Coleman CPX6 LED Classic Lamp 改造

(Last update:2016/01/22)


CPX6 LED Claassic Lamp
定価 7000円以上もする高級品だが・・・
開けてみたらまさかの
スタティック点灯 ^^;
PWM 制御基板表
基板上のスイッチは SW2
PWM 制御基板裏
黒いチップ部品は 2N7002K (FET)
実装の様子
SW1 実装の様子
オリジナル基板を取り払い、
もともとあったネジ穴を利用して固定
電源コネクタ実装の様子
裏面でホットボンドで固定している
モバイルバッテリで運用可能に ^^
回路図

【きっかけ】

 某ショップのセールで半額近い値段で入手した Coleman CPX6 LED Classic Lamp。外部電源入力ができるようにと分解したのがコトの発端。

 なにせ定価 7000円以上もする高級品、それなりにちゃんとした制御回路が入っているだろうと思っていたのだが、実際に開けてみたら一番単純かつ低コストな電流制限抵抗によるスタティック点灯であることが発覚(汗)

 この方式の場合、一番問題なのはエネルギー効率の悪さと電池電圧の低下による輝度低下。CPX6 という同社の共通規格に合わせるための 6V 仕様とはいえ、これではあまりにヒドい ^^;


【オリジナル回路の問題点】

 オリジナル回路は左下の回路図を参照。

 6V で High モード時、回路には 570mA 流れるが、オリジナル回路では LED に 3.3V、電流制限抵抗に 2.7V の電圧がかかる。

 消費電力 W = I x A なので、回路全体の消費電力は 6 x 0.57 = 3.42W。このうち LED は 3.3 x 0.57 = 1.88W、電流制限抵抗は 2.7 x 0.57 = 1.54W 消費することになる。つまり半分弱のエネルギーは電流制限抵抗から熱として廃棄されているわけで、極めてエネルギー効率が悪い。ってか、乾電池1本以上ぶんまるまる無駄・・・(滝汗)

 また回路に流れる電流 I = V/R だが LED に発生する電圧(順方向電圧 Vf)は 3.3V でほぼ一定なので、乾電池のように電池電圧が下がる場合は、電圧の低下に伴い電流量が減り、どんどん LED の輝度が低下していくことになる。


【改造コンセプト】

 上述のエネルギー効率の悪さを改善し、電源電圧低下に伴う輝度低下をなくすことが改造の最大の目的。

 LED の定電流ドライブには既に多くのコントロール IC やキットが出回っているが、ほとんどが LED の順方向電圧 (Vf) + 3V 以上の電圧を要求する上に電圧変動する電池駆動には向いていない ^^;

 ゼロから作るのも面倒なので、既存品をうまく組み合わせて以下を目指す。

 ・PWM 制御で明るさ調節
 ・昇降圧 DC/DC コンバーターで LED 輝度を一定に保ち、エネルギー効率を改善
 ・保険として過電流防止回路も入れておく
 ・外部電源入力に対応
 ・明るさは Low(DUTY 10%、常夜灯モード), Mid(DUTY 60%), High(DUTY 100%)の 3段階切り替え


【ハードウエア】

 PWM 制御は既に流用可能なファームウエアが手元にある PIC12F683 を採用。

 スイッチングには効率を考えて Nch パワー MOS-FET を使用する。Id が 1A 以上取れて Vgs(th) Max 2V 程度のものなら大抵 OK。今回は手持ちの都合上、2SK2936 を利用した。0.5A のスイッチングとなると一般的には発熱が心配になってくるが、後述の通り DC/DC コンバーターの出力電圧をうまく追い込んでやれば発熱はほぼ抑えられる。

 昇降圧 DC/DC コンバーターはストロベリーリナックスで売られている既製品を使用することにした。

 このモジュールは入力 2.5V 〜 12V と対応電圧が広く、出力は電圧可変で 1A 程度まで取れる。価格も 1000円前後と安く、今回の用途にはピッタリ ^^

 また DC/DC コンバーター加えて過電流防止回路も保険として設けておく。

 改造前に LED のドライブ電流を測定したところ 6V時 High 設定で 570mA であった。要するに 570mA までは設計上連続で流してよい、ということなので 0.6V でフィードバックがかかるようにするためのシャント抵抗値は R = V/I = 0.6V/0.57A = 1.05Ω となる。

 この場合の消費電力は 0.6V x 0.57A = 0.342W となり、1/4W のカーボン抵抗ではダメなので、今回は 4.7Ω 1/4W を 4パラにして 1.2Ω 1W とした。ちょっと抵抗値が大きめだがカーボン抵抗は誤差が 5% あるので許容範囲とした。(誤差 1% の金属皮膜抵抗 1Ω 1W が手元にあれば良かったのだが)

 PIC の電源は昇降圧 DC/DC コンバーターからではなく、別途三端子レギュレーターから供給している。これは電源 OFF 時の全体の消費電流を抑えるため(詳細後述)。


【ソフトウエア】

 既に作成済みの汎用 PWM 調光モジュール(PIC12F683)をベースとして使用する。ただし今回は DC/DC コンバーターの制御が必要なので、一部プログラムを変更して対応する。

 具体的には GP1 ポートを動作時常時 H、SLEEP 時 L にして DC/DC コンバーターの EN ピンを制御する。この場合、PIC 側と DC/DC コンバーター側の電圧レベルが異なるので、FET とプルアップ抵抗で非反転のレベル変換をしている。


【スイッチ操作仕様】

 SW1 のみ使用。

 通常押し → 明るさ切り替え
 長押し  → 電源 ON/OFF

 今回 SW2 は使用しないが、蛍点滅などの機能は生きているので、詳細は汎用 PWM 調光モジュールのページを参照のこと。


【回路設計のポイント】

 今回の設計で重視したのは省電力(動作時、停止時)で、コストは考えない(爆) どうせ個人製作の一点モノだし ^^;

 1. 動作時の省電力化

 もともとの回路(回路図参照)は電流制限抵抗だけで LED に電流を流している。

 この回路は供給電圧が一定(ニッケル水素電池やリチュウムイオン電池を含む)ならコストや信頼性との兼ね合いで悪くないのだが、乾電池のように電圧が降下する機器では、供給電圧が高いうちは余分なエネルギーが熱として無駄に放出され、逆に電圧が下がってくると損失は減少するが流れる電流も減少して LED の輝度が落ちてしまう。

 まず LED の輝度を一定にするためには、供給電圧が変動しても電流量が変動しない、キチンとした定電流回路を投入する必要が出てくる。

 定電流回路には多くの種類があるが、今回はシンプルなフィードバック型を採用。シャント抵抗に所定の電流が流れるとフィードバックトランジスタが ON してスイッチング素子を OFF にするため、供給電圧が変動しても常に設定以下の電流が流れて LED の輝度が一定になる(よって正確には定電流回路ではなく過電流防止回路)。これで輝度問題は解決。

 次にエネルギー効率の改善を考えてみる。

 上記フィードバック型回路では LED の順方向電圧 Vf(白、青、電球色などは 3.3V 前後)とシャント抵抗に発生する 0.6V の合計 3.9V を超えた電圧ぶんのエネルギーがスイッチング素子にかかる。この余分なエネルギーは熱として廃棄されるため、このスイッチング素子にかかる余分な電圧をいかに抑えるかがエネルギーロスを抑えるポイントになる。

 そこで今回は昇降圧 DC/DC コンバーターを使い、その出力電圧を絞り込むことでスイッチング素子に必要以上の電圧を掛けないようにしてみた。

 なお DC/DC コンバーターの PS 端子は L に落として効率重視のパワーセーブモードにしておく。(オシロで波形を見る限り出力波形にほとんど影響無しだったので)


 2. 停止時の省電力化

 LED ポール部分には、ポールを引き出した時のみ通電するスイッチ機構が付いており、これを電源スイッチに使うテもあったのだが、使い勝手がイマイチ。ケースになるべく孔を開けたくないこともあり、今回はソフトウエア電源にすることにした。

 PIC は SLEEP に入れてしまえば消費電流を 0.1μA 以下に抑えることができるし、DC/DC コンバーターは Disable モードにすることで自己消費電流を 2μA にまで落とせる。加えて EN 端子のプルアップ抵抗を 100K → 500KΩに変更して暗電流を抑えることで昇降圧 DC/DC コンバーター周りの消費電流を 20μA 程度に抑えられる。

 ただ DC/DC コンバータを制御するためには PIC 用に別電源を用意してやる必要がある。そこで自己消費電流 1μA と極めて省電力な COMS 三端子レギュレーターを投入し、SLEEP した PIC と合わせて消費電流を 2μA 以下に抑えた。

 以上、電源 OFF 時の全体消費電流は 30μA 以下。この程度ならよほど長期間電池を入れておかない限りは問題なかろう。



【最終調整】

 LED の順方向電圧 (Vf) やシャント抵抗値は個体によって若干のバラつきがあるため、以下の手順で DC/DC コンバーター出力電圧の「追い込み」を行う。

 1. 昇降圧 DC/DC コンバーターの電圧をひとまず 4.0V 程度に仮設定し、輝度最大で LED を点灯させる。
 2. シャント抵抗の電圧を測りながら DC/DC コンバーターの出力電圧を少しづつ下げていく。電圧は 0.56V〜0.65V あたりでしばらくは一定のハズ。
 3. ある電圧からシャント抵抗の電圧が下がり始めることを確認し、その下がり始めの電圧で一旦固定。
 4. FET のソース・ドレイン間電圧を測定。ここの電圧が高いと FET が発熱するので安全をみて 100mV 以下になるよう、必要に応じてさらに DC/DC コンバーターの出力電圧を下げる。
 5. 1時間程度輝度最大で稼動させ、昇降圧 DC/DC コンバーターや FET、シャント抵抗が異常発熱していないことを確認したら調整終了。

 管理人の場合、出力電圧 3.58V(シャント抵抗電圧 0.56V、ソース・ドレイン間電圧 67mV)で固定した。これなら FET での損失は 30mW 程度でヒートシンクが無くても問題無い ^^


【実装】

 タクトスイッチは基板上に実装してオリジナル基板と差し替える。スイッチ高は基板上面から 8mm。秋月で売っているタクトスイッチで丁度ピッタリ。

 制御基板はホットメルトでケースに直付けしたが、昇降圧 DC/DC コンバーターは入力電圧によっては多少の発熱があるので基板を浮かして固定。

 外部電源入力は電池からのラインを切り離せるよう極性統一の電源コネクタを使用した。よってモバイルバッテリーのような USB 5V 系はコネクタ変換して入力することになる。

 なお、ケースは材質的に加工し易く、電源コネクタの孔も綺麗に開きました ^^


【改造によるエネルギー効率改善効果】

 改造によるエネルギー効率の改善具合をざっと見積もってみる。

 改造前: High 点灯 6V x 0.57A = 3.42W
 改造後: High 点灯 3.58V x 0.57A = 2.04W, ただし DC/DC コンバーターの変換効率が 90% のため 2.04 / 0.9 = 2.26W

 計算上はエネルギー効率が 34% 改善され、点灯時間が 1.5倍も長くなることに ^^v

 電圧降下が小さい充電系電池ならほぼこの通りになるハズで、純正ハイパワーパックなら High 点灯時間 10時間 → 15時間点灯に ^^v

 ちなみに単三エネループ 2100mA/h x 4 本なら 2.1Ah x 4.8V / 2.26W = 4.4時間点灯。DUTY 60% の Mid で 7.3時間、DUTY 10% の Low で 44時間となり、1泊なら単三エネループで十分かも ^^

 一方、乾電池の場合はどうだろうか。

 一応稼働時間を計算してみると、アルカリ単一電池は 10000mA/h 程度なので 10Ah x 6V / 2.26W = 26.5 時間。乾電池 3本なら 10Ah x 4.5V / 2.26W = 19.9時間点灯となる。もっとも乾電池は容量の 100% を使い切れないので、実際には上記ほど点灯しないと思いますケドネ ^^;

 なお、カタログの「乾電池 High 点灯 85時間」という表記は非常に問題のある表現で、「だいぶ暗くなってますがとりあえず点灯してます」という状態も含めての 85時間(爆)。よって改造後の輝度一定品とは比較デキマセン(汗)


【使用感】

 最も便利なのは使用できる電源のバラエティが増えたこと。

 対応電圧が 3.6V〜12V となったことで純正充電池パックはもちろん、ニッケル水素電池(4〜5本)、乾電池(3〜4本)、モバイルバッテリー(USB 5V)、AC 電源アダプタ(9V まで)が使用可能に。ウチの場合はモバイルバッテリーか AC アダプタの 5V 入力がメインになりそう。

 もちろん省電力化と三段階調光も地味に便利 ^^

 外観はまったく変わらないけど中身はスゴイ、という逸品に仕上がったと思いマス ^^(これなら定価 7000円でも多少は納得するんですけどね)


【改良案】

 ファームウエア自体は低電圧による自動停止機能をサポートしているので、回路図のように三端子リセット IC を使って過放電防止機能を追加できる。

 また DC/DC コンバーターの Power Good (PG) 端子を使って同様の機能を追加することも可能(PG 端子から 10KΩを介して GP3 へ接続。PIC の保護ダイオードによりレベル変換は問題無し)

 いずれも充電池での運用がメインなら実装しておいて悪くない機能・・・なのだが実はスッカリ実装するのを忘れてた・・・(爆)


【おまけ】

 どうせ DC/DC コンバーターで定電圧駆動にするなら過電流防止回路よりも普通に抵抗で電流制限した方が効率が上がる、という考え方も当然あり得る。効率を上げるなら電流制限抵抗はなるべく小さい値が良いのだが、この場合出力電圧の変化に対して電流量の変化が非常に敏感になる。例えば電流制限抵抗を 1Ωとした場合、電圧が 0.1V 変動すると電流量は 0.1A、即ち 100mA も変動する。

 これは即ち、(出力電圧を追い込む段階のミスも含め)何らかの原因で電圧が上がると LED が一気に逝く可能性があることを意味している。そんなワケで、個人的には過電流防止回路はあった方が宜しいと思いマス ^^;


【今回の反省点】

 最初、スイッチング FET に何も考えずに使い慣れた SUP85N21 を使用したところ全然電流が流れず慌てるハメに(爆)

 そもそも SUP85N21 は Vgs(th) Max が 4.0V と高く 3.3V 系ではうまく ON しない可能性が高い(ボケ1)上に、ソース側に 0.6V の「ゲタ」まで履かせていることをスッカリ失念(ボケ2)していたのが原因 ^^;;;;

 そこで Vgs(th) Max = 2.5V の 2SK2936 に交換。これなら PIC H 時のゲート・ソース間電圧 = 3.3 - 0.6 = 2.7V > Vgs(th) Max となり、キッチリとスイッチングしてくれマシタ ^^


【プログラム】

商用利用厳禁
プログラム (HEX ファイル)

2014/07/15 ver 1.0
CPX6_LED_Classic_Lamp_v1.0.zip


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