LM3909N ソーラー LED フラッシャーの製作 (2008/11/13〜11/14)

(Last update:09/08/29)


まずはブレッドボードで動作確認。
56F キャパシタなら一晩でも余裕で動作
大容量キャパシタはケース厚の
都合で 10F x 2 とした
基板表
基板裏。
チャージポンプ用コンデンサは
積層セラミック 100μF x 2
ケースに入れて完成。
太陽電池はアモルファスで 3V 20mA 程度
回路図
結局2009年の夏は乗り切れず(逝)
夏のダッシュボードは過酷すぎた模様 ^^;

始めに

 LM3909N と聞いて「懐かしいなぁ」と思うヒトはおそらく管理人と同じ世代の元ラジオ少年であろう。この IC は 1970年代後半に「初歩のラジオ」や「ラジオの製作」といった雑誌に頻繁に取り上げられていた定番の IC。とっくの昔に廃番となったハズなのだが今でも細々と流通在庫が買えるし、等価回路をディスクリートで再現(参考サイト 1, 2)している猛者もいるぐらい奥が深い IC 。

 この IC の特徴をまとめると、

(1) チャージポンプ方式で 1.2V程度の電源で LED (ただし Vf=2V 程度のもの。そもそも当時は青や白の LED など無かった) を駆動できる。
(2) 外付け部品が極めて少ない(IC 以外はコンデンサと LED 1つづつだけ)
(3) 光モノとしては超低消費電力。平均500μA。乾電池だとつけっ放しでも数ヶ月は持つ。
(4) 周波数可変(電源電圧とコンデンサの容量で決まる)

 要するに少年の心をくすぐる「光モノ」用 IC で、おまけに外付け部品が少なくて乾電池1本でも LED が光る!、という点で当時かなりのインパクトがあった IC 。管理人の部品箱に30年も前に買った(!) LM3909N が転がっていたので実用的なフラッシャーを作ってみた。


回路設計


 リファレンス回路を作っても面白みが無いので、この際、車載防犯装置もどきにするべく以下の方針で回路設計を行う。

(1) 太陽電池による充電方式とする。この場合、二次電池では過放電制御が面倒なので、大容量キャパシタを使う。
(2) 明るさを検知して夜間時のみ動作とする。そのため、LM3909N の電源供給を PNP トランジスタで制御する。

 以上の方針でまずブレッドボードで回路を組み、2V/250mA の太陽電池と 56F/2.3V のキャパシタで動作確認してみる。この場合、太陽電池電圧 (2V) から逆流防止ダイオードの順方向電圧降下 (0.3V) を引いた電圧 (=1.7V) までキャパシタが充電されると電圧差がなくなって充電電流が流れなくなり、過充電は自動的に防止できることになる。

 早速日光で充電してみると、さすがに大容量キャパシタ、1.7V 程度までの充電でも LM3909N の超低消費電力とあいまって一晩余裕で点滅し続けた。車載なら一晩もてば十分なのでキャパシタ容量を減らしてみることに・・・。だが意外にも 25F では一晩持たなかった。なんだかんだいっても点灯時には数mA の電流が一時的には流れるわけで、それなりに電気食いなのだ。結局、キャパシタ容量を戻すか、あるいは太陽電池を出力電圧の高いものにして充電停止電圧を上げる(=貯めるエネルギーを増やす)、の対策が必要である。

 またこれと平行して明るさ検出の方法を検討。最初はフォトトランジスタを使っていたのだが、太陽電池電圧をそのまま使えばよいことに気づいたため(爆)、太陽電池電圧を抵抗で分圧して明るさ検出することとした。ただしこの方法だと夜間に太陽電池電圧が 0V となると PNP トランジスタのベース電流が太陽電池に逆流するため、もう1本逆流防止ダイオードが必要となる。

 以上を総合し、結局2本の逆流防止ダイオードを使用しつつ充電量を増加させるため、太陽電池を 3V/20mA 程度のものに変更。これだと逆流防止ダイオードの順方向電圧降下 (0.3V) x 2 を引いても定格ギリギリの 2.4V 程度まで充電可能になる。実際、この組み合わせて充電してみると 25F でも一晩は持つことがわかった。ただし満充電付近では LED フラッシュ速度が早すぎるので、チャージポンプ用コンデンサを 200μFに変更。

 なお PNP トランジスタはたまたま手元にあったものを使っただけで、定番の 2SA1015 でも問題ない。注意点があるとすれば逆流防止ダイオードに順方向電圧降下の小さい SBD を使うことぐらい(通常の整流ダイオードだと 1.8V までしか充電されなくなる)。またチャージポンプ用コンデンサには車載という過酷な熱環境を鑑み、積層セラミックコンデンサ 100μF x 2 を使用することにした。


実装

 部品点数が少ないので基板のきれっ端で回路を組み上げ、秋葉原の千石電商で売っていた蓋が透明なケースに入れてみた。今回使用したアモルファス太陽電池はガラス基板(?)上に成型されているため取り扱いに注意が必要だが、このケースなら太陽電池をケース内に収納できる。ただ 25F のキャパシタを入れるには厚みが足りなかったので結局キャパシタを 10F x 2 に変更して様子を見ることにした。内部にはまだ余裕があるので、一晩持たないようならキャパシタを別途追加すればいいだろう。


実際に運用してみて・・

 車のダッシュボードに置いてしばらく運用してみたところ、陽当たりが良いこともあって 20F でも一応一晩はもつようだ。しかし明け方にはかなり点滅が遅くなって(=キャパシタ電圧が下がっている)おり、雨天や曇天の場合なども考えると、いずれキャパシタを追加して余裕を持たせておく必要がありそうだ。


改良のアイデア等

 太陽電池をより小型のものにする(同じ面積ならアモルファスより結晶系の方が有利)等が考えられる。ただしあまり太陽電池を小型にしすぎると一日では満充電にできなくなるので、キャパシタ容量を上げるとかフラッシュ速度を下げる、といったチューニングが必要になるだろう。もっとも、ソーラー充電など考えずに乾電池で昼夜を問わずにつけっ放し、というのもアリだろう。単3なら数ヶ月は持つハズだし、単4でも1ヶ月はもつのではなかろうか。ソーラーパネルが不要になるぶん超小型に仕上がるし。

 なお、現在は同じような LED フラッシャー IC (BOWIN ELECTRONIC M34-1L, 3pin で小型、1.35V から動作、しかも50円) が売られている。消費電力は不明だが外付けコンデンサが不要なので、もはや LM3909N (2008/11現在実売価格 300円前後)の出番はほとんどなくなるだろう。ともあれ、往年の名 IC が30年の時を経て実用品として蘇ったことに感慨ひとしおの管理人であった。


2009/08/29 追記

 車のダッシュボードに置きっ放しでかれこれ10ヶ月。梅雨時までは動作を確認していたのだが、今日久々に確認したら空気二重層コンデンサが放尿死亡していた。さすがに夏場の灼熱ダッシュボードには耐えられなかった模様。

 ちなみに回路本体の方は、あらかじめ高温状況を想定し、電解コンではなく積層セラコンを使ったため問題なく動作した。


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