入力まわり。
ホットボンドで固定。
改造後の外観 制御部実体配線図

別途平滑回路が必要
回路図 モバイルバッテリーで運用中
(詳細はこちら

【きっかけ】

 キャンプに出撃しまくりで電子工作に手が回っていない今日この頃。今回もキャンプネタではあるが、丁度良いネタがあるので久々にハンダゴテを握ることに。

 キャンプ上で使えるモバイル扇風機としてメジャーな製品に LOGOS の「どこでも扇風機」がある(その他 OEM と思われるもの多数あり)。今回購入したのは乾電池駆動専用の旧モデルで「送料込み 980円」で捕獲 ^^;

 で、外部 12V 入力対応の改造は当然として、せっかくの DC12V 仕様、もっと活用しなければモッタイナイ ^^ 特に太陽電池と組み合わせた運用ができればアウトドア・グッズとしては理想的なモノとなるだろう。

 また電池駆動時の省電力を狙って PWM 制御するのも鉄板ネタ。

 そこで、

 ・PWM 制御で消費電力を低減
 ・太陽電池+鉛電池を外部入力にした場合を想定した自動停止機能(過放電防止機能)

 を PIC マイコンで実装する。


【仕様】

・外部から 12V 供給できるように改造
・PWM 制御で省電力化
・電圧は 2色 LED で表示
・一定電圧を下回ったら自動停止(過放電防止機能)
・自動停止中は 赤 LED 点滅
・自動停止後、一定時間電圧が復帰したら自動再開
・過放電防止機能はジャンパで Enable/Disable を設定(乾電池使用時は Disable に)

 PWM 制御のファンコントローラーは山ほど先例があるが、「どこでも扇風機」用に DUTY を調整している点、自動停止機能付き、というあたりでオリジナリティを追求してみる方向で ^^;



【事前検討】

 ファンを開腹してみると、内部回路は非常に簡単で、Hi/Low 切り替えは抵抗1本で電流量を変えているだけ。まぁ、これは想像どおり ^^;

 またケース内部はスカスカ ^^; 追加回路を組み込むスペースにはまったく困らない。改造としては至極簡単ですな ^^

 で、まず消費電流を測定してみる。新品の乾電池は 1.6V 程あるので、1.6 x 8 = 12.8V 時の消費電流を実測してみたところ、High 320mA、Low 260mA。よって、これぐらいの電流をスイッチングできる回路を設計すればよいことになる。

 今回使用した Nch MOS-FET SUP85N15-21 は Vgs 10V, Id=30A 時 Rds(on) = Max 0.021Ω。Vgs 5V 時のデータではないが、一応この値で計算すると、

 0.32A = V / 0.021Ω → V = 0.0067V
 W = IV = 0.32A x 0.0067V = 0.002W

 となり、FET での損失は 2mW 程度であるから放熱の必要は無いだろう。


【ハードウエア】

 マイコンは PWM 機能を持つ PIC12F683 を使用。回転数設定と電源電圧監視は A/D 変換を使用する。

 ファンのスイッチングには Nch MOS-FET を使用。スレッショルド電圧が 5V で低 on 抵抗なら何でも OK。

 注意点は PIC のパスコン。電気喰いのファンを PWM でスイッチングするため、一般的な 0.1μF のみだと電圧降下して PIC がリセットする可能性が高い。電源ラインには少なくとも 1個は 10μF 以上のコンデンサを投入するべし。

 また DC/DC コンバーターからの出力を電源とする場合は入力側に 100μF 以上のコンデンサを入れることを推奨。これがないと低速回転時に電圧変動が大きくなってファンが鳴いたり過放電保護機能が働いたりする可能性が高い。

 2色 LED はカソードコモンを使用。電池駆動する場合に備えて超高輝度タイプ推奨。

 なお、回転数切り替えは既存のスイッチを流用することとする。

 また PWM 出力そのままでファンを駆動するとファンが微妙に鳴いてうるさいので、平滑回路(というか実体は DC/DC コンバーターそのもの)を 通して電圧制御することにした。

 コイルは秋月で売っている 1.3A のものを使用。



【プログラム】

 PIC クロックは 1MHz、PWM 周期は 250Hz で設計。

 今回もアセンブラで実装。一応 TMR0 (65.5ms 毎), TMR2 (4ms 毎) 割り込みを Enable にしているが、実際には割り込み処理内で何もせずに RETI しているので使用していないのと一緒 ^^;

 時間が絡む処理はメインルーチン中の時間待ちループ(800ms)で調整。この間隔で電圧読み込み〜電圧表示〜自動停止チェックを行っている。

 今回の注意点はファンの回転開始時の制御。ファンの回り始めは低速回転から徐々に全回転に移行し、その後に設定された回転数に応じた PWM 制御に移行する。(これはモバイルバッテリーが突入電流をショートと勘違いするのを防ぐための細工)

 回転数下限設定はソフトウエア上 DUTY 5% にクリッピングしている(もっとも 5% ではファンは回らないはず)。ただし回路図の定数通りに組み立てた場合はハードウエア的に DUTY 20% 程度が下限となる。

 過放電防止の自動停止は 11V 以下が 8秒間継続したら発動。自動停止時は赤 LED が短く点滅し、電圧監視を継続して 11秒間電圧が 11V 以上に復帰したら自動的に再スタートする。設定電圧 11V を変更したければソースを 1ヶ所書き換えれば OK。


【実装】

 今回もユニバーサル基盤に実装。

 DC ジャックはプラグ挿入によって電源ラインがメカニカルに切り替わる三極品を使用するべし。固定はホットボンドで。

 2色 LED 用もホットボンドで固定。


【調整】

 調整ポイントは1つだけ。低速時の回転数を VR で調整するだけ。回転数を下げすぎるとファンが回らなくなるのでご注意あれ。


【使用感】

 DC/DC コンバーター部のコイルとコンデンサの定数は本来ちゃんと設計しないといけないのだが、ネットの作品例を参考に現物合わせしながら適当に決めたので VR とファンの回転数にあまりリニアリティがなくなってしまった(爆)。まぁ、静音という目的は達成したのでこれで良しとしよう。

 一応原理的には PWM によって消費電力は抑えられているハズ・・・なのだが、乾電池の放電特性と PWM がどの程度相性が良いかまでは実測していないの未検証だったり(爆)。

 むしろこの装置の真骨頂は 12V 鉛電池と組み合わせた時。特に市販のポータブル鉛電池電源は過放電停止機能まで無いものが多いが、つけっ放しでも安心して就寝可能なのがミソ ^^

 また電圧を監視して自動復帰する機能もあるので、太陽電池+鉛電池で運用するにも便利なハズだ。そのうち実際にフィールドテストしてみるつもり ^^


【プログラム】

 改変自由だが一切の商用利用を禁止とする。

asm & HEX

2015/07/31 v1.3
PWM_FAN_Controler_v1.3.zip



2015/07/30 追記:

 コイツをモバイルバッテリーで動かすためのアダプターを製作。詳細はこちら



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